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アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌「アニメディア」で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。今回は、春の新作アニメ作品の“鬼”について、奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が語る。
「週刊少年ジャンプ」で連載中の『鬼滅の刃』が、2019年4月6日よりアニメ放送を開始します。同作はタイトルどおり、鬼を滅するために成長していく少年・炭治郎の物語です。
「人喰い鬼は日が暮れるとうろつき出す」「傷口に鬼の血を浴びたら鬼になる」など、作中では鬼に対するさまざまな描写が見られます。日が沈むと鬼が登場するというのはそのとおりで、例えば日本最古の説話集『日本霊異記』で奈良県の元興寺というお寺に「ガゴゼ」というバケモノが登場する話があります。このガゴゼの正体は鬼なのですが、じつはこのガゴゼ、夜な夜な寺の鐘楼にあらわれ、人を殺してまわるのです。
このように鬼が夜更けに人里に出没し、危害を加える話は昔からパターンとしてあったことがわかります。
また炭治郎の妹・禰豆子は鬼に襲われ、傷口から鬼の血が入り込んだことにより自身も鬼になってしまいます。『源氏物語』の六条御息所などは、憎しみや嫉妬から鬼に変化しました。人が鬼になるという話もあるにはあるのです。しかし『鬼滅の刃』のように、血を浴びると鬼になるという例は少し特殊のように感じます。
『鬼滅の刃』では、ほかの作品とは違う、この作品ならではの鬼の物語を存分に楽しむことができます。アニメの展開とともに、鬼の姿に注目してみてはいかがでしょうか。
解説:木下昌美
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<プロフィール>
【きのした・まさみ】妖怪文化研究家。福岡県出身、奈良県在住。子どものころ『まんが日本昔ばなし』に熱中して、水木しげるのマンガ『のんのんばあとオレ』を愛読するなど、怪しく不思議な話に興味を持つ。現在、奈良県内のお化け譚を蒐集、記録を進めている。大和政経通信社より『奈良妖怪新聞』発行中。
●挿絵/幸餅きなこ