アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。最終回は、奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が、大好きなマンガ『百鬼夜行抄』を交えて、妖怪について語る。
突然ですが、「妖怪よもやま話」は今回で最後となりました。もし定期的に読んでくださっていた方がいらっしゃいましたら、どうもありがとうございました!
ラストにどの作品を取り上げようか……とても迷いましたが、私の大好きなマンガ『百鬼夜行抄』について書くことにしました。今市子さんによる、25年近くも連載している人気作です。
幻想作家の大家であった祖父・飯嶋蝸牛ゆずりで不思議な力を持ってしまった飯島律が、バケモノや周囲の人に翻弄(ほんろう)されながらも日々過ごす様子が描かれます。
本作の一番の魅力は“人とバケモノが共存している”ところだと私は考えています。律の側には、父親の皮をかぶった青嵐というバケモノが常に仕えています。蝸牛の命により、式神のような働きをしていましたが、とある一件により、その契約は終了。その後も引き続き父親の体に巣食い、気まぐれに律を助けてくれることがあるという関係です。
数々のバケモノが登場する話を読んで(観て)いると、律と青嵐のように慣れ合わないながらも、つかず離れずの関係性であることがわかります。妖怪が生まれる要因はさまざまであるかと思いますが、ひとつに欠けた部分を埋める働きがあると私は考えます。
たとえば、現在のようにウイルスが蔓延すればすがるようにして「アマビエ」の絵をSNS上に貼る行為が流行る。学校環境が不安定な時期に、学校の怪談がまことしやかに囁かれる。東日本大震災が起きた直後は、被災地で幽霊の目撃情報が相次ぎました。
すべてがすべてそうであるとは言いきれませんが、バケモノは私たち人間の営みに何か隙間があった際、そこを埋める役割も果たしてくれているのではないでしょうか。
そう考えると、オバケは私たちの生活になくてはならないものであり、欠けると生活に支障をきたす可能性すらあるように思えてきます。人とオバケは切っても切れない存在なのです。
『百鬼夜行抄』を読んでいると、当たり前のようにして生活している中にソレらが潜んでいるのではないか……と思わされます。本コラムはこれにて終了ですが、いろいろなマンガ・アニメ作品を通じてオバケと人との関わりを感じていただければ嬉しいです。それではまた、どこかでお会いしましょう!