澤野弘之がサウンドトラックに“歌もの”を含める理由「インスト曲をもっとたくさんの方に聴いて貰いたい」【インタビュー】 | 超!アニメディア

澤野弘之がサウンドトラックに“歌もの”を含める理由「インスト曲をもっとたくさんの方に聴いて貰いたい」【インタビュー】

『機動戦士ガンダムUC』や『進撃の巨人』など数多くの作品の劇伴やテーマソングを手がけている劇伴作家・澤野弘之のボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキヌジーク)が、TVアニメ『ノー・ガ …

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『機動戦士ガンダムUC』や『進撃の巨人』など数多くの作品の劇伴やテーマソングを手がけている劇伴作家・澤野弘之のボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキヌジーク)が、TVアニメ『ノー・ガンズ・ライフ』第2期のオープニングテーマ「Chaos Drifters」、『銀河英雄伝説 Die Neue These』NHK版のオープニングテーマ「CRY」を担当。楽曲について語った澤野弘之のインタビューがアニメディア6月号に掲載。

 超!アニメディアでは、本誌に掲載しきれなかったぶんを含めた特別版を公開。4月にリリースしたベスト盤、澤野弘之『BEST OF VOCAL WORKS [nZk] 2』について、劇伴作曲家デビュー作『N’sあおい』について、そして劇伴作曲家として惑った経験など話を聞いた。


Jean-Ken Johnnyさんのすごさと格好良さを体感

ーー『ノー・ガンズ・ライフ』について、どんな印象ですか?

 僕は学生時代や20代前半に、それこそ劇伴作家を目指していたころに影響を受けたのが、『攻殻機動隊』シリーズや映画『APPLESEED』といったSFやサイバーな世界観の作品だったんです。『ノー・ガンズ・ライフ』はキャラクターの絵の感じやハードボイルドな世界観が、単純にすごく好きです。お話をいただいたときは、すごくモチベーションが上がりました。

ーー主人公の乾十三は頭がリボルバー銃に拡張されているわけですが、もしも澤野さんが身体の一部を拡張するとしたらどこを拡張したいですか?

 僕は『攻殻機動隊』の影響かもしれないけど、視界からの情報は大きいと思うので、目を拡張して同時にいろいろなものが見えるようにしたいです。

ーー頭にジャックが付いてて、直接アンプから頭で鳴ってる音が鳴らしたいみたいな感じではないんですね。

 確かにそれもすごくいいんですけど、それに頼りすぎてしまうと音楽を作る楽しさが半減してしまいそうな気がします。僕の場合は頭で浮かんだものが、演奏したときにそのまま音になっているわけではなくて、だんだん変化していくことが多くて。作りながら変わっていくことが、音楽を作ることの醍醐味だと思っているので、頭で鳴っている音がそのまま鳴ってしまうと、変化を楽しむことができなくなってしまうので。

ーーなるほど。音楽制作の楽しみのひとつに、誰をボーカルにするかを考えることも含まれるのではないかと思いますが、「Chaos Drifters」ではMAN WITH A MISSIONMWAM)のJean-Ken Johnnyさんが参加していて。Jean-Kenさんとはどんな接点があったんですか?

 MWAMの曲は以前から格好いいと思っていたんですけど、面識があったわけではなくて。僕の音楽によくボーカルとして参加してもらっている、Survive Said The Prophet(サバプロ)のYoshさんがJean-Kenさんと交流があって、Jean-Kenさんが僕の音楽に興味を持ってくださっていると聞いたんです。それでサバプロがMWAMのライブにゲストとして出演したときに、僕も見に行かせていただいて。そのときに直接ご挨拶をさせていただいて、「いつか[nZk]でご一緒できれば!」「ぜひぜひ!」って。それで今回『ノー・ガンズ・ライフ』のお話をいただいたときに、制作サイドから「男性ボーカルがいい」と提案されていたので、ダメもとでお願いをしてみたらOKしてくださったという流れです。

ーーJean-Kenさんのボーカルで、澤野さんの楽曲の格好良さが倍増しましたね。

 今回はJean-Kenさんが作詞をして、日本語と英語のバランスが楽曲とマッチするように、すごく良い形で書いてくださいました。サビの勢いやグルーブも僕から細かく言う前に、汲み取って歌としてぶつけてくださって、より格好良く仕上がりましたね。

ーーレコーディングはどんな感じで?

