満たされていたWake Up, Girls!の活動、なくなって気が付いた歌への想いーソロアーティストデビューする声優・青山吉能インタビュー | 超!アニメディア

満たされていたWake Up, Girls!の活動、なくなって気が付いた歌への想いーソロアーティストデビューする声優・青山吉能インタビュー

ソロアーティストとしての歩みをスタートさせた青山吉能にインタビュー。

特集
注目記事
「Page」ジャケット写真
  • 「Page」ジャケット写真
  • 青山吉能アーティスト写真
  • 青山吉能
  • 青山吉能

 声優・青山吉能が2022年3月9日に配信シングル「Page」をリリース。ソロアーティストとしての歩みをスタートさせた。これまで声優ユニット・Wake Up, Girls!(以下、WUG)での活動やイベントなどで確かな歌唱力を披露してきた彼女だが、アーティストデビューは夢にも思っていなかったという。今回はアーティストとしてデビューする青山さんに、これまでの活動を振り返ってもらいながら、デビューにかける率直な想いをお聞きした。

WUGとしての活動で満たされていた

――アーティストとしてのデビュー、おめでとうございます。

 ありがとうございます!

――歌の上手さに定評のある青山さんだけに、「アーティストデビューを待っていました」というファンの方も少なくなかったと思います。青山さんご自身はソロアーティストとしてデビューしたい気持ちは元々ありましたか?

 それが、あんまりなくって(笑)。デビュー前から歌は好きでしたが、私は声のお芝居をしたいと思ってWUGのオーディションを受けたんです。それなのに、最初はライブがメインの活動だったんですよ。アニメの放送がスタートするまではダンスや歌、ブログの更新、握手会などが私たち7人の評価基準。声優になりたくてこの業界に入ってきたのに、なんで歌やダンスで評価されないといけなんだって、当時は思っていましたね。

――当時、「私たちは声優です」と強くおっしゃられていたのが記憶に残っています。

 16歳の頃の私は尖っていたんです(笑)。もともとアーティストとしても活動したくて声優になった訳ではないので、デビューは夢にも思っていませんでした。

――同世代の方がアーティストデビューするなか、「自分も」という気持ちにはならなかった?

 ならなかったですね。アーティストデビューって、するべき人がすると思っていたので。例えば、私が大好きな声優ユニット・ゆいかおりさん。彼女たちでしか表現できない音楽でいつも楽しませてくれました。声優・アーティストはなるべき人がなるもので、自分は当てはまらないと思っていました。

――それはある種、ファン目線と言えるかもしれません。

 そうかも。私、ずっとオタクだったので(笑)。だから、同世代の子たちがデビューしても、焦ることはなかったですし、マイナスな感情を抱くこともなかったですね。むしろ、ソロアーティストとして私が活動していくのは難しいと思っていたくらい。というのも、WUGとしての活動のなかで、年に1回ソロイベント企画をやっていたのですが、それが大変だったんですよ。最初こそ声優としてお芝居をすることにこだわっていた私ですが、ライブ活動をしていくなかで、いつの間にか6人の仲間やお客さんと一緒にライブを作っていくことが「楽しい」と思えるようになってはいましたが。

――最初は抵抗があったものの、活動を続けるなかでWUGとして歌やダンスを届けることに、前向きになれた。

 そうですね。表現者として学べることが多いと分かりましたし、何より、仲間と一緒に作り上げるライブが、かけがえのないものになっていたんです。学生時代の合唱部でも誰かと一緒に歌うことで生まれるハーモニーの素晴らしさ、1+1=2じゃない歌の力を体感していました。それをWUGの活動でも感じられるようになったんです。誰かがミスをしてもカバーする。その関係や空間に満たされていました。それがソロになった途端、周りには誰もいなくなる。1人でステージに立ち、自分だけに注目が集まるんです。ちょっと怖かったですね。やっぱり私にとってライブは仲間がいてこそのステージだな、ソロデビューは絶対にできないなと思っていました。

――その気持ち変化したから、ソロアーティストとしてデビューするに至ったんだと思います。

 そもそものきっかけは、WUGの活動が終わったことかもしれません。先ほども言いましたが、私はWUGでの活動に満足していたんですよ。そのWUGが解散するとなって、生活は急変。土日は基本的にライブをしてお客さんと会えていたのに、それが一気になくなりました。寂しかったですね。

――当たり前にそこにあった存在が、急になくなってしまった。

 そうなんです。デビューしてからずっとWUGとして活動していたので、ライブしてお客さんと会える尊さをいつの間にか感じづらくなっていたのかもしれません。そこから凪のような生活が始まりました。その環境に慣れ初めていた頃、鷲崎健さんがやっていらっしゃる番組「アコギFUN!クラブ」に呼んでいただき、久しぶりに生演奏で好きな曲を思いきり歌うことができました。それが本当に楽しくって! 自分が歌いたいように歌う事ってこんなに気持ちいいんだって。それから「もっとライブがしたい」と思うようになりました。

