「チェンソーマン」「着せ恋」まで!座りポーズで魅了する「ぬースト」10周年!その軌跡を画像コレクションと共に辿る開発者インタビュー! | 超!アニメディア

「チェンソーマン」「着せ恋」まで!座りポーズで魅了する「ぬースト」10周年!その軌跡を画像コレクションと共に辿る開発者インタビュー!

ただ飾るだけでなく、カップ麺のふたのストッパーとしても楽しめるフィギュアとして誕生したフリューの人気プライズ(クレーンゲーム景品)シリーズ「ぬーどるストッパーフィギュア」。誕生から10周年を画像と共に振り返る開発者インタビュー。

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「チェンソーマン」「着せ恋」まで!座りポーズで魅了する「ぬースト」10周年!その軌跡を画像コレクションと共に辿る開発者インタビュー!
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  • 「すーぱーそに子」 (2014.11)
  • 「刀剣乱舞ONLINE」-加州清光-(2015.12)
  • 「刀剣乱舞ONLINE」-へし切長谷部-(2016.5)
  • 「刀剣乱舞ONLINE」-大倶利伽羅-(2016.11)
  • 「Fate/Grand Order」~キャスター/ニトクリス~(2019.3)
  • 「Fate/Grand Order」~フォーリナー/葛飾北斎~(2019.6)

ただ飾るだけでなく、カップ麺のふたのストッパーとしても楽しめるフィギュアとして誕生した人気プライズ(クレーンゲーム景品)シリーズ「ぬーどるストッパーフィギュア(以下、ぬースト)」。プライズ事業を手掛けるフリュー株式会社が2014年11月に展開開始してから、10周年を迎えた人気プライズシリーズです。

第1弾の製作は、2014年11月に商品化された『すーぱーそに子』。その後は『刀剣乱舞ONLINE』や『初音ミク』『呪術廻戦』『【推しの子】』などなど人気作品を多数商品化して性別や国を問わずファンを増やし続けてきました。その累計販売個数はなんと700万個超!(2025年3月末時点 日本国内のみ、フリュー調べ) 

「ぬースト」の一番の魅力は、カップ麺のふたをおさえるというコンセプトを持たせながらキャラクターの魅力を引き出す、表現の緻密さです。オリジナルのポーズや衣装、コンセプトで開発し、そのこだわりぬかれた世界観の表現力は世界中の多くのファンを魅了し、愛され続けてきました。

本稿では、そんな「ぬースト」の商品開発を担当されているフリュー株式会社 世界観事業本部 キャラクターMD事業部 開発1部の吉田 凌さんを取材し、「ぬースト」の製作・開発秘話に加え、産みの苦労と喜びがあふれる開発の舞台裏を公開してもらいました!フィギュアやホビー製作で実績豊富な企業ならではの取り組みに迫ったインタビューです。

なぜカップ麺の蓋を押さえるフィギュアに? 「ぬースト」誕生秘話

――「ぬースト」は、フィギュア単体としても成立するのに実用品でもあるところがとてもユニークですよね。開発のきっかけはどんなことだったんですか?

吉田:弊社は2002年にプライズ業界に参入し、業界では後発にあたります。競合するメーカーさんも超大手ですから、参入当時同じようなプライズを出そうとしても差別化が難しく、人気IPを扱わせていただくために版元(キャラクターの著作権管理を行っている企業)さんへ自社のカラーを訴求する必要がありました。座りポーズのフィギュアはまだ珍しかったですし、座らせることで「カップ麺の蓋を押さえる実用品」として打ち出すこともできる、このオリジナリティがあれば、版元さんの許諾を得られるんじゃないかと考えたわけです。

おかげさまで版元さんやアミューズメント施設の方からすごく好評をいただいて徐々に拡大していき、「座りポーズといえばぬースト」と言っていただけるようになりまして、現在まで合計700万個ほどを売り上げるまでになりました。

当初はペットボトルやメガネを支えるポーズのフィギュアも商品化したのですが、「ぬースト」は特に応用範囲が広いというか、飾り方などのバリエーションがあるので、長く支持していただけているのかもしれないですね。

――カップ麵の蓋のような特殊な場所で安定してポーズを取らせるのは大変なのでは?

