『アイドルマスターsideM』渡辺みのり役、『LOOPERS』タイラ役などを務める声優・高塚智人がドリーミュージックよりアーティストデビュー。2022年1月26日に1stミニアルバム『ホシノオト』がリリースされた。今回は、デビュー記念として高塚さんにインタビュー。小さい頃から慣れ親しんでいたという音楽へのこだわり、そして、「悔しさをバネにして前へ進む」という彼のポジティブな考え方についてお話を聞いた。
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この業界は常に戦っている
──アーティストデビューが発表された2021年は、どんな一年でしたか?
「来年はもう30歳になるんだな」ということを意識した一年だったと思います。声優としても初主演作が決まったり、ソロアーティストデビューの発表があったりと、一歩前へ進めた一年でした。
──高塚さんは、ゲームブランド・Key制作のゲーム『LOOPERS』で主役を演じられていましたよね。
はい。何かの作品で主役をやりたいとずっと思っていたんです。それ故に嬉しさは一入でしたが、声優としてはまだまだ勉強しないといけないことが多いと痛感しました。同時に、いつまでも若手とは言えない、さらに上を目指さないといけないと改めて気を引き締めるきっかけにもなりましたね。
──今は声優を目指す方も多く、その中でデビューしたばかりの方が主役を演じることもあると思います。少し言いづらいかもしれませんが、その中で焦りみたいなものは感じていましたか?
正直、悔しいという気持ちは日々つきまとっていましたね。ただ、主役をやるような人たちはやっぱり何かしら光るものがありますし、演じる役は声質や芝居だけではなくタイミングも大きいと理解していたので、絶対に自分のタイミングも来ると言い聞かせていました。「自分は今じゃないだけ。その時が来るまで努力し続けるのみ」と、悔しさと常に戦っていましたね。
──主役をたくさん務めていらっしゃる声優さんもいますが、その方が全アニメで主役の声をできるかと言えば、そういう訳じゃないですもんね。
そうなんですよね。だからこそ、この業界は常に誰もが戦っているんです。刺激を受けっぱなしですね。
──役者として一歩進めたと感じるなかでアーティストデビューも決まり、新たな一歩を踏み出すこととなりました。デビューの話をもらったときは、どのようなお気持ちでしたか?
音楽が大好きなので、キャラクターソングなどを歌いたいという気持ちはデビューした頃からありました。その後、自分と同じ世代の方がソロアーティストとしてデビューしていく姿を見て、「いつかは自分も音楽活動をできたらいいな」と思うようになったんです。なので、お話をいただいたときは素直に嬉しかったですね。
──アーティストデビューした同世代の声優さんのなかで、特に刺激を受けた方は?
『アイドルマスターsideM』で共演しているメンバーが何人かソロアーティストとしてデビューしていますが、みんなすごく歌が上手くて表現方法もそれぞれなので、色々と刺激をもらっています。中でも個人的にすごいなと思っているのは、仲村宗悟くん。すごく感情を乗せて歌うんですよ。僕も感情を乗せて歌うことを大切にしているので、彼の歌い方に惹かれました
──以前、別の方にインタビューした際も仲村さんの名前が挙がっていました。
同世代のなかでは圧倒的だと思います。歌声も、人としても頼りがいがあります。
──音楽が大好きということですが、小さい頃は何か習い事などはされていましたか?
兄が音大に入るくらいトランペットが上手だったので、その影響で僕も楽器をやりたくなり、小学生のときに吹奏楽部へ入部しました。最初はサックスを吹きたかったんですけど、当時は身長が低かったので適してないと言われちゃって。それで、同じ木管楽器のクラリネットを吹くことになりました。中学生になってからも吹奏楽部に所属していたのですが、かわいい先輩から「パーカッションがいないんだよね」と言われたという不純な動機で、パーカッションをやることになりまして(笑)。
──私も高校生のときにかわいい先輩から「吹奏楽部楽しいよ!」と言われて入部したので、気持ちはすごく分かります(笑)。
一緒ですね(笑)。部活のなかで仲が良くなった友達がいるのですが、ドラムがすごく上手だったんですよ。そこからドラムにも興味を持ち始めました。
──プロフィールの特技にも「ドラム」と書かれていますよね。私もドラムが趣味なんです。
そうなんですね!
──加えて、ラーメン屋巡りもサバゲーも趣味でして。
僕と同じじゃないですか! うわー、いくらでもお話できますね(笑)。
──いつかそういう趣味について語るインタビューもさせてください(笑)。
ぜひぜひ(笑)。
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自分がいいと思って歌わないと伝わらない
──続いて、今回リリースされるミニアルバムのことについてお話を聞きます。まずはコンセプトについて教えてください。
色々なジャンルの音楽を聞きますが、自分がやりたい音楽って何だろうと考えたときに、ピアノを使った綺麗な曲を歌うアーティストの方々が思い浮かんだんです。僕もその方向性でやりたいなと思って、「どの楽曲もピアノの音を入れたいです」とリクエストしました。
──タイトルは『ホシノオト』。どのような意味が込められていますか?
