『東京リベンジャーズ』橘日向役、『ウマ娘 プリティーダービー』スペシャルウィーク役など、様々な作品を声で彩る声優の和氣あず未。2020年1月に1stシングルをリリースしアーティストデビューした彼女は、これまで3枚のシングル、1枚のアルバムをリリース。そして、2021年6月16日(水)に4枚目となるシングル「Viewtiful Days! /記憶に恋をした」を発売する。これまでのインタビューで和氣さんは、どの楽曲においても「物語」や「主人公」を思い浮かべてきたと言葉にしていた。そこで今回は、4枚に収録されるシングル4曲の聞きどころをお話してもらいつつ、その中の1曲から想像する「主人公像」を、実際にイラスト化してもらえないか交渉。快諾してくださった和氣先生のイラスト、そして楽曲にご期待ください。
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「帰りたいなぁ」という気持ちの変化
――デビューしてから今回で4枚目のシングル、そしてアルバムも1枚リリースされ、和氣さんの持ち歌も気が付けば26曲になりました。
実はデビューする前の打ち合わせで、音楽プロデューサーさんからどれくらいのペースでリリースをしていく、というお話は聞いていたんですよ。その時からハイペースな気はしていたのですが、デビューする前はそんなにアーティスト活動や音楽業界のことに詳しくなかったので、「こんなものなのかな?」と思っていました。ただ、シングル1枚で4曲入るリリースが続いていくなかで、周りの方や応援してくださっている皆さんから「ヤバくない?」と言われることも増え、同時期にデビューした声優のお友達と比べても曲数が多いので、やっぱりペース早かったんだと実感が湧いていきました。そして、気が付けば今回で26曲。1年半くらいの間でこれだけ増えたことに驚いています。ただ、これだけの曲数を歌えたのは、音楽プロデューサーさんが私に「こういう曲も歌って欲しい」と思ってくださったからですよね。それが、すごく嬉しいんです。
――曲数が増えるごとに、歌が好きという気持ちも増している。
そうですね。まだ得意ではありませんが、今は歌うことがすごく楽しいですね。最初のレコーディングのときは声が出ないくらい緊張していて、「やっぱり、歌は苦手だな」と思っていました。
――和氣さんに最初にお話を聞いたとき、「歌にはトラウマがある」とおっしゃられていましたもんね。
はい。でも最近はリラックスした状態で歌えるようになっていますし、楽曲をもらうのが楽しみになってきていて。楽曲をもらってから一度リハーサルをし、そこでディレクションをしてもらってから本番のレコーディングに後日臨むことが多いのですが、その本番までの練習期間がいまはすごく充実しています。不思議ですよね。以前はレコーディングする前にお腹が痛くなって、向かう途中の電車のなかで「帰りたいなぁ」と思うくらい緊張して、苦手意識もあったのに。今では難しくて歌えない部分があって悩むことなどはあれども、「嫌だな」という気持ちよりかは「悔しかったらから次はこうやって歌うぞ」という気持ちになれるんです。
――ポジティブですね。
元々の性格はすごくネガティブなんですけどね(笑)。一度苦手だと思ったら次はやりたくない、失敗するくらいならやらないほうがいいというくらいでした。ただ、それは仕事を始めてから徐々に変わっていったかもしれません。特に声優業に関しては、オーディションに落ちて悔しい気持ちになることはあれども、「次に頑張ろう」って気持ちになるんです。
――声優は元々やりたいことだったから、最初からポジティブな気持ちになれていた。
そうかもしれません。最近はアーティスト活動も声優業と同じくらいポジティブな気持ちで向き合えています。何事も経験を重ねることは大事だなと思いました。
毎日平和に暮らすのが好き
――そんなポジティブな気持ちになれている和氣さん。リリースとなる4thシングルにも4曲が収録されていますので、それぞれの楽曲について教えてください。まずは「Viewtiful Days!」から。
そもそも、今回収録されている4曲は「日常」をテーマにした曲たちなんですよ。なかでもこの曲の歌詞は1日、1日を平和に、穏やかに過ごして、次の日成長していよう、という前向きな気持ちを表現しています。私も毎日平和に暮らすのが好きなので、とても考え方が似ているなと思いました(笑)。また、この曲はTVアニメ『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』のEDテーマ曲なのですが、作品の世界観ともすごくマッチしているなと感じています。
――どの点が作品とマッチしていると思いますか?
