「ペルリンプスと秘密の森」気鋭のブラジル人監督アレ・アブレウが来日!「音楽」岩井澤健治監督とのスペシャル対談レポ | 超!アニメディア

「ペルリンプスと秘密の森」気鋭のブラジル人監督アレ・アブレウが来日!「音楽」岩井澤健治監督とのスペシャル対談レポ

『父を探して』のブラジル人監督アレ・アブレウによる最新作『ペルリンプスと秘密の森』が、12月1日に日本公開を迎える。これに先立ち、11月14日に先行上映が開催され、来日したアブレウ監督が『音楽』の岩井澤健治監督とともに登壇。スペシャルな対談が実施された。

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映画『ペルリンプスと秘密の森』先行上映記念 アレ・アブレウ監督×岩井澤健治監督スペシャル対談(c) Buriti Filmes, 2022 
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アカデミー賞の長編アニメーション賞に南米の長編アニメ作品として初ノミネートされた『父を探して』のブラジル人監督アレ・アブレウによる最新作『ペルリンプスと秘密の森』が、12月1日に日本公開を迎える。これに先立ち、11月14日に先行上映が開催され、来日したアブレウ監督がアニメ映画『音楽』でスマッシュヒットを飛ばした岩井澤健治監督とともに登壇。<日本と世界、そして音楽>を軸にしたスペシャルな対談が実施された。

アブレウ監督の『ペルリンプスと秘密の森』、岩井澤監督の『音楽』はそれぞれ、着想から完成まで7年半かかったという共通点を持つ。アブレウ監督は、岩井澤監督の『音楽』について「良い意味での〈軽さ〉〈軽快な感覚〉というものを、画面の中にも感じることができました」「もちろん製作にあたって大変な苦労をされているのは分かっているのですが、子供が遊んでいるかのような軽やかさを感じることができました」と絶賛する。

そして、岩井澤監督は『ペルリンプスと秘密の森』をすでに「3回鑑賞済み」であることを告白。「本当に軽快、ポップで楽しい気持ちになれる音楽から始まっていて。でもテーマとしては決して楽しいだけじゃない、シリアスというか、すごく今の世界情勢とリンクしている作品で、でも決してそれを重く描かない、軽やかに描いているというのが本当に素晴らしいなと思いました」と賛辞を送る。

「個人的に気になったのが<影があって、そこに光を入れる>という作り方。日本のアニメーションだと<光があって、そこに少し影を入れる作品が多いと思うのですが、『ペルリンプス』はその見せ方がすごく新鮮だなと思いました」と、クリエイターならではの視点で本作の鑑賞ポイントも指摘した。

本作の着想の瞬間についても明かしたアブレウ監督。「最初に浮かんだイメージというのが、子供が水浸しの森で、動物の扮装をしていて、顔のお化粧もぐちゃぐちゃになっている。そういうイメージからスタートしています」「その子供がどこへ行こうとしてるのか、その意味を探る、というところから本作はスタート」「子供時代を象徴する場所としての森がどんどん沈み込んでいってしまう―ということに行きつきました」と説明する。

アレ・アブレウ監督×岩井澤健治監督スペシャル対談

併せて「子供時代も(この映画のように)色彩に溢れていて、抽象的で、そういった子供時代は常に永遠に私たちのどこかに必ずある、と思いました」「この映画は子供の遊び、ゲームのように見ていただきたいと思っています。この森の中にたくさんのいろいろなものがあって、それを一つ一つ、パズルのように集める。そういうところをみなさまにも見ていただきたい、感じていただきたいと思っています」とメッセージを送った。

タイトルについた<ペルリンプス>という謎めいたキーワードについては、アブレウ監督は「ペルリンプスという言葉自体にはなんの意味もありません。ポルトガル語のホタルという言葉からヒントを得て私たちが作った造語です」と言う。その理由としては「私たちにとって、『それがなんなのか?』って考える余地を残したかったからです。観客のみなさまにも一緒にこの映画を作ってほしい、一緒に遊んでほしい」と、その願いを語った。