吉田:そうなんです。「バランスを崩さずにちゃんと飾れる」ことに、すごく注意を払っています。人間だと髪の毛と手足では同じ体積でも重さが違いますよね。フィギュアは髪も足も同じプラスチック樹脂でできていますから、全部同じ重さなんです。人が自然に座るポーズですら、フィギュアのデザインによっては前にこけたり、後ろに倒れたりしてしまうことが珍しくない。ものによっては、フィギュアの中に重しを入れて重心を調整することもあるくらいなんです。カップ麺の逆円錐台型の容器には座れても、机の角のような直角の場所では曲げた足が突っ張ってお尻が浮く……なんてこともありますね。

――今年で10周年ということですが、この10年で変化を感じていることはありますか?

吉田:「ぬースト」最初の商品である『すーぱーそに子』もそうですが、当初のラインナップは美少女キャラクターが基本でした。そこから幅が広がって、今は少年誌系やVTuber、二頭身のマスコットキャラまで手掛けるようになりました。ユーザーも、いわゆるコアなコレクターから始まって、今はデスクやパソコンの上、本棚や玄関に気軽に飾ってくれるような幅広い層に手に取ってもらえるようになったと感じています。

「製作担当者わかっている!」と言われるような、ツボにハマる作品を作りたい

「刀剣乱舞ONLINE」-へし切長谷部-(2016.5)

――この10年で、反響が多かった商品はどんなものですか?

吉田:『刀剣乱舞ONLINE』の「ぬースト」をずっと手掛けてきているのですが、その中でも「へし切長谷部」の正座姿の「ぬースト」は反響が大きかったですね。イベントでお披露目をした際も「待ってました!」というお声をたくさんいただきましたし、目つきや衣装の造形など細部にこだわるがゆえに商品化まで時間がかかりましたが、それだけに企画やクオリティにも満足していただけたと感じています。

「Fate/Grand Order」~フォーリナー/葛飾北斎~(2019.6)

『Fate/Grand Order』の人気キャラクター、「葛飾北斎」の「ぬースト」も、凝ったポージングや豪華な和装、取り外せる大きな筆など高いクオリティで作ることができて、お客様もすごく喜んでくださったことを覚えています。「ぬースト」のフィギュアとしてのクオリティを再評価していただくきっかけになった商品ですね。

ほかにも、『初音ミク』の「ぬースト」は、毎回さまざまなイラストレーターさんにお願いしていて、いろいろな『初音ミク』が見られるということで好評いただいています。ボーカロイド自体がグローバルで大変人気があるので、海外のお客様からの反響が大きいのも印象的ですね。

――吉田さんが「ぬースト」やプライズの開発を続けている原動力とはなんですか?

吉田:すごくありがたいのは、ユーザーさんがSNSなどですごく分かりやすく反応してくれる商品だということですね。 色んなお声をいただきますが、「すごく良い」と言われると嬉しいですね。特に、オリジナルのポーズや衣装、コンセプトで出した商品に「フリューの担当者、わかってる!」、「○○でぬーどるストッパー作るなら、こういうポーズだよな~」みたいな感想がつくと、開発者冥利につきますね。

――「わかってる」は確かにうれしいですね。

吉田:そうなんです。ユーザーさんと同じ目線でキャラクターや作品に愛着を持っているからこそ「わかる」ことなので。例えば『ウマ娘 プリティーダービー』のファインモーションは、ぬーストの企画当時ゲームでは未実装でした。でも「ラーメンが大好き」という設定を知って「ウマ娘でぬーストを作るならこのキャラクターは外せない!」と提案し、版元さんにも許諾いただきました。もちろんデザイン面でも、細かいキャラクターの設定まで「このキャラはこうだ」と思ったら反映させますね。