アニメのストーリーが前世で過労死してしまった主人公の梓さんが、異世界に転生してアズサ・アイザワとしてスローライフを楽しむというものなんです。そのスローライフ感や作品の穏やかな雰囲気がマッチしていると思いました。
――そういう意味では、和氣さんも主人公アズサと似ている部分がある?
穏やかに暮らしたいという気持ちはすごく共感できます。作品の世界観にもすごく憧れがありますね。もちろん、忙しいことが幸せだと思うこともありますし、仕事を終えたときの達成感はかけがえのないものですが、休日におうちでゴロゴロする時間が至福なんですよね(笑)。「Viewtiful Days!」はそういった何でもない1日を素敵な日にしていこうという歌でもあるので、私にピッタリな一曲だと思います。
――初回限定盤には、本曲のMVが収録されたDVDが同梱されます。今回はどのようなMVに仕上がっていますか?
料理・ヨガ・ガーデニングなど、おうちでできることを私がやっているというMVです。私が普段はやらないような、女子っぽいものをたくさん用意してもらいました。
――料理などはやらない?
料理、全くしないです。2020年の自粛期間中にチャレンジしてみたことはあるのですが、皿洗いが面倒くさくて。家事のなかで皿洗いがいちばん嫌いなんですよ。食べ終わって満腹で幸せってなっているときに片付けないといけないと考えると、テンションが下がっちゃって。だから、「出前なら片付けしなくていいから、もう料理しなくていいじゃん」ってなってしまいました(笑)。MVでやっていることでいえば、ヨガもやらないですし、観葉植物を買ってもベランダに放置しっぱなしでお母さんに回収されてしまいましたし……。面倒くさがりなんです(笑)。
――なるほど(笑)。
今回のMVでわたわたしながら料理を作っていますが、それはわりとふだんの私だと思ってもらって大丈夫です。スタッフさんにどうすればいいか聞きながら、それとなしに料理をしています。そういう意味では、素の私が今まで以上に見られるんじゃないかな。これまでのMVは決め顔をしたり、内容に沿った表情を作ったりしながら撮影することが多かったですが、今回はもうカメラ回しっぱなしで使えるテイクをチョイスして使ってもらっているんです。あんまり自分の爆笑した顔が好きではないので、おすまし顔することが多いのですが、今回はそういった表情が見られます。焦っている顔や困っている顔などもしていますが、今までのなかでいちばん楽しそうな顔になっている気はします。そこが見どころかな。
「日常」はポジティブなことばかりではない
――続いては「2030」。
この曲は、2020年・2021年だからこそ生まれた曲です。「口元隠して恋をするなんて」という、マスクをして恋をしていることを連想させるようなフレーズが使われているのが特徴ですね。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために色々なことが制限されている今の状況。早く終わって欲しいなと思っている人がほとんどだと思います。ただ、この主人公はそういうネガティブな気持ちではなく、この時期だからこそポジティブに生きなきゃと思っているんです。好きな「彼」になかなか会えない、だから、次に会うまでは「彼」がより好きになる自分になっていよう、いつか完全にマスクを取って前みたいに何気なく会えるようになったら、何を着て「彼」と会おうかなと想像している。ものすごくポジティブな気持ちでいる主人公を私も見習わないといけないと思いました。
――そういう意味ではこの曲は「今の日常」を表現している。
そうですね。今の状況だからこそ生まれた「日常の曲」と言えると思います。
――多くの方が、急に一年中マスクを付けて外出する日がくるなんて想像していなかったと思います。
この主人公もきっと想像していなかったと思います。「スケジュールはときめかない」「夜中までドラマを観てる」「アレもコレも楽しくて 時間が足りないのに アレもコレも飽きてきて ダラけてく日曜日」という歌詞からは、予定がなくて暇だということが読み取れます。ただ、こういった「日常」を楽しむ、そしていつか来る“晴れた日”のために、気持ちの面でも準備しておくことは、忘れてはいけないかなと思いました。
――続いて「記憶に恋をした」について。こちらはどのような楽曲でしょうか?