<作品と音楽の関係性>について質問が及ぶと、岩井澤監督は「『ペルリンプスと秘密の森』の主題曲がポップでキャッチーで、聞いた瞬間とても大好きになったんです」と話し、「僕は映画の中で主題曲っていうのがとても重要だと思っているんです」と述べる。

岩井澤監督が「まずお客さんに知ってもらうきっかけになるのは予告編だったりすることが多いと思うのですが、予告編を観て興味を持ってもらえる作品はそこで流れる主題曲がキャッチーで印象に残るものが多いと思っています」と語ると、アブレウ監督も「音楽は、もしかしたら映像より重要かもしれない」「テーマ曲は映画のポスターと同じくらい重要だと思っています」と同意する。アブレウ監督は「『ペルリンプスと秘密の森』の音楽は、私の幼なじみでブラジルの音楽家のアンドレ・ホソイさんという人に作ってもらいました」「映画の最後には、ブラジルでよく知られた、ミルトン・ナシメントという方の曲も入れています。そのナシメントの歌の歌詞が、自分の心の中にはいつも少年が住んでいる、というまさにペルリンプスの話を凝縮したような歌詞がついています」と解説した。

アレ・アブレウ監督×岩井澤健治監督スペシャル対談

岩井澤監督の『音楽』は、アヌシーなど世界の名だたるアニメーションの国際映画祭で受賞し、アブレウ監督の『父を探して』はアカデミー賞にノミネーションされるなど、ともに7年半をかけて個人で作り上げた作品だ。その素晴らしさが世界的に認められたことをきっかけに、二人は今やそれぞれグローバルに展開する作家であるという共通点も持つ。

アカデミー賞というキーワードが気になる岩井澤監督は「率直に聞きたんですけど、どうやったらアカデミー賞にノミネートされるんでしょうか?」と直撃質問し、場内で笑いが起こる一幕もあった。その真っ直ぐな質問に対して、アブレウ監督は「私の最初の長編はブラジル国内でしか上映ができなかったんです。『父を探して』の場合は、いろいろな国際映画祭に出していただくことができて、それが、作品の成長につながったんだと思います」「結果的に「『父を探して』がラテンアメリカのアニメーションの中で最初に推薦された映画になったことはすごくインパクトがあります」と振り返った。

日本はアブレウ監督にとって、自身が巨匠と仰ぐアニメーション監督たちがいる「特別な国」だと言う。前回の来日では、『君たちはどう生きるか』の絵コンテを制作中だった宮崎駿監督や高畑勲監督に会うことができた、と明かしながら「日本のアニメーションの産業はとても安定していて、文化は素晴らしいものだと思います」「ブラジルのアニメーションは今はまだ、これからどうなっていくか、というのを探してる段階だと思います」と話す。

そのうえで、「でも逆に、私たちには自由があります。どんな映画を作ってもいいと思っています。それはもしかしたら日本の安定したアニメ産業から見れば、歪んでいるかもしれません。ですが、その自由さというものを、私は、岩井澤監督の『音楽』という映画に見出したと思っています」と『音楽』を絶賛。それに対して岩井澤監督は「ありがとうございます」と感謝しつつも「アニメーションの多様性は、海外の作品で感じることが多くて。日本でももう少し、もっといろんな作品が作られたらな、と思います」と作品制作への意欲を語った。


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映画『ペルリンプスと秘密の森』先行上映記念
アレ・アブレウ監督×岩井澤健治監督スペシャル対談

<概要>  
【日時】11月14日(火)20:25-21:00(19:00回上映後)
【場所】シネマカリテ scr1(新宿区新宿3-37-12 新宿NOWA B1F)
【登壇者】アレ・アブレウ監督、岩井澤健治監督

『ペルリンプスと秘密の森』

脚本・編集・監督:アレ・アブレウ(『父を探して』) 
音楽:アンドレ・ホソイ/オ・グリーヴォ
2022年 ブラジル /原題:Perlimps/スコープサイズ/80分/日本語字幕 星加久実
後援:駐日ブラジル大使館
配給:チャイルド・フィルム/ニューディアー

(c) Buriti Filmes, 2022 

《仲瀬 コウタロウ》
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