angelaの29枚目となるシングル「乙女のルートはひとつじゃない!」が2020年4月22日に発売。発売中の「アニメディア5月号」では、本曲についてお話いただいたインタビューが掲載されている。「超!アニメディア」では、誌面に掲載しきれなかった内容を盛り込んだ長文版をご紹介。
angela
「お好きなように、思い描いたとおりにやっていただいていいです!」
――表題曲「乙女のルートはひとつじゃない!」は、TVアニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(『はめふら』)のOPです。どんな曲を作ろうと思いましたか?
atsuko 原作小説を読ませていただき、主人公であるカタリナのチャレンジ精神があるところやひとり脳内会議などでいろいろな方向に突っ走っている感じを曲にできたらと思いました。それから、中世の貴族的な世界観もあるので、クラシカルな要素を入れつつ、かわいいキャラクターが出るところも表現したいと思ったんです。最初に読んで浮かんだ印象をすべて楽曲に盛り込んでいきました。
KATSU angelaは宇宙やロボット、戦いや「生」をテーマにした世界観の作品主題歌を担当させていただくことが多いのですが、今回はアニメのプロデューサーから「これまでのangelaのイメージとは違う作品だけど、やってもらいたい」とご指名があったんですね。僕は僕で、コミカライズを読みながら、どうやってそれを裏切ろうかと考えていて(笑)、atsukoが上げてきた曲にいろいろ意見をさせてもらいました。
――舞踏会の開幕を感じさせるような印象的なイントロから始まりますよね。
atsuko カーテンが開いて、その向こうに素敵な庭園があるというイメージが浮かんじゃったので、それがそのまま出ています。
――今回の曲は、クラシックやポップスなど、さまざまな要素が盛り込まれていて、展開も激しいですが、すごく楽しそうな曲になりましたね。
atsuko 作る側としても楽しかったです! SFやバトルものも、もちろん楽しいですが、『はめふら』はangelaにはあまりなかった明るさ多めの作品なので、曲をどの方向にも振れるんです。ただ、何でもできそうだからこそ悩んでしまって、全部盛りにしたんですが(笑)。
KATSU これはキングレコードさんには内緒にしておいていただきたいんですが、ご褒美だなと思いました(笑)。作品の主題歌という責任はありつつも、angelaらしからぬ作品の曲をangelaに賭けてくれた人がいるというのがうれしくて。EDだったら作品を統括して次週まで引っ張らなければならないけれど、OPは「始まったよ! 観てね!」というポジションなので、思いっきりやらせていただきました。
――アニメの制作サイドから、オーダーはなかったんですか?
KATSU 遠回しにオーダーはあったよね?
atsuko ドタバタ劇の部分を表現してほしいというお願いはありました。でも、打ち合わせをした結果、最後に「お好きなように、思い描いたとおりにやっていただいていいです!」と言っていただいていました。それもあって、期待には応えつつ、裏切りもしたいという思いも強かったですね。実際、オファーをいただいたのは放送よりもかなり前だったので、仕上がった曲を聴いたアニメの監督さんがいろいろ詰め込みたくなったと言ってくださって。すごく気に入ってくれたみたいでうれしかったです。
――これだけ展開が激しいと歌うのは難しい部分も多いのかなと思いますが、レコーディングはいかがでしたか?
atsuko 曲の明るさと私が得意とする音域で微妙に合わない部分があったので、そこは頑張ってかわいらしさを意識しました。KATSUさんからは「もうちょっとかわいく!」とディレクションがあったんですが、あんまりかわいくしすぎると、謎のキャラクターソングみたいになっちゃうので、そのバランスを取るのが大変でした。
KATSU 僕たちは、毎年年末に「angelaのミュージック・ワンダー★大サーカス」というライブをやっているんです。そこに“アイドルあっちゃん”というキャラクターがいて、かわいくやりすぎるとまさに“アイドルあっちゃん”になっちゃうんですよ。なので、atsukoには適度に抑えつつ、angelaとしてのかわいさをギリギリで攻めてもらいました。
atsuko 出演声優の方々に渡される練習用映像にはすでに歌が入っていたらしく、水瀬いのりちゃんや鈴木達央くんからも「かわいい」って言ってもらえました。
――これまでにもいろいろなチャレンジをしてきたangelaのまた新しい面が見えそうですね。
atsuko これまで、曲のタイトルに「乙女」というワードを使ったことがなかったですから、確実に新しいですね。お嬢様言葉を盛り込んでみたり、ゲームの世界観も盛り込んだり……どれも新鮮でした。
――歌詞を書く際のポイントは、そのお嬢様言葉やゲームの世界観ですか?
atsuko そうですね。私が普段考えていることを歌詞にしてみました、という流れだと、絶対に出てこないワードばかりを盛り込んでいます。キャッチーで覚えやすさも入れたいと思っていましたし、すごく勉強になることばかりでした。自分にない引き出しを見つけて開けられるというのも、この作品に携わらせてもらえたからですね。
KATSU 僕は、「ハッピーな未来にごきげんよう」というワードがすごく気になったんです。ふだんのangelaならこんなこと言わないだろうなって……。
atsuko そんなことないよ! 前向きな曲だって書いてるよ!
