- アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第50弾は、『異世界スーサイド・スクワッド』のヴィランたちの魅力に迫ります。
今期の夏アニメで異彩を放った『異世界スーサイド・スクワッド』。アメリカのDCコミックスを原案とする作品で、ハリウッドでも映画化されているDCのヴィランたちを、昨今の日本アニメで流行の“異世界転生”させてしまおうという大胆な発想だ。アニメのグローバル化を象徴するような作品と言える。
この組み合わせは思いのほか、面白い化学反応を生み出した。DCの生み出したキャラクターを、日本アニメのキャラクターデザインと世界観で暴れさせた結果、どちらの良さも損なうことのないユニークなアクション作品として成立していた。
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◆個性あふれるDCヴィランたち
『スーサイド・スクワッド』のコンセプトは、政府高官が特殊能力を持つ犯罪者たちを集めて特殊部隊を結成させ、危険な任務に挑ませるというものだ。集められた連中の出自はスーパーヒーローに対抗するヴィランであって、凶悪犯罪者ばかりである。一癖も二癖もある連中ばかりが集まっているのだが、その甲斐もあって、どいつもこいつもキャラが濃い。
『異世界スーサイド・スクワッド』で登場するのは、デッドショット、ハーレイ・クイン、ピースメイカー、クレイフェイス、キングシャークの5名だ。デッドショットは凄腕のスナイパー。娘を愛する一方で口が悪く、天然で人をイラつかせるようなところがある粗暴な男だ。だが、任務時は冷静沈着でチームのまとめ役でもある。
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ハーレイ・クインはかつて精神科医だったがゴッサムシティの犯罪王・ジョーカーに惚れて以来、狂ったように彼に付き従うようになる。本作では天真爛漫なヒロインといった活躍を見せつつも、根は狂っている面をしばしば覗かせ、狂気という点ではメンバー随一である。
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ピースメイカーは、平和のためなら手段を問わないイカれた男だ。本作でも平和の任務遂行のためにエルフを笑顔で拷問したりする。クレイフェイスは売れない俳優の伊達男だ。彼は、2本の実写映画には登場しないキャラクターで、知名度がやや低いもしれないが、アニメ制作者のお気に入りなのかもしれない。重要な局面でかなり活躍していた。だが、思い込みが激しく面倒くさい性格だ。キング・シャークは知能指数の低いサメだ。食欲旺盛で食べることばかり考えている。
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それぞれ個性がはっきりしていて「キャラ立ち」という点では申し分なく、DCコミックスのキャラクターの魅力を再確認できる。日本アニメ風にアレンジされてはいても、オリジナルのキャラクターの良さを本質としては失っておらず、それぞれの個性が時に噛み合い、時にバッティングしながら、ヴィランらしいムチャクチャさで事態を解決していく。
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◆悪党はヒーローよりも自由?
異世界に着いたスーサイド・スクワッドの連中は、ある王国と帝国の戦いに巻き込まれてゆくのだが、その裏にある陰謀を最終的には打ち砕く。異世界でもお尋ね者状態は変わらず、投獄されたり、バーで暴れまわったり、囚人を解放して軍隊を結成したりとやりたい放題やった挙句に王国を転覆。異世界のお姫様に“解放の象徴”として崇拝される展開になっていく。
彼らの戦い方は実にヴィランらしい。拷問もいとわないし、ハーレイはジョーカーとの犯罪の思い出から奇想天外な解決策を思いついては局面を打開させる。彼らが悪党だからこそ、型にはまらず、戦局を打開できるという展開になるのが本作の面白いポイントだ。
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そして、その姿勢が強権的な母親の言いなりになっていた異世界の姫・フィオネを解放させることにつながっていく。彼らは凶悪犯罪者なので本来は投獄されて自由に生きられない連中なのだが、それは自分らしく生きた結果でもある。そんな連中が異世界に放り出されて、自由に振舞う姿は、自分を押さえつけて生きてきたフィオネには鮮烈な印象だったのだ。
誰かを救わねばならないヒーローよりも悪党のほうが自由に見える――。『異世界スーサイド・スクワッド』は、真っ当に生きてきたけど不自由なお姫様を、悪党がその生き様で解放する物語なのだ。
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◆悪のカリスマ・ジョーカーの存在感
そんなヴィランたちの中でもひときわ自由を謳歌しているのは、やはりジョーカーだ。本作において、ジョーカーはチームの一員ではなく、第1話に登場して以降はハーレイの回想に出てくるのみ。それでも際立った存在感を発揮し、最後には大きなサプライズを持って待ち構えている。
今回のジョーカーは、イカれているが知的でインテリ風な印象を与える。超然とした悪のカリスマの雰囲気は健在で、何を考えているのかわからない。梅原裕一郎の芝居も深みがあって素晴らしい。
もし2期があれば、ジョーカーの本格的な活躍が見られるだろう。アメリカが生んだキャラクターを日本の想像力と世界観で膨らませた本作は、アニメの新しい可能性を提示した。ぜひ本作の続編、そしてこれに続く新たな日米クロスオーバー企画を見てみたい。
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