早見沙織が語る“ものづくり”の醍醐味―映画「駒田蒸留所へようこそ」インタビュー | 超!アニメディア

早見沙織が語る“ものづくり”の醍醐味―映画「駒田蒸留所へようこそ」インタビュー

2023年11月10日(金)より全国公開となる映画『駒田蒸留所へようこそ』より、主人公・駒田琉生役を演じる早見沙織さんのインタビューをお届け。

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(C)2023 KOMA復活を願う会/DMM.com
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ウイスキーの一滴と、人の一瞬。どちらも独特の輝きと香りがある。映画『駒田蒸留所へようこそ』は、その両方の魅力を絶妙に組み合わせた作品だ。

本作の主人公は、先代である父亡きあと、実家の「駒田蒸留所」を継いだ若き女性社長・駒田琉生(こまだ・るい)。経営難の蒸留所の立て直しとともに、バラバラになった家族と、災害の影響で製造できなくなった「家族の絆」とも呼べる幻のウイスキー“KOMA”の復活を目指し奮闘する物語となっている。

アニメ!アニメ!では、駒田琉生役を演じる早見沙織さんにインタビューを実施。作中でも描かれる“人の繋がり”と“ものづくり”をテーマにお話をうかがった。

[取材・文:吉野庫之介]



一杯に込められた物語と味わい


――本作は『花咲くいろは』『SHIROBAKO』『サクラクエスト』『白い砂のアクアトープ』などを手がけてきたP.A.WORKS「お仕事シリーズ」の最新作となりますが、シナリオを読まれた際の感想を教えてください。

P.A.WORKSさんのアニメーションは、心が温かくなるような私も大好きな作品ばかりで、今回のお話をいただいた際もとても嬉しかったです。

以前関わった『TARI TARI』(2012年)では学生役だったのですが、本作のような「お仕事シリーズ」にしっかりと出演させていただくのは今回が初めてだったので、社会人として全力で仕事に取り組む姿勢や、失敗を乗り越えて前進するエネルギーといった、これまでとは異なる新しい感覚を覚えました。

――早見さんが演じる駒田琉生はどのような印象のキャラクターですか?

琉生は「家族の絆」とも呼べる幻のウイスキー“KOMA”の復活を目指して多くの困難に立ち向かっていくのですが、若くして実家の家業を背負うというのは並大抵の思いでできることではないと思いますし、彼女自身もその難しさを心の中ですごく感じていて。

それでも諦めずに目標に向かっていく強い信念や諦めない姿勢を目の当たりにして、本当に尊敬できる女性だと思いました。

――理想の上司像というか。一方で、家族とのシーンでは少し印象が変わったり。

そうですね。演じる際も意識していたのですが、社長モードのときの背伸びまではいかないけれど「社員のみんなを惑わせないように頑張らなければ」と気を張っている側面と、お母さんやお兄ちゃんと話をしているときの彼女の素の部分というのは、少し違って見えると思います。





――また、本作の舞台は「蒸留所」というユニークな場所ですが、役を演じるにあたって何か調べられたことはありますか?

本作とコラボウイスキーを展開している「三郎丸蒸留所」のサイトを拝見したのですが、ご家族で受け継いできた蒸留所の歴史やブランドの背景、蒸留器の製造に関するお話などが詳しく書かれていて、そうしたウイスキー造りに対する細部までのこだわりや人の想いというのは作品内の物語ともリンクする部分がたくさんありました。

普段は完成したお酒をいただくだけですが、この一杯にたどり着くまでに何千倍もの時間がかかっていることを想像すると、日常でお酒を飲めることも奇跡的なことに思えて。一杯のウイスキーに込められた多くの想いを感じることができました。

――背景にあるドラマを知ることで、より味わい深く感じることってありますよね。

変わりますよね。私もそこまでお酒に詳しいわけではないのですが、味だけではなく香りも嗅いで楽しもうとか、この作品を見ていただいたあとはウイスキーをより美味しくいただけるようになると思います。

作中でもブレンダー室と呼ばれる、実験室のような場所で試験管にウイスキーの原酒をブレンドして試行錯誤するシーンがあるのですが、あれほど細かく調整を繰り返してつくられているとは知らなかったので、とても驚きました。





身近な人に喜んでもらえることが、世界に広がっていく


――本作は“人の繋がり”と“ものづくり”がテーマになっているように感じました。業種は違えど、何かを生み出す表現者として共感できる部分も多かったかと思うのですが、早見さんご自身が声優のお仕事で大切にされている指針のようなものはありますか?

