『ブルーピリオド』峯田大夢・花守ゆみり・山下大輝が心を奪われたのは「日常」「黒沢ともよ」「ジーニー」【インタビュー】 | 超!アニメディア

『ブルーピリオド』峯田大夢・花守ゆみり・山下大輝が心を奪われたのは「日常」「黒沢ともよ」「ジーニー」【インタビュー】

『ブルーピリオド』の矢口八虎役の峯田大夢さん、鮎川龍二役の花守ゆみりさん、高橋世田介役の山下大輝さんにインタビュー。

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(左から)花守ゆみり・峯田大夢・山下大輝
  • (左から)花守ゆみり・峯田大夢・山下大輝
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  • 『ブルーピリオド』キービジュアル第2弾(C)山口つばさ・講談社/ブルーピリオド製作委員会
  • 『ブルーピリオド』場面カット(C)山口つばさ・講談社/ブルーピリオド製作委員会
  • 『ブルーピリオド』場面カット(C)山口つばさ・講談社/ブルーピリオド製作委員会
  • 『ブルーピリオド』場面カット(C)山口つばさ・講談社/ブルーピリオド製作委員会

 講談社『月刊アフタヌーン』にて好評連載中、マンガ大賞2020も受賞した『ブルーピリオド』のTVアニメが2021年10月1日よりMBS/TBS系全国28局ネット「スーパーアニメイズム」枠で放送中。

 本作は、高校生・矢口八虎が美しくも厳しい美術の世界へ身を投じ、美大を目指して青春を燃やす物語である。今回は、矢口八虎役の峯田大夢さん、鮎川龍二役の花守ゆみりさん、高橋世田介役の山下大輝さんにインタビュー。それぞれが演じるキャラクターの紹介や、八虎のように心を奪われた経験についてお話を聞いた。


(左から)鮎川龍二役の花守ゆみり、矢口八虎役の峯田大夢、高橋世田介役の山下大輝【画像クリックでフォトギャラリーへ】

心のなかで葛藤するキャラクターたち

――まずは、それぞれが演じるキャラクターの紹介をお願いします。

峯田 八虎は悪友と遊びつつも、優秀な成績をキープし、スクールカースト上位に位置するという「インテリヤンキー」ですね(笑)。どんなことも人並み以上にできてしまうがゆえに退屈を感じていますが、ある1枚の絵に出会ったことで、美術に心を奪われます。そして、彼は美大への入学を目指して努力していくなかで様々な困難に直面します。心のなかで葛藤しながらも、壁を乗り越えていく過程を見ていると胸が熱くなりますね。

――そんなキャラクターと共感できる部分は?

峯田 八虎は周りの人に刺激を受けて、色々なことに挑戦していきます。僕も共演者さんやスタッフさんなどの姿を見て刺激を受けることが多いので、そういう部分は共感できます。……あの、僕、思っていることがなかなか言葉として出てこなくて……。大丈夫ですか? 伝わっていますか?

――今のところ全く問題ございません。

峯田 よかった! 実は自分でも「上手くいった」と思って、ちょっとどや顔してしまいました(笑)。今日は上手くいった!

花守 そんな優等生の後に話しづらいですが(笑)。私が演じる鮎川龍二……いえ、ユカちゃんについて紹介します。ユカちゃんは美術部員で、八虎が美術の世界へと足を踏み入れるきっかけを作るひとりです。個性的な服装を着こなすクラスの人気者で、自分の好きを貫いている子なんですよ。ただ、ユカちゃんは家族・自分の性別などが理由で自分の好きを貫くことが難しい場面もあって。加えて、相手の尺度で自分を測られたくないくせに、自分のことを分かって欲しいという究極の矛盾を抱えちゃっているような子なんです。それでも好きを貫き、そして何かを得たり、失ったりしている。そんな強さも脆さもあるユカちゃんですが、そのどちらも含めて、カッコいいキャラクターだと思っています。

――演じるうえでも強さ・脆さは意識した?

