TVアニメ『名探偵コナン』や『探検ドリランド -1000年の真宝-』をはじめ、数々のアニメ・ゲーム主題歌を担当してきたVALSHE(バルシェ)。2018年8月22日にリリースとなったミニアルバム「今生、絢爛につき。」に収録されている「追想の理」もTVアニメ『信長の忍び〜姉川・石山篇〜』の第2期OPテーマ曲に採用されるなど、アニメと寄り添いながら精力的に活動している。今回、超!アニメディアではVALSHEにインタビューを敢行。ミニアルバムのことに加えて、アニメソングへの想いや今後の活動についてなどたっぷりとお話いただいた。
アニメの世界観をプラスアルファするのが主題歌
――メジャーデビューしてから『名探偵コナン』をはじめ、『探検ドリランド -1000年の真宝-』など、様々なアニメのタイアップ曲を歌われていますが、元々興味はあったのでしょうか?
大好きでした。アニメはもちろん、マンガやゲームも好きですね。
――では、アニメソングも?
そもそもアニメやゲームの楽曲を歌えるようになりたいという気持ちもあって音楽活動を始めましたので。その気持ちは今でも変わりないです。
――なるほど。どういうアニメをよくご覧になられますか?
ジャンプ系の作品のほか、『進撃の巨人』などいま放送されているアニメもよく見ますね。思い出補正で殿堂入りしている作品は『名探偵コナン』と『ドラえもん』です。物心ついたときからテレビで放送しているので、見たら何だか安心します。あとはおすすめされたものをひたすら見る日を作って一気に全話見るようにしています。
――一気見されるタイプなんですね!
こういう活動をしているとなかなか毎週追いかけるのが難しくて……。1週飛ばしちゃうと「なんで見れなかったんだろう」と悔んじゃうんですよね。それに、先が気になって待てない性格なので、一気に見るようにしています。
――なるほど。先ほど『名探偵コナン』が殿堂入りというお話がありましたが、タイアップ曲を歌う前から相当な思い入れがあった?
ありましたね。それこそ1話からずっと見ている作品ですし、そもそも自分の名前は『コナン』からとっていますので。
――『劇場版名探偵コナン 世紀末の魔術師』のセリフに出てきますよね。名前にするくらい思い入れがあるということはタイアップ曲を担当するとなったときの喜びも一入だった?
流れる当日まで嘘だと思っていたくらいの喜びと驚きでした。
――転機になったともいえる?
間違いなく転機になったと思います。タイアップをいただいたというのもそうですが、その時期にちょうど自分が出すCDのジャケット写真がイラストから実写に切り替わったタイミングでもあったので、いろいろな意味で転機になったと思います。
――なるほど。ゲームの楽曲を担当されたこともありますが、ゲームは普段からプレイされる?
スマホのアプリゲームのほか、家庭用ゲーム機のものなど幅広くプレイしています。時間があったら何時間でもやっていますね。
――アニメの見方もそうですが、没頭するタイプなんですね。
そうです!
――それは作詞・作曲されるときも同じ?
そうですね。基本的にはやるとなったら完成するまで動かないです。むしろ持ち越すほうが嫌なんですよ。気持ち的に終わってないと休めない。終わってから解放されたいという気持ちが強いです。
――私も同じタイプなので、気持ちはすごく分かります! 特にアニメタイアップ曲を作詞・作曲される際に意識されることはありますか?
アニメの世界観を壊さずに、むしろ作品にプラスアルファできるような立ち位置がアニメ主題歌だと思っています。よりアニメの世界観を色濃くできるもの、アシストできるものがアニメ主題歌だと思うので、どれだけ作品に歩み寄れるのかを大切にしていますね。
――そういう意味では作品の出会いによってしか生まれない曲もありそうです。
ありますね。せっかくコラボレーションさせてもらえるのに、まったく関係ない歌詞を書こうとは思わないので。やっぱり自分も作品を読んで知って、共感できる部分だったりつながりがある部分だったりを探すのが楽しいですし、そういうことができるのがタイアップの魅力だと思います。一人でコンセプトを作っているだけだと生まれないものがある。出会わなければ生まれない曲は絶対にあります。特にアニメやゲームは歌との親和性が高くなりやすいので、とても特別なものですね。作り手としても作品の一員になってアウトプットできるから、こんなに楽しいことはないです。
『信長の忍び』を読んで気づいたことを詞に
――アニメタイアップで言えば今回のミニアルバム「今生、絢爛につき。」に収録されている「追想の理」はTVアニメ『信長の忍び〜姉川・石山篇〜』の第2期OPテーマ曲として採用されています。こちらは作詞も担当されていますが、どういう想いを込めて詞を書かれましたか?
