「まさか、主人公と同じ気持ちの方が目の前にいるとは」和氣あず未コンセプトアルバムに登場する過去の恋愛を引きずる男にライターが激しく同意した件【インタビュー】 | 超!アニメディア

「まさか、主人公と同じ気持ちの方が目の前にいるとは」和氣あず未コンセプトアルバムに登場する過去の恋愛を引きずる男にライターが激しく同意した件【インタビュー】

コンセプトアルバム『STAY BEAUTIFUL STAY BEAUTIFUL』をリリースする和氣あず未さんにインタビュー。

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 アーティストとしても活動する声優の和氣あず未さんが、2022年11月30日(水)にコンセプトアルバム『STAY BEAUTIFUL STAY BEAUTIFUL』をリリースする。本アルバムのコンセプトは「青春の煌めき」。とある男を主人公とした恋愛物語が、5曲の歌として綴られているという。そんな物語の始まりから結末までについて、お話を聞いた。


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[取材・文:M.TOKU]

コンセプトアルバムの主人公は「俺、最強男子」

――アーティストデビューしてからCDリリースやライブなど、コンスタントに活動をされているという印象をうけます。デビュー当時と比べて、音楽活動への向き合い方は変わっていますか?

 もともと歌が得意というわけではなかったので、デビューしてからしばらくは「どうやって歌えばいいんだろう」と深く考えて、悩むことが多かったんです。それでも、色々な方に支えられながら活動をしてきて、気が付けば和氣あず未名義の曲が30を超えていて。そうしていくうちに「こういう曲調はこうやって歌えばいいんだろうな」と、徐々につかめてきました。もちろん、今も悩むことはありますが「どうすればいいのか全く分からない」ということはなくなった気がします。

――デビュー当時にお話を聞いたときは、「アーティスト活動は受け身です」とはっきりおっしゃられていて、その1年後にお話を聞いたときは「ちょっとずつ自分から意見を出せるようになった」と言葉にされていました。

 この前開催したアコースティックライブは、私から「やりたいです」とスタッフさんに伝えて実現したものなんです。まさか、自分から音楽活動に関して「やりたい」なんて言葉が出てくるとは。変わったなと思います。

――以前の自分では想像ができなかった。

 はい。カラオケでよくボーカロイドの曲を歌っていたのですが、それもテンションと早口で乗り切っていました(笑)。そんな私がアコースティックライブをやったり、ゆったり聞かせるバラード曲を歌ったりするなんて。最近はむしろそういう曲のほうが歌いやすいんじゃないかと思うくらいになりました。

――色々な方から曲を提供してもらい、歌のディレクションをしてもらうなかで新しい自分を発見できた。

 ですね。「自分でもできる、歌えるんだ」と思えば思うほど、歌うことを楽しめるようになりました。

――コンセプトアルバムについてお聞かせください。今回のコンセプトは「青春の煌めき」ですね。

 今までのシングルやアルバムも恋愛・夢・時間など色々なテーマがありましたが、今回はいつもより大きな世界観がコンセプトになっている気がします。今回のアルバムはある男の子が主人公。私は何かを演じるのが好きで、今までもその曲の主人公を想像し、その人物の気持ちを考えながら歌ってきました。今回は男の子が主人公ですが共感できる部分もあったので、いつも通り物語や主人公の気持ちを想像しながら歌っています。

――各楽曲についてお話を聞かせてください。まずは「君と雷鳴の道を」。

 物語のスタートです。主人公の年齢は19歳。怖いもの知らずで、「人と同じ道を歩むのや嫌だ」「俺たちが道を切り開くんだ」と思っている、無敵状態の男の子ですね。「君」という彼女が出てくるのですが、その子を引っ張っていくような強引さもあって。でも、彼女も笑顔がキラキラで無邪気に楽しんでいる。歌うときも幸せそうなふたりをイメージしました。

――男の子が主人公の曲ということですが、レコーディングはいかがでしたか。

 主人公は男の子なのですが、だからって男の子過ぎるのはちょっと違うかなと思い、和氣あず未として歌うことがブレないよう意識しました。とはいえ、男の子のニュアンスは入れたかったので、歌い方はいつもよりアクセント強めでちょっと荒々しいですね。

――主人公が男の子でも、男になって歌うわけではない。そこはキャラクターソングとの違いかもしれません。

 そうですね。「男の子の声で歌って」と言われたらできたと思いますが、和氣あず未としての楽曲なので、そこは自分らしさも残さないと。

――続いて、「僕があじゅじゅと恋をする」。

 19歳の男の子が21歳になりました。いちばん自信に満ち溢れています。このタイトルからも分かる通り「君」というのはあじゅじゅのことでした(笑)。21歳になった主人公は、小生意気で強制的な感じで、「あじゅじゅが僕と恋をするんだ」とぐいぐい引っ張っています。相変わらずの最強感がありますね。

