超!アニメディアでは、初となるアルバム『超革命的恋する日常』を2021年2月17日(水)にリリースする和氣さんを直撃。デビューしてからの一年を振り返ってもらいつつ、「恋」をテーマに制作されたアルバムについて、お話を聞いた。
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私の背中を押してくださる皆さんのために
――アーティストデビュー後、3枚のシングルをリリースした2020年。和氣さんにとって、どのような一年になりましたか?
デビュー時のインタビューでもお答えしていますが、私、歌が得意ではないんです。むしろ苦手でした。キャラクターとして歌うのは好きだったのですが、自分自身で歌うのって本当に難しくって……。だから、最初は悩むことも多く、不安も大きかったんです。ただ、この一年の音楽活動を経て、アーティスト・和氣あず未として歌うのが、どんどん楽しいと思えるようになりました。いい一年でしたね。
――そんな楽しさを感じた一方で、なかなか思ったような活動ができない一年にもなったかと思います。その中で見つけられたこと、学べたことはありましたか?
声優としてのイベントでは、周りにぜったい誰かがいてくれたんです。例えば声優の友達や仲間だったり、キャラクターだったり。ただ、アーティスト活動では、司会の方はいたとしても、“キャスト”としてステージに立っているのは自分だけということが多くって。1stシングルのイベントや、2nd・3rdシングルのオンラインイベントも基本的には私中心で喋っていました。こういう経験を重ねることで、前以上に皆さんと面と向かってお話ができる人間にちょっとはなれた気がして。ちゃんとできている……か、どうかは分かりませんが、自分のなかでは成長したなと思っています。
――デビュー時のインタビューでは、歌に対して苦手意識があるなど、どちらかと言えばネガティブな発言が多く、デビューに対して不安のほうが大きいのかなと感じていました。
デビュー時は特にネガティブでしたねー(笑)。実際、不安のほうが大きかったです。
――ただ、今お話を聞いている限りだと、アーティスト活動を経て、かなり前向きになっていらっしゃると感じました。
確かに、前向きになったかも! 以前は自分が失敗したら周りの方にすっごい迷惑をかけちゃうから「失敗しちゃ駄目だ」って気持ちが強かったんです。ただ、アーティスト活動をするようになってから、色々な人に支えられているんだということを改めて実感する機会が増えて。「失敗しないようにしなきゃ」というよりも、「私の背中を押してくださっている皆さんのために、自分が頑張りたい」という、ポジティブな考え方ができるようになりました。
――歌に対する意識だけでなく、ご自身の考え方もポジティブになった。
そうですね。アーティストデビューは、私にとって間違いなくプラスになりました。
デビュー時のインタビュー記事はこちら
――そういった意識の変化は、1stアルバム『超革命的恋する日常』にも表れていると感じました。表現の幅といいますか、感情が今まで以上に乗っている気がしたんです。
嬉しい! ありがとうございます。
――そのアルバムのことについて、色々と教えてください。まず、今回のアルバムは「恋」をテーマにした10曲が収録されているとのことですが、このテーマに決まった理由は?
そもそもアーティストデビューする前の打ち合わせで、恋愛系の曲やポップな曲が好きということをお伝えしていたんです。これまでのシングルでも「恋」に関する曲をたくさん歌わせていただきました。そんな私の気持ちを汲んで、スタッフさんが「アルバムも恋をテーマにしましょう」と提案してくれました。
――レコーディングはどのくらいかけてやりましたか?
