『エデン』主役に抜擢された高野麻里佳の魅力を入江泰浩監督が語る「思いやポリシーを感じながらキャラクターを作れる方」【インタビュー】 | 超!アニメディア

『エデン』主役に抜擢された高野麻里佳の魅力を入江泰浩監督が語る「思いやポリシーを感じながらキャラクターを作れる方」【インタビュー】

Netflixオリジナルアニメシリーズ『エデン』入江泰浩監督にインタビュー。

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『エデン』場面カット
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 Netflixオリジナルアニメシリーズ『エデン』が5月27日より全世界独占配信スタート。本作は、テレビアニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』を手掛けた入江泰浩監督と世界のクリエイター陣が手がけた作品で、E92とA37という2体のロボットに愛され育てられた人間の少女・サラが、世界に隠された謎に立ち向かう感動のSFファンタジーである。

 超!アニメディアでは、入江監督にインタビュー。『エデン』のことに加えて、Netflixオリジナルアニメシリーズと地上波を中心に放送されるアニメとの違いなどについてもお話を聞いた。

『エデン』場面カット

――『エデン』はNetflixオリジナルアニメシリーズですが、地上波を中心に放送されるアニメを作るときと意識する点に違いはありましたか?
 制作するうえでは、これまで作ってきたテレビアニメとほぼ変わりなかったです。ただ、やはりNetflixで世界同時配信されるという点は魅力的ですよね。世界中の方に同時に見てもらえるというのが、単純に嬉しいなと思いました。『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』は世界各国でほぼほぼ同時展開することができた作品で、そのときもリアルで楽しんでもらえているというのが伝わってきたんです。その喜びが味わいやすいというのは、地上波を中心に放送される作品とは異なる強みと言えるかもしれません。

――なるほど。
 あとは、Netflixオリジナルアニメシリーズだからという訳ではなく、『エデン』の制作という点で言えば、台湾に拠点を置く制作会社CGCGさんと日本の制作会社の違いについて感じることがありました。CGCGさんに見学へ行ったことがあるのですが、夕方の18時~19時頃に社内でサイレンが流れたんですよ。サイレンの理由については、そのときに案内してくれたスタッフさんが「このサイレンでみんなが帰るんだよ」と教えてくれました。就業時間などを会社側が徹底して管理しているのが、素晴らしいと思いました。
 とはいえ、こういったやり方を日本の制作会社が一気に取り入れたとしても、アニメーターも会社も対応しきれないと思います。何しろ日本の制作会社は、そうでない作り方で30~40年近くやってきていますから。一気に変えるというよりかは、できるところから着手して、その蓄積を日本の制作会社が共有していく期間が必要だと思っています。

――いいところは徐々に取り入れていき、残すべきところは残してもいい。
 そうですね。例えば、私のようにフリーでやっている人間は、何時から何時までと就業時間が決まっている訳ではない分、自分がいちばんポテンシャルを発揮しやすい時間に働けるというメリットがあります。私は夕方から夜中・明け方までがテンション高く仕事ができる時間で、それを20年以上もやってきているので、今からそれを変えるのはかなりしんどいですね……。いずれにせよ、昔ながらのやり方だけにとらわれるのではなく、やりやすい仕事環境を整えるのが重要だと思います。

――最近は「多様性」という言葉をよく耳にしますが、色々な考え方を受けいれられる器を用意することが大切なのかもしれません。
 色々な選択肢のなかでいちばん適したものをチョイスできる体制が、ベストだと思います。

――『エデン』は全4話構成という作品です。この点も地上波がメインで放送されるアニメとは違う部分かと思いました。
 そうですね。日本のテレビアニメのフォーマットは基本1クール(3か月)なんですが、そこまで長くない作品でもパッケージにできるんです。そのフレキシブルさは、Netflixならではの強みと言えるかもしれません。

『エデン』場面カット

――『エデン』はロボットがキーワードの作品です。そのロボットたちの設定はどのように決めていきましたか?
 ロボットに関しては、ジャスティン・リーチの原案テキストにも、しっかりと役割