SawanoHiroyuki[nZk]がアルバム「R∃/MEMBER」をリリース「ウォークマンで音楽を聴いていたころの自分に教えたい」【インタビュー】 | 超!アニメディア

SawanoHiroyuki[nZk]がアルバム「R∃/MEMBER」をリリース「ウォークマンで音楽を聴いていたころの自分に教えたい」【インタビュー】

『進撃の巨人』など人気アニメの劇伴を担当する劇伴作曲家・澤野弘之によるボーカルプロジェクト=SawanoHiroyuki[nZk]が、3月6日(水)に3rdアルバム『R∃/MEMBER』をリリース。SUGIZO、岡野昭 …

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 『進撃の巨人』など人気アニメの劇伴を担当する劇伴作曲家・澤野弘之によるボーカルプロジェクト=SawanoHiroyuki[nZk]が、3月6日(水)に3rdアルバム『R∃/MEMBER』をリリース。SUGIZO、岡野昭仁(ポルノグラフィティ)、西川貴教、LiSA、スキマスイッチなど豪華ゲストが参加して話題の作品。今作の制作秘話や、劇伴作曲家としてのルーツ、音楽に対するこだわりなど話を聞いた。


別にSっ気を出そうと思って作っているわけじゃない

ーー1年半ぶりのアルバム『R∃/MEMBER』は、どういったイメージで制作されたのでしょうか?


 昨年の1月くらい、それこそ「Binary Star」のマスタリング作業中にスタッフと「次のSawanoHiroyuki[nZk]名義のアルバムは、アーティストとコラボするというコンセプトでいきたい」と話が出て、僕自身もそういう作品が面白いなと思いました。『o1』と『2V-ALK』では、自分がやりたいことを追求できたので、次に出す作品は、企画的な内容であっても面白いと思ったので。

ーー昨年のシングル「narrative/NOISEofRAIN」にゲストボーカルで参加したLiSAさん、西川貴教さんを筆頭に、SUGIZOさん、ポルノグラフィティの岡野昭仁さん、スキマスイッチさん、さユりさんなど豪華なアーティストが参加。ボーカリストはどのようにセレクトを?

 一昨年あたりから、いろいろなアーティストの方の作品に参加させていただく機会が増えて、たとえばスキマスイッチさんのアルバム『re:Action』で、「Ah Yeah!!」という曲の編曲とプロデュースを担当させていただき、昨年は西川貴教さんの「His/Story / Roll The Dice」というシングルで楽曲提供させていただきました。SUGIZOさんとは、一昨年にお台場のDiver City Tokyoにガンダム立像ができたときのイベントで知り合って。そうやってご縁のあった方を中心に、個人的にコラボしてみたいと思った方に、お声がけさせていただきました。

ーーポルノグラフィティの岡野さんは意外でした。

 僕もです(笑)。岡野さんは面識もなかったので、まさか引き受けてくださるとは思っていなかったです。今回、誰に参加してほしいか考えたとき、僕自身は最近のJ-POPをそれほど聴かないので、普段聴いていない方よりも、学生時代から現在までに聴いて「この声は魅力的だ」と思った方にお願いすることに意味があると思いました。それでポルノグラフィティさんは、自分が作曲を始めた20歳くらいのときから「岡野さんの声は特徴があって魅力的だ」と思っていたので。

ーーT.M.Revolutionも学生時代に聴いていましたか?

 ちょうど高校生になったくらいのころにご活躍が始まって、友だちとカラオケに行って、みんなで歌った思い出があります。それだけに、昨年初めて西川さんに楽曲提供させていただいたときは、とても感慨深かったです。レコーディング中にふと我に返って「高校時代に聴いていた人が、目の前で歌っている。何かすごい事が起きてる!」と思いました。ウォークマンでT.M.Revolutionさんの曲を聴いていたときの自分に、教えてあげたいです(笑)。

ーーさユりさんは、初めましてですか?

 はい。2年前の『MUSIC THEATER 2017』というイベントにお互い出演していて。すごく特徴がある歌声が印象的で、機会があったらぜひご一緒したいと考えていました。そこで今回アプリゲーム『青の祓魔師 DAMNED CHORD』主題歌の話があったので、いいタイミングだと思ってオファーさせていただきました。

ーー声に特徴がある人ばかりですが、それも参加アーティストを決める基準になりましたか?

