『天気の子』監督の新海誠と、作画監督の田村篤のスペシャル対談!制作秘話を明かす「雨の描写に関しては、制作スタッフによる”総力戦”」だったと言えますね。」【インタビュー】 | 超!アニメディア

『天気の子』監督の新海誠と、作画監督の田村篤のスペシャル対談!制作秘話を明かす「雨の描写に関しては、制作スタッフによる”総力戦”」だったと言えますね。」【インタビュー】

公開前から140の国と地域での配給が決定するなど、世界中から大きな注目と期待を集める新海誠監督最新作『天気の子』。現在発売中のアニメディア9月号では、新海誠監督と作画監督の田村篤のスペシャル対談を掲載中。超!アニメディ …

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 公開前から140の国と地域での配給が決定するなど、世界中から大きな注目と期待を集める新海誠監督最新作『天気の子』。現在発売中のアニメディア9月号では、新海誠監督と作画監督の田村篤のスペシャル対談を掲載中。超!アニメディアでは、本誌に入らなかった部分を含めた特別版をお届けする。


※このインタビューは2019年7月ごろのインタビューです。

――現時点で、映画の公開から約1週間が経ったところですが、制作を終えてのご感想は?

新海 じつはまだ全然気持ちが落ち着いていなくて。ドキドキのような、緊張のようなものがまだ続いている感じです。ネットでもさまざまなご感想をいただいていて、すごく喜んでくださった方や、批判されている方など、賛否両論入り乱れているのを拝見しています。でも、それらを読んでも、まだ全然頭の中に入ってこなくて、消化しきれていない。そんな状態ですね。ただ、現時点で100万人以上の方々に見ていただけていることは、信じられないような幸せだと思っています。

田村 僕の絵描きとしての作業はだいぶ前に終わっているので、「やることはやった」とは思っているんですが、やっぱりドキドキしていますね。精魂込めて作った映像をお客さんに楽しんでもらえているのか、気になるところです。


新海 お客さんのご意見を見て安心したのは、「陽菜がかわいい」と言っていただけている点ですね。

田村 そうですね。予想していた以上に陽菜のことを受け入れてもらえて。作画監督の身として、その点だけはホッとしています。

――おふたりは本作で初めてお仕事をご一緒されたそうですね。お互いの印象については、いかがでしたか?

新海 僕らは同い年なので、「感覚的に近いものを共有している」というシンパシーを一方的に抱いていたんです。実際に会ってお話してみて、それが正しかったことを実感しましたね。

田村 僕もそう感じました。お互いに表現したいことの細かいニュアンスが伝わりやすかったのも、同じ時代を生きてきた者同士だからこそわかる感覚だったのかなと。

――田村さんが作画監督として本作の制作に参加したことで、本作のビジュアル面はどんな印象になったでしょうか?

新海 本作だけでなく、『君の名は。』でもキャラクター原案を手掛けてくださった田中将賀さんの絵は、かわいくてかっこいいだけでなく、シャープでエッジが立った「見ていて心地いい絵」なんです。僕自身も田中さんの絵が大好きだから、2作続けてキャラクター原案をお願いしました。ただ、『天気の子』は夏休み映画として子どもから大人まで、たくさんの一般層の方々が観る作品になるという意識は最初からあったので、絵柄にも老若男女に広く受け入れられる「一般性」がほしいと思ったんです。その点、スタジオジブリ出身の田村さんの絵は「一般性」を備えていて、田中さんデザインのエッジの立ったキャラクターに「身近さ」を与えてくれていると感じていました。

――田村さんは、本作で絵の監修をする際にどんなことを心がけましたか?

田村 新海監督が描いた絵コンテをつなぎ合わせて映像化した「Vコンテ」を観たとき、そこで描かれているキャラクターの表情や立ち居振る舞いが、すごくいいなと思ったんです。新海監督の絵って、「味」があって僕は好きなんですよ。だから、そのニュアンスをなるべく損なわず、きちんとお客さんに届くように心がけたつもりです。

――新海監督の絵の「味」を活かす、と。

田村 そうですね。絵コンテをもとに原画マンが描くと“うまい絵”にはなるんですけど、新海監督の「味」がなくなることがあるんです。絵的なきれいさも大事ではあるんですが、それよりもこの作品では新海監督の「味」を活かす方向に修正を加えていきました。

――本作は雨の描写もすごかったです。雨へのこだわりについて教えてください。

新海 たとえば、傘から垂れ続ける雨粒や、歌舞伎町で殴られた穂高が地面に転がるシーンで、顔に降りかかる雨粒などは、ほとんど手描きで描写してもらっています。大変な手間ですが、手描きでしか表現できない迫力があると思うんです。

田村 あのシーンはすごかったですね。担当してもらったアニメーターの方がスゴ腕で、僕の方では修正できないほど、ものすごく細かく描いてくださいました。ぜひ見ていただきたいシーンですね。

新海 雨は手描き以外にも、CGで雨を作るVFXチームも大きく貢献しています。さまざまなパターンの水たまりの波紋や、落ちてくる雨のしずく、窓を滑り落ちる雨粒、車のワイパーがかき分ける水といったものは、VFXチームが作ってくれました。作画チームの手描きの雨と、VFXチームによるCGの雨、それらの素材をコンポジット撮影チームがうまく組み合わせ、アスファルトの上に小さくチラチラと動く水などを、全編にわたってアドリブで付け加えたりしてくれました。ですので、雨の描写に関しては、制作スタッフによる「総力戦」だったと言えますね。

田村 完成品を観ると、描いた覚えのない雨だれが描写されていたりして、「これはいったい誰が!?」と驚かされることが多かったですね。

新海 電柱の表面を伝う雨だれなどは、作画で描き始めるときりがない。そのため、VFXチームや撮影チームがアドリブで入れていたんです。


――空や雲の表現も素晴らしかったです。本作では気象監修として雲研究者の荒木健太郎さんが参加していますが、荒木さんからは、どんなアドバイスがあったでしょうか?

