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アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。今回は、『ゲゲゲの鬼太郎』にも登場したアマビエという存在について、奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が語る。
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界が不安に包まれています。マスク不足に消えたトイレットペーパーなどの謎……。一刻も早く、事態が収束することを願わずにはいられません。
多くの人が同じ気持ちを抱いているようで、ここ最近(2020年3月現在)SNS状に「アマビエ」のイラストを貼る行為が流行しています。
アマビエはアニメ『ゲゲゲの鬼太郎(第5期)』に登場していたので、ご存知の方も多いでしょう。アニメでは、熊本から鬼太郎たちのもとにやってきたアマビエがドタバタしながらも活躍します。予言の能力を持っているため周囲からもてはやされてきたのか、はじめは少しワガママだった彼女(⁉)がだんだんと成長し、大人になっていく姿が印象的でした。
この鬼太郎版からも想像できるように、アマビエは予言をするバケモノのようです。病気などの災厄も予測し、その災いを避けるためにはアマビエの絵を持っているとよいなどといわれます。この特性を受けて、現在のイラストを貼る行為が広まっているんですね。
こうしたアマビエイメージの多くは、江戸時代の瓦版に登場したものが基になっていると推測されます。最も流布している弘化3年(1846)の瓦版には、その姿も描かれています。長い髪の毛のようなものを携え、尖ったくちばしと3本足を持ち、ウロコのようなものを身にまとった、なんとも奇妙な姿です。
この瓦版アマビエの登場より少し早く、天保15年(1844)には「アマビコ」という、同じく予言するものの存在が確認されています。アマビエとアマビコの関係性とは……気になる方は詳しく言及している書籍や論文がチラホラありますので読んでみてください。
さて、日本では古くより、疫病が流行るたびにさまざまな取り組みがなされてきました。今回のネット上にはびこるアマビエイラストもそのひとつ。「早く収まりますように」という人々の願いが込められているに違いありません。一刻も早く沈静化するよう、私もアマビエに願いを込めたいと思います。
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