読者に人気のアニメ作品から、期待の声優に作品や役柄について語ってもらうインタビュー企画「Megami’sVoice」。2019年10月号には、『ありふれた職業で世界最強』でユエを演じる桑原由気が登場。「超!アニメディア」では、本誌で紹介できなかった部分も含めた、ロングインタビューをお届けする。
――『ありふれた職業で世界最強』という作品の第一印象を教えてください。
原作を読ませていただいたときに、世界観がかっこいいなと感じました。主人公のハジメに自分を投影して読むと、いじめられていた相手をどんどん見返していけるのが爽快で。読んでいて気持ちのいい作品だなと思いました。
――オーディションの思い出は?
原作のイラストを見たときのユエは、クールで感情を表に出さないんだろうなという印象でした。オーディションのセリフにも、感情的なものはほとんどなく、淡々としたものが多かったんですね。でも、その中に「んっ」というセリフが書かれていて。1文字なのにわざわざ書いてあるということはすごく大事なものなんだろうなと感じたことを、とてもよく覚えています。
――ユエの「んっ」は、すごくバリエーションが豊かですよね。
状況で違うのはもちろんなのですが、相手が誰なのかでも言い方が違うんです。アフレコが始まったばかりのころは、戦っているシーンなどで必死になっていると「うん」と返事をしてしまって、よくスタッフの方から指摘をいただきました。「うん」だとただの返事になってしまって、ユエの「んっ」の持つ微妙なニュアンスとは違うものになってしまうんです。原作を読んでいらっしゃる方にとってはなじみの深い言葉ですから、みなさんの脳内にある「んっ」と相違ないようにしたいと、ていねいに演じるように気をつけました。
――ドラマCDでも演じていたユエを、テレビアニメではどう演じようと考えましたか?
ドラマCDは、旅がかなり進んだあとのお話だったんです。でも、アニメはユエとハジメの出会いから描いているので、音響監督の方とも話し合って、ゼロからユエというキャラクターを作っていこうと決めました。なので、気持ちを新たにユエの役作りをしていきました。原作ではハジメとユエが恋人同士になるまでの展開が早いなと感じていたのですが、実際にひとりぼっちで長い間封印されていたのを救ってくれ、さらにそのあともユエの居場所を作り続けてくれているハジメは、それだけでもう好きになるには十分だと感じたんです。それもあって、ドラマCDのときのユエからハジメへの「好き」とテレビアニメとでは、少し表現も違ってきていますね。ハジメを深いところで好きなことや、ほかのキャラクターにも愛情深いところがちゃんと出るようにと心がけています。
――外見は小柄な女の子ですから、声はとてもかわいらしいですよね。
そうなんです。でも、ユエの愛情深さは、長く生きてきたからこそでもあると思うので、幼く声を作るだけではダメだなと思っていました。かわいい女の子たちがハジメを取り巻いたとき、多少やきもちを焼いたりすねたりはしても、見守っている部分も大きいと思うんです。そういった器の大きさも声で出せたらと思いながら演じています。
――かわいい声で器の大きさを表現するに当たって、演じる際に難しさなどは感じましたか?
ユエは全体を客観的に見られてる子なので、行動と声が一致しているんですね。ですから、ユエの行動に自分の声がまっすぐ乗ればいいなと思っていて、あまり難しいとはとらえていません。ただ、本妻の余裕みたいなものはあるので(笑)、ハジメは自分以外の子に目移りをしないという自信を持っている様子はうまく出せるように意識しています。それから、すねたりしているのは客観的に見てかわいいと思っているので、たまには女の子らしさを出してもいいかなと思って演じました。でも、極端にすねている感を出すと、あざとくなってしまいそうだったので、さりげなくかわいい感じを出せるように心がけました。
――これまでで印象的だったエピソードはありますか?
じつは、声優としてお仕事をさせていただくようになって初めて、ダビングを見学させていただいたんです。それが第3話だったのですが、ユエがハジメに「撃って」というシーンがあったんですね。そこでBGMが一度消えて、撃たれたユエが動揺するという様子がすごくおもしろくて。第1、2話はかなりシリアスで重い話だったのですが、ちょっとコミカルになったので、第3話はとても印象に残っています。
――ここまでで、ユエのどんなところが魅力的だなと感じていますか?
第2話でハジメに名前をつけてもらったときに、喜んで抱きつくシーンがかわいくて。自分の気持ちに素直に行動する姿は、とても魅力的だなと思います。自分の思っていることをズバズバと言ってしまう、ストレートなところも好きです。
――そんなユエに共感できるところはありますか?
ユエは普段はとても静かな子なんですね。私もアフレコ現場では、ほとんど話さないので、そういうところは似ているなと思います。それ以外は似ていないところのほうが多くて。私はやきもちを焼いてしまうし、たとえばハジメみたいな人がそばにいたら、独り占めしたくなっちゃうんです。だから、広い心を持って、他人に愛情をもって接することができるユエのことは、すごく尊敬しています。
――ハジメに対する印象は?