 そうですね。今までの[nZk]に参加していただいたボーカリストもそうですが、技術があるのはもちろん、それ以上に楽曲をいろんな方向に向かわせてくれる歌声の持ち主ばかりです。歌声は、自分のなかでも重要視している部分ですね。

ーーそういう歌声の特徴から、楽曲のインスピレーションが沸くんでしょうか。

 いえ、アーティストが決まる前に、ほとんどの楽曲ができていました。楽曲制作でアプローチしたものとは別に、楽曲をより面白くしてくれるのは誰か?と考えてオファーしていました。

ーーレコーディングではそれぞれのアーティストに対して、どんな指示を出したのですか?

 僕のディレクション全般に言えることですが、僕のほうから細かくあれこれ言うことはありません。その方の歌い方を楽しむつもりでお願いしているので、「ここは囁くように」とか、「サビは強くバーンといって大丈夫です」といった、ざっくりしたことをお伝えするだけで、あとはその方の感性でアプローチしていただければいいと思っていました。


ーー以前に西川さんから澤野さんの印象について聞いたことがあるのですが……コラボ相手の意見を素直に受け入れることができるのは、どんな歌い方をされても自分の曲が揺らぐことはないという、絶対的な自信があるからじゃないか、と話していました。

 ありがたいお言葉で、恐れ多いです(笑)。自信と言うか……自分のなかでメロディーも含めたサウンドの部分で作りたいものを作っているので、歌に関しては楽しみたいんです。西川さんが普段やらないことを無理にお願いするくらいなら、普段からそれをやっている人に頼むほうが早いわけで。西川さんとやるからには、西川さんだからこその歌のアプローチがほしい。その上で、お互いに意見を言って模索できる部分があれば、それはそれで楽しい。実際に西川さんが第一声を発したときは、「これだ!」と思う以上のものがすでにあって、ワクワクしながら制作できました。

ーー澤野さんの楽曲と、その人の歌の個性がぶつかって起きる化学反応によって、生まれたものを楽しむと。

 そういう感覚でいたほうが、楽曲にとっていちばんいいと思って制作しています。ボーカリストのみなさんから「こういうアプローチはどうだろうか」と、こちら側に寄り添ってくれる形が多かったので、とてもありがたかったです。西川さんもシャウトの仕方を考えてきてくださったし、岡野さんもLiSAさんも、曲にとりかかる上でどういう歌を乗せることが楽曲にとっていいかすごく考えてくださって、ありがたかったです。

ーーコラボの醍醐味として、そのアーティストがもともと持っているものやイメージとは違ったものが出せて、新しい魅力が発見できるというところがありますね。

 そうですね。たとえば僕のなかでのLiSAさんの印象と言うと、アップテンポの曲をアグレッシブに歌っているというものでした。今回は『機動戦士ガンダムNT』主題歌ということもありましたが、普段とは違った重厚でミディアムテンポのサウンドに挑戦していただいたので、普段の彼女とは違う面白い見え方を楽しんでいただけるんじゃないかと思いました。

ーー澤野さんの楽曲は歌うのがとても難しそうですが、参加アーティストから「難しいです」と言われたりは?

 ありましたよ(笑)。僕の曲は、メロディに対する言葉のハメ方が独特なので、覚えるのにみなさん苦労するみたいです。西川さんの話ばかりになってしまいますが、「NOISEofRAIN」を録ったときは、西川さんから冗談交じりに「これ腹立つ〜!」って言われました(笑)。でも技術がある方なので、すぐ覚えて消化してやってくださいましたけど。あと音の跳躍が激しかったりするので、ピッチを取るのが難しいと感じた方はいたと思います。それと、僕はけっこう高音域のフレーズを書くことが多くて、「Glory -into the RM-」でSUGIZOさんにバイオリンを弾いていただいたのですが、「この音域はあまり弾いたことがない」とおっしゃっていました。みなさんきっと大変だったと思いますけど、それも含めてコラボレーションを楽しんでくださったのならうれしいです。

ーー[nZk]に参加するのは、けっこう覚悟がいりますね(笑)。

 別にSっ気を出そうと思って作っているわけじゃないんですけどね(笑)。その曲に必要な音域だったりメロディだったり、「けっこうきついキーだな」と思っても、それが曲にとってベストであることをわかってくださっているみなさんなので、コンディションを整えてレコーディング当日に挑んでくれたのはありがたかったです。

歌謡曲と洋楽のいいところが一緒になったら面白い

ーー澤野さんは劇伴でインストゥルメンタルの曲も多数作られていますが、劇伴作曲家が作るからこその特徴みたいなものはありますか?