――歌詞を拝見しましたが、今のところ人生が上手くいっているのかなと。

 スタッフさん曰く、怖いもの知らずの若者。「俺だったら何もかも叶う」と信じているのかもしれません。「君」はどう思っているのかなぁ。「君と雷鳴の道を」の「君」は本当に無邪気だったのに、この曲ではそういう様子が描かれていなくて。

――確かに。主人公が聞く耳を持っていないというか、周りが見えていないのかも。

 そうかもしれないですね。「俺が最強だよな」と言われて、「……うん!」って「君」がうなずいているみたいな会話が浮かんできます。彼女が傍にいることが当たり前になっちゃっているのかも。

――そんな「俺、最強」の主人公と彼女の関係は、3曲目「永遠を一歩降りて」ではどうなっていますか。

 初めて曲を聞いたときは「すごく幸せになっているじゃん」と思いました。歌詞もすごくあたたかくて素敵な言葉が並べられていたので、私もその気持ちで「最高の愛、永遠の愛」を届ける気持ちで歌いました。そしたらディレクションで「ちょっと切なさや悲しみを入れて欲しい」って言われて。私は「何で!?」と思いましたが、「幸せ過ぎて逆に怖いのかな。上手くいきすぎて不安なのかも」と考えて、切なさを乗せて歌いました。

――4、5曲目で主人公たちがどうなるのか知らない状態でレコーディングされたんですね。

 でも、そのほうが逆にありがたかったかも。主人公はこれから何が起きるかわかっていないのに私が先のことを知っちゃったら、そういう歌い方になってしまったと思います。この曲の主人公は22歳。「君」とふたりだけの世界になっちゃって、ほかの世界を拒絶しているんですよ。少し前までは周りが見えていなかった主人公でしたが、やっぱり彼女のことが大事だと気が付いたのかも。この段階では、いちばん大事なものが「君」になっているのかもしれません。

――3曲目の段階では、「君」は幸せ?

 私は幸せな気持ちだと思っていたんですよ。歌詞を見たとき「こんなに愛されているなんて、素敵じゃん!」って。だから、私はただただ幸せな歌だと“思っていました”。

――含みがありますね(笑)。

 はい(笑)。もしかしたら主人公はふたりだけの世界でよかったのかもしれません。ただ、彼女はもっと広い世界を見たいと思っていたのかも。そう考えると、このタイトルって深いなと思いました。

わかっていても、気持ちを捨てきれない

――その流れからの4曲目「僕たちはいつもさよならと言っている」。

 主人公の年齢は24歳。前回から2年後に訪れたのは、突然の別れでした。ショックです。3曲目の「切ない」というディレクションから嫌な予感はしていたのですが……。大人になってから、ちょっとしたすれ違いがあったのかもしれません。「君」から別れを告げられたとき、主人公は何が悪かったのか分からなかったんじゃないかな。でも、神様に願うくらい元の関係に戻りたいとは思っている。寂しくて、切ないですね。

――主人公の視点からすれば、突然だったんでしょうね。

 たぶん彼女は前々から雰囲気を出していたんですよ。それに気が付けなかったんだろうなぁ。男性は女性よりも恋愛のことで鈍感だと聞いたことがありますが、この主人公はまさにそうなのかも。

――ほんとうに気が付けない人間がこの世の中にはいるんですよ。私がそうです。

 えっ、そうなんですか!

――大学生の頃から付き合っていた彼女から、ある日水族館に誘われて。ふつうにデートだと思っていたら、その帰り道に別れを告げられました。全く気付いてなかったです。私としては突然でした。だから、この主人公の気持ち、めちゃくちゃ分かるんです。

 そうなんですね! 女の子は相手が冷めてきちゃっているんだろうなって気が付く人が多い気がします。

――この主人公は夢や希望に向かって突き進むタイプな気がするので、余計に気が付けなかったのかも。

 彼女の意見や気持ちに耳を傾けられなくて、僕が愛しているから君も愛してくれているよねって一方的な気持ちになっちゃったのかなぁ。

――そうなのかもしれません……。歌うとき、気持ちの入り方は違いましたか?

 主人公は過去の楽しい思い出を振り返りながらも、後悔していると感じたので、その気持ちを歌に乗せました。歌っているときはこれまでとは異なり寂しかったですね。よりその気持ちを感じたのはMVを撮っているときかも。切なく、苦しくなっちゃいました。

――改めて、MVがどのような内容になっているのか教えてください。

 MVでは暗い部屋で電気をつける余裕もなく、感傷に浸っている主人公を私が演じています。部屋のなかには彼女とおそろいだったらしきものや香水などが所々に残っていて。それらを捨てきれないでいるんですよね。今回のMVでは泣くシーンがあって。人前で泣くことができるかなと不安でしたが、好きな人が事故に遭っちゃったとか、親の突然の別れを想像して、優しいあたたかい音楽プロデューサーの井上さんの過去の辛い失恋話も聞いて気持ちを作ったら、涙が出てきました。ちなみに、初回限定盤のモコモコの服を着ている私が「君」、通常盤のボーダー服を着ている私が「主人公」なんですよ。

