永遠の友情が可能になるとしたら? 「ふれる。」脚本・岡田麿里が向き合った、青年たちの心【インタビュー】 3ページ目 | 超!アニメディア

永遠の友情が可能になるとしたら? 「ふれる。」脚本・岡田麿里が向き合った、青年たちの心【インタビュー】

絶賛公開中の映画『ふれる。』。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などで知られる長井龍雪監督、脚本・岡田麿里さん、キャラクターデザイン&総作画監督・田中将賀さんが送り出す、オリジナル長編アニメーション映画だ。

特集
注目記事
『ふれる。』キービジュアル(C)2024 FURERU PROJECT
  • 『ふれる。』キービジュアル(C)2024 FURERU PROJECT
  • 『ふれる。』場面カット(C)2024 FURERU PROJECT
  • 『ふれる。』場面カット(C)2024 FURERU PROJECT
  • 『ふれる。』場面カット(C)2024 FURERU PROJECT
  • 『ふれる。』場面カット(C)2024 FURERU PROJECT
  • 『ふれる。』場面カット(C)2024 FURERU PROJECT
  • 『ふれる。』場面カット(C)2024 FURERU PROJECT
  • 『ふれる。』場面カット(C)2024 FURERU PROJECT

◆もともと人型だった「ふれる」

――秋たち3人の故郷が島になった経緯はあるのでしょうか?

岡田 「ふれる」がなぜ生まれたのかを説明するときに、場所としてのリアリティーがほしいと思いました。どうして「ふれる」は心をつなぐのか。心をつなぎたいという状況はどのようなものなのか。そこを考えていくうちに、島の存在が生まれていきました。あとは単純に、「フェリーに乗って上京するシーンが描きたい」と誰かが言ったのも理由のひとつです(笑)。

――「ふれる」は言葉を発しないキャラクターですが、物語の随所に登場します。「ふれる」の登場シーンはどのような意図で描きましたか。

岡田 いつもいてくれて当たり前の存在として描きました。「ふれる」がいるから3人がいつも一緒にいられる。能力よりも、「ふれる」がいるからこそ生まれる空気感を意識しました。これは我が家の猫に感じることなのですが、自由に見えながらもなんとなくいつもこちらに意識があると言うか、家族を一つにしようと気にかけてくれているように見えるんです。だからなるべく、さりげないシーンにも「ふれる」の視線があるように心がけました。

作画に関しては、とにかく見ていて癒やされるキャラクターにしてほしい、とお願いした記憶があります。「ふれる」の何気ない存在感は、スタッフの皆のおかげでとても高まりました。「きゅるっとした目で見上げている」とか、「いつの間にか近くにいる」などの描写が、演出や作画でとても魅力的に描かれていると思います。

――本作はキャラクター同士のリアルなやりとりと、「ふれる」というファンタジックな存在のバランス感が絶妙です。脚本を書くときも、リアリティーとファンタジーのバランスを意識したのでしょうか。

岡田 そこはすごく悩んだところでした。私たちの作品作りはいつも長井監督の中でOKなゾーンとNGなゾーンがしっかり分かれているので、そこに「これだったらどうですか!」とひたすら球を投げて、「ダメ!」、「これはいいよ!」と返され続ける感じなんです(笑)。今回もかなりたくさんの球を投げましたね。

実は最初の提案では、「ふれる」は人間の姿をしているお兄ちゃんのような設定だったんです。すると監督から「人型で話せるキャラにしてしまうと、3人の関係性の話が薄まってしまう」とNGが出て。秋たち3人だからこそ起こるファンタジーってなんだろう?と悩みました。

でもそのおかげで、あくまで前提としてリアルな人間関係がある。ファンタジーはその味つけというバランス感が求められているのだと気づけて。「ふれる」はあくまで共同生活を見守るマスコット的な存在として描いていって、知らぬうちに物語を支配しているような形にしようと思いました。

――「ふれる」を介して心がつながる、という設定は最初から決まっていたのでしょうか。

岡田 「ふれる」の能力は段階があって、第一段階の「考えがわかりあえる力」というのはみんなで打ち合わせをしているときに出た意見でした。ただ、それを友情の問題にどうつなげればいいのかが難しくて。次の段階の「この能力には隠された一面がある」というマイナスにふれてしまうところは、脚本を書きながら思いついたところです。

「ふれる」は純粋に「3人が仲良しだとうれしい」という一点で動いている。それこそ秋たちよりも強く、秋たちの友情を願っている存在なんです。なぜそんなことを願うんだろう、なぜそんな力を使おうとするんだろうと考えていくうちに、気づけば「ふれる」に対して感情移入していました。もちろん3人の物語でありますが、ファンタジー要素である「ふれる」の健気さにも注目していただきたいです。

――最後に読者へのメッセージをお願いします。

岡田 秋たちと同年代だった自分と今の自分では、意外と変わらない部分が多い気がしているんです。だからこそ、当時を思い出した時に懐かしくもあるし、「そう人なんて変わらないよね」となったりもする(笑)。いろいろな年代の方に、それぞれの現在を重ねて見ていただけたらうれしいです。

オリジナル長編アニメーション映画『ふれる。』


永瀬 廉 坂東龍汰 前田拳太郎
白石晴香 石見舞菜香 
皆川猿時 津田健次郎

監督:長井龍雪
脚本:岡田麿里
キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
音楽:横山 克 TeddyLoid
監督助手:森山博幸
プロップデザイン:高田 晃(※はしごだか)
美術設定:塩澤良憲 榊枝利行(アートチーム・コンボイ)
美術監督:小柏弥生
色彩設計:中島和子
撮影監督:佐久間悠也
CGディレクター:渡邉啓太(サブリメイション)
編集:西山 茂
音響監督:明田川仁
制作:CloverWorks
YOASOBI「モノトーン」
(Echoes / Sony Music Entertainment (Japan) Inc.)
配給:東宝 アニプレックス 
製作幹事:アニプレックス STORY inc. 
製作:「ふれる。」製作委員会

(C)2024 FURERU PROJECT
絶賛公開中


小説 ふれる。 (角川文庫)
¥693
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ふれる。 Spin-off Wanna t(ouch) you (電撃文庫)
¥726
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《ハシビロコ》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース