羽多野渉が4年ぶりのフルアルバム『Futuristic』では“都市伝説”から“飼い猫”まで「“今”を切り取ったアルバムになったらいいな」【インタビュー】 | 超!アニメディア

羽多野渉が4年ぶりのフルアルバム『Futuristic』では“都市伝説”から“飼い猫”まで「“今”を切り取ったアルバムになったらいいな」【インタビュー】

羽多野渉が、2ndアルバムとなる『Futuristic』をリリース。フルアルバムとしては約4年ぶりのリリースとなる本アルバムについて語ったインタビューが『アニメディア1月号』に掲載されている。「超!アニメディア」では、 …

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羽多野渉_アーティスト写真1016
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 羽多野渉が、2ndアルバムとなる『Futuristic』をリリース。フルアルバムとしては約4年ぶりのリリースとなる本アルバムについて語ったインタビューが『アニメディア1月号』に掲載されている。「超!アニメディア」では、記事内でお届けしけれなかった部分を含めたインタビュー全文をご紹介する。

――フルアルバムは、2014年にリリースした『W』以来、4年ぶりです。
 とてもありがたい機会をいただけているなと感じています。ふだん、声優としてはさまざまな役を演じさせていただいていますが、何者にでもなれるのが声優の面白さだと思っているんです。僕はアーティスト活動でも、その面白さを追求したいと思っているんですね。ですから、今回も新曲5曲はそれぞれ個性の違う曲を作っていただきました。

――羽多野さんからは、新曲に対して、どのようなオーダーをしたのですか?
 まず、プロデューサーの方に、自分がどういう歌を歌いたいか、どういうことに挑戦したいかをお話ししました。そして、5人の作家の方に、自分のイメージする歌詞の内容をお伝えし、作っていただく形でした。

――とくに歌詞のテーマについては、どういったものをお願いしたのですか?
 1stアルバム『W』は、“等身大の羽多野渉”をイメージしたアルバムだったんですね。いわゆる自己紹介的な1枚でもあったので、今回のアルバムはさらにそこから何段か階段をのぼり、“今”を切り取ったアルバムになったらいいなと考えていました。アルバムタイトルの『Futuristic』は、“未来へ進んでいく”というイメージで付けたんです。ですから、未来に向かう途中の、断片的なシーンや思いを歌にできたらと思って。はるかな未来をイメージした曲もあれば、未来へと進む前に立ち止まって後ろを振り返るような曲もある、というふうにしました。でも、“羽多野渉らしさ”もあったほうがいいと考えて、自分の好きな都市伝説をテーマにしてもらったり……。ただ、歌詞はそれほどディープではなく、どの曲にも自分からみんなへのメッセージや、大切にしているメッセージ、己に対するメッセージも込めました。


――「都市伝説」と聞くと、不思議なものが好きな羽多野さんらしさがかなり強く伝わってきますね。
 10曲目の「記憶の底の未来の君へ」がその曲です。記憶ではこんな友達がいたような気がするんだけど、自分以外の誰に聞いても「そんな人はいなかったよ」って言われる「イマジナリーフレンド」という都市伝説があるんです。もし「未来の自分が何かのきっかけで過去の自分に会いに来て、大切なメッセージを託してくれた」みたいなお話にしたら、SFっぽくてかわいらしいかなと思い、そのテーマで歌詞を書いていただきました。それから、5曲目の「realize」のテーマは「AI(人工知能)と人間」。これは都市伝説ではなくて社会現象ですが、僕はAIの進歩のすさまじさを感じているんです。たとえば、通信販売のWEBサイトで、過去の購入履歴から別の商品をオススメされることってありますよね。それでその商品を買うのって、AIに趣味や嗜好を左右されているんじゃないかと感じていて。このままだと、知らないうちに生き方までも左右されてしまうかもしれない。だからこそ「自分で感じ、考えることの大切さを歌詞にしたいんです」とお願いして作っていただきました。この曲の最後にあるフレーズは「変わらないためにも努力がいるし、変わることにも努力が必要で、どちらもすばらしいことだ」ということを伝えているんです。自分らしくいるために変わり続けてはいるけれど、それがほかの人から見たら変わっていないように見えるというのが、羽多野渉らしいフレーズになっているなと感じていて。それを書いてくださったことがとてもうれしかったです。

――ほかの新曲についても、教えてください。まずは「Truth For」。
 この曲では「正義や真実と言われているものが、実は人から与えられたり、流されたりしているものなんじゃないのかと自問自答することは大切だ」というメッセージを込めました。最近は、SNSやインターネットなどで、情報がすごくたくさんあふれていますよね。ちょっと強い言葉で「これが真実だ」と言われると「そうなのかな」と思ってしまうことは誰しもあると思うんです。だけど、それは自分の意見ではなく、誰かが言った意見に乗っかっただけなので、真実みたいな顔をしたうそや偽物に惑わされず、自分で感じることを大切にしていこう、という歌詞です。ただ、出来上がってきたときは、おしゃれすぎてビックリしました(笑)。

――確かに、すごくクールな雰囲気の曲に仕上がっていますよね。
 メッセージはすごく強いんですけどね。タイトルの「Truth For」って、本来は「For」のあとに対象となる何かが入ると思うんです。でも、それは僕が決めることではなく、聴いてくれたみなさんに考えてもらえればいいかなと。その考えるという行為こそ、情報があふれた時代には必要なのだと僕は考えています。