 歌録りは、普段のJean-Kenさんのやり方で進めていきました。僕からは「サビはけっこう激しくいっちゃってください!」くらいで、レコーディングはすごくスムーズでしたね。MWAMの曲でJean-KenさんはAメロ・Bメロを歌って、サビはTokyo TanakaさんがメインでJean-Kenさんはハモリというパターンが多いと思うんです。だから今回はJean-Kenさんがサビを歌うときに、どういうアプローチをしてくれるのかがとても楽しみだったんですけど、Jean-Kenさんのすごさと格好良さを体感することができました。

ーー初めて一緒にやる方との制作で楽しいのはどういう部分ですか?

 僕はある程度コラボ相手がどんなアプローチをしてくるのかイメージしてはいるんですけど、Jean-Kenさんや西川貴教さんといったキャリアを築いてきた方は、僕のイメージを超えてその人ならではの持ち味を出してくださるので、レコーディングのときに「ハッ」とさせられることがあるのは面白さのひとつです。逆にJean-Kenさんも僕のプロジェクトに参加したことで、何か刺激を受けてくださっていたら嬉しいですね。

ーーまた澤野さんは、現在放送中の『銀河英雄伝説 Die Neue TheseNHK盤のオープニングテーマ「CRY」も担当しています。澤野さんは2018年放送の「邂逅」編でオープニングテーマ「Binary Star」、「星乱」編のエンディングテーマ「Tranquility」を担当していて、『銀河英雄伝説』の楽曲は今回で3曲目になりますね。

 2018年からテレビ放送されたものを改めてEテレで放送するということで、主題歌を新しく書いてもらえないかとお話をいただきました。「Binary Star」と「Tranquility」がバラードだったので、その世界観を崩さずに新たなアプローチによるバラード曲にしたいとイメージして作りました。

ーーボーカルは澤野さんのプロジェクトではお馴染みのmizukiさん。

 「Binary Star」と「Tranquility」は先方から英語詞でお願いしたいという話があったんですけど、今回はお任せしますということだったので、日本語詞で新しいアプローチが出来ればと考えて。日本語詞を歌ってもらうことを前提にしたときに、僕のなかでパッと浮かんだのがmizukiさんです。彼女の声は物語を感じさせてくれると言うか、僕が歌詞に込めた以上の意味を持たせてくれるんです。それに今回サビは「ロックっぽく強く」と指示をしたんですけど、彼女の声質によるものなのか、ただ強いだけではなくて、すごくファンタジーを感じさせるんです。それは彼女が持っているボーカルの力だなと思います。

ーー『銀河英雄伝説』の持つ、宇宙を舞台にした壮大で幻想的な世界観とも合いますね。

 彼女とは[nZk]のスタートのときに手がけた、アニメ『アルドノア・ゼロ』(2014年)のEDテーマ「A/Z|aLIEz」に参加してもらったのが最初で、そのときも宇宙が舞台になっていましたし。当時から歌声の魅力は変わらず、今回はさらに進化した歌声を聴かせてくれています。

自分が楽しいと思うほうを選ぶ

 ーー4月にリリースされたベストアルバム『澤野弘之 BEST OF VOCAL WORKS [nZk]2』には、「A/Z」「aLIEz」も収録されていました。ボーカルベストは2枚目ですが、今回はどんなものになりましたか?

 ちょうど自分自身が劇伴の仕事を初めて15周年というタイミングで出せたことが、とてもうれしかったです。今作は2枚組で、ディスク2で[nZk]としての約6年間をまとめることができました。またディスク1には、サウンドトラックのボーカル楽曲と、Do As Infinityや西川貴教さんなどに提供したものをまとめていて。2つの方向性のボーカル楽曲を1つにパッケージしているので、ぜひこの機会に聴いてほしいです。

ーー以前は劇伴というと歌が入らないインストゥルメンタルがほとんどでしたが、澤野さんはそこで歌にこだわって劇中歌もたくさん作ってきました。そういう部分で澤野さんにとっての歌とは?