――アーティストデビューとまではいかずとも、まずは歌うことへの意欲が湧いたわけですね。

 そうです。……今だから笑い話としてお話できますが、私的には「アコギFUN!クラブ」での歌唱にすごく手ごたえを感じていたので、「青山さん、ライブやりませんか?」って色々な人からオファーが来ると思っていたんですよ(笑)。でも、結局は誰からも声がかからず。もう悔しくて、悔しくて! それでも諦めず、むしろ「お前ら見とけよ」と気持ちを新たに、自分でライブを作る決心をしました。

――覚悟、負けん気、行動力がすごい!

 とはいえ、ライブの作り方なんて分からないし、どうすればいいんだろうといきなり壁にぶつかりまして。露頭に迷いそうになったとき、救世主となったのが、WUGをずっと支えてくださっていたギタリストさんでした。ある日その方が、私のTwitterをフォローしてくださっているのを発見したんです。もう2年ほどお会いしていなかったので、改めてお礼を言いたいなと思って感謝のDMを送りました。そしたら、「今もWUGの曲聞いていました。何かあったら言ってください」と返事をくださったんです。それで、「これはもしかしたら……」と思いまして。

――おぉ。

 ダメ元で「実はライブを作りたいと思っていまして。助けてください」と送ったら、「ぜひ。こっちで巻き取らせてください」とすぐにお返事をくださいました。そうしてライブに向けてのミーティングをやったのが、昨年の3月くらい。そこからライブ制作を進めていきました。その中で「せっかくならオリジナル曲を作りたいよね」と提案いただき、作りましょうというお話になって。そのときに出会ったのが、今回デビューのお話をいただいたテイチクエンタテインメントの担当者さんでした。

――そこに繋がってくるんですね!

 そうなんです。それで「オリジナル曲を作るならリリースしたほうがよくない?」という話になり、私も「確かに、そうかも」と乗り気になって。青山吉能で曲を出す=ソロアーティストデビューという事実には、後から気が付きました(笑)。長々とここに至るまでの経緯をお話してきましたが、実は「ソロアーティストとしてデビューしたい」と思った訳ではなくて、あくまで自分がやりたいと思っていたライブの延長線上にデビューがあったという感じなんです。

――気持ちが変化したというよりも、あれよ、あれよと話が進んでいった。

 それだけに、「大丈夫かな」という気持ちは正直拭えませんでした。ただ、昨年の12月に開催したライブでソロアーティストとしてデビューすることを発表したとき、自分が想像していたよりもファンの方々が喜んでくれたんですよ。目視で110人は確実に喜んでいましたし、SNSでエゴサをしたらたくさんの方が祝福をしてくれていました。こんなに喜んでくれる人がいるなら、もう頑張るしかないなと。私を応援してくれているみなさんが、後押ししてくれたんです。

――みなさんが期待してくれるから頑張れる。

 はい。12月のライブは一人で歌ったのですが、本当に楽しかったです。私と同じ、もしくはそれ以上に楽しんでくださる方々のいる空間がすごく心地よくって。ずっと不安でしたが、今は自信をもって、アーティスト・青山吉能の歌をお届けしたいという気持ちでいっぱいですね。

「真っ白なページ」というイメージから紡がれた言葉たち

――続けて、オリジナル曲でありデビューシングルとなる「Page」についてのお話を聞かせてください。今回、作詞も担当されていますが詞にはどのような想いを込めましたか?

 曲のデモを聞いたとき、爽やかで「始まり」を想起させると感じたんです。だから、朝や太陽というのが似合いそうだなと何となく思ってはいたのですが、私は夜型人間でして……。朝は基本的に起きていないので、その気持ち良さをあんまり体感していなかったんですよ。今のまま「朝」や「太陽」を歌詞にすると嘘になっちゃう、とはいえ闇に染まった夜なんて、この曲には合わない。だったら朝起きて、実際に体験してみようと思ったんです。

――発想の転換ですね。

 はい。朝起きて窓を開けてみたら太陽が眩しくて、景色も何だか綺麗に見えました。最高でした。何事もやってみないと分からないですね。

――ということは、今回は実体験を元に作詞をしている?