星や夜空が大好きだったこと、またリード曲が「星と永遠」ということで、星に関するタイトルにしたくって。そのなかでまとまりの良いタイトルは何かと考えて決めました。
──ピアノと星というのも相性がいい気がします。いつか高塚さん自身がピアノを弾くという機会も期待していいですか?
いやぁ、どうでしょう(笑)。兄が弾けるので教えてもらったことがあったのですが、なかなか続かなくて。あのときの僕に行動力があれば絶対に続けていたんですけど……。
──私も、ピアノを習っておけばよかったなと何度も後悔しました。あとはダンス。
めっちゃわかります! ダンスは今からでも習おうかなと思っています。ピアノの弾き語りもいつかは挑戦したいですね。
──実際に収録されている楽曲についても教えてください。まずはリード曲「星と永遠」。
個人的にはリード曲にふさわしい楽曲になったと自負しています。歌詞も曲名も曲調も文句なしで制作は進んだのですが、アレンジで入れてもらったピアノソロの部分だけ少し変えて欲しいという相談をしました。ソロの部分が最初はロックテイストになっていたのですが、自分としてはちょっと方向性が違うなと思いまして。それで、「もう少し綺麗さを重視したいです」とリクエストしました。
──デビューミニアルバムの制作でも躊躇することなくリクエストを出されたんですね。
音楽の好き嫌いがはっきりしていて、自分のやりたいものが明確にあったからこそ、わがままを言わせていただきました。自分がいい・好きだと思って歌わないと、聞いてくださる方にも気持ちが伝わらないと思うので。
──確かにそうかもしれません。ディレクションではどのようなことを言われましたか?
歌っている途中にあえてブレスを入れることで次のフレーズを立たせるなど、テクニカルなことを教えていただきました。実際に聞き比べて「こうなるんだ」と実感できたので、これから歌うときにも活かせそうです。一方で、自分の意見を通したほうがよかったかなという気づきもありました。今後はもっと意見交換して、自分がやりたいものをスタッフさんと一緒に形にしていきたいですね。曲作りで妥協してしまった部分があるのは悔しいですが、まだまだ新しい発見ができるということは進化できる余地もあるということ。今は今後の楽曲づくりが楽しみで仕方ありません。
──初回限定盤には本曲のMVが収録されたDVDが同梱されます。
撮影は初めてのことばかりで戸惑いましたが、周りの方がアドバイスしてくださったので、自分なりに表現できたと思っています。ただ、満足はしていません。「もっとこうしたほうがよかった」という課題もたくさん見つかったので、次に活かしていきたいですね。
──高塚さんは、悔しさをバネにして成長していけるタイプなんですね。
いつの日からか、考えて落ち込むのって意味ないなって思うようになったんです。悔しいと思ったなら、その経験を次に活かすという考え方にシフトチェンジしました。
──後悔をポジティブに受け止める。
まさに、そういう性格ですね。
──私は何事もネガティブに考える人間なので、憧れます。
誰でも、落ち込むことはありますよね。僕もこうやって言っていますけど、大きな失敗をしたときは引きずりますから。そういう落ち込んだときにも音楽は寄り添ってくれる。だから僕も、誰かの気持ちに寄り添える曲を歌っていきたいですね。
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みんなが抱いている感情の手助けになれば
──アルバム2曲目に収録されているのは「アオウタ」。こちらはどのような楽曲ですか?