 まずインスト曲を聴くときは、みなさんその映画やアニメの映像を思い出しながら楽しむわけですが、歌ものはそこに歌詞があることで映画やアニメを見ていない人でも世界観を想像することができる。歌ものでは歌詞が映像の役割りを果たし、さまざまな想像を広げてくれるという魅力があります。
 じゃあなぜ僕がそういう歌ものをサウンドトラックに使うのか? 理由の1つには、インスト曲をもっとたくさんの方に聴いて貰いたい思いもあるからなんです。まだ一般的にはサウンドトラック=マニアックなものというイメージを強く持たれているので、少しでも一般の人にもサントラに興味を持って欲しいと思って。歌ものの曲をきっかけにしてサントラ盤を聴いてもらって、そこでインストゥルメンタルの面白さに気づいてくれる人が、ひとりでも増えてくれたらいいなと思っています。

ーー劇伴作曲家としてのスタートはドラマ『N’sあおい』(2006年)だったそうですが、4月にちょうど再放送されていましたね。

 僕が携わった初めての民法ドラマが『N’sあおい』だったんです。あの当時の自分の感覚は、今でもすごく記憶に残ってて。それまで劇伴に関わりたいと思って活動を続けてきて、やっと掴んだ最初の大きなチャンスが『N’sあおい』でした。『N’sあおい』の曲を業界関係者に聴いてもらうことで、次の仕事に繋がっていくのかいかないのか、不安と期待が入り交じったなかで、すごく必死になって作った覚えがあります。再放送を見たんですけど、自分なりに当時やれることをぶつけていたんだなって感じました。

ーー今だったらこう作るのになみたいなことも考えるんでしょうね。

 でも、あのときにしか作れないものだったと思います。それに今は、ああいうハートフルな医療ドラマは、僕のところにはこないと思いますよ(笑)。今は人が戦って悲劇があってという作品のイメージが強いので。まだ『進撃の巨人』や『機動戦士ガンダム』のイメージが付く前だったからこそ関われた作品なので、今となっては貴重な経験だったと思います。

ーーことし澤野さんは40歳ということで、孔子の論語で男四十にして惑わずという言葉があります。これまではやはり惑ったこともあった?

 いろんな面でありました。そのひとつとして、[nZk]の活動をしていくなかで、自分の曲に対して考えたことがありました。[nZk]の活動が始まってから、どうしてもランキングが付きまとうようになって。チャートの成績が悪かったりすると、自分ではポップスをやっているつもりでも一般的にはポップスだと思ってもらえないのかな? って考えたり。
 日本のヒットチャートの音楽に、自分も寄せて作ったほうがいいんじゃないかと考えたこともありました。でも僕の目標は誰かに合わせることではなく、自分が本当に追求したいサウンドで、自分が本当に格好いいと思う曲で結果を出すことだから。それを芯に持ってやっていかなきゃなと、そのときに改めて気づくことができました。そういう惑った経験があったことで、今の自分の音楽があるのだと思っています。でも何だかんだで、これから先もいろいろな悩みは出てくると思いますけど、自分がこうだと思った道に突き進もうと思います。

ーー道が分岐しているときに、どっちの道を選ぶか指針となっているものはありますか? あえて険しい道を選ぶようにしているとか。

 そういう話で言うと、自分が楽しいと思う方向に進むようにしていて。でもそれって取り方によっては、大変なことから逃げてきたということなんじゃないかと自分では思っていて。だから僕自身は、今までの人生を楽をして生きてきたタイプの人間だと思っているんです。笑

ーー制作のお話を聞くと、険しい道を選んでいるように思いますけど。

 他人から見れば険しいとかストイックな道を突き進んでいると見える部分があるかもしれないけど、自分のなかでは「僕は今ストイックなことにチャレンジしている」みたいな感覚はないんですよ。本当にストイックだったらやり続けられないと思うし、楽しいこととかモチベーションが上がることがあるから前に突き進むことができるんです。

ーーでは最後に読者にメッセージをお願いします。

 「Chaos Drifters」では初めてJean-Ken Johnnyさんと制作させていただき、彼と一緒でなければできないサウンドが作れました。また「CRY」は、これまで一緒にやってきたボーカリストのmizukiさんとだからこその、新しい曲ができました。この2曲がアニメをより楽しむためのきっかけになってくれたらうれしいです。

取材・文/榑林史章

澤野弘之『BEST OF VOCAL WORKS [nZk] 2』リリース情報
発売日:発売中
価格
初回生産限定盤 (3CD+BD) 6,000円(税別)
通常盤 (2CD) 4,000円(税別)


SawanoHiroyuki[nZk] | ソニーミュージック オフィシャルサイト
https://www.sh-nzk.net/

《超!アニメディア編集部》

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