6~11月にかけてじっくりとレコーディングしました。10曲すべてが新曲で、作詞・作曲・編曲してくださった方も異なるので、それぞれで表現すべきことや求められていることも違ったんです。各楽曲を理解して色々な表情を見せることは難しくもあり、楽しくもありました。
――今回のアルバムは収録されている楽曲がSide A、Side Bで5曲ずつに分かれているのも特徴です。こちらの意図についても教えてください。
アナログレコードのA面・B面をイメージしたとスタッフさんが教えてくれました。Side Aはバンドサウンドでライブでも盛り上がりそうな曲を集めていて、side Bはエレクトリックでオシャレな楽曲が多いんです。side Aとside Bでは曲の雰囲気が全く異なるので、その差にも注目してください。
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「恋愛」を楽しんでいる主人公たち
――続けて、それぞれの楽曲について聞きます。今までのインタビューでも、歌うときは主人公や物語を思い浮かべることが多いとおっしゃられていたので、今回もそれを踏まえた紹介をお願いできればと思います。まずは、「いそげあじゅじゅ」から。
タイトルが発表されたときから、「どういう曲になるの?」「どんな面白い曲になっているのか気になる」という声を多数いただいていた曲です。その期待に応えられているかどうかは分かりませんが、とても爽やかで、気持ちのいい曲なんですよ。歌詞には特定の誰かに向けての「好き」という感情ではなく、「愛」を多くの人に伝えたいという気持ちが込められています。
――この曲はどういう物語や主人公を想像しながら歌いましたか?
実は、この曲に関しては「物語の主人公」を想像して歌っていないんです。この曲は「恋」に加えて「音楽」もテーマになっています。私は、アーティストとして「歌を早く聞いてもらいたい」「みんなにいっぱい伝えたいことがある」という気持ちが今はあって。それが、この曲の歌詞ともすごくリンクしたんです。だから、私個人としては「自分自身の気持ち」や「伝えたいこと」を意識しながら歌いました。
――そういう意味では、ご自身の愛称が付けられているこのタイトルがしっくりきます。続いて2曲目の「恋煩い」。こちらはどういう楽曲でしょうか?
ゴリゴリのバンドサウンドで盛り上がれる一方で、可愛らしさも感じる曲です。片思いからの告白、という青春が詰まった歌詞がいい! 主人公は、恋を楽しみ、悩んでいる、少女マンガに出てきそうな女の子ですね。
――主人公の年齢は、高校生くらいなのかなと感じました。
私のイメージも高校生くらいです! 少女マンガ原作アニメのOPでぜひ使って欲しい曲ですね(笑)。
――3曲目は「素直になれたら」。
今回収録されているなかで一番幸せな曲です。主人公の女の子と相手の方は両想いだけれど、まだ付き合ってはいない状態。お互いに気持ちを伝えたいけれど、まだちょっと恥ずかしくて告白できないんです。お互い意識しちゃっていて、周りも冷やかしたくなるような関係なんでしょうね。……理想です。
――理想!
こういう恋愛にすっごい憧れているんですよね(笑)。主人公の女の子に「幸せが顔に出ているよ!」って言いたくなっちゃう。もう……私のほうが幸せになっちゃう。最初に歌詞を見たとき、ときめき過ぎておかしくなりそうでした(笑)。こんなキュンとする歌詞を書ける金子(麻友美)さんはすごい!
――歌詞のなかで特にお気に入りの部分は?
ぜんぶ好き過ぎるのですが、「この瞬間が続けばなぁ・・・」以降の流れが特にいい。主人公の女の子は、「告白して、もしふられたら楽しい時間がなくなっちゃう」と不安な気持ちになっている。そんなとき、顔をあげたら、笑顔の君がいた。それで、もう気持ちが抑えられなくなって告白しちゃう! この流れが、最高です!!
