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アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌「アニメディア」で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。織田信長とも関連が深い「三足の蛙」にまつわる話を、奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が語る。
人気ギャグマンガ『織田シナモン信長』のアニメが2020年年1月10日よりスタートしました。言わずと知れた織田信長をはじめ、戦国時代の武将たちがかわいらしい犬となって現代によみがえり、犬ライフを存分に楽しむというストーリーです。名前に「犬」とつく謎の声優たちの活躍にも期待が高まります。
織田信長といえば、茶道に造詣が深く、道具にも関心が高かったことで有名です。なかでも広く知られているのは、唐銅香炉(からかねこうろ)「三足の蛙」ではないでしょうか。「本能寺の変」前夜、この香炉が突然に泣き出し、信長に危機を知らせたというエピソードは有名です。ちなみに「三足の蛙」の実物は、現在も京都にある本能寺で保管されています。宝物館で展示されていますので、機会があれば観に行ってみてください。
先述した逸話からもうかがえるように、カエルは吉凶を予測する生き物として捉えられる場合があります。そして3本足のカエルは、日本に限った話ではありません。むしろ大陸から入ってきたと考えられます。
たとえば「蝦蟇仙人(がませんにん)」という中国の仙人がカエルを連れていたとする話があります。「青蛙神(せいあじん)」と呼ばれるヒキガエルで、足が3本あったのだとか。青蛙神は霊獣のようなもので、とても縁起がよいもののようです。
また、中国清代の短編小説『聊斎志異(りょうさいしい)』にも青蛙神が登場します。人々に崇められている青蛙神ですが、怒りに触れると、その家には不思議なことが起こってカエルが群がったりする……という話が記載されています。おそらく、このような大陸の話をもとに信長の香炉も作られたのでしょう。
はたして、アニメ『織田シナモン信長』には、3本足の不思議なカエルが登場するのでしょうか。細部まで目を凝らしながら、アニメを拝見したいと思っています。
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