花守 ユカちゃんの矛盾や葛藤を大切にしながら演じました。それがユカちゃんのエネルギーでもあると思ったので。

山下 世田介は予備校で八虎が出会う、天才と言われている男の子です。独特な空気感を醸し出しているがゆえに、「なんで?」と思われることが多いキャラクターだと思います。言葉を濁さずに言えば、序盤はいけ好かない言動をする子。そこまで多くを語らないタイプで、対応するだけでその場を去ってしまうことがあるため、見ているみなさんも「その言葉はどういう意味?」と、考察力をかきたてられるんじゃないかな。ただ、彼は物語が進むにつれてどんどん深みが増してくるので、見守っていて欲しいですね。

心に刻まれた絵画たち

――本作は美術を題材とした作品ですが、みなさんは絵を描くことがお好きですか?

峯田 元々好きなのですが、本作に携わるからにはやっぱり絵を描いてみないと!と思って、一度描いてみたんです。デッサンは自信なかったので、絵具一発でドン!と、気持ちのまま描いてみました。難しかったですね。

山下 絵具一発は勇気あるね!

花守 何に描いたの?

峯田 色画用紙です。技法も何も分からないので、本当に感覚で描きました。「美術」って、技法も絵のジャンルも山ほどあるので、技術を突き詰めるのはすごく大変なんだろうなぁ……。

山下 専門用語もたくさんあるし。

峯田 ありますよね! そうやって自分で描いてみたほか、アフレコが始まるちょっと前ぐらいには、芸大を卒業した方の展示会に行って美術作品を見たんです。確か「あの日の夜展」という名前で、それぞれの作者さんが夜を題材に絵を描いていらっしゃいました。仕事が始まる前にふらっと立ち寄ったのですが、「質問あったら答えます」という展示会だったので、各作者さんに色々と聞いてみたんですよ。
 ある作者さんに「この作品は何を思って描いたのですか?」と聞いたら、「クラブ前のエントランスで人が並んでいる絵です」という返答がありました。その絵には、人間のちょっと黒い部分も含めて描かれていました。また、別の作者さんには、横顔をたくさん描いていらっしゃったので「横顔が好きなんですか?」と聞いたんです。そしたら、自分の横顔がものすごく好きとおっしゃられて。そういう方もいるんだと思ったのと同時に、堂々と言えるのはカッコいいと思いました。同じ「海」という題材でも、人によってこんなにも表現方法や作品が異なるんです。それを実感しましたね。

山下 僕は、絵が上手い人に描いてもらうのが好きでした。

花守 自分の絵を?

山下 じゃなくて、ポケモン(笑)。中でも、その人が描くフシギダネがすごく好きだったんです。ゲーム・アニメ・マンガそれぞれのフシギダネも大好きですが、その人が描いた絵が忘れられないんですよね。

花守 山下さんにとっての神絵師さんですね。

山下 そうかも。実はその人は今、イラストレーターの仕事をやっているんですよ。アプリゲームのキャラクターなどを描いていらっしゃいます。いつか、その人が描いたキャラクターを僕が演じられたらと、お互いに言い合っています。

峯田 すごく素敵な話ですね。感動しました!

山下 ありがとう。いつか叶うといいな。

花守 私は小さい頃から絵が好きだったんです。特に絵の具を使って描くのが好きでした。小学生の頃、点描的に色々な色を混ぜながら海と、海を眺めている髪の長い女性の後ろ姿を描いたことがあります。その絵は、学校の廊下に飾ってもらいました。自分のなかでもいちばん好きな絵でしたが、学校の先生が「涙が出てくる」と言ってくれたんです。あの言葉がきっかけで、幼いながらに絵を描く仕事がしたいと思うようになりました。ただ、中学生になったら周りに上手な子が何人もいて……。私程度が人様に見せる絵なんか描けないと思って、筆を折っちゃったんです。

――そんな経験をされていたんですね。

花守 ただ、折った時にあんまりがっかりはしませんでした。それは、絶対に絵を描き続けるべきだと感じる男の子に出会ったから。少しグロテスクな画風でしたが、個人的には彼が描く絵の世界観にすごく惹かれました。良い子は真似しちゃダメですが、彼は授業中も教科書を立てて隠れながら絵を描いていて。私はそれを横目で見て、「すごいね」と言い続けていました。バレンタインのとき、私は友チョコをみんなに配っていたのですが、なぜかその子にだけは直接渡せなかったんです。それで机のなかに名前も書かずに放り込んじゃって。彼のトラウマとなってしまったかもしれません(笑)。そういう色々な思い出が鮮明に残っているくらい、その男の子の絵が好きでした。

