岬なこ“冒険だらけの1stアルバム”―『day to YOU』リリース記念インタビュー | 超!アニメディア

岬なこ“冒険だらけの1stアルバム”―『day to YOU』リリース記念インタビュー

アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2023年8月号には7月5日にデビューアルバム『day to YOU』をリリースした岬なこが登場。

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アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2023年8月号には7月5日にデビューアルバム『day to YOU』をリリースした岬なこが登場。



本稿では、本誌で紹介できなかった部分も含めたロングインタビューをお届けする。

アルバムだからできたことが盛りだくさん


――ソロアーティストデビューおめでとうございます! ソロデビューの話があったときは、どう感じましたか?

不安以外の感情を見つけるのが難しいくらい、不安しかありませんでした。グループ活動の現場などでも、歌は苦手だと言っていたのですぐに「やりたいです!」と言えなかったんです。私の歌がいいと思ってくださったからこそお声がけがいただいたのだろうけれど、どうしても一歩を踏み出せずにいて。でも、そうやって考えていくなかで、不安なのは未経験だからだし、負けず嫌いなのでずっと否定し続けるのもかっこ悪いなと思うようになったんですね。日ごろから私の歌を聞きたいと言ってくださる皆さんのことも思い出して、踏み出そうと決意しました。

――その不安が軽減されたのはいつごろですか?

「ソラトレイト」が5月に先行配信されたのですが、岬なこ名義でリリースができたという事実があるだけで自信に繋がりました。配信直前に生放送をやって「ソラトレイト」を少しだけ流したら、そこで楽しみだという反応もいただけたので、自分の歌への思いもまっすぐに伝わるんじゃないかと感じましたし、前向きになれていると思います。

――どんなアーティストになりたいというイメージしていましたか?

ソロアーティストって、歌を通して思いを伝える方というイメージでした。でも、私がそれに当てはまると考えたことすらなかったんですね。だから、最初にお話があったときは、どんな曲を歌いたいか、コンセプトはどうするか、うまく言葉にできなかったんです。歌う以前に、自分のアーティスト像を思い描けなかったことは鮮明に覚えています。でも、いろいろ考えていくうちに、私が歌に対してちょっとマイナスな気持ちを持っているからこそ、また違ったアーティストへのアプローチの仕方があるんじゃないかと思うようになりました。

――最初のリリースがアルバムという形態だったことへの感想は?

まずアルバムとは何かを検索して、かなり多くの曲が入っているCDだと知り、スタッフの方に聞いてみたら私のアルバムも10曲入ると。がんばると言ったけれど、皆さんは本気なのかしらとまた心配が出てきて、姉に電話ですがる頻度が増えていました(笑)。でも、デビューで多くの楽曲を聞いてもらえるのは、すごくありがたいことなんですよね。やってみて後悔するほうが自分にもプラスになると思うので、アルバムでよかったなと思っています。いまのところ後悔は一切していませんよ!

――アーティスト像をイメージできなかったというお話ですが、となるとこういう曲を歌いたいという希望も出さなかったのでしょうか?

スタッフの方とのミーティングでは、私が普段聞いている曲やどんなアーティストが好きか、私にとっての音楽とは何かをお伝えしましたが、あまり希望は言わなかった気がします。何しろソロアーティスト活動をするという想像をしたことがなかったので、歌への望みがまったく浮かばなかったんです。でも、その後打ち合わせをして1日をテーマにしてアルバムを作るとなったときに、自分の思い描いていたドンピシャな曲があったり、意外な角度でテーマを捉えた曲があったりして、すごくワクワクしていきました。

――制作の思い出は?

