
今年もこの時期がやってきましたね! 全国の映画館で『妖怪学園Y 猫はHEROになれるか』の上映が始まりました。毎年、『妖怪ウォッチ』の劇場版が公開されると、冬が来たなと感じます。今年(2020年)で6作目だそうですが、すっかりこの時期の顔になりました。
今回の映画は、トップクラスの能力を有するものだけがスカウトされ、入学を許される超エリート校・Y学園が舞台。猫耳のような赤髪を持つ寺刃(ジバ)ジンペイが、個性豊かな仲間とともに学園の不可思議な謎に挑むというストーリーとのこと。タイトルに『妖怪ウォッチ』と入っていないところが気になりますが、本作もギャグ満載で楽しい仕上がりとなっているようです。
『妖怪ウォッチ』といえば、ジバニャンをはじめ、ひも爺やムリカベ、口だけ女など「しゃれ」が効いたキャラクターが数多く登場します。これらの妖怪について、まったく新しい妖怪像のように感じるかもしれませんが、実はそうでもありません。妖怪と「しゃれ(笑い)」は切っても切り離せない関係があるのです。
妖怪の側面のひとつに「世情などを“滑稽に”表現する」という点があると思います。たとえとして『神農(しんのう)絵巻』を見ていきましょう。
ユニークであるからかたびたび注目される、江戸時代以降に成立したこの『神農絵巻』。「神農」とは中国神話などに見える農業の神。この絵巻では神農がなんと放屁、つまりおならで妖怪を退治するさまを描いています。
絵巻のなかで、妖怪たちは悪さをして人々を悩ませていました。そこで人間たちは神農に助けを求めるのです。神農は供を引き連れ、妖怪ヶ島を訪れます。そして持参した芋などを食べて放屁をして、妖怪たちをやっつけるのです。まさか、おならに退治されるだなんて妖怪たちも想像していなかったことでしょう。なんだかかわいそうですが、クスっと笑ってしまう話ではありませんか。
このように、妖怪には滑稽さがつきものです。かつては恐れ・畏れられていた彼らも、時代を経るにつれて面白おかしい存在として捉えられるようになっていったのでしょう。『妖怪ウォッチ』の妖怪たちは、その流れの果てにいるような気がしています。古くより受け継がれてきた妖怪のエッセンスが詰まっていると思うと、なんだか愛しく思えますね。
