映画『君の名は。』のヒロイン・宮水三葉役でブレイクした若手女優・上白石萌音が、初のオリジナルアルバム『and…』をリリース。思い入れたっぷりのオリジナルアルバム発売に際し、その制作秘話を聞いたインタビューが、発売中の「アニメディア9月号」で掲載されている。その記事内でお届けしきれなかった部分も含めたインタビュー全文をご紹介!
ーー初のオリジナルアルバム『and…』では、初めての作詞にチャレンジしていますね。
いつかは自分で作詞や作曲をした曲を発表したいと思って、以前から少しずつ書きためていました。でも、曲に合わせて歌詞を書くのは初めてで、とても難しかったです。
ーー作詞をした3曲では、どれをいちばん最初に書いたのですか?
「きみに」です。作曲の藤原さくらちゃんとは以前から仲が良くて、「萌音ちゃんのことを考えたら、いっぱい曲が浮かんだ」と、4曲もデモを作ってくれて。私はそんな彼女にお返事をする気持ちで書きました。
ーーカントリーっぽい曲調ですね。
さくらちゃんの色が出ている曲です。コーラスはさくらちゃんと一緒に録ったのですが、普段のおしゃべりの延長上にある雰囲気の、私たちの等身大の曲になりました。
ーー「Sunny」は、歌詞に英語がたくさん出てきますね。
仮歌詞が、全部英語で書いてあって。メロディが英語に合わせていたので、そこに日本語の言葉をはめ込むのがとても難しくて。「それなら英語と混ぜよう!」と思ったんです(笑)。
ーー英語が得意なんですか?
大学で英語を勉強していますし、好きです。音楽も今までは洋楽を聴くほうが多かったです。雨だろうが雪だろうが、自分の心の持ち方次第で“晴れ=Sunny”になる。都会の生活で何かに追われている方が、この曲を聴いて気持ちが楽になったらいいなと思います。
ーー「String」という曲はオケが独特で、ギターとベースがなく、ストリング・セクションとドラムだけ。でも疾走感があって、すごくカッコイイですよね。
昨年末の「COUNTDOWN JAPAN16/17」に出演させていただいたときに、一夜限りでRADWINPSさんの「前前前世」をカバーさせていただいて、その時のストリングスアレンジが印象的でした。「ああいう疾走感のあるストリングスで聴かせる曲を作りたい」と思っていて生まれた曲です。タイトルは、その楽器のストリングスの他に、切れそうで切れない糸のような感情という意味、あと陸上シューズの靴紐とも掛けています。
ーー陸上ですか?
昨年のリオ五輪に出場した長距離の上原美幸選手が、中学の陸上部の先輩なんです。とても明るく文武両道の方で、小柄だけどすごくカッコイイ走りをする憧れの存在です。昨年の五輪中継で彼女の走りを見て本当に勇気づけられて、その時の感情を歌詞という形で残そうと。楽曲が疾走感のあるものだったので、すぐにこの歌詞を書こうと思いました。
ーーアルバムには、他にミュージカル調の「The Voice of Hope」や、映画をモチーフにした「ストーリーボード」といった、女優だからこその楽曲も収録。楽曲ごとに演じるような感覚はありますか?
役作りみたいなものが、それぞれの曲にあって。自分を出すというより、「書いていただいたすてきな曲を、どういう声で歌ったらいちばん良いんだろう?」と、曲主体で考えています。曲の表情や歌詞の感情をちゃんと伝えられる、声と歌い方を自分なりに模索して、もっとも寄り添える形になるように考えています。
ーーまた、TVアニメ『境界のRINNE』のEDテーマとして好評の「パズル」も収録。タイアップが決まったときは、どんなお気持ちでしたか?
小さいころから本が好きで、アニメやマンガはあまり見ないほうだったのですが、アニメ『犬夜叉』は大好きで、毎週食い入るように見ていました。その高橋留美子さんの作品に、こういう形で携われるとは1ミリも思ってなかったので、本当に驚きましたね。『境界のRINNE』のEDテーマを歌わせていただけることは、本当に光栄なことだと思っています。
ーーどういうところを聴いてほしいですか?
歌詞は、すれ違う男女の様子を俯瞰的な目線で歌っていて。疾走感がありながら、“真空”にいるような浮遊感の感じられる曲になりました。EDテーマとして、よい余韻を持たせながら作品を締めくくるものになったと思います。キャラクターと重ねて聴いていただいてもうれしいですね。今までのようにお芝居を観てもらうのではなく、アニメを通して楽曲を聴いていただいた方に、どういうふうに受け取っていただけたのか反応か楽しみです。
ーー「ストーリーボード」は内澤崇仁(androp)さんの作詞作曲。他に秦基博さんの「告白」、名嘉俊(HY)さんの「カセットテープ」と、そうそうたるアーティストの方々からの楽曲提供が話題ですね。
「ストーリーボード」は、歌詞の1行目にある「僕は主人公じゃなくて2番手の脇役でもない」というフレーズにやられました。私の軸にあるのは、「田舎にいた何者でもない、教室の隅っこがいちばん居心地が良かった私」です。でも歌詞は、そこからすごく前向きになっていくので、私もこうありたいなって。「告白」は、自分の気持ちをなかなか言い出せない気持ちを表現した曲で、私もまさしくそういう性格です。初めて聴いたときは、言い当てられたようで、ドキッとしました。名嘉さんは、親戚のお兄ちゃんのように気さくで楽しい方です(笑)。「カセットテープ」はライブで盛り上がれる曲で、早くみんなと「rollin rollin」と歌いたいです!
今作は、本当に素晴らしいアーティストの方々に、全部引き出していただきました。今しか歌えない、今のこの瞬間の全部を録ることができたので、「もっとこうすれば良かった」というような悔いはまったくありません。
ーーでは最後に、『and…』はどんなアルバムになりましたか?
デビューアルバム『chouchou(シュシュ)』はカバーアルバムでしたので、改めて“初めまして”と言えるアルバムになりました。自分の曲ができた喜びと、これまでにご縁のあった方々から楽曲提供していただけた喜びとで、考えただけで胸が温かくなる宝物のような作品です。どうぞ聴いてください。
◆プロフィール
上白石萌音【かみしらいし・もね】 13歳のときに第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞。以降『舞妓はレディ』、『ちはやふる』、『溺れるナイフ』などに出演。昨年はアニメ映画『君の名は。』のヒロイン・宮水三葉役でブレイクした。同年、カバーミニアルバム『chouchou』でメジャーデビューを果たした。
<ニューアルバム『and…』情報>
発売中
ポニーキャニオン
2,800円
秦 基博、世武裕子、藤原さくら、名嘉俊(HY)、内澤崇仁(androp)など、これまでに繋がりのあったアーティストが楽曲を提供。Superflyなどを手掛ける多保孝一による「Sunny」では、英語を織り交ぜて本人が作詞。宇多田ヒカルなどを手掛ける河野伸による「The Voice of Hope」では、ミュージカル調の歌にチャレンジ。アーティストとしてもセンスが光る8曲を収録している。