1か月半くらいかけてレコーディングをしていったのですが、その最中にグループ活動のレコーディングも入ってきたので、だんだんどっちのレコーディングだかわからなくなって大変でした。どちらも全身全霊を込めて歌ったので、怒濤の日々だったなと感じています。最初は、プリプロ(事前録音)でキーチェックも兼ねてワンコーラスずつ歌っていたのですが、そこで自分が歌いやすいキーはこれなんだという発見もありました。フルで最初に歌ったのは「ソラトレイト」でしたが、へんにプレッシャーを感じてしまい、ずっと自分を探しているような感覚になりました。でも、レコーディングをしていくうちに、得意ではない音域がわかってきて、それをどうやったら乗り越えられるだろうと前向きな気持ちに切り替わりました。この経験を次のレコーディングの機会やグループ活動にも活かしていきたいです。

――ここからはぜひ、それぞれの曲についても教えてください。1トラックの「75_AM6:30」と、11トラックの「75_PM11:30」はハミングとセリフ、そして寝息とメロディーで構成されたチャレンジングなトラックですね。

1トラック目がアルバムのオープニングで、11トラック目が眠りに入る表現ですね。寝息を入れることで、1日の始まりから終わりまでというコンセプトを出しています。自分が起きる時間にしては早すぎるんですが(笑)、実際の私は朝が弱いですということも兼ねてご挨拶の1トラック目になります。この2トラックは、アルバムだからこそできた挑戦のトラックで、自分の寝息が残るのは恥ずかしいですが、アルバムの調味料みたいなイメージで捉えてもらえたらと思います。

――1日が時系列で進んでいくということで、「morning morning」はまさに朝の歌ですね。

勢いよく前向きで、朝が憂鬱でちょっとお布団から出たくないと思っていても、自然と立ち上がりたくなれるような曲だなと思います。訴えかけ続けているわけではないけれど、1日を一緒にがんばろうというやさしさと強さが詰まった曲になりました。

岬なこ「morning morning」 Music Video


――続いては先行配信もされている「ソラトレイト」。

ストレートではないけれど、皆さんに伝えたいことをうまく歌詞に落とし込んでもらっていて、最初に皆さんに聞いてもらえたのが、この曲でよかったと何年経っても感じるんだろうと思っています。同じワードを2回繰り返すパートがあるのですが、そこはニュアンスを変えて歌ったりして、自分としても歌い方の勉強になりました。軽く弾むような曲のなかにも、オフの私のありのままが詰まった自己紹介的な曲だと感じています。それはミュージックビデオにも表れていますね。

岬なこ「ソラトレイト」 Music Video


――「ワタシFLAVOR」は、軽快なナンバーですね。

世界観に最初から最後まで引き込まれる曲ですね。普段の私なら言うのをためらうような、とてもかわいいワードが歌詞に盛り込まれているのもポイントです。じつは料理をテーマにした歌に見えて、サビに近づくと現実とリンクしたような言葉になっていくんです。料理だけの歌じゃないんだとだんだん明らかになっていく、そのお茶目さも素敵な曲です。

――「街角カレイドスコープ」は、爽やかな印象があります。

「街角」というだけあってお散歩ソングになっています。私はどちらかというとインドア派ですが、お散歩はすごく好きなんですね。お散歩をするとき、目的地を作ることもなく、この前右に行ったから今日は左に行ってみようとか、全然知らない道を行くことで、まったく観たことのない景色が見えることがあって。そうすると悩んでいたことも忘れたりできちゃうんです。歌詞のなかにもそんな自由さが詰まっていて。最終的に行き着く先って、誰かに決められるわけじゃないから、いまのあなたで大丈夫だよと言うメッセージも込められているので、ちょっと迷ったりしたときに聞いてほしいです。

――「あいらぶゅー」も先行配信がありましたね。

この曲は等身大の曲で、歌詞に遠回しな比喩表現などの難しいものが何もないんですね。コンビニとか身近な単語ばかりで、情景を簡単に思い浮かべることができるんです。「ラブ」と言っても深い愛というよりは、友達や家族と離ればなれになる日が来たとして、振り返ったときにいまある時間がすごく大切なものになるということを表現しているのが好きで。ミュージックビデオもスマートフォンで撮影した雰囲気なので、そういう身近な思い出を聞きながら振り返ってもらえたら愛着がわくのではないかと思います。