山下 ファンだ。

花守 ファンですね(笑)。私にとっては挫折を味わいつつも、納得して筆を折った経験でした。

――そのお話、マンガ・小説化を希望します。

花守 山口つばさ先生に描いてもらいたいです(笑)。

心を奪われた「黒沢ともよ」「ジーニー」「日常」

――本作で八虎は、絵に心を奪われて、その世界へと足を踏み入れます。みなさんもふと何かに惹かれた、心を奪われたという経験はありますか?

花守 同業者である黒沢ともよちゃんの舞台を観て、「芝居っていいな」と改めて思いました。彼女はその舞台で盲目のヒロインを演じていたのですが、安直な表現をすると、その場所にヒロインがいると錯覚するようなお芝居をしていたんです。私、心を奪われると涙に直結しちゃうのですが、その日はずっと泣いていました。

――それほどまでに! その体験はいつ頃のお話ですか?

花守 私がデビューして3、4年くらいのタイミングで、当時は声優としても人間としても未熟だったんです。どうやって生きていけばいいだろう、自分ってどうあるべきだろうと悩んでいた時期でもありました。ただ、あの日のともよちゃんや舞台に立っている役者さんの芝居を観て、お芝居はアニメや吹き替えだけじゃない。舞台なども芝居なんだ、色々な表現をしてもいいんだ、と思えたんです。
 同時に、「自分もあの場所に立ってみたい」「表現で色々な方を泣かせてみたい」って思ったんです。涙が止まった後は、あの境地に至るためにはどうしたらいいんだろうと考えました。彼女がお芝居で涙をくれたおかげで今私はここにいると言っても、過言ではないですね。

山下 素敵な話。僕もお芝居に関するお話になるのですが、そもそも声優を目指したきっかけが心を奪われたからなんです。いちばん大きかったのは、ディズニー作品。なかでも『アラジン』のジーニーに、声で遊ぶ楽しさや表現の世界の面白さを教えてもらった気がします。
『アラジン』に、ジーニーの声がどんどん変わっていくというシーンがあるのですが、そこを何回も何回も巻き戻しては見て、真似をして、自分の声を出して遊ぶようになりました。当時のお客さんはお母さん。「似てる?」と聞きながら、色々と真似していましたね。当時の楽しさや感動は、今でも力になっています。あのとき心を奪われたから、今ここにいるんだ、色々と美味しいものを食べられるようになっているんだ、としみじみ思います。

峯田・花守 (笑)。

――心を奪われた声優の仕事をしながら、さらにおいしいものに心を奪われている。

山下 感動する機会が増えたので、声優になって本当によかったです(笑)。

峯田 僕はしょっちゅう心が動いておりまして。今もふたりの話を聞いて心が奪われました。もっと小さなことでも、それこそ日常のなかでも気づきがある度に心が動きます。仕事とは関係のない場面で、声優として使えそうな声や音を発見したときに心が動いたり、街の方々の行動に感動したり。具体的なエピソードを上手に話せませんが、色々な発見をすることで、僕の心は動くんですよね。

山下 アンテナを常に張り巡らしているんだ。

峯田 元々人のことをよく見るんです。陽キャに見えるかもしれませんが、実は陰で人を観察するタイプなんです(笑)。でも、そうやって発見した感動が何かのきっかけになることもあるので、これからもアンテナを張って色々なことに心を奪われたいですね。

好きでも嫌いでも、何かを追求したものが人の心を奪う

――改めて、作品への印象や、本作の推しポイントを教えてください。

山下 いわゆる作家の方が作った「作品」って、綺麗だな、感動するな、すげえなぐらいの感覚で見るのがふつうだと思うんです。一方で本作は「そこだけじゃないよね」という切り口をしていると思っていて。言ってしまえば、綺麗な分、汚いところもあるよねと。ただ、人には見せられないようなものを抱えるくらい努力するからこそ、作品の輝きが一層増す気もします。
 刺さる「作品」って、その人の人生や生き様を感じるんですよね。好きでも嫌いでも、何かを追求したものが人の心を奪うんじゃないかな。本作は、そういった生々しいところにまで触れている作品です。みなさんも、観ていてドキドキするんじゃないかと思います。