――SNSなどでのユーザーさんの反応は、普段からチェックしているんですか。

吉田:チェックしてますよ!SNSだけでなくアミューズメント施設やイベントの様子を見に行くこともあります。「ぬースト」ではないのですが、ライブ帰りの某作品ファンの方々を見かけて「だいぶ前にリリースしたフリューのぬいぐるみをみんなこぞって付けてるな、なんでだろう?」と調べたことがあって。ファンの方の投稿をきっかけに「SNSでこのプライズが可愛い!」と話題になっていたことを知った時は、嬉しかったですね。

ファンの方の声はしっかり見ていますし、フリューではファンと同じ熱量を持った現場担当者が「これをやりたい!」と手を上げて商品化することが多いです。上層部ではなく作品やファンの声をよく見ている現場担当者が裁量を持っているからこそ、スピード感をもってファンの方が本当に欲しいと思うものを提案できていると感じています。

「ぬースト」では、SNSで「#つくってぬースト10周年 キャンペーン」と銘打って、「ぬーストにしたい!」と思う作品名・キャラ名をハッシュタグ付きでポストしてもらったこともあります。ファンの方には今後の展開をぜひ楽しみにしていただきたいですし、フリューはファンの方の声を大事にしているので今後もぜひ多くのご意見を寄せてもらえたら嬉しいです。

開発の舞台裏を大公開!実録「ぬースト」ができるまで!

1.「企画」:キャラクターの魅力の最大化とビジネス観点の「引き算」を両立する

吉田:プライズの製作は短い場合でも1年前から、ものによってはもっと前から企画を進めています。例えば「原作のポーズを再現するのか、オリジナルのポーズを作るのか」といったことを版元さんとやり取りをしながら、「ぬースト」でキャラクターの魅力を最大化するための要素を決めていきます。

また、プライズのフィギュアは「引き算」とよく言われます。販売品ではなくゲームの景品なので、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)で1個当たりの小売価格上限が決められているんです。製作予算の上限が決まっている中で、クオリティを追求しながらも製造費のかかる仕様を引き算していき、予算内に収めるのは一番難しいところですね。それだけに、企画の初期段階からいかにクオリティと両立するかをあれこれ考えていきます。

2.「イラスト制作」:「ぬースト」として立体化できるかを考慮

吉田:フリューで描き起こすこともありますし、イラストレーターさんに企画をお伝えして描いていただくこともあります。例えば、そのキャラクターらしいポージングを提案することに加えて、「座りが浅くて重心が前になりがちなので髪の毛を後ろへ流してください」、「足先があまり内側に入らないようにしてください」といった、立体化したときにバランスをとるためのオーダーも伝えます。

3.3Dモデル・原型製作」:イラストを元に3Dモデルから原型を作る

吉田:フィギュアは、まず「原型」という“量産品の基になる1体”が作られ、この原型から金型を起こし、金型の中に樹脂を流し込んで量産を進めます。数年前まではいわゆる「手原型」が主流だったのですが、最近はまずソフトウェアでイラストを元に3Dモデルを作って、3Dプリンターで原型を出力する方が主流になってきました。

吉田:基になる1体ですから、ここで厳しくチェックします。ポイントは「フィギュアとして良いか」と「商品として成立するか」。「フィギュアの良さ」というのは、キャラクターらしいかわいさが表現できているか、デザインの細部まで本来の設定に沿っているか。「商品としての成立」は、造形としてあり得ないものになっていないか、予算内で量産できるか……3Dプリンターでは問題がなくても、金型から外す際に細かい部分が引っ掛かってしまうなんてこともありますから。
版元さんや、場合によっては原作者さんにも監修していただいて、だいたい3~4回、多いものでは10回ほどやり直したりすることもあります。

4.「デコマス(デコレーションマスター)製作」:たった1体しかないフィギュア

吉田:原型、つまり形状がOKな状態になったら、次はその形状に彩色を施した「デコマス(デコレーションマスター)」を1体作ります。主にフィニッシャーさんと言われる専門職の方が、ひとつひとつ設定に合わせて色味を調合し、目にデカール(転写シート)を貼って仕上げます。量産品とは作り方も違うので、1体の相場はとても高価になります。
仕上がったらまた監修を受けて、OKとなったらこのデコマスで宣材写真などを撮影します。専門の撮影スタジオと相談しながら世界観を表現し、CGではなく背景や小物まで実物で撮影しているんです。