覚醒後のハジメのビジュアルがとても好きです。それから、不要なものは切り捨てていくサバサバした性格も素敵だなと思います。ユエ以外にはなびかないところも、私の“独り占めしたい”という性格にピッタリだと思います。ともすれば、冷たい人に見えてしまいそうですが、シアやティオを仲間にする際は、心の奥底にあるやさしさが見えましたし、そういうところもすごく好きです。
――第3話のユエのように、ためらいなく撃たれても大丈夫ですか?
死なない感じにしてもらえれば大丈夫です(笑)。
――ほかの女の子たちへの印象は?
(白崎)香織のことをとても大切にしている(八重樫)雫は、クールだし、裏切ったりもしないだろうなという安心感があるので、友達になってほしいです。シアも一緒にいてくれたら楽しそう。シア役のたかみなさん(高橋未奈美)がシアみたいなムードメーカーなので、アフレコ現場もシアが登場してからとても明るくなったんです。ティオもムードメーカー的なところがありますね。香織はユエが唯一ライバル心を抱いている子かなとも思っていますが、おっとりしているように見えて、どんどん強気なところも見えてくるので、そういうところも大好きです。
――今後の見どころを教えてください。
この先は、ハジメがクラスメイトたちと再会するシーンが待っています。ハジメのビジュアルは、名乗らなければわからないくらいに変わってしまっていますが、それを目撃したクラスメイトたちの気持ちがどう変化していくのか、どんな表情をするのかは、原作を読んでくださっていたみなさんも期待しているところだと思うので、楽しみにしていただきたいです。それからティオの行動にも注目してほしいです。ティオはとにかく言葉では語り切れないおもしろさがあるんです。日笠陽子さんのお芝居がマッチしていて、現場でもみんな笑いをこらえるのに必死だったくらいなので、ぜひチェックしてください。ユエとしては、ティオとお茶をするシーンが出てくるのですが、そこで本妻の余裕がものすごく見えるところもポイントかなと思います。シアとハジメがデートするように仕向けつつも、ハジメに対する変わらない想いも描かれていくので、ぜひそこにも注目していただきたいです。
◆MegamiにQuestion
Q.チャームポイント
A.歯並び
矯正をしたことはないのですが、すごく整っているので、大事にしたいと思っています。親知らずもまっすぐ正しい場所に生えてきたんです!
Q.ニックネーム
A.桑ちゃん
女子高に通っていたころは、「由気ちゃん」と下の名前で呼ばれることが多かったですが、専門学校に入ってからは「桑ちゃん」って呼んでほしいと私からお願いして、それが定着しました。
Q.自分の声の特徴
A.静かそうでいて元気
これまではウィスパー系のキャラクターを演じさせていただくことが多かったのですが、最近は元気なキャラクターも増えてきました。くすぐられたときや、足つぼマッサージをされたとき、それからジェットコースターに乗っているときは、自分でも驚くくらい大きな声が出ます(笑)。
Q.自分の性格
A.静か
普段は人見知りなこともあって、アフレコ現場を含め、あまり人と話せないんです。ただ、番組などではかなり話すので、共演者の方から「どっちが本当の姿なの?」と聞かれたことがあります(笑)。「現場のほうです」とお答えしました。
Q.今、ハマっている趣味
A.ラジオを聞くこと
最近は、芸人の霜降り明星さんのラジオが好きです。基本的に、毎日深夜1時帯のラジオはだいたい聞いています。もともと、しゃべりが上手になりたくて芸人さんのラジオを聞いていて、気がついたら引き込まれているところがすごいなと思っています。ただ、芸人さんのラジオばかり聞いていたせいか、共演者の方とテンポ感が合わないことも多々あります。
Q.「こう見えてじつは……●●なんです」
A.お笑いコンビを組んだことがあります
養成所の頃に、出演料を払えば誰でも出られるお笑いライブがあったんです。そこに中学時代の同級生と「チャッカマン」というコンビを組んで出演しました。私はツッコミ役でしたね。声優のお仕事を始めてからも、とある作品の監督さんや天津の向さんと漫才をさせていただいています。
Q.食べなくて生きていけるようになっても食べたいもの
A.焼き肉
とくに好きな部位は、タンです。最近は、さっぱりした味が好きなので、塩やレモンで味付けをしたいです。
Q.本作のキャッチフレーズ
A.これを見たら、あなたも世界最強
この作品は、主人公のハジメになりきって見ていただきたいんです。ハジメになったつもりで多くの苦悩を抱えつつも立ち向かっていく強さを手に入れる楽しさを感じつつ、仲間との旅も満喫していただきたいです。
取材・文/野下奈生(アイプランニング)
Profile
くわはら・ゆうき/6月24日生まれ。長崎県出身。マウスプロモーション所属。主な出演作は、『アイカツフレンズ!』白百合かぐや役、10月より放映される『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』リルル役など。
TVアニメ『ありふれた職業で世界最強』情報
AT-X 毎週月曜 23:30~
TOKYO MX・サン 毎週月曜 24:30~
BS11 毎週月曜 25:00~
『ありふれた職業で世界最強』公式サイト
arifureta.com
『ありふれた職業で世界最強』公式Twitter
@ARIFURETA_info
©白米良・オーバーラップ/ありふれた製作委員会