「アオウタ」は、日常で心の余裕がなくなったときに聞いてリフレッシュしたり、逆に心の余裕のある瞬間はさらにハッピーな気持ちになったりしてほしいと思いながら歌った曲です。歌詞の語呂合わせなども含めて、全体的に気持ちのいい楽曲に仕上がりました。ただ、気持ちをクリアにして聞いて欲しいと意識しすぎたせいで、レコーディングで固く歌っちゃったんですよ。そしたらディレクターさんが「何も考えないくらいの気持ちでいいです。散歩しながら歌っているような楽曲なので、もっと力を抜いて」とアドバイスしてくださいました。あの言葉のおかげで、気持ちを切り替えて歌うことができましたね。
──この曲のレコーディングでも、気づきがあった。
はい。心の余裕がなくなったときにリフレッシュしてもらいたい曲なのに、自分の心に余裕がないと気づけてよかったです。ソロデビューするということでガチガチになっていました。ディレクターさんがいなかったら、すごく固い表情で、伝えたいことも伝わらない曲になっていたと思います。ディレクションしていただいた後はとても気持ちよく歌えました。
──続いて収録されている曲は「est」
収録する楽曲を決めていくなかで、最初はバラードや綺麗なメロディの曲調で統一させようという話が一度はあがっていたんです。ただ、暗くなりがちな世の中で、明るい気持ちに全振りしたポジティブな曲を今こそ入れなきゃと思い、当初は予定されていなかったこの曲を入れることとなりました。歌詞もとにかくポジティブに、「大丈夫だよ」と語りかけているような曲にしたいとお願いして出来上がった曲です。ネガティブになりがちな日々が続いていますが、頑張っている自分を認めてあげてもいいんじゃないかなと僕は思うんです。そういうメッセージも込めて歌いました。
──歌詞の中にも入っている「最上級」を表す「est」というタイトルがおしゃれだと感じました。
僕は最初にこのタイトルをいただいたときに意図が全然理解できなくて(笑)。あとから曲を作っていただいた方に意味を説明していただいて、これ以上ないタイトルだなと感じました。気づいていただけて嬉しいです。流石です!
──ありがとうございます! 4曲目は「強がりヒーロー」。
この曲は高塚智人としてやりたい音楽をしっかりと表現できた一曲です。テクニックが必要な曲でしたが、歌っていて楽しかったですね。レコーディングでも、既に何度か歌ったことがあるんじゃないかと思うくらいスッと歌えました。
──タイトルにヒーローと付いていますが、高塚さんの理想のヒーロー像は?
みんなを守る存在というイメージもありますが、個人的には自分の人生に大きく影響を与えてくれた人がヒーローな気がします。これまでお世話になった方々のおかげで、僕は成長できました。そういう意味でも、この曲の歌詞はすごく刺さりました。
──続く楽曲は「アネモネ」。
ミニアルバムに絶対入れたいと思っていたバラード曲です。色々な感情のなかでも、僕は「切ない」が好きなんです。まさにその感情を表現した楽曲になっていますね。感傷に浸っているときに沁みる一曲になったと思います。
──切ないバラード曲を歌ううえで、意識されたことは?
切ない感情になっている方が「自分のこと」だと思えるような表現にしたかったので、語りかけるように歌いました。音が少なく声での表現が露骨に出る曲でしたが、まっすぐに歌えたと感じています。
──アルバムを締めくくるのは「WALK」。
最初にいただいたときはもっと前向きな歌詞で、確かタイトルも「ファイター」という強い感じだったんです。それもアルバムの締めくくりとしてすごくいいなと思いましたが、今回僕が表現したかったこととは少し異なっていたので、「歌詞を再考してもらうことは可能ですか?」とわがままを言わせていただきました。そうして上がってきたのが「迷うことがあっても、ゆっくりでもいいから前へ進もう」という思いがこもった曲。明るい曲とは違ったポジティブさが表現された楽曲に仕上がりました。将来への不安を抱えている方が「明日からも自分らしく頑張ろう」と思ってくれたら、という気持ちで歌っています。
──今回のミニアルバムには、色々な感情が込められた曲が集まっているんですね。
そうですね。僕はふだんから「今はこういう感情だから、この曲を聞こう」と思って、音楽を流すんです。常にスマホを持っていて、その瞬間、瞬間の感情に沿った曲を聞くようにしています。なので、みんなが抱いている感情に寄り添ったり、盛り上げたりできる曲を僕も届けたくて。結果、さまざまな感情がこもった6曲が集まりました。
──ミニアルバムがリリースされましたが、今後、アーティストとしてやっていきたいことは?
作詞・作曲はいつか挑戦してみたいです。あとは、弾き語りを聞いた後のような余韻が残るライブをしたいですね。今回のミニアルバム制作を通じて今後やりたいことがいっぱいできたので、それを形にしていきたいと思っています。頑張ります!
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取材・執筆=M.TOKU
プロフィール
高塚智人【たかつか・ともひと】8月25日生まれ。東京都出身。ゆーりんプロ所属。主な出演作は『アイドルマスター SideM』渡辺みのり役、『王子の本命は悪役令嬢』シリウス・イヴェール役、『ウインドボーイズ!』見戸響役など
『ホシノオト』リリース情報
発売日:2022年1月26日(水)
初回限定盤(CD+DVD)
価格:3,000円(税込)
DVD内容:星と永遠 -Music Video-、Making movie
通常盤(CD
価格:2,200円(税込)
CD収録楽曲
1.星と永遠
2.アオウタ
3.est
4.強がりヒーロー
5.アネモネ
6.WALK