岬なこ「あいらぶゅー」 Music Video


――「群青セツナ」はガラッと雰囲気が変わった、しっとりとしたバラードです。

あまりにも変化が激しくて、皆さんが付いてこられるか不安ではあります(笑)。ほかの曲が私からしたら「私と出会ってくれたあなたに」というメッセージが込められているなかで、この曲は皆さんに抱いている感情ではない、どこか別の物語が混じったような曲になっています。普段生活しているときに、ふとさっき読んでいたマンガに影響されて悲しくなっちゃうようなことがありますよね。そんな、突然日常に入ってくる感情に、もしかしたら一番近いかもしれません。

――「HURRAY!」は、力強さを感じる歌声が魅力的です。

応援ソングに近い曲ですね。ただ、私から聞いてくれる人にがんばれとは言っていないんです。だから、歌っているのは私だけれど、聞いてくれる人が自分自身に歌っているような、自分のもやもやする、言葉に表せない感情を放出してくれるような歌になっていると思っています。努力してもうまく行かなくて、そんな瞬間が続いても、そういう出来事があったからこそ、いまのあなたがいるんだと伝えたい。実際、私にもすごく刺さる歌で、歌うといっぱいいっぱいになっちゃうのですが、そんな葛藤も届くとうれしいです。

――「Dancing! Singing! Feeling!」は、タイトル通り踊りたくなるような曲ですね。

葛藤や悩みと向き合って戦ってきたことはもういいから、とりあえず音楽に乗ろうよという歌ですね。私も家にいるときにふと激しい曲をかけて身体を動かしたくなったり、すごく歌いたくなったり、理由はないけど音楽に身を任せたいこともあるんですね。そんなふうに悩んでいたとしても何も考えない瞬間も人の栄養として大事なんだと訴えているような曲になりました。

――そして「おやすみ」になります。

「Dancing! Singing! Feeling!」で自分を解放して全部出し切ったからこそ辿り着けた「おやすみ」ですね。すべてを解き放った皆さんに、やさしく語りかけたい、そんな曲です。

――一見、ここで終わりそうで、終わらないところがおもしろいですね。

アルバムの曲順通りに聞いていくと、ちょっと引っかかる歌詞が出てくるかもしれません。そこから、アルバムのこの先の展開に気づいてもらえたらいいですね。

――その展開が「75_PM11:30」の先にある「恋のカウント1・2・3」ですね。

「おやすみ」で終わりかと思いきや、裏切ってやりますよというスタイルです(笑)。この曲は、妄想のなかに妄想が詰まっているみたいな曲ですね。私たちは「おやすみ」で夢のなかにいて、その夢のなかに出てくる子が何かまた妄想をしているみたいな。妄想が繋がれば繋がるほど、よりいっそうもこもこと現実が淡くなっていくというちょっと不思議な曲です。アルバムのラストに入ってくることで、これまでに作ってきた世界と別の世界に行ってしまったような強い印象を残せる曲になっているんじゃないかと思います。

――恋に恋しているような状態だからか、とてもかわいい歌詞が印象的です。

キャラクターを背負わないと歌うことがないと思っていたくらい、ストレートでかわいい曲なんです。

――いろんなジャンルの曲に挑戦したことで、何か発見はありましたか?

いままで私は「おやすみ」や「群青セツナ」のようなやさしく語りかけるような曲を歌うほうが好きだったんですね。「morning morning」とかは聞くのは好きだけど……と思っていたのですが、今回歌ってみたらしっくりきましたし、楽しく歌えたことが発見でした。それと同時に、歌をじょうずに表現する難しさも痛感しました。

――歌唱した10曲のなかで、一番いまの岬さんっぽい曲は?

「ワタシFLAVOR」です。自分のアーティスト像を思い描くに当たって葛藤がとても多かったのですが、「ワタシFLAVOR」は自分を励まし認めるというフレーズが多々あるので、自分らしさが詰まっていると思います。

――逆に、いまの岬さんにとってのチャレンジ曲といったら?