この曲の主人公は、青春時代を共にした「彼」と離れ離れになってしまっています。ただ、「彼」のことをずっと思い続けいるのではなく、夏が来たときに、ふと「彼」のことを思い出す、思い出して切なくなってしまうんです。なぜ会えなくなってしまったのか、一生会えない存在になってしまったのかなどは想像の余地があり、聞く人によって解釈が分かれると思いますが、私は二度と「彼」と会えないのはすごく悲しくて、苦しいなと思ったので、どこかに「彼」はまだいると想像しながら歌いました。彼とは会えないけど、ふと彼のことを思い出して、青春時代のときに「彼」と待ち合わせした駅にちょっと足を運んでみる。だけど、その駅はもうなくなっちゃっているっていう、時の流れを感じてさらに胸が苦しくなっちゃうような曲なんですよね。ふだんは自分のなかにはないけれど、匂いや場所など、何かのきっかけで「懐かしさ」を感じる瞬間ってないですか? きっとこの主人公は、毎年の夏にその「懐かしさ」を感じているんだと思います。
――そういう意味では、毎日ではないけども、毎年来る「日常」を歌っている。
そうですね。主人公にとってふと思い出すのが夏で、それが人生のなかでの「日常」なんだと思います。
――そして、続くのが「hopeless」。
タイトルからも分かる通り「希望なし」という曲です。今まで失恋の曲を歌うことがありましたが、ここまで絶望している歌詞はなかったんじゃないかな。この曲は作詞を金子麻友美さんに書いていただきました。金子さんって、ふだんはとても歌詞を書くペースが速い方なんですよ。ただ、今回は相当悩まれていたとプロデューサーさんから聞きました。それくらい悩まれて出来上がった歌詞は、苦しい状況で胸が痛いはずなのに、それすらも感じないくらいまで絶望しているものでした。歌詞をもらったとき、「誰か早く救ってあげてよ」と思ったくらいです。レコーディングでも、その歌詞に沿って、苦しい、辛いという気持ちを乗せました。ただ、金子さんから「それだと聞いている人が本当に辛くなってしまうかもしれないです。感情を込め過ぎずに歌ったほうがいいかもしれません」とアドバイスしてもらったので、辛さなどは内に秘めながら歌いました。あまり抑揚がなく、ハモリも4つ重ねることで、圧がくるような曲に仕上がったと思います。聞いていてダメージを受けるわけではないですが、「ずーん」とした気持ちにはなるかもしれません。
――この曲の「日常感」というのは?
私も「こんな日常ありますか!?」と最初は思ったのですが、2020年、2021年は何かを失って、希望が見いだせないという方も少なくなかったと思うんです。この曲と同じような気持ちになった方もいらっしゃったかもしれません。「Viewtiful Days!」や「2030」のようなポジティブな「日常」だけじゃ嘘になっちゃうということで、気持ちが重たくなる「hopeless」も今回は入れました。この曲を聞いたら気持ちが沈んだままになってしまうかもしれませんので、また1曲目の「Viewtiful Days!」から聞いてもらい、ポジティブな気持ちになってもらえればと思います!
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和氣先生にイラストを描いてもらった
――今回、そしてこれまでのインタビューでもお話されていましたが、和氣さんは「主人公」や「物語」を想像しながら曲を歌われることが多いです。そこで今回は、4枚目シングルのなかから一曲を選んでいただき、ぜひその曲の主人公をイラスト化していただければと思います!
なるほど! それなら、どの曲にしようかなぁ。……じゃあ、今回は「記憶に恋をした」で!