新海 荒木さんが監修してくださったおかげで、さまざまな部分について確信をもって作れた、というのは大きかったですね。多くの部分は、まず作中で使われているセリフや用語に関するものでした。「ニュースではこういう言い回しの方がいい」とか。また、雲の表現に関しても、「高気圧のときは風が時計回りで、低気圧の時は左回りになる」など、専門の方じゃないとわからないような知識をフォローしていただけたのはありがたかったです。また、雲の表現をよりリアルにするアドバイスもありました。「この積乱雲の下は激しい雨が降っているだろうから、雲の下に黒い幕のような表現で雨を描くといいですよ」といった具合ですね。荒木さんのおかげで、雲の描写について、より説得力を持たせることができたと思います。


 

――それでは、作っていて楽しかったのはどんなシーンでしょうか?

新海 本作で音楽を担当してくださったRADWIMPSの野田洋次郎さんの声がかかる瞬間を、どのようにして情感豊かにもっていくかは、苦労もしましたけど楽しくもありました。前半でかかる「風たちの声」と、中盤でかかる三浦透子さんが歌う「祝祭」という曲と、どちらを先に使うべきかで議論したこともありました。ただ、曲が前提のシーンでもあるから、曲が決まらないとなかなか先に進めないという苦しさもあって。それでも、いただいた曲をもとにいかにシーンを構成するか考えるのは、楽しい経験だったと思います。

田村 それぞれのキャラクターをきちんと描写するため、原画マンが描いた絵に修正を加えていくのが僕の仕事です。その作業は、毎回絵を描くというよりも「キャラクターたちに会う」という気持ちがして。穂高や陽菜たちを描くこと自体がとても楽しかったんです。もちろん、厳しいスケジュールに追われるのは大変でしたが、決して嫌ではなくて、毎日会社に行くのが楽しみでした。

新海 いや~、そういっていただけるとありがたいですね。

――ヒロインの天野陽菜のデザインに関しまして、デザインの方向性は描いていくうちに見えきたのでしょうか?

田村 むしろ、制作期間中はずっと探り続けていたように思います。陽菜を描くときは、十代のはつらつとしたかわいらしさだけでなく、“100%の晴れ女”がもつ神秘性も両立させなければならないと思っていたんです。シーンごとのニュアンスによる見え方の違いは特に意識しました。


 

――帆高と陽菜、そして凪の3人でホテルに泊まった際、髪を下ろして少し大人っぽい表情を見せた陽菜の顔が、特に印象に残りました。

田村 あのシーンの陽菜の絵はいいですよね。あのカットは京都アニメーション出身の植野千世子さんという方が描いているんです。植野さんは京アニ独特の持ち味と、キャラクターの表情が持つ「奥行き」を表現できる方なんです。僕も一度他のシーンとの整合性をとるために修正を乗せてみたんですが、元の絵の方が断然よかったので、そのままいかせてもらいました。

――どおりで陽菜の雰囲気が少し変わったと思いました!貴重なお話をありがとうございます。最後に、本作を2回目以上鑑賞するリピーターに向けて、注目ポイントを教えてください。

新海 初回は物語を追うので手いっぱいだと思いますが、2回目以降はぜひ歌の歌詞も集中して聴いていただきたいです。短い歌詞に作品の世界観そのものが詰まっているので、新しい発見があるかと思います。また、「『君の名は』のキャラクターがここにいた」とか、「ここにこんな人が映っていた」という『ウォーリーを探せ』的な楽しみ方もできますね。ある作品のコスプレイヤーの声を花澤香菜さんがやっていたり、悠木碧さんの声が20~30分に1回はどこかで聞こえたり。マニアであるほど楽しめるネタも豊富です。

田村 じつは新海監督もどこかにいるので、ぜひ探し当てていただきたいですね。

新海 あれは、絶対にわからないと思いますけどね(笑)。また、裏設定的なところなんですが、裏路地で水の塊が空中に浮いているのを発見する中学生2人組がいまして。その片方のお父さんは、じつは穂高たちに職務質問しにくる警官なんです。もみあげに特徴があって、顔もそっくりなので注目してみてください。

取材・文/福西輝明

映画『天気の子』作品概要
2019年7月19日(金)全国東宝系にて、大ヒット公開中
原作・脚本・監督:新海誠
音楽:RADWIMPS
声の出演:醍醐虎汰朗 森七菜 本田翼/吉柳咲良 平泉成 梶裕貴 倍賞千恵子/小栗旬
キャラクターデザイン:田中将賀  
作画監督:田村篤  
美術監督:滝口比呂志
製作:「天気の子」製作委員会
制作プロデュース:STORY inc.
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
配給:東宝

映画『天気の子』公式サイト
https://www.tenkinoko.com/

©2019「天気の子」製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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