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アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。今回は、アニメ化もされたマンガ『ハイキュー!!』の舞台でもある宮城の「柿」の妖怪にまつわる話を、奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が語る。
『ハイキュー!!』がアニメ・マンガともにアツいです。マンガでは最終章に入り、予想外の展開を見せています。「こう来るかっ!」と度肝を抜かれたのは、私だけではないでしょう。毎度、観て(読んで)いるだけで、おなかの底から何かがグワッと込み上げてくるというもの。運動神経は母親のおなかの中に置いてきた私ですが、登場人物たちと一緒にコートに立っているような気分でワクドキが止まりません!!
さて、本作の主人公・日向翔陽をはじめとした登場人物たちは、宮城県にある高校に通っています。ときおり、雪の降るなか練習していて大変そうです。また、青葉城西高校の及川徹が「八木山べニーランド」のテーマソングを歌っているなど、本作は全体的に宮城要素が高めです。
そんな宮城県にも妖怪の話はたくさん残っています。ありすぎて、どれを取り上げようかと迷いましたが、よく食べる日向たちに合わせて、食べ物の妖怪を紹介したいと思います。
仙台市には、柿の実を採らずに放置しておくと現れるという妖怪・タンタンコロリンの話が伝わっているようです。タンタンコロリンは、古い柿の木が化けた大入道であるなどといわれます。また、このタンタンコロリンと少し似たものに「柿男」があります。
柳田國男に遠野の話を語り聞かせたことで知られる佐々木喜善(ささききぜん)が書き記した『聴耳草紙』にその名がありますが、少し奇妙な話名です。柿を食べたいなと思っていたところ、真っ赤な顔の大男が現れて「尻をほじってなめろ」と言うのだそうです。そして、言われるがまま、ほじってなめると甘かったといいます。
柿を食べるのも、なかなか大変ですね。『ハイキュー!!』に登場する人物たちも、もしかして柿の妖怪に出会っているかどうかはわかりませんが、宮城の妖怪として話くらいは聞いたことがあるかもしれません。日向をはじめとする登場人物たちが柿……だけでなく、おいしいものをたくさん食べて、今後も元気にコートを飛び跳ねてほしいなあと思っています。
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