 サウンドの構築の仕方、ギターやシンセのリフやフレージングなど、オケだけを聴いても楽しんでもらえるものになればいいなと思って作っているところはあります。だから僕の曲のミックスは、ほかのアーティストと比べると楽器の音が大きいかもしれないですね。自分が構築したサウンドとアレンジも聴いてほしいし、歌ものだから歌も聴いてほしいと思っているので、そこは自分の作るボーカル曲の特徴でもあるかもしれません。

ーー今回のアルバムタイトルは『R∃/MEMBER』ですが、ここにはどんな気持ちを込めていますか?

 僕がいつも日本語詞で書いている歌詞は、言葉選びが違うだけで根本は変わりません。子どものころや若いころに思っていたことで、今口に出すのは照れくさいけどすごく大事なこと、そういう忘れてはいけないことを、いつまでも覚えておきたいという気持ち、それを思い出すことで次につながっていけばいいなという気持ちです。歌詞の言葉にしても多くの曲の歌詞に「子ども」という言葉を入れていたり、子どもをイメージさせるものがあります。たとえば「君」という言葉が入っているときは、「君」は子どものころの自分を指していることが多いです。

ーー澤野さん自身も、子どものころの夢が今に繋がっているわけですよね。

 それはそうですね。子どものころに観た映画、マンガ、音楽、何でもそうで、それが自分の性格や考え方を形成する上で重要でした。それを今、音として出していたり、歌詞として反映させていたりすると思います。

 ーー子どものころに、初めて音楽とか歌というものを意識させられたアーティストや曲は何でしたか?

 小学4年生のころにドラマ『101回目のプロポーズ』で聴いた、CHAGE&ASKAさんの「SAY YES」です。それまでは、何となく周りの流れに合わせて、世のなかでヒットしている曲やみんながいいと言っている曲をいいと思って聴いていました。ただ「SAY YES」でASKAさんの声を聴いたときに、「何なんだこの人たちは!」と思って、生まれて初めて次の曲も聴いてみたい、アルバムを聴いてみたい、過去にどんな曲を歌っているのか知りたいと思いました。それくらい衝撃的だったんです。

ーー劇伴を意識して聴いたのは?

 小室哲哉さんが手がけた、1992年の『20歳の約束』というドラマの劇伴で、そこでサウンドトラックやインストゥルメンタル音楽というものに興味を持つようになりました。同時期に坂本龍一さんが手がけた映画音楽や、久石譲さんが手がけたジブリ映画のサントラも聴いたことで、より劇伴にのめり込んでいきました。その上で、いちばん最後に影響を受けたと言えるのが、菅野よう子さんです。

ーー『カウボーイビバップ』ですか?

 それもありますけど、岡村天斎さんが監督を務めた『WOLF’S RAIN』や、同時期に手がけていた『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』です。それまで聴いてきた音楽家は、久石さんにしても坂本さんにしても、「この人はこういう音楽だ」とイメージできる傾向というものがありました。しかし菅野さんは、『カウボーイビバップ』でジャズやファンクの作曲家だと思ったら、『WOLF’S RAIN』ではオーケストラを駆使し、『攻殻機動隊』では洋楽のようなデジタルサウンド。一方で『∀ガンダム』は、すごくダイナミックにオーケストレーションされた音楽をやっていて。こんなにもいろいろなアプローチができる音楽家がいることに衝撃を受けて、一時期は菅野さんの音楽を聴きあさっていました。

ーー菅野さんのように、いろんな音楽ジャンルをやってみたいと思いますか?

 僕は、彼女のように器用ではないので(笑)。今は、自分の好きなサウンドを軸にしながら、新しく興味を持ったサウンドにトライしていきたいと思っています。でも学生時代は、菅野さんに憧れて自分も民族音楽にトライしてみたり、ジャズっぽい曲を作ってみたりしたことがありました。その時期にいろいろな音楽ジャンルにトライしたことは、今の自分にはいい経験になっていて。いろいろな音楽ジャンルの要素を劇伴に取り入れるようになったのも、その当時の経験があればこそだと思っています。

ーー菅野さんは以前に、流行りの音楽はあまり聴かないと話していたのですが、澤野さんはいかがですか?

