
青山吉能「My Tale」ジャケット
本稿では、本誌で紹介できなかった部分も含めたロングインタビューをお届けする。
声を楽器のように使って歌ってみた1曲
――「My Tale」の曲はどのように決めましたか?
ソロのときはコンペという形で曲を選んでいるのですが、1stの「Page」はデビュー曲っぽさ、2ndの「あやめ色の夏に」はリリースが夏ということで夏っぽさを意識したんです。ですが、「My Tale」に関しては、今回新たに集めたのではなく、1stのときにもらっていた曲なんです。聞いたときに曲のかっこよさにビビッと来たのですが、デビュー曲にしては尖りすぎている印象があったので1曲目では見送り、いつかリリースしたいと温めていたんです。それもあって、今回満を持してという気持ちが強いです。
――前2曲と比べると、淡々とした曲ですが、あえてソロとしての方向性は定めていないのでしょうか?
そうですね。私自身、ほかの人と同じことをあまりやりたくないと思っているんです。「声優さんのソロ活動といえばこんな曲」というイメージを打破していきたい気持ちがあって、あえてジャンルにはこだわらないようにしています。私はほかの方のように「アーティストデビューをしませんか」とお声がけがあったわけではなく、ただ個人的にライブをやってみたいという気持ちでスタッフ集めから何から全部手作りでやってみたんです。その過程でテイチクエンタテインメントさんから声をかけてもらい、曲を作るならリリースしようよ、という流れでのデビューだったので、比較的自由に選べているというのも大きいと思います。
――でも、「My Tale」はあまりにも淡々としているので、聞いた人は驚いたかもしれませんね。
みんなをビックリさせたい気持ちも強い人間ですから、予想を裏切れたのならむしろうれしいです(笑)。
――歌詞はどのようなイメージにしたいと考えていましたか?
最初に曲についていたのは英語の歌詞で、どういう意味かはわからなかったのですが、まずはそこに引かれたんですね。それから、この曲は声を楽器のように使ったほうが絶対に栄えると思って。でも、日本語の歌詞にして私が言葉を理解できてしまうと、どうしても感情を乗せたくなる。それを避けたくて、感情が表に出ないような歌詞、私の意志が一切入らない歌詞をお願いしました。ただ、プロデューサーを通して作詞の方とやりとりをしているうちに、プロデューサーのほうが熱中してしまって、歌詞がレコーディング前日までに上がらないという事態になって(笑)。正直、レコーディング当日は不安でたまりませんでした。
――そうなるとレコーディングはぶっつけ本番的な気持ちでしたか?
結果的に、そうなりました。もちろん、歌詞に物語はありますし、作詞の方にこの曲の主人公がどんなイメージの子かということは教えてもらったのですが、私の性格的に主人公をイメージしすぎるとキャラクターソングになってしまうんです。でも、今回は練習が密にできなかったことでキャラソンになることもなく、スタジオでいろいろな歌い方にも挑戦できました。その新鮮さや柔軟さは歌にも反映されていると思います。
――感情を出さない歌い方というのは、難しいのではないかと感じます。
難しかったです! 高音域だと叫びたくなりますし、サビも感情を放出したくなってしまって。しかも、技術的にもすごく繊細な歌い方をしていったんですね。裏声を使うのか使わないのか、使うとしてどの程度なのか、スタッフの方と相談をしつつ、「裏声2%増しで」という気が遠くなるようなディレクションもあって本当に大変でした。
――ほかにレコーディングではどんなことに挑戦しましたか?
ふだんは起承転結がハッキリしている歌を、最初から最後までつるっと歌うことが多いのですが、この曲は全部「結」みたいな状態なのでかなり細かく録ったんです。そのぶんちょっとでも感情を入れてしまうとつなげたときに前後の歌い方と合わなくなってしまう。これまで感情の赴くままに歌っていたので、感情を制御して歌うというのが私のなかでは新しいチャレンジでした。
――歌詞が、少し陰鬱とした印象もあるので、知らない人が聞いたら青山さんの心に何かあったのではないかと心配になってしまうかもしれませんね。
そうですね! でもあくまでも青山吉能の表現する世界のひとつにある曲ということなので、その世界観を感じ取ってもらいたいです。
――基本的に、すべてが青山吉能の意志で動いているということで、当然歌の正解を決めるのも青山さんですよね。
そうです。私が正解と言ったことが正解になるというのは、正直恐ろしいと感じることもあります。でも、私が作りたい、歌いたいと思って選んだものなので、絶対に妥協はしたくない。だからこそ、自分のなかでしっかりと正解を決めなければいけないんだと、改めて感じた曲にもなりました。一方で、自分が納得した状態で完成したものが世に出るので、褒めてもらえると喜べる気持ちが大きくなるんです。それがうれしいです。
――とくにお気に入りのパートは?