「morning morning」は自分が歌うイメージがあまりなかったのと、こんなに激しい曲がくるとは想像していなかったのでチャレンジ曲ですね。応援してくださる皆さんが、私に対してゆったりした癒しをイメージしてくださるので、疾走感のある感情爆発ソングは、きっと意外に感じてもらえるんじゃないかと思います。

――ビジュアル面でのポイントを教えてください。

アーティスト写真は白を基調としたお洋服ですが、私はもともとずっと黄色が好きなんです。見ていて元気をもらえるし、身の回りにあるとちょっとうれしくなるんですね。身に付けるにはちょっと難しい色なのですが、ジャケット写真の撮影では黄色が入ったお洋服やものを入れていただいて、自分がキャンバスになったような気持ちになったので、そこも注目してほしいです。

――制作を通して、アーティスト・岬なこの持ち味は見つかりましたか?

どこかに落ちていたら拾いたくなるくらい見つからないのですが(笑)、いままでの自分だったら自分がどんな人か問われたら、思い悩んで何もないと言ってしまったと思うんです。でも、アルバム制作でいろいろな楽曲を表現させていただき、予想ができないアルバムになったことで、何も持っていないのもいいことなんじゃないかと思えるようになりました。今後どういう色になっていくのか、どんなアーティストになっていくのかを、皆さんと一緒に作り上げていけたらうれしいです。

――アルバムタイトルの『day to YOU』に込めた意味は?

1日の「day」とあなたの「you」は入れたいと思って「dayとyou」を入れたいとお話をしていたら、「それ、いいね」ということになり、決まったタイトルです。表記はいろいろ考えて英語にしつつ、「あなた」という存在があってこそいまの私がいるのでそれを強調したくて「YOU」を大文字にしました。私のアルバムでもあるし、あなたのアルバムでもあると捉えてもらえるとうれしいです。

――いまの岬さんにとって、このアルバムはどんな1枚になりましたか?

大冒険の1枚です。はじめましての自己紹介というのは間違いがないのですが、短い期間に10曲レコーディングをさせてもらったことで、自分が知らなかった自分、わからなかった歌に対する感情、歌に対する好きだなという瞬間がちょっとずつわかるようになってきて。すごく大冒険をしたアルバムになったなと感じています。

――11月には1stライブの開催も決まりましたね。

ここからが私のスタートになるので、改めて応援してもらえたらうれしいです。レコーディングでも新しい感情を見つけましたが、ステージでも新しい発見がたくさんあると思います。ひとりでステージに立つ頃には緊張していると思いますし、生まれたての子鹿みたいになっていると思いますが、どうかほどよく期待してお待ちください。



取材・文/野下奈生(アイプランニング)

■Profile
みさき・なこ/3月8日生まれ。兵庫県出身。ホーリーピーク所属。本アルバムでアーティストデビュー。声優としての主な出演作は『ラブライブ!スーパースター!!』嵐千砂都役など。

■『day to YOU』
7月5日発売
バンダイナムコミュージックライブ

初回限定盤4620円(税込)
通常盤3300円(税込)

岬なこのデビューアルバム。全12トラック収録で、うち10曲を歌唱。1日の始まりから終わり、夢のなかまでを爽やかな歌声で表現していく。初回盤に同梱されるBlu-rayには、「ソラトレイト」「あいらぶゅー」のミュージックビデオ(MV)と、それぞれのメイキング映像を収録。

■Information
7月30日に東京・アニメイト池袋本店9F animate hall BLACKで、デビューアルバム発売記念イベント(トーク&ミニライブ)を、同日都内某所にて特典お渡し会を開催。参加方法の詳細は公式webサイト【https://lantis.jp/misakinako/】をチェック。11月11日には埼玉・ソニックシティ大ホール、11月26日にはNHK大阪ホールで1stライブも決定。


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《超!アニメディア編集部》
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