――分かりました! 色鉛筆・クレヨンなどいくつか用意しましたので、自由に使ってイラストを描いていただければと思います。
あっ、この色鉛筆、金と銀が入っている! 高いやつだー(笑)。
――金と銀の色鉛筆が入ったものって、小さい頃はレア感ありましたよね。
ありましたねー。絵具もあんまり使いたくなかったです。よし、じゃあ今回は鉛筆を使って描きます!
――ちなみに、元々イラストを描くのは好きでしたか?
好きではありますが、特技と言うほどではないです。趣味ですね。
――どういうときによく描いていましたか?
学生時代の授業中(笑)。
――良い子は真似しないでください、のやつですね。
はい(笑)。
――最近もイラストを描く機会はありますか?
演じるキャラクターの誕生日に描くことはありますね。でも基本はペンタブを使って描いているんですよ。デジタルのほうが私には合っていて。デジタルなら間違えてもすぐに修正できますし、目の位置がちょっと嫌だなと思ったら、すぐに場所を変えられるので。
~15分経過~
――(そろそろどうかな)
ふんふふふーん♪(鼻歌を歌いながらイラスト執筆中)。……。はい、できました!!
――おぉ!
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――こちらはどのような主人公像か教えてもらえますか?
まず、この主人公は絶対に清楚な女の子であるべきなんです。なので、ナチュラルめにしたくって。都会にあんまり染まって欲しくないタイプの子です。ピュアで清楚な子というイメージなので、白ワンピースにしました。もっと黒髪にしてもよかったかも。
――白ワンピースは清掃ですね。
それでいて、ロングのゆる内巻きのハーフアップである点は譲れない。あとはあどけない表情をしているのがポイントですね。きっと、上京して都会で暮らしているけども、夏になって田舎の静かな駅に戻って青春時代を共にした「彼」のことを思い出して寂しい気持ちになっているんでしょうね。切ない……。あっ、ちなみにこの子の青春時代の髪型はポニーテールですので。
――もうそこまで設定があるんですね、先生!
もちろんです。
――では年齢はどのくらいでしょうか?
そこは迷っていまして……。イメージでは大学生くらいでいて欲しいのですが、それだと青春時代からそんなに時が経っていないから、まだ引きずっていて当然だと思うんです。だから、勝手なイメージではありますが、私くらいの年齢かな。
――CVはもちろん……?
私ですね(笑)!
――素晴らしい! こちらのイラストは記事で載せさせていただきます。
お願いします!
ご愛読ありがとうございました。和氣先生の次回作にご期待ください。
【プロフィール】
和氣あず未【わき・あずみ】9月8日生まれ。東京都出身。東京俳優生活協同組合所属。主な出演作は、『ウマ娘 プリティーダービー』スペシャルウィーク役、『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』フラットルテ役、『アイドルマスター シンデレラガールズ』片桐早苗役 ほか。
和氣あず未4thシングル「Viewtiful Days!/記憶に恋をした」リリース情報
2021年6月16日(水)発売
【初回限定盤】CD+DVD
【通常盤】CD only
【CD収録内容】
M1 Viewtiful Days! 作詞:坂井竜二 作曲・編曲:持田裕輔
M2 2030 作詞・作曲・編曲:ARAKI
M3 記憶に恋をした 作詞・作曲・編曲:鶴﨑輝一
M4 hopeless 作詞:金子麻友美 作曲・編曲:和音
M5~8 =M1~4のIstrumental
【DVD収録内容】
Viewtifl Days! Music Video
Making Movie
和氣あず未 1st LIVE –超革命的恋する音楽会–イベント情報
公演日:2021年7月18日(日)
昼公演:開場14時/開演15時 夜公演:開場17時30分/開演18時30分
会場:東京・中野サンプラザ
全席指定 6,600円(税込) ※6歳以上チケット必要、6歳未満入場不可
【出演】
和氣あず未
黒須克彦(ベース)
堀崎 翔(ギター)
石井悠也(ドラムス)
紺野紗衣(キーボード)