この曲では、自分からいろいろ提案をしたんです。たとえば、ウィスパー気味に歌詞をなぞっていったらどうかとか、「Bridge」と呼ばれる、いわゆるメロとサビを繋ぐパートも、あえて前後とかけ離れた歌い方をしてみるのもおもしろいんじゃないかとか。そういった挑戦ができたところも気に入っています。
青山吉能 / My Tale(Music Video)
――ビジュアルイメージやジャケットのテーマは?
今回は信頼しているスタッフにすべてを託しました。自分の意見を入れないことで世界が広がることもあるので、曲を聞いて思った世界にしてくださいとお願いしたんです。実際、ヘアメイクも衣装も自分では想像もしないような攻めたものを用意してもらえました。撮影の日に、私は何も言わなくてよかったなって思ったくらい(笑)。ミュージックビデオも、私が映っていないほうがいい意味でマッチするかもという意見は伝えつつ、ビックリするようなものができあがると思うので、ぜひ期待してもらいたいです。
――2022年はソロデビューの年でしたが、2023年はどんな年になりそうですか?
じつはソロデビューはそれほど大きなこととして捉えていないんです。子どものころの「歌いたい」という感覚をずっと大事にして、それがいま地続きでつながっている。だからこそ、これからもその規模感で歌っていきたいと思っています。3~4分程度という短い音楽のなかに青山吉能然としたものを詰め込む作業が楽しいので、2023年も自分でも思いも寄らないものが出てくるのではないかと、すごくワクワクしています。私は、そのときにビビッときた曲ならR&Bでもラップでも、合いの手がありまくりのキュートな曲でも何でも歌ってみたいんです。いまはなんでもできる気がするので、これからもいろんな音楽に触れていきたいです。
――デジタルリリースという点での新鮮さのようなものは感じていますか?
アニメのアフレコって、早いものだとオンエアの1年くらい前に終わるものもあるんです。そうすると、自分たちの熱量と見てくれる人の熱量が微妙にずれたりするんですね。それをさびしいと思っていた部分もあるのですが、デジタルシングルはレコーディングからリリースまでの間隔がすごく短くて、私の「聞いて!」の熱量のまま届けられることがすごくありがたいです。もう少し余裕を持って作りたい気持ちもあるのですが、いまは私のほやほやな熱を感じていただけたらと思います。
――3曲のデジタルシングルをリリースして、アーティスト・青山吉能像は見えてきましたか?
私の歌に関するいいところは、素直に感情が出るところだと思っていたんですね。でも、3曲とも実は素直に感情を出しているわけではなく、感情を出さなくてもこんなに素晴らしい歌が歌えるんだ! ということに気づきました。なので、今後は自分がもともと歌に対していいなと思っていた感情を素直に出せる曲というのも作っていきたいですね。
――では最後に、応援してくれる方へメッセージをお願いします。
私は、みなさんにお手紙で感想を書くことがいかに大事かを伝えたいです。お手紙って、手書きがほとんどなので熱量がそのまま伝わってくるんです。SNSでの感想ももちろんうれしいですが、スタッフがなりすましているかもしれないので(笑)、絶対本人だとわかるお手紙はとくに温かな気持ちになれます。感想をお手紙で送ってもらえると私のモチベーションがさらに上がり、リリース間隔にも影響を及ぼすかもしれません。ぜひ聞いたら気持ちが熱いうちに感想をください! もちろん、SNSでの感想も大歓迎です!
取材・文/野下奈生(アイプランニング)
■プロフィール
あおやま・よしの/5月15日生まれ。熊本県出身。81プロデュース所属。3月9日にデジタルシングル「Page」でソロデビュー。声優としての最近の出演作は、テレビアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』後藤ひとり役など。
■「My Tale」詳細情報
発売中
IMPERIAL RECORDS
各種配信サイトにて配信中
「Page」「あやめ色の夏に」に続く、青山吉能の3rdデジタルシングル。1st、2ndとはガラッと変わった、淡々とした歌声が耳の残る1曲に仕上がっている。ワイルドな雰囲気のジャケットにも注目だ。
あおやま・よしの/5月15日生まれ。熊本県出身。81プロデュース所属。3月9日にデジタルシングル「Page」でソロデビュー。声優としての最近の出演作は、テレビアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』後藤ひとり役など。
■「My Tale」詳細情報
発売中
IMPERIAL RECORDS
各種配信サイトにて配信中
「Page」「あやめ色の夏に」に続く、青山吉能の3rdデジタルシングル。1st、2ndとはガラッと変わった、淡々とした歌声が耳の残る1曲に仕上がっている。ワイルドな雰囲気のジャケットにも注目だ。