これまでアニメやゲームのテーマ曲を作詞させていただくときは、その作品の共感した部分を詞として書いていましたが、今回、初めてこれまでとは違うアプローチの仕方をしました。というのも、原作を読ませていただいたときに、「自分のなかではそういう感覚ってなかった」とハッとするようなシーンや気づきが自分のなかに生まれて、これを歌詞にすると面白いかもしれないと思って。なので、今回の作詞に関しては自分も『信長の忍び』から学ばせていただいたことが多く、新鮮でした。
――例えばどういう気づきがありましたか?
『信長の忍び』はとてもテンポがよくてポップに進む作品ではあるのですが、特に「姉川・石山篇」は戦乱の世の刹那、未来の人たちのために命を落とすというシリアスな展開が多いんです。このシリアスなシーンを見たとき、自分が後世のことを考えたことってあったかなと思ったんですよね。いま自分の曲を聞いてくださっている方々や身近な人たちと気持ちを共有したり繋いだりすることには目を向けたとしても、自分がいなくなった後のことは考えたことがなかったですし、自分の気持ちや意志を誰かに繋いでほしいと思ったこともない。そういうのってどういう感覚なんだろうと改めて考えて、自分に置き換えてみたんです。自分だと音楽社会、音楽というひとつのツールに対して残したいものってなんだろう、そもそも残したいと思うのかなど、色々と感情を巡らせました。もしかしたら今回のことをきっかけに気持ちが芽生えるかもしれない、そういう願いも込めて作詞にあたりました。
――作品にも寄り添いつつ、新たな気づきがあった曲にもなったんですね。タイトルも非常にキャッチ―ですが、これにはどのような思いが込められていますか?
サビの部分がこのタイトルのすべてを表しています。自分が『信長の忍び』を読んでグッときたのは残された人の情景や表情、セリフの部分、後に残された人々がその想いを受け取り、どう進んでいくのかです。それをタイトルとして表現するならと考えて、この言葉に至りました。
――そのサビの部分はOP映像とともにアニメで流れています。ご自身でこの映像を見たときはどう思いましたか?
どのタイアップソングを歌うときもそうなのですが、まず「本当に流れるのかな」と心配しちゃって……。放送の5分前くらいからソワソワして、疑うところから始まるんです(笑)。実際に流れ始めて聞くと「本当にかかった!」という嬉しい気持ちがまずはこみ上げてきます。また、監督によって音重視で映像を合わせるのか、はたまた言葉重視にするのかが違うので、毎回映像と音楽がどうシンクロしたのかを見るのも楽しみにしています。曲のリズムの決めのところで盛り上がるカットを持ってくる方もいれば、歌詞の意味に併せて表情を動かす方もいらっしゃいます。「ここはリズムに合わせてきたか!」と一人でテンション上がっているときもありますね(笑)。
――一視聴者としても作り手としても映像とのシンクロは気になるところですよね。『信長の忍び』では服部半蔵役の声優としても作品に参加されていますね。
デビュー当時から声優のレッスンをさせていただき、アプリゲームでデビューしてからはちょくちょくと声優の仕事もやらせていただいています。『信長の忍び』に関しては兎角5分アニメのなかでセリフを詰め込んでいるので、セリフ量とセリフ回しが早くて難しいです。また、戦国時代を描いた作品なので、言葉の言い回しや語尾が独特で苦戦したセリフもありました。ただ、大変ながらも現場にいて学ぶことは多く勉強になったので、楽しん収録できましたね。
「激情型カフネ」の1000年前を描いたリード曲
――ここまでアニメタイアップ曲「追想の理」を中心にお話をうかがってきましたが、今回のミニアルバムにはほかにも様々な楽曲が収録されています。改めてアルバム全体のコンセプトを教えていただけますか?