花守 絵を描くこと、何かを追求することって終わりがないと思うんです。「いいものができた」と思っても、他の人の作品を見て自分はまだまだだと思う。ずっと誰かと自分を比べ続けて、なおかつ自分の好きを、完璧を追求していくのは途方もないこと。本作では、八虎がまさにそうなんですよ。「上手くできた。いや、全然だ」を繰り返しています。今の自分の中では最高、でもまだ先がある、と。そうやって、ずっと自分が完成していないことを突きつけられているんです。
 それには辛さも付いてきているはずなのに、それでも描き続けちゃうんですよね。そういう人間のエゴや泥臭い部分が、本作で描かれています。表現が正しいか分かりませんが、『ブルーピリオド』は心を抉る作品なんじゃないかな。

峯田 画家のトゥールズ・ロートレック氏が「人間は醜い、されど美しい」という言葉を残していますが、この作品はその言葉に近いものが描かれていると思いました。誰しも、人様には見せられない黒い部分があったり、悩みや葛藤を抱えたりしていると僕は思います。けれども、それを乗り越えた先には美しい未来が待っているかもしれない。中には美しい未来には行けなかった人もいるかもしれません。乗り越えた誰もが、幸せになれる訳ではないと思います。どうなるのか分からないから動き出せないという方も少なくないんじゃないかな。そういう方々が本作を観たら、何か感じてもらえる気がします。何かを変えようというきっかけがつかめる作品なので、ぜひ多くの方に観て欲しいです。

【プロフィール】
峯田大夢【みねた・ひろむ】6月24日生まれ。山形県出身。スターダストプロモーション所属。主な出演作は『フットサルボーイズ!!!!!』樫良木ルイ役、『セスタス -The Roman Fighter-』セスタス役ほか。

花守ゆみり【はなもり・ゆみり】9月29日生まれ。神奈川県出身。m&i所属。主な出演作は『トロピカル~ジュ!プリキュア』キュアコーラル/涼村さんご役、『かげきしょうじょ!!』奈良田愛役ほか。

山下大輝【やました・だいき】9月7日生まれ。静岡県出身。アーツビジョン所属。主な出演作は『僕のヒーローアカデミア』緑谷出久役、『ポケットモンスター』ゴウ役ほか。

『ブルーピリオド』作品情報
■放送情報
MBS/TBS 系全国 28 局ネット
“スーパーアニメイズム”枠 10月1日より毎週金曜 25時25分~
BS 朝日 10月3日より毎週日曜23時~
AT-X 10月7日より毎週木曜日 21時~

■スタッフ
原作:山口つばさ『ブルーピリオド』(講談社「アフタヌーン」連載)
総監督:舛成孝二
監督:浅野勝也
シリーズ構成・脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン:下谷智之
美術監督 :仲村謙・金子雄司
美術設定:緒川マミオ・中島美佳
撮影監督:服部安
色彩設計:歌川律子
3DCG 監督:大見有正
編集:関 一彦
特殊効果:福田直征
音楽:井上一平
音楽プロデューサー:酒井康平
音楽制作:DMM music
音響監督:菊田浩己
音響効果:小山健二
制作:Seven Arcs

■キャスト
矢口八虎:峯田大夢
鮎川龍二:花守ゆみり
高橋世田介:山下大輝
橋田 悠:河西健吾
桑名マキ:宮本侑芽
森 まる:青耶木まゆ
佐伯昌子:平野 文
純田:福西勝也
恋ケ窪:神尾晋一郎
歌島:橘 龍丸
海野:平塚未玖
白井:長谷川育美
城田:根本優奈
山本:古賀 葵
大葉真由:和 優希
岡田さえ:陶山恵実里
石井啄郎:村田太志
桜庭華子:大西沙織

(C)山口つばさ・講談社/ブルーピリオド製作委員会

《M.TOKU》
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