――ジャケットの表情に注目してみると、新しい気付きがあるかもしれません。今回はいつも以上に役者としての和氣さんが感じられるMVやジャケットになっているんですね。

 そうかもしれません。難しかったです。声でお芝居をするのはすごく好きだし、得意だとも思っていたのですが、動いてお芝居をするのは勝手が違いました。コップをひとつ倒すだけでも、「あれ、いつもどうやって倒していたんだろう」って考えこんじゃって。

――意識すればするほど、「どうやってたんだっけ」って悩んじゃうというか。

 そうなんですよ! 自然に見えるようにしようと思うと、逆に不自然になっちゃって。

――和氣さんにとってもチャレンジとなったMVがどのような仕上がりになっているのか、楽しみです。

 ありがとうございます。

――アルバムを締めくくるのは、「帰り道が見えない」。

 主人公の年齢は28歳。今の私と同じくらいの年齢になりました。前回から4年が経ちましたが、まだ彼女への思いを引きずっています。当時のことを思い出しながら、「でも君は戻ってこないんだよな」って悲しみに暮れていて。「君」ともう一度お付き合いできる希望がないと分かっているのに、でも気持ちを捨てきれないんです。もしかしたら、彼女は別の素敵な人と出会って、主人公のことは忘れちゃっているかもしれない。それでも、男性って引きずっちゃうんですかね?

――引きずっちゃうんだと思います。

 説得力がある!

――この主人公に共感しっぱなしです。私も、初恋の相手のことを引きずっちゃっていまして。もう絶対に戻ってこないって分かっているのに。馬鹿ですよね。

 私も友達から「1回でも自分のことを好きになってくれた人だから、またいつか好きになってくれるかもしれないって希望を持っている男の人もいる」って言われたことがあります。新しい人との出会いで考え方が変わる方もいると思いますが、この主人公はそれができないのかもしれません。

――気持ちの整理がついていないのかも。

 捨てきれない思い出があるから、前に進めず、気持ちが変わらず数年間を過ごしているんでしょうね。

――物語の続きが気になります。

 確かに。この曲がアルバム収録曲の最後になりますが、主人公は「前を向いて生きていこう」ではなくて、「ひとりで夢の続きを」って言っちゃっているんですよ。たぶん、この後しばらくは吹っ切れることはない気がします。

――個人的には、そこにリアリティがあると感じました。吹っ切れてここから頑張ろうぜにすぐになれないのは、共感できます。

 そうなんですね。主人公と同じ気持ちの方が、まさか目の前にいらっしゃるとは(笑)。

――いました(笑)。こちらのレコーディングはいかがでしたか?

 実は作曲の「habana」さんというのは、音楽プロデューサーの井上さんのことでして。井上さんはコンセプトアルバムの終わり方について、ご自身のなかでイメージがあったそうです。井上さんの曲を歌えるのはうれしかったのですが、それだけ思いがこもった曲だと聞くと、レコーディングのときに緊張しちゃって。プレッシャーを感じながらではありましたが、しっかりと気持ちを込めて歌いました。

――今回のコンセプトが「青春の煌めき」ですが、これまで見た作品で和氣さんが「青春の煌めき」を感じたアニメは?

 私の青春は『けいおん!』なんですよね。ちょうど中高生くらいのときに見ていたアニメで、今でも『けいおん!』の音楽を聴くと涙が出ちゃいます。私にとっての青春アニメですね!

――本日は色々なお話ありがとうございました。最後に、2023年の目標を教えてください。

 2023年2月に2ndライブを行います。まずはそれに向けて頑張っていきます。1stライブのときも色々な曲を披露しましたが、まだライブで歌えていない曲もあるんですよ。もちろん、今回のコンセプトアルバムの曲は歌いますが、一度も披露できていないアニメタイアップ曲なども歌えたらいいな。セットリストをまだ組んでいないので、私もどんなライブになるのか楽しみです!

コンセプトアルバム『STAY BEAUTIFUL STAY BEAUTIFUL』
【発売日】11月30日(水)
【価格】
初回限定盤(CD+DVD):3,300円(税込)
通常盤(CD):2,640(税込)
【CD収録内容】
1.君と雷鳴の道を
2.僕があじゅじゅと恋をする
3.永遠を一歩降りて
4.僕たちはいつもさよならと言っている
5.帰り道が見えない
6.君と雷鳴の道を(Instrumental)
7.僕があじゅじゅと恋をする(Instrumental)
8.永遠を一歩降りて(Instrumental)
9.僕たちはいつもさよならと言っている(Instrumental)
10.帰り道が見えない(Instrumental)
【DVD収録内容】
「僕たちはいつもさよならと言っている」ミュージックビデオ+メイキング

《M.TOKU》
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