今回のアルバムは「この世こそ、美しい。」というキャッチをテーマとして構築していったミニアルバムです。サウンドのベースは「和」をモチーフにしていますが、ロックありバラードあり、クラブサウンドのようなノリのいい楽曲もあるというバラエティに富んだ一枚に仕上がっています。
――その中でタイトルにもなっている「今生、絢爛につき。」をリード曲に選ばれた理由は?
ちょうど1年前にこれまでのVALSHEのサウンドをまとめたようなフルアルバムを出したのですが、そのときに次は「和」をテーマとしたコンセプトの楽曲、ミニアルバムを出したいと思ったんです。そこから、ミニアルバムの助走的な立ち位置としてまずはシングルを1枚出そうと思い、今回のアルバムにも収録されている「激情型カフネ」をリリースしました。実はリード曲の「今生、絢爛につき。」は「激情型カフネ」のエピソード0的な立ち位置で、曲やMVも繋がりを感じるテイストがちりばめられているんですよ。
――そうなんですね!
はい。そして「激情型カフネ」は普段自分が展開しているデジタルサウンドに対して和の要素を取り入れるというアプローチの仕方を取っていて、「今生、絢爛につき。」でそれを100%にする、そういう構想のなかでミニアルバムを作っていきました。なので、曲が出そろった段階でこの曲をリード曲にしようというよりは、既にあるコンセプト・構想に当てはめると、この曲が必然的にリード曲だったというだけなんですよ。
――先ほどのお話を聞いて、今回のミニアルバムにシングルで発表されていた「激情型カフネ」が収録されている理由もわかりました。
世界観的に、「今生、絢爛につき。」の1000年後が「激情型カフネ」という設定になっています。ミニアルバムでは正しい時系列で収録されているので、順番に聞いていただくとより楽しめるんじゃないかな。
――「今生、絢爛につき。」については初回限定盤にMVが収録されたDVDも同梱されますね。
いつも制作チームの一人であるイラストレーターと一緒にシチュエーションや色味などをある程度コンテに書き込んだうえで、監督と共有して組み立てていきます。今回は特に色味や世界観を伝えて、それを現実世界にどうやって表現していくのかに注力しました。
――なるほど。では、改めてMVのコンセプトを教えてください。
サウンドの大きなテーマが「和」ということもあって、ビジュアル・アートワークに関してもしっかり「和」を取り入れることを念頭に置いていました。ただ、実際に「和」を表現するとなったときにジャケット写真にしてもMVにしてもこれまで通りの「和」だと困る、時代を引き戻しただけだと無難な「和」になってしまうので、今回は2018年にやる意味をちゃんと見出したかったんですよね。なので、色味、彩度、コントラスト、撮影の仕方ひとつをとっても2018年で表現する「和」になるよう意識しました。
――「和」の固定概念を崩したいという気持ちがあった?
そういうことよりはあくまでも2018年に「和」の曲をやるという意味を考えたという感じですね。だって、「和」の楽曲を突き詰めていくと、民謡や演歌などにいきつくと思うんですよ。でもそうならない理由はやっぱりいまを生きている自分たちの感覚があって、自分の思う「和」というものがあるから。それは本来の「和」とは違う次元にある気がするんですよね。今回はどちらかというと現代の「和」を見せたい気持ちがありました。これはサウンドにおいても視覚においても大事にした感覚ですね。
――なるほど。今回の曲は振り付けも特徴的ですが、これもご自身で考えられた?