 そうですね。例えばDメロは、私がとある仕事の帰り道で「今日も変な空気にしてしまった。才能ないわー」と落ち込んでいた気持ちを「ダメだ、ダメだ!」と振り切って走った経験を言葉にしています。

――なるほど。

 あとは、「濁る」という表現にもこだわりました。この曲を聞いたとき「真っ白なページ」という単語が最初に思い浮かび、それを連想させる本・色・描くというテーマで詞を書いていこうと思ったんです。だから、Dメロの部分は「重い足取り」でも意味は通じると思うのですが、あえて「濁る」という表現にしました。

――「重さ」を色が「濁る」という形で表現した。

 そうですね。この言葉を思いついたとき、私って才能あるなと……思ったんだよねー! ……本当に大丈夫だったのかな(笑)。でも、スタッフさんが厳しく見たとおっしゃっていたので、その言葉を信じています。

――詞の中には「未完成のままでいい」という言葉が二度出てきますね。

 ラストの「未完成のままでいい」ですが、最初は「未完成のままがいい」だったんですよ。ただ、「ままがいい」だと、完成しないほうがいいというニュアンスで伝わっちゃう気がして。とはいえ、完成しないとダメというのも違う。だから最後も「ままでいい」という言葉にしたくって。ここはスタッフさんと揉めました。最後だから言い切ったほうがいいという話にもなったんですけど……。

――スタッフさんと協議をして、最終的に「ままでいい」になった。

 はい。実は歌詞を変えたいと言ったのが、レコーディングが残りコーラス録りだけというタイミングでして。つまりは、一度レコーディングしていたのに、歌詞を変えたいと言っちゃったんです。

――えっ!?

 3月9日にリリースするなら、レコーディングをもう終えていないといけない状況にも関わらず、歌詞を変えたい、何ならぜんぶ録り直したいと言っちゃったんですよね。

――それは、スタッフさんも驚きますよね。

 「今言う!?」という感じでした(笑)。ただ、最初にレコーディングしたとき、どうやら私が納得していない空気を全身から醸し出していたらしく。それを感じ取ってくださったスタッフさんが、「別に青山さんを喜ばせるために仕事をしている訳ではないけど、録り終えた後に実は嫌だったと思われるのが、僕はいちばんよくないと思っている。アーティストとして今後やっていくうえで青山さんにとってもよくない。残された時間でベストを尽くすから、ぜんぶ言って」と、厳しくも前向きな言葉をかけてくれたんです。

――スタッフさんも本気で向き合ってくれたんですね。

 本当に、ありがたい限りです。ぜんぶ録り直したあとにスタッフさんからは「声の表情が変わった。晴れやかな気持ちで、向こう側を見て歌えている感じになった」と言ってもらえました。私自身も、見違えるように変わったと感じています。

――もしかすると、一度歌ったことで吹っ切ることができたのかも。

 そうですね。一度目のレコーディングで「青山吉能はこういう歌い方なんだ」ということを知れたのは大きかったかもしれません。

――タイトルの「Page」はどのように決まりましたか?

 最初に思い浮かんできたのが「真っ白なページ」という言葉だったこと、また、私の好きな合唱曲からインスピレーションを受けて、このタイトルに決めました。あえて英語にしたのは、歌詞に一度も英語が出てこないから(笑)。これは意図的ではなく、私が英語の詞を思いつかなかっただけなんです。それが恥ずかしかったので、タイトルだけでも英語にしようと思って、「Page」にしました(笑)。私の語彙力のなさが経緯ではありますが、気に入っています!

――ついに「Page」がリリースされましたが、今後はどんな活動をしていきたいですか?

 青山吉能として、フェスに出てみたいですね。フェスに来るお客さんとなれば、私のことを知らない方もたくさんいらっしゃると思います。そんな方々に青山吉能をどう受け取ってもらえるのかを知りたい。挑戦したいんですよね。「全然聞いていなかったわ」という感想も「めっちゃよかったわ」という感想も、どちらも愛おしい。受け止めて、進化していきたいです。

――本日は貴重なお話ありがとうございました。最後に、青山さんにとって「音楽」と「声優」がどういう存在になっているのか教えてください。

 ずっと変わらず「好きなもの」ですね。歌うこともお芝居もずっと好きです。そのふたつで誰かに褒められることも大好きです。「このキャラクターの声が青山さんでよかった」は、私にとって最高の誉め言葉。その言葉を聞くために生きていると言っても過言ではありません。音楽活動においては「この曲に出会えてよかった」「背中を押されました」という言葉を貰えたら本当に嬉しい。これから、そういう声をたくさんいただけるよう、アーティスト活動を頑張っていきたいですね。

取材・執筆/M.TOKU

プロフィール
青山吉能
(あおやま・よしの) 月15日生まれ。熊本県出身。81プロデュース所属。主な出演作は『ぼっち・ざ・ろっく!』後藤ひとり役、『恋愛暴君』グリ役、『社長、バトルの時間です!』マコト役ほか

「Page」リリース情報
2022年3月9日より配信中

《M.TOKU》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集