5.「金型づくり」:原型から量産へと調整

吉田:実は、ここまでの工程で完成まであと半分といったところ。原型と量産は全然違うものなので、量産できるようにするまでも長いんです。「金型からスムーズに抜けるように、引っかかっているスカートのプリーツ部分をわずかに埋める」、「目の印刷位置を0.2mm動かす」といった風に、工場とミリ未満の調整を繰り返していきます。 3Dプリンターで作った原型やデコマスと、金型で作った量産品はそもそも作り方が違うので、どうしても違いが出てしまう。ただ、お客様はデコマスを見て楽しみにしてくださっているので、可能な限りデコマスに近づけたい。だからスケジュールが許す限り、何回でもやり直します。

6 .「完成・納品」:パッケージやポスターの製作まで

吉田:最後の行程、パッケージや、クレーンゲーム筐体に貼られるポスターのすべてを開発者が一貫してディレクションします。フリュー株式会社のプライズ開発の特徴として、企画担当者が前述の1~6の工程すべてを担当する点があります。原型を作る人と量産を進める人が同じだからこそ、よりかわいさやクオリティにこだわることができていると感じますね。最終的に出来上がるプロダクトにも、開発者のこだわりが反映されるのを実感しています。

ひとりで最初から最後まで、さまざまなプライズを担当できる会社だから面白い

――吉田さんの所属される部署は「世界観事業本部」というのですね。

吉田:ちょっと珍しい名前の部署ですが、ただキャラクターの商品を作るのではなく、キャラクターの背景や、世界観を含めて商品化するというところからきています。だからキャラクターの世界観を理解し大事にするようにしていて、商品の担当ではなく、キャラクターごとに担当するようになっているんです。私も、担当するキャラクターのプライズはすべてに携わります。

――ということは、「ぬースト」以外のプライズも吉田さんが作ったりするのですか?

吉田:そうです。プライズでは、実は「ぬースト」以前から“かわいい”ぬいぐるみも主力商品となっています。他にも、雑貨などのプライズもあります。先ほど説明した通り一人の開発者が最初から最後まで、しかも、フィギュアもぬいぐるみも、雑貨までさまざまな商品ジャンルを担当できる。自分のやりたい商品を企画できる可能性があるところも、この仕事の面白さかもしれないですね。
フリュー株式会社はもともとオムロン株式会社の新規事業開発プロジェクトとして、1997年にプリントシール機事業をスタートしました。2002年にはアミューズメント施設さんとの関係性を活かしてプライズ事業に参入し、その後は世界観事業としてプライズのほかに高品質ホビーブランド『F:NEX(フェネクス)』、お手頃価格が魅力の『TENITOL(テニトル)』などのEC物販、ゲーム・アニメなども手掛けています。他の事業にもぜひ注目していただきたいです。

――では最後に、これからの「ぬースト」について、展望を教えてください。

吉田:今後は展開数をさらに増やしていく予定で、キャラクターの魅力を表現し続けるのはもちろん、「ぬースト」面白い!と思ってもらえるような新しい企画を仕込んでいこうと思っています。10周年を機に様々な販促施策も予定していて、より多くの方に「ぬースト」を知っていただけるように頑張っていきたいです。

【インタビュイーのプロフィール】

フリュー株式会社 世界観事業本部 キャラクターMD事業部 開発1部 開発1課 リーダー 吉田凌さん
2017年に新卒入社。プライズの営業担当を経て、2020年3月より、プライズの開発に携わる。2024年からはチームリーダーに就任、商品開発の傍ら、チーム企画の精査、予算管理、商品開発の進捗管理なども手掛ける。代表的な担当IPは東方Project、ウマ娘 プリティーダービー、北斗の拳、勝利の女神:NIKKE、【推しの子】、ラブライブ!シリーズなど。



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《丸田カヨコ》
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