アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。
2022年12月号には、秋アニメ『恋愛フロップス』のOPテーマ「Love? Reason why!!」をリリースした鈴木このみが登場。
本稿では、本誌で紹介できなかった部分も含めたロングインタビューをお届けする。
かわいさに全振りしつつ自然体でもある表題曲
――表題曲の「Love? Reason why!!」は、とてもポップでかわいい楽曲ですね。
ついにこんなにかわいい曲を歌う日が来たのかという、不思議な感覚がありました。楽曲についてはQ-MHzさんと「恋愛ど真ん中の曲」という話をしていたのですが、私はずっと恥ずかしくてもじもじしていたんですね。それをみなさんが汲み取ってくださって、歌詞にソワソワするくらいかわいいワードがたくさん盛り込まれていました。
――レコーディングにはどのような気持ちで挑みましたか？
レコーディングは田代智一さんがディレクションをしてくれたのですが、「好きって言っておきながら逃げちゃう女の子のイメージ」「強いことを言っているけど、告白を待っている」と言われてイメージが浮かびやすく、自然体で歌うことができました。
――いい意味で力が抜けた歌声に感じました。
油断すると歌声で圧をかけちゃうので、力を抜くことを心がけたのですが、慣れるまでは大変でした。サビ前の1行は力強く歌えてしまう音域だったこともあって、最初に歌ったあと田代さんから「内股気味にお願いできますか？」と言われたんです。いつもの鈴木このみで歌うと、女の子のかわいい強引さが表現できず、本気で胸ぐらをつかみにいっているようになっちゃうんですね（笑）。その力加減をつかむまでは、難しさもありました。
――先ほどお話に出ましたが、歌詞がとにかくかわいいですよね。
じつは、レコーディングが終わったいまでも恥ずかしさがあるんです。いままでアニメのイベントなどで、声優さんやキャラクターたちから「かわいい成分」をたくさんもらったのに、いざ自分が出す側になるとこんなに難しいんだとしみじみ感じました。でも、ここ数年はドシッと立って「みんなついてきなさい！」みたいな楽曲が多かったので、今回の曲は新鮮な気持ちで歌えました。
――曲中、セリフのようなパートもありますよね。
そのパートは何回も録り直しました。耳元でささやいてみたり、大げさな感じで言ってみたりもしたのですが、最終的にライブで言っている雰囲気のテイクが採用されました。「ライブをイメージしてみて」というディレクションに合わせてみたら、急に自信が出て恥ずかしさが吹っ飛んだんです。それまでは普段着ない服を一生懸命背伸びして着ている気持ちだったのが、すんなりと自分のなかに落とし込めて、すごく不思議な感覚でした。
――とくに聞いてほしいポイントは？
1番サビ、2番サビ、ラストのサビに同じ歌詞があるんですが、その部分の歌い方をすべて変えています。1番は気になる人にもじもじしながら、2番は「なんで言ってくれないの」とすねながら、そして最後は少し吐息を多めに、相手との距離が詰まった部分が出せたので、自然とそういう歌い方ができたことがうれしかったです。それから、恋と愛の真ん中について書かれた歌詞は青春感、甘酸っぱさがあって好きです。キュンキュンするなかにもほんの少しの切なさがスパイスとしてあるところもこの曲の魅力ですね。
――鈴木さんはデビュー曲の「CHOIR JAIL」で畑亜貴さん、田代さんから詞・曲提供をされていますよね。
「CHOIR JAIL」は15歳のときの曲なのですが、あんなにゴリゴリにダークな曲を歌っていたのが、25歳で急にポップになったのも我ながら意外でした。私の歴史を感じていただける1曲にもなっているかもしれません。
――カップリング曲の「Secret Code」は、大人びた雰囲気です。
じつは、「Secret Code」はカップリング用ではなく、もともと別で制作が進んでいたんです。夜の街が似合うひんやりとした空気感の曲を歌いたいという思いで作っていたのですが、この曲はあなたにだけ私の秘密を明かすといったテーマなので、真っ直ぐ想いを伝える表題曲と合うのではないかということでカップリングに採用しました。
――この曲は、ひとり言を呟いているようにも感じられますね。
そうですね。人間っていろいろな顔を持っていたとしても、全部が自分自身だし、この曲はいつかそのすべてをあなただけに見せられたらと、ひとりで夜ぼんやり考えている空気感を伝えるような曲なので、ひとりっぽさは出ていると思います。リズムの取り方や歌い方をいつもと変えてみたりと、この曲でしかできないアプローチもたくさんしたので、レコーディングがとても印象に残っています。この曲の主人公は、伝えたいけど伝えられない、でもわかってほしい。だけど誤解もされたくないと、グルグル考えているような子なんです。誰しもそんな気持ちを抱えたことがあると思うので、その空気感を表現できたらと思いながら歌いました。
――この2曲でまさに恋を表現した1枚になったんですね。
本当にその通りです。表題曲はど真ん中の弾ける恋心を、カップリング曲では大事な人のことを思った気持ちを表現して歌えました。1枚に収録することになったのは偶然ですが、運命的な1枚になったなと感じています。
――ジャケットは、ピンクの稲妻が印象的です。
稲妻に撃たれて感電しちゃうような、そんな一瞬のきらめきみたいなものが表現できたらと思い、やわらかな印象ではなくあえてビリビリした感じのものを選びました。
――今年も残り2か月ほどになりましたが、どんな1年でしたか？
今年は『Animelo Summer Live 2022 -Sparkle-』の1日目でトリを務めさせてもらい、初めて認められたような気持ちにもなりました。たくさん期待をかけてもらい、たくさんの人に育ててもらっている歌手人生なのですが、ようやく自分のことを少し認められた瞬間を迎えられたような気がしています。今年はまだまだイベントにも出させていただくので、あっという間に終わっていそうですね。来年の4月まではデビュー10周年記念イヤーなので、それを背負いきって、その先の11周年はやっぱり色んな場所で歌っていきたいですし、また新鮮な気持ちで飛び込んでいきたいですね。
――では、最後に読者にメッセージをお願いします。
今回のシングルは恋愛ど真ん中で、女の子はもちろん、男の子も持っているであろう“乙女心”をくすぐるような楽曲になりました。気持ちをパッと弾けさせてくれる曲ですので、ぜひたくさん聞いて、一緒にビリビリと“感電”してください。そして、来年歌手活動11年目を迎えるのですが、デビュー1年目のようなまっさらな気持ちでワクワクしていますので、ぜひこれから先の道もお供していただけたらうれしいです。
取材・文／野下奈生（アイプランニング）
鈴木このみ（すずき・このみ）／11月5日生まれ。大阪府出身。2011年に「第5回全日本アニソングランプリ決勝大会」でグランプリを獲得し、2012年にシングル「CHOIR JAIR」でデビュー。2022年はアーティスト活動10周年イヤーとして、ベストアルバム『ULTRA FLASH』をリリースするなど、精力的に活動中。
■Information
12月9～11日にかけて京都ロームシアターメインホールで開催されるアニメミュージックフェス「京（みやこ）Premium Live 2022」の12月10日公演に出演が決定。公演詳細などは、ライブオフィシャルサイトをチェック。
■Love? Reason why!!
発売中
KADOKAWA
1320円（税込）
表題曲はテレビアニメ『恋愛フロップス』のOPテーマ。音楽プロデュースチーム・Q-MHzが手がけたポップな楽曲に乗せて「好きだけど、告白は相手からしてもらいたい」という複雑な乙女心を歌い上げる。カップリングの「Secret Code」はESME MORIが作詞、作編曲を担当する大人っぽさを感じさせるナンバーだ。