声優のお仕事は誰かと一緒に収録をすることが多いのですが、掛け合いのなかで生身の人の言葉を聞いたときに、自分が予想していなかったものに表現が変化していく瞬間があるんです。

また、私は自分が携わらせていただく作品に心を揺さぶられることが多く、それによって救われたり、パワーをもらった体験が何度もあって、その“心が震える瞬間”というのを表現のうえでも大事にしています。

さらに、その私の表現に触れた方にも振動が共振し、伝わり、広がっていく。そんなサイクルを生み出せたらいいなと思っています。

――出会った人や作品との間に生まれる化学反応を大切にされているのですね。

そうですね。私はもともと一人で想像や空想をするのが好きな子どもで、ごっこ遊びも全部一人でやったり、勉強する際も脳内妄想で架空の生徒をつくりだして、その人に教えるイメージで一人でぶつぶつと言いながら暗記をしたり。

側から見ると相当怪しかったと思うのですが(笑)、昔から「相手がいる」ということが自分にとって良い刺激になっていると感じることが多いですね。

――イマジナリーフレンドとエチュードをするような(笑)。一方で、アーティストとしての表現活動と比較するといかがですか?

アーティストとしての表現は、より自分自身やものづくりと向き合う時間が必要で、声優の表現とはまた異なる伝わり方になると感じています。

声優はキャラクターや作品を通じて自分の役割を考えることが中心になるのですが、アーティスト活動の場合はゼロの状態から創作していくことになるので、自分の“芯”を持つことで、自由な表現ができるようになる感覚があります。

――“芯”を持ち、それを伸ばしていくというか。

そうですね。もともと持っていたものではあったのですが、コロナ禍を機に自分の活動テーマを再定義したんです。

テーマを明確に持つことで、音楽のジャンルやテイストへのチャレンジの幅が逆に広がった感じがしますし、その“芯”が通っている限り、どのような形になってもその表現は成立するのだと、アーティスト活動を通じて学ぶことができました。

――早見さんにとって、“ものづくり”の醍醐味とは?

この作品を通じて思い出したのですが、私が沢木郁也さんの養成所生だったときに、大先輩の西村知道さんのお話を伺う機会があったんです。

その際に、声優のお仕事で大切にしている気持ちについて「たとえば、自分の子どもに絵本を読んで、パパ読むの上手だねと、物語に入り込んで楽しんで聞いてくれる。それが一番素敵なことだ。」ということをおっしゃっていて。

そんな「身近な人に喜んでもらえることが、世界に広がっていく」というのが、ものづくりの醍醐味だなと改めて感じました。

――最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします。

P.A.WORKSさんの作品は現実の生活や感情と深くリンクしていて、登場人物それぞれの心理描写が非常にリアルに描かれています。

お仕事をしていくうえでの気持ちや家族への想いといった部分は、本作をご覧になるみなさんにも共感いただける部分だと思いますので、ぜひ劇場で心を揺れ動かしながら見ていただけたら嬉しいです。



映画『駒田蒸留所へようこそ』
2023年11月10日(金)全国公開

■スタッフ
原作:KOMA復活を願う会
監督:吉原正行
脚本:木澤行人、中本宗応
キャラクター原案:高田友美 ※高ははしごだかが正式表記。
キャラクターデザイン・総作画監督:川面恒介
美術監督:竹田悠介
色彩設計:田中美穂
3D監督:市川元成
撮影監督:並木智
編集:高橋歩(※高ははしごだかが正式表記)
音楽:加藤達也
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:DMM.com
配給:ギャガ

■キャスト
駒田琉生:早見沙織
高橋光太郎:小野賢章
河端朋子:内田真礼
安元広志:細谷佳正
東海林努:辻親八
斉藤裕介:鈴村健一
駒田滉:堀内賢雄
駒田澪緒:井上喜久子
駒田圭:中村悠一

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《吉野庫之介》
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