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アニメディア8月号コラム「アニメ妖怪よもやま話」全文掲載。妖怪文化研究家・木下昌美が『有頂天家族』に出てくる舞台と”天狗”について語る!

2017/8/8


 発売中のアニメディア2017年8月号で掲載しているコラム「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ときに楽しく、ときにちょっとだけアカデミックに解説するコーナーとなっている。今回はその全文を掲載します。語り部は奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美先生です。

 

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<あの世とこの世の境で暮らす次男・矢二郎> 
 人と天狗(てんぐ)、そして狸(たぬき)が織りなす模様を面白おかしく描き、今年の4~6月には第2期あ放送され、人気を博しているアニメ『有頂天家族』。原作者は『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話大系』など、数々のベストセラーを生み出した森見登美彦さんです。作者自身が学生時代を京都で過ごしたこともあってか、たびたび京都が作品の舞台になっています。
『有頂天家族』も同様で、京都を舞台に登場人(?)物らが駆け回ります。個人的な話ですが、私も学生時代、京都にある大学に通っていました。そのため、見知っている風景が多く登場するという意味でも毎回、楽しみにしているアニメです。
 さて京都といえば、かつて都があった土地であることは周知の事実。いわば、きれいに整備された都市です。しかし、整備されているがゆえに、人間が暮らすエリアと、いわゆる化け物が暮らすエリアとの境目が、わりと明確になっている土地でもあります。
 本作を観ていると、そのことがよくわかります。一例を挙げると、主人(狸)公・下鴨矢三郎(しもがもやさぶろう)の兄・矢二郎(やじろう)がカエルに姿を変えて生活している六堂珍皇寺(ろくどうちんのうじ)の井戸。この井戸は平安時代の宮廷歌人・小野篁(おののたかむら)が、冥界と行き来する際に使用していたという話が伝わるものです。小野篁といえば数々の面白い逸話が残る人物で、冥界を行き来していたことからも察することができるかと思いますが、閻魔大王(えんまだいおう)のもとで裁判の“ヘルプ”をしていたという話も伝わるほどです。
 また同寺周辺はその昔、葬送の地でした。死んだ人間が乳呑児(ちのみご)を育てるために、飴を買いに来るという話も残っています。現在、実際に「みなとや幽霊子育飴本舗」というお店で、その飴が売られていて購入することができます。話がそれましたが、つまり矢二郎が暮らす六堂珍皇寺周辺は「あの世とこの世の境」とも言うべきエリアなのです。

 

<赤玉先生と下鴨兄弟の関係や、天狗について思うこと> 
 魅力的なキャラクターが数多く登場する『有頂天家族』において、とくに目立つ存在は赤玉(あかだま)先生ではないでしょうか。赤玉先生は如意ヶ嶽(にょいがたけ)という山を治めるほどの強大な力を持つ天狗でしたが、鞍馬(くらま)天狗に居場所を奪われて出町柳(でまちやなぎ)の商店街のアパートで細々と暮らしている存在です。彼は本作において、下鴨家の兄弟の「師匠」という立ち位置でもあります。狸の師匠が天狗……。怪音や不思議な現象の理由として、狸もしくは天狗のせいだと説明づける事例はあります。その場合、両者の関係性は並列なものであり、その関係が交わることは少ないように思います。同作品のように狸と天狗の師弟関係を描くものは珍しい気がしました。
 さて、ここで少し天狗とはどういったものなのかをお話ししましょう。天狗といえば、そもそも大陸から入ってきたもので、古くは吉凶を知らせる流星または不可解な怪異現象を表すものとして考えられていました。しかしながら、飛行するという点は受け継ぎましたが、流星=天狗という認識が定着することはありませんでした。今では、御存知のように怪異現象を起こす不可思議なものという方面のみが伝えられています。そして、天狗は仏教が盛んになるに従って、仏法を妨げるものとして捉えられるようになりました。これはいかに仏法がすごいものであるかを説くための手法でもあろうかと考えられますが、疎まれているという点が、どこか作品中の赤玉先生の姿と通じるところがあります。
 このように『有頂天家族』は京都という地域的な観点から、そして登場するキャラクターから、妖怪の片鱗(へんりん)を楽しむことができる作品であると思います。今後、多くの怪異が眠る京都という地を舞台に、化け狸や天狗たちがどのように活躍するのか、アニメの続きが楽しみでなりません。

 

 

解説:木下昌美
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<プロフィール>
妖怪文化研究家。福岡県出身、奈良県在住。子どものころ『まんが日本昔ばなし』に熱中して、水木しげるのマンガ『のんのんばあとオレ』を愛読するなど、怪しく不思議な話に興味を持つ。現在、奈良県内のお化け譚を蒐集、記録を進めている。大和政経通信社より『奈良妖怪新聞』発行中。

 

●挿絵/幸餅きなこ

 



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