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アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。今回は、アニメ『虚構推理』の岩永琴子のように、異界との接触を果たした少年にまつわる話を、奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が語る。
今期(2020年冬アニメ)で最もバケモノの類が登場するアニメといえば『虚構推理』でしょう。城平京(しろだいらきょう)さんによるシリーズ小説を原作とする同名マンガをアニメ化したものです。
主人公の少女・岩永琴子は、11歳のときに2週間ばかりナニモノかにさらわれました。彼らの「知恵の神」となることを条件に解放されるものの、左足を切断され、右目をくり抜かれてしまいます。まさしく「神隠し」にあったのです。
みなさんは子どものころに、大人から「(家に帰るのが遅くなると)天狗にさらわれるよ」などと脅されたことはないでしょうか。これは、古くより子どもが姿を消す原因のひとつが天狗である、とされていたことに起因すると考えられます。
江戸時代の国学者である平田篤胤(ひらたあつたね)が記した神道書に『仙境異聞(せんきょういぶん)』というものがあります。最近、SNSでも話題になったので、ご存知の方も多いことでしょう。神隠しにあって行方不明となり、その間、仙界で暮らしていたという少年・寅吉に平田篤胤が面談して書き記したとされる書物です。
寅吉は篤胤に、自分が仙界に行ったきっかけや方法、その先で出会った天狗をはじめとする不思議なモノたちの話を語って聞かせます。どうやら、しばらく寅吉は、その世界で暮らしていたようです。
琴子と同じく、子どものころに異界と接触した寅吉。しかし彼は琴子と違い、元の世界に戻るにあたって何かを代償として取られた……というわけではないようです。つまり、琴子が左足と右目を奪われたのは、異界に行ったことが原因ではなく、やはり神となったからであろうと考えられます。
小説やマンガといささか話の流れが異なるように思うアニメ『虚構推理』ですが、おそらく今後も数々のバケモノが登場するはずです。それらと、琴子をはじめとする登場人物たちは、どのように対峙していくのでしょうか。物語は、まだまだこれから。今後、さらにワクワクする展開が待っているはずですよ!
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