アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらうインタビュー企画「Megami’sVoice」。2020年7月号には、メジャーデビューシングル「Altern-ate-」をリリースしたH-el-ical//が登場。「超!アニメディア」では、本誌で紹介できなかった部分も含めた、ロングインタビューをお届けする。
一音一音に意味を込めた『グレイプニル』のOP
――まず自己紹介をお願いします。
初めまして、H-el-ical//です。H-el-ical//は私、Hikaru//のソロプロジェクトで、今回テレビアニメ『グレイプニル』のOPテーマに起用していただいた「Altern-ate-」がメジャーデビューシングルとなります。
――H-el-ical//という名前の由来を教えてください。
ざっくり言うと「皆さんの力を借りて上昇する弦巻線である」という意味です。まず、「Helical」は英語で“螺旋状の”という意味があり、螺旋は3次元曲線。基本的に同じ位置をたどらず無限に上昇します。また、DNAが二重らせん構造であることもあり、螺旋からは生命、歴史、動きといったものが想像できると考えています。ここからは「H-el-ical//」を分解して説明していきます(笑)。
最初はハイフンとなかの「el」を抜いた「Hical」ですが、これは言葉遊びで……私の名前「Hikaru」と読みが同じになります。そして「el」は「elevation」の略で意味は高く上がる(上げる)ことであり、自分以外の要素(力)があるということに繋がります。最後に「//」は証明終了を表す記号といることで「そのものである」という意味を持ちます。つまり「H-el-ical//」=「Hical」+「el」+「//」=「皆さんの力を借りて上昇する弦巻線である」になります。
――『Altern-ate-』はH-el-ical//としての初シングルになります。収録曲に関して、Hikaru//さんから要望したことはありましたか?
何か希望を出したり提案したりするというよりは、アニメの世界観にしっかりと寄り添うために、ご提案のなかで精一杯やらせていただいて今回の形になりました。
――「Altern-ate-」は『グレイプニル』のOPです。『グレイプニル』という作品への印象を教えてください。
楽曲制作にあたり原作のマンガを拝読したのですが、まずストーリーがおもしろいです。参考資料だと思って読み始めたのに夢中になってしまい、あっという間に当時の既刊(第6巻まで)を読み終えてしまいました。願望を叶えるためにコインを奪い合うファンタジーですが、それぞれの正義や戦いのなかで生じる葛藤にどこかリアリティがあって。そのバランスが作品に魅了される理由のひとつだと思います。
――「Altern-ate-」の曲を最初に聞いたときの印象は?
イントロ部分に関して言えば、最初にいただいたデモより、収録した人の声でのクワイア(合唱)を入れて聞いたときのほうがゾクゾクしました。人の声が持つ微量な揺れが重なったときにしか感じられないものを実感した気がします。
――作詞も担当されていますが、歌詞を書く際に心がけたことは?
作品との親和性はもちろん、この楽曲を聞いて、少し自分と重なるような引っ掛かりを感じてもらえるとうれしいなと思いながら作詞させていただきました。作品を何度も読みながら、印象的なシーンや言葉をなぞったり、思い通りにいかない現実と向き合うときに自分ならどうするか考えてみたりして組み上げました。タイトルも作品からのインスピレーションを受けて「Altern-ate-」になりました。
――レコーディングの感想は?
Aメロはリズム、Bメロは後半にかけての盛り上がり、サビは疾走感を大切にしながら歌詞がしっかり聞こえるように、Dメロは少し謎めいた感じで……などなど、一音一音に意味や想いが宿るように心がけて歌いました。
――「Altern-ate-」の聞きどころと言われたら?
……全部!(笑)ですが、Dメロのラストはとくに歌い手として表現力が試されている気がしました。
――アニメのOPとして、映像と合わせて聞いたときはどう感じましたか?
アニメーションと一緒に聞くことで、より想像が掻き立てられるように感じました。放送開始当日、テレビの前でドキドキしながら見ていましたが、純粋にうれしかったし、感動しました。そして、自分自身もうれしかったですが、活動を応援してくださっている皆さんがアニメの放送を見て、リアルタイムでSNSを通じて「おめでとう」「うれしい」と話してくれたことが何より幸せでした。
精一杯皆さんと向き合いながら活動していきます
――カップリングの「Clea-rly-」についても教えてください。
カップリングということでさまざまな案は出ましたが、1stシングルは勢いを大切にして2曲ともアップテンポの楽曲にしようということになりました。
――こちらも作詞を担当されています。作詞でこだわったことは?
女性目線の詞なのですが、楽曲を聞いて激しさを感じたことも重なり、少し猟奇的というか……熱烈な女性像になりました。この楽曲の主人公が、個人的にはしっかりとした意思を持っている女性だと感じたので、“明確に”という意味の「clearly」というタイトルにしました。
――「Clea-rly-」のレコーディングはどうでしたか?
女性の柔らかさを残しながら強気な感じをイメージしつつ、Aメロからサビに向けて徐々に熱量を上げていくように意識しています。楽曲としては、2番サビ終わりの間奏で聴ける音作りがおもしろいので、ぜひ注目してみてください。
――表題曲はミュージックビデオも制作されていますね。
ものすごく高所の崖だったり、すぐそこが湖の崖だったり、木が生い茂る森のなかだったり……大自然での撮影でした! 何種類ものドローンを使用して撮影したので、スピード感やさまざまな角度からの姿、画の迫力を感じていただけるものになったと思います。
――ビジュアル面でのこだわりは?
メジャーデビュー作品ということで、楽曲の雰囲気は大事にしながら、自分らしさみたいなものも表現できたらいいなと思って、撮影に臨みました。
――シングルが完成しての率直な感想はどうですか?
じつはこのインタビューを受けているいまは、CDとしての完成をまだ見ていない状態なのですが(笑)、ジャケット写真やロゴを決めたり、楽曲の最終音源が届いたりして、日々少しずつできあがっていく過程を楽しんでいます! 形になってショップに並んだり、皆さんに届いたりして楽曲を聞いてもらえたときが本当の完成なので、そのときが今から楽しみです。
――今後の目標を教えてください。
H-el-ical//という名前に込めたように、皆さんと一緒にさまざまな景色を見ながら進んでいけたらと思っています。ソロプロジェクトではありますが、ひとりで作っていくわけではなく、関わってくださるすべての皆さんと繋がったからこそ作れるものを結晶として残していくような活動をしていきたいです。
――では、最後に読者にメッセージをお願いします
初めましての皆さま、そしてKalafina時代から支えてくださっている皆さま、最後までインタビューを読んでくださってありがとうございます。ソロでの活動は始まったばかりでまだまだ未熟ですが、精一杯皆さんと向き合いながら活動していきますので、これからよろしくお願いいたします。
取材・文/野下奈生(アイプランニング)
Profile
H-el-ical//【ヘリカル】3人組ヴォーカルユニット・KalafinaのメンバーであるHikaruが発足したソロプロジェクト。シングル『Altern-ate-』でメジャーデビューをはたした。
「Altern-ate-」商品情報
【発売日】発売中
【価格】
初回限定盤1980円(税込)
通常盤1390円(税込)
【レーベル】
NBCユニバーサル・エンターテイメント
「Altern-ate-」初回限定盤
「Altern-ate-」通常盤