――「I Give U My…」はスペシャルな思いを込めた曲だと聞きました。
 この曲は、『A3!』という作品で知り合ったクラムボンのミトさんに「スペシャルな曲を作りたいんです」と直談判したんです。僕は「むぎ」というネコと一緒に暮らしているんですが、むぎとの曲がどうしてもほしくなって作ってもらったので、僕的にはかなりスペシャルな思いがこもっています(笑)。ミトさんは「かわいく、おしゃれに作るね」とおっしゃってくださり、上がってきたら本当におしゃれでした(笑)。この曲のタイトルは、各単語の頭文字を後ろから読むと「MUGI」になるんですよ。そんなところにまでおしゃれが詰まっていて、ビックリしました。直接、ネコだとわかるようなワードは歌詞のどこにも入っていないんですが、不器用なひとりと1匹のやりとりが綴られていて、デモが上がってきたときに泣いてしまったくらいです。

――なぜ、むぎとの曲も入れようと?
 一緒に住むようになってから、SNSなどでいろいろな方にむぎのことを見ていただいているんですね。自分が育てているというよりは、みなさんにも見守ってもらっているという感覚があったので、僕だけでなく、みなさんにとっても思い出の曲になったらいいなと思ってお願いしました。

――そして、「CAPSULE HEART」。
 成功も失敗も、つらかったことも悲しかったことも、全部が未来の自分にとっての糧だという考え方があるんです。僕も常々それは感じていたのですが、梶裕貴くんが出版した『いつかすべてが君の力になる』という本を読んで、よりいっそう気持ちが強くなって。オーディションなんて受かるより落ちることのほうが多い。落ちれば当然傷つくし、しんどくもなるんですが、その思いが自分の未来に繋がっていって、自分を助けるパワーになるっていう考え方がとても好きで。まさにそんな思いを詞にしてもらいました。でも、できあがってみたら、歌詞の世界観はオーダー通りでしたが、曲構成がすごく複雑でビックリしました。メロディアスなパートがあると思ったらラップになるし、音域もすごく広くて。難しかった分、新曲のなかでも個性が光る曲になったのではないかなと思います。

――何者にでもなれる役者の面白さをアーティストとしても作っていきたいとおっしゃっていましたが、実際個人名義で歌うときは、曲の主人公を意識しますか?
 曲に寄るところはありますが、曲によって主人公が変わるので、主人公像は意識しますし、逆に壮大な世界観を伝えるためにあえて俯瞰的な歌い方をすることもあります。『キャラバンはフィリアを奏でる』に収録されている「流転流浪」は、まさにそんな歌い方ですね。今回の新曲のなかで、「記憶の底の未来の君へ」の主人公は少年のイメージです。そんなふうに曲によっての歌声の違いも楽しんでいただきたいですね。

――ビジュアルは、モノトーンでシックな雰囲気ですね。
 『W』が、等身大の自分とアニメの中に入っている二次元の自分みたいなイメージのビジュアルだったのですが、今回は4年経って自分自身も大人になっていますし、未来を表現したいということもあったので、シンプルだけど、遊びの効いた大人の雰囲気を出させていただきました。背景もサイバーな場所にしてみたりして、こだわらせていただいています。『W』のときとは、光の使い方がかなり違いますね。シャドウ(影)の強い写真もあって、今までと違うイメージに挑戦しているんだなと感じてもらえたらうれしいです。

――実際に完成してみて、どんな1枚になったと感じていますか?
 今回はタイアップ曲もたくさん入るので、新曲を作る際に、クッションになるような曲にするやり方もあったと思うんですね。でも、加減がわからなくて攻め抜いちゃいました。結果「羽多野渉がおしゃれな曲を歌ってみた」みたいになったかな(笑)。1曲1曲が独立して楽しんでいただけるというのが、声優・羽多野渉らしいアルバムなのかなというふうに思っていますし、宝箱をひっくり返したような楽しさを感じていただける気がしています。
 実は、「Truth For」の試聴が解禁されたときに、ファンのみなさんから「こういう曲も歌うんだ」と驚きの声もいただいたんですね。意外だと思っていただけるのは、役者にとっては最高の喜びなので、これからもこういう挑戦をしていきたいなと思える、そんな1枚になりました。

――それでは最後に、アニメディア読者へメッセージをお願いします。
 アニメディアさんは、高校時代から愛読していますので、そのような雑誌に出させていただけることをありがたく思っております。自分の外側から影響を受けて出てくるものがあったり、内側から湧き出てくるものがあったりと、毎回、形の違う曲が出来上がっていくというのが、羽多野渉の音楽の面白いところかなと思いますので、これからも形にとらわれず、いろんなジャンル、いろんな表現にトライしていけたらいいなと思っています。末永く応援していただけたらうれしいです。

<プロフィール>
【はたの・わたる】3月13日生まれ。長野県出身。81プロデュース所属。2011年12月にシングル「はじまりの日に」でソロデビュー。これまでソロ名義では、シングル8枚、アルバム1枚、ミニアルバム1枚をリリース。声優としての出演作は『アイドリッシュセブン』八乙女楽役など。

<アルバム『Futuristic』情報>
発売中
エイベックス・ピクチャーズ
3,780円
 羽多野渉の約4年ぶりとなるオリジナルフルアルバム。5thシングル「覚醒のAir」から8thシングル「KING & QUEEN」までに、新曲5曲とプロローグ、エピローグ曲などを加えた、全12曲収録。羽多野の多彩なボーカル、そして表現力を堪能できる1枚に仕上がった。


取材・文=野下奈生(アイプランニング)

《超!アニメディア編集部》
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