振り付けは1stライブからずっと一緒にやっているNAOKIにお願いしました。VALSHEの成長過程を見てくれている方の一人なので、とても相談しやすかったです。実は昨年から「こういう作品を来年の春から夏にかけて作るからダンスもこういうジャンルを取り入れたものにしたい。だから勉強しておいてほしい。」とお願いしていたんです。
――楽曲もMVも振り付けも制作チーム一丸となって仕上げていったんですね。
そうですね。
純粋な音楽に対する探究心
――ここまでリード曲を中心にうかがってきましたが、ミニアルバムに収録されている3曲目「PERSONA」以降の曲には異なるコンセプトがありそうです。
今回のアルバムでは、サウンド面での新たな挑戦も大事にしていきたいという裏テーマを設けており、「和」にとらわれすぎずに新しいアプローチの歌詞やボーカルワークなどにもチャレンジしています。「PERSONA」や「インスタントセレブリティ」は「この世こそ、美しい。」というキャッチを意識しつつ、新たなアプローチをしていくという裏テーマが色濃く出ている曲ですね。
――作詞・作曲をすべて自分でするのではなく、作詞だけ担当されたり、逆に作曲だけ担当されたりしている曲がミニアルバムに混在しているのもそういう意図から?
それもあります。デビュー当時は決まったサウンドプロデューサーで決まった作曲者、そして自分が作詞をするというスタイルだったのですが、どこかの段階で今後の活動のためにも新しい血を入れたいという、純粋に音楽に対する探究心が湧いてくるようになって……。どうしても自分で自分の曲を作るときは自分が歌うことを想定して作るので好みの範囲で作ってしまいがちなんですよね。そうなると、自分のクセのようなものが色濃く出てしまう。それはよく言えばVALSHEカラーと言えるし、突き詰めればVALSHEが作っているよね、という似た曲になりかねない。それってもったいないと思うんですよ。だから、外側から見たVALSHEに対して提案される楽曲がどういうものなのか知るのも大事だと思っています。
――その中で自分としては意外だったという曲もある?
絶対に自分では生まれなかっただろうという曲もいっぱいあります。こんなメロディー運びはしない、こんな音使いにはならないというものに出会えるのは非常に貴重ですよね。自分で作詞・作曲ができるとしてもこういう自分の発想にないものを生むために、今後も新しい血を取り入れていくことは続けていきたいと思います。
――ここまで色々とお話をしていただきましてありがとうございました。最後に今後の目標を教えてください。
まずはリリースイベント、また9月・10月には東名阪をめぐるツアーライブが待っているので、当面の目標としてはツアーをきっちり完遂することですね。昨年のライブを経て、やりたいビジョンが見えたのでそれをしっかりと反映したツアーにしたいと思います。また、ミニアルバムでも新しい試みをふんだんに取り入れていますので、ライブでもこれまで挑戦したことがないことを取り入れたいと思っています。意外なアプローチでいくかもしれないので楽しみにしていただきたいですね。
2010年にメジャーデビュー、2年後にはデビュー10周年になります。そこに向けて何かやろうとは考えていらっしゃいますか?
考えてはいますが、10周年で何かをやりたいかというよりかは10年目に何ができるようになっていたいか、それにはこのタイミングでこういう曲を発表しないと、という構想を練っている感じです。それがどういうものなのか、今後の活動を見て確かめいただけると嬉しいですね!
●VALSHE 5th Mini Album「今生、絢爛につき。」リリース情報
発売日:2018年8月22日(水)
収録曲:
出雲.まそカがミ照るべき月ヲ白タえの誰か隠せる天ツ君かも
一雲.今生、絢爛につき。
二雲.激情型カフネ
三雲.PERSONA
四雲.インスタントセレブリティ
五雲.夕暮花火
六雲.追想の理
初回限定盤
【内容】CD+DVD
【価格】¥3,000(税込)
【特典DVD内容】
・「今生、絢爛につき。」Music Video
・Making of 「今生、絢爛につき。」
Musing盤
【内容】CD+DVD+グッズ
【価格】¥4,500(税込)
【特典DVD内容】
「今生、絢爛につき。」Dance ver.
【特典グッズ内容】
全員復唱!心に刻め!!推し七箇条豪華絢爛BIG扇子
※音楽ポータルサイト「Musing」のみでのお取り扱いとなります。
通常盤
【内容】CD
【価格】¥2,200(税込)
全共通封入特典:
アナザーJK 全4種類のうち1種類ランダム封入
VALSHE公式サイト
http://valshe.jp/
VALSHE公式Twitter
@valshe9