――好きという気持ちが非常によく伝わってきました(笑)。続く4曲目は「恋じゃないならなんなんだ」。こちらはSide Aのリードトラックですね。
この曲もバンドサウンドが印象的で、ライブでやったら絶対に盛り上がること間違いなしの一曲です。クラップできる部分もあるので、ライブでお客さんと一緒にやりたいですね。この曲の主人公は、好きの気持ちを隠せない女の子。「君ともし付き合ったら……」みたいな妄想をしていそうな子です。恋愛をポジティブに楽しんでいるのがいいですね。
――初回限定盤には、本曲のリリックビデオが収録されています。
今回のリリックビデオでは、「恋じゃないならなんなんだ」をバンドメンバーで歌っているシーンが描かれています。ボーカルは「あずみ」という、私をモチーフにしたキャラクター。また、あずみの周りを固めるメンバーは、若い頃の日本コロムビアのスタッフさんや私のマネージャーさんがモデルになっています。だから、このリリックビデオからも常に私の周りには色々な方がいて、支えてくれているということを感じました。ライブで歌ったらこういう盛り上がり方ができるのかなという想像もできる素敵な映像に仕上がっているので、ぜひたくさんの方に見て欲しいです。
――Side Aを締めくくるのは「あなたのいない夢」。
これまでの4曲はポジティブなときめきソングでしたが、この曲は少しシリアスな恋愛曲になっています。主人公はつい最近「勝手に失恋しちゃった子」。でも、そんなに沈み込んでいる訳ではないんです。むしろ、前向きになるきっかけを失恋したことで掴んだんじゃないかな。失恋の曲であっても悲しすぎない、そんな一曲です。
――他の4曲と比べて年齢層がちょっと上なのかなと思いました。
そうですね。ちょっとだけ恋愛を経験したことがあるような子、というイメージを持って歌いました。
大人な恋愛曲が多いSide B
――続く6曲目は「キュピデビ」。ここからSide Bとなり、曲の雰囲気もガラッと変わります。
「キュピデビ」は主人公の頭の中で、キューピットとデビルが言い争いをしている曲です。「いつも落とし穴探してしまう」など、ちょっとネガティブな部分はあれども、基本的には恋愛を全力で楽しんでいる。そんな子が主人公ですね。
――ご自身として共感できる部分は?
私にも天使と悪魔が住んでいるところです。
――みんな住んでいますよ、きっと! そして悪魔が勝ってしまうことのほうが多い。
ですよね! 基本的には甘い言葉に従ってしまいがち……。悪魔が勝っちゃう。
――公開されているMVでも天使と悪魔が登場していました。
今回のMVには、主人公の「私」と、頭のなかに存在する天使と悪魔が登場します。主人公の「私」も天使も悪魔もすべて私(和氣)が演じていて、3人がダンスをするシーンもあります。メイクも天使は可愛らしく、悪魔は小悪魔チックにしました。曲のイメージをそのまま表現した、楽しいMVに仕上がっていると思います!
――MVの撮影はいかがでしたか?
主人公、天使、悪魔が登場するダンスパートの振り付けは、個々だとそんなに難しいものではなかったのですが、3人でユニゾンする部分があったので、それがバラバラにならないように気を付けました。また、天使はふわっとした動き、悪魔はちょっとSっぽい表情をするように意識しているので、見比べてみてください。
――続く7曲目は「Tuesday」。
失恋ソングです。この曲の主人公は、思い人の「あなた」と完全にすれ違っちゃったんでしょうね……。「あなたのいない夢」とは違って、少し後を引きずっている。「完璧な恋」ってどんな恋なのかな、など色々と想像の余地がある曲でもありますね。
――続く8曲目は「安曇野小夜曲」。
主人公の男性が思い出にふける恋愛ソングです。この男性は、過去にお付き合いしていた方と安曇野でデートしたことがあったんでしょうね。安曇野に訪れて、その当時のことを思い出しているんです。でも、失恋を悔いているわけではない。「懐かしいな」「いい思い出だな」と、後に引きずっていないところが素敵ですね。とても綺麗な曲だと思いました。エモいです。
――主人公の年齢は高めかな、と思いました。
そうですね。「失恋したことを綺麗な思い出のひとつと感じられるのは、きっとその当時から何十年も経っているからだと思うよ」と、(日本コロムビア ディレクターの)井上さんから言われて、「確かに」と思いました。2、3年くらいだと、まだ引きずっているかもしれないですよね。
――安曇野には、1stシングルに収録されている「シトラス」のMV撮影で足を運ばれていましたよね。
そうなんです。だから、レコーディングのときも「あの綺麗な場所で主人公は過去の恋愛を思い出しているんだな」と、情景を思い浮かべながら歌えました。
――9曲目は「恋する日常」。
「Tuesday」「安曇野小夜曲」というしっとり系の曲から和モダンなテイストの曲調へ。加えて不思議で安定しないメロディが不気味で、聞いている人もちょっと不安になるような曲に仕上がっているんじゃないかな。この曲は特定の主人公の物語や言葉ではなく、色々な人たちの恋愛や感情が混ざり合っています。
――曲を聞いていて、歌唱するのが難しそうだと感じました。
難しかったです。仮歌の段階では、歌ってくださっている方がニュアンスをあまりつけず無感情っぽく歌っていらっしゃったんですよ。私もその歌い方に倣って練習をしていたのですが、すごく難しくって。大丈夫かなという不安な気持ちがあるなかレコーディングにも臨みました。そしたら、作曲をしてくださった坂部 剛さんが「ニュアンスをつけない歌い方よりもウィスパーで歌ってみたらよくなるかもしれない」とアドバイスしてくださったんです。その歌い方が、自分のなかでもしっくりきました。ウィスパーな歌い方が曲とマッチして、より怖さを表現できたとも思います。
――アルバムを締めくくるナンバーは「Darling」。
相思相愛の恋愛ソングです。「遠く離れていてもずっとあなたのことを思っている」。そんなハートフルな歌詞が素敵ですね。
――この曲の主人公はどんな人物?
