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劇場アニメ『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』の上映が始まりましたね! マンガ雑誌「週刊少年ジャンプ」で連載中の『ヒロアカ』こと『僕のヒーローアカデミア』の劇場版最新作です。今作では、主人公の「デク」こと緑谷出久たち雄英高校ヒーロー科1年A組の生徒たちが期間限定の校外ヒーロー活動のため、日本の南に位置する離島・那歩島(なぶとう)を訪れます。そこに敵<ヴィラン>が襲来。1年A組のメンバーは力を合わせて立ち向かうというストーリーのようです。いやはや、あらすじを聞くだけで胸アツですね。
さて、『ヒロアカ』といえば、なんと言ってもヒーローたちの活躍が見どころですが、敵<ヴィラン>たちの動きも見逃せません。ひとクセもふたクセもある彼らとヒーローたちとの戦いには、毎度、手に汗を握ります。
敵<ヴィラン>についてはいまだにわからないことが、たくさんあります。敵<ヴィラン>連合のリーダー格である死柄木弔(しがらきとむら)に注目してみましょう。彼はヒーローに対して強い憎しみとコンプレックスを抱いているように見えます。その生い立ちを考えると致し方なしという気はしますが、そんな彼の“個性”は「崩壊」です。手のひらで触れさえすれば人であってもモノであっても、たちまちに粉々、ボロボロにしてしまうのです。
江戸時代の絵師・鳥山石燕(とりやませきえん)による妖怪画集『百器徒然袋(ひゃっきつれづれぶくろ)』に「暮露暮露団(ぼろぼろとん)」という妖怪が登場します。そこには、悲しげな眼をした、ボロボロの布切れのようなものを纏った何かが描かれています。三本指の手足を持っているようです。
脇に記された解説を読んで見ましょう。「普化禅宗(ふけぜんしゅう)を虚無僧(こむそう)と云ふ。虚無空寂(くうじゃく)を旨として、いたるところに薦(こも)むしろに座してもたれりとするゆへ、薦僧(こもそう)と云ふよし。職人づくし歌合に暮露暮露ともよめれば、かの世捨人のきふるせるぼろぶとんにやと夢の中におもひぬ」と書いてあります。要約すると「普化禅宗の虚無僧のことを『ぼろぼろ』と呼ぶことがあり、ぼろ布団のようではないかー」と言ったところでしょうか。
暮露暮露団は、鳥山石燕による創作妖怪ではないかといわれています。特に何かをする妖怪ではないようです。僧の「ぼろぼろ」と、布団の「ぼろぼろ」とを組み合わせ、石燕がイメージして生み出したのでしょうか。
いずれにせよ、何やら哀愁漂うものがあります。それは死柄木弔も同じです。触れるものをボロボロにしてしまう死柄木弔は常に闇を抱え、相手を傷つけながら自らも傷づいているように見えます。その傷は暮露暮露団のように目に見える形でないだけに、厄介です。私は、いつかヒーローたちが、そんな彼のことも救ってくれたらいいなと密かに願っています。
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