KATSU でも、なんだか違和感があったんですよ。ただ、蒼井翔太くんが歌うEDのタイトルが「BAD END」だと知って、初めてしっくりきたんですね。OPの「ハッピー」から本編があってEDの「バッド」にいくことで、ふたつでひとつの物語ができたような気がして。OPとEDって別のアーティストが担当することが多いですし、それぞれの世界観で生み出すものだと思っているんですが、今回はOPとEDでひとつにつながることができた。僕たちと蒼井くんで打ち合わせをしたわけではないのにつながったということは、制作スタッフがみんな同じ方向を向いて作っているんだなと感じることができたし、そういう意味でも、この1行はあってよかったと思いました。
衝撃のMVは「絶対に観ないでください。観るなよ! 絶対だぞ!(笑)」
――カップリングの「Baby!! I’m lost!!」はラジオ「angelaのsparking!talking!show!」のEDテーマです。
atsuko これもかわいらしい曲に仕上がりました。ラジオ自体は16年ぐらいやらせていただいていて、EDは5回変わったのかな。今回のEDは、楽しいラジオ番組の雰囲気をそのまま出せたらいいなと思いつつ、恋愛の曲にしてみました。恋愛曲を書く機会がなかなかなかったので、いい機会だなと思って。
KATSU アメリカンっぽいキャッチーな曲になりましたよね。
atsuko ラジオのタイアップだから、自由度はかなり高かったんですよね。ただ、表題曲とのバランスがあるので、さすがに生死が関わるような暗いバラードはなしだよなと思って。空気感的には表題曲と似たラインの曲になったんじゃないかな。
――表題曲はミュージックビデオ(MV)も撮影されたそうですね。
atsuko ひどいです。
KATSU ひどいですね。
atsuko 私はお下げ髪にして、もっさりした衣装を着て、そばかすをつけて、メガネをかける……というスタイルでしたし。応援してくださる方のなかには、angelaにはかっこよくあってほしいという方もいるんですが、どうしても裏切りたくなっちゃって……。
KATSU 僕は演奏シーンが、あまりないですからね。
atsuko 顔ハメ画像みたいになっているよね。私たちもこの春でデビューして17年になるので、最近は「またやってる」とか「本人たちは楽しそうだな」と生温かい目で見守ってくださる方も増えたんですよ。懐が深く許してくれるのを感じるので、「また遊んでる」と思ってくれるんじゃないかな……と思うくらいひどい。
KATSU 曲を聴いてもらえれば、かっこよくやろうとしてないのは伝わると思うんだよね。
atsuko でも、きれいなドレスを着て歌ってほしいとかありそうじゃない? ただ、それは普通にしがちなこと。誰もが想像できることをやっても、刺さらないんですよ。私たちは「なんだこれ」と思われたい。トゲを作って刺さってほしいと思っているからこそのMVになりましたね。
KATSU 3年ぐらい前から、angelaってだいぶ自由を手に入れたなという感覚はあるんです。お客さんたちも、angelaなら何かやってくれるだろう、想像と違うことをやってくれるだろうと期待してくれている。だから、これもキングレコードさんには内緒にしてほしいんですけど(笑)、もうかっこいいangelaはあきらめてほしいです。
atsuko でも、MVの企画が出た段階から、キングレコードさんも誰も止めなかったじゃない? MVの監督さんも、ゲーム世界が舞台だっていうことで、それに沿った企画書を考えてくれたし。
KATSU 確かに。今回は今までのMV制作をしてくださったところとは別のところにお願いしたんですね。最初に監督がコンテを出してくれたとき、僕たちのことが苗字で書かれていて、angelaに先入観がない方なんじゃないかと感じて。これまでと違ったangelaを撮ってもらえるんじゃないかと思ったんですよね。
atsuko 実際、コンテを見ても誰もNG出さなかったから、キングレコードさんも、かっこいいangelaはあきらめてくれてるんじゃないかな(笑)。
――これからも、いろいろなことにチャレンジしていってください(笑)。では、最後に読者にメッセージを。
atsuko 期間限定盤には、衝撃のMVを収録したBlu-rayが付くそうです。かなりひどいので、絶対に観ないでください。どうしても観たかったら観てもいいですが、でも絶対に観ないでください。観るなよ! 絶対だぞ!(笑)
KATSU 表題曲は、番組本編にどうやって引っ張り込めるかを真剣に考えて作りました。蒼井翔太くんのED「BAD END」も含めてひとつの作品に仕上がっているので、ぜひOPからEDまで世界観を楽しんでもらえたらうれしいです。よろしくお願いします。
取材・文/野下奈生(アイプランニング)
PROFILE
angela【アンジェラ】ヴォーカルのatsuko、ギター&アレンジのKATSUからなるユニット。2003年にメジャーデビューし、『蒼穹のファフナー』や『シドニアの騎士』など、さまざまなアニメの主題歌を担当している。
「乙女のルートはひとつじゃない!」リリース情報
【発売日】4月22日
【価格】
期間限定盤:1,800円
アニメ盤:1,200円
「乙女のルートはひとつじゃない!」期間限定盤
「乙女のルートはひとつじゃない!」アニメ盤
(C)山口悟・一迅社/はめふら製作委員会