実年齢も精神的にも大人。離れ離れになったとしてもお互いを思い続けていると信じられる、いい意味で余裕がある人なんじゃないかな。
――お話を聞いていると、Side Bは全体的に年齢層が高めの主人公が多いのかなと思いました。
レコーディングのとき、Side Aは弾けてキャピキャピ、Side Bはしっとりめで大人というイメージを持って歌っていました。
――これだけ雰囲気が異なる楽曲が集まると、ライブがどのような構成になるのかも楽しみです。
そうですね! セットリストを考えるのが大変そう。
――これまでのシングルの曲も加わると、よりどういうセットリストになるのか想像できないです。
合計で22曲もありますからね! どういうライブになるのか、その日が来るのが私も楽しみです。
――最後に、アーティストとしての2021年の目標を教えてください。
2021年以降の目標になってしまいますが、「こういう曲といえば、和氣あず未だよね!」って思ってもらえるようになりたいです。曲を聞いてくれた人が「和氣あず未らしいな」って言ってくれる、そんなアーティストになれたらいいな。
取材・執筆/M.TOKU
【プロフィール】
和氣あず未【わき・あずみ】9月8日生まれ。東京都出身。東京俳優生活協同組合所属。主な出演作は、『ウマ娘 プリティーダービー』スペシャルウィーク役、『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』フラットルテ役、『アイドルマスター シンデレラガールズ』片桐早苗役 ほか。
1stALBUM『超革命的恋する日常』リリース情報
発売日:2月17日(水)
【初回限定盤】CD+Blu-ray
4,000円(税別)
【通常盤】CD only
3,000円(税別)
【CD収録内容】
<Side A>
01.いそげあじゅじゅ 作詞:金子麻友美 作曲:羽岡佳 編曲:佐藤清喜
02.恋煩い 作詞・作曲・編曲:鶴﨑輝一
03.素直になれたら 作詞:金子麻友美 作曲・編曲:木下龍平
04.恋じゃないならなんなんだ 作詞・作曲・編曲:鶴﨑輝一 ※リードトラック
05.あなたのいない夢 作詞:大西洋平 作曲:金子麻友美 編曲:佐藤清喜
<Side B>
06.キュピデビ 作詞・作曲・編曲:hisakuni ※リードトラック
07.Tuesday 作詞:大西洋平 作曲・編曲:Justin Moretz & Kotaro Egami
08.安曇野小夜曲 作詞:渡部紫緒 作曲・編曲:高橋修平
09.恋する日常 作詞:只野菜摘 作曲・編曲:坂部剛
10.Darling 作詞・作曲・編曲:金子麻友美
【Blu-ray収録内容】
「キュピデビ」ミュージックビデオ + メイキング映像
「ふわっと」ミュージックビデオ
「シトラス」ミュージックビデオ
「Hurry Love」ミュージックビデオ
「恋と呼ぶには」ミュージックビデオ
「イツカノキオク」ミュージックビデオ
「透明のペダル」リリックビデオ
「恋じゃないならなんなんだ」リリックビデオ