 僕の場合はこのアルバムもそうですけど、普段聴いている洋楽界隈の音楽からの影響が大きいですね。常にiTunesなどで気になったポップスやオルタナティブ、ロックの曲をチェックしていて、「自分もこういうサウンドをやってみたい」と思ったことが、次の曲作りに繋がっています。でも日本の音楽を聴くときは、90年代から2000年くらいのJ-POPを聴くことが多いです。歌謡曲と言うか、J-POPのメロディが自分には染みついているので、そういう日本の歌謡曲のいい部分と今の洋楽から影響を受けている部分が、うまく一緒になったら面白いだろうなと思っています。

ーー洋楽からの影響という部分で、重要になるのはやはりビートでしょうか。

 それが大きいと思いますね。自分のなかに染みついている日本人の歌謡曲的なメロディーを、どうやったらもっと違う聴こえ方になるか考えたときに、自分のなかで重要だと思うのがグルーヴやリズムです。海外の作品を聴いて、日本人にはないリズム感は何なのか、研究とまではいかないけど自分なりに追求するようになって、今も曲を作るときは、グルーヴやリズムを重視して作っています。それは歌ものでなくても、サウンドトラックを作る上でもそうです。

ーーアルバムの話に戻りますが、今回のジャケット写真は、何かのストーリーを想像させますね。

 これまではデザインチームからアイデアを出していただいて、それに乗っかっていく感じでしたけど、今回はたまたま自分のなかでイメージがあったので、それを伝えてデザインしていただきました。『R∃/MEMBER』というタイトルや、子どもという言葉が歌詞に出てくるので、ピアノの前に子どもが立っている絵が浮かんで、それをデザイナーに伝えて具現化していただいています。女の子は、「narrative / NOISEofRAIN」のジャケットに写っている女の子で、本も同じものを持っています。アーティスト写真で僕が持っているのも、それと同じ本です。シングルからアルバムにかけて、そういう流れを作っていただきました。

ーーいろいろな伏線があるわけですね。『R∃/MEMBER』というタイトル表記にも、きっと意味があるんですよね。

 そうですね。今回は、アルバム参加メンバーが今までと違うということで、「R∃」と「MEMBER」の間にスラッシュを入れて、メンバーを変えてみたいな意味を重ねています。「R∃」の「E」を逆向きにしたのは、数字の3に見えないかなと思って。1枚目は『o1』、2枚目で『2V-ALK』と必ず数字を入れてきたので、今回もどうにかして3をイメージするものを入れたくて(笑)。

ーー今作にはアニメ主題歌も多数収録されていますが、アニメはどういうものがお好きですか?

 高校のときに流行っていて好きだったのが『ベルセルク』です。ちょっとエグい描写とかエロチックな表現もあって、子どもが観るアニメとは違うところに惹かれました。『ベルセルク』は昨年第2期をやっていたので、それも観ていましたよ。ダークファンタジー系が好きで、『進撃の巨人』で劇伴を担当させていただいたときは、自分の好きなテイストの作品だったから、すごくうれしかったです。

ーーでは最後に、超アニメディア読者に一言!

 今回アルバムには、アニメタイアップで生まれた楽曲がたくさんありますし、アルバムならではのコラボでできた曲もあります。こう思うのは僕自身が劇伴作家だからかわからないけれど、「こう聴いてほしい」みたいなものはないので、自由に想像を広げて聴いてほしいです。アニメ主題歌じゃない曲を、自分が好きなアニメに照らし合わせて聴いてもらってもいいですね。どうぞいろんな聴き方で、『R∃/MEMBER』というアルバムを楽しんでください!

(プロフィール)
◆SawanoHiroyuki[nZk]
『進撃の巨人』や『機動戦士ガンダムUC』などアニメ、ドラマ、映画の劇伴を数多く手がけて人気の劇伴作曲家=澤野弘之によるボーカルプロジェクト。2014年にアニメ『アルドノア・ゼロ』EDテーマを収録したシングル「A/Z|aLIEz」をリリース。これまでに『終わりのセラフ』『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』『銀河英雄伝説 Die Neue These』などのテーマソングを担当している。

取材・文=榑林史章

(CD情報)
『R∃/MEMBER』
3月6日発売
ソニーミュージック
SawanoHiroyuki[nZk]
初回生産限定盤(CD+Blu-ray)VVCL-1409~1410 4,400円(税抜)


通常盤(CD only)VVCL-1411 3,200円(税別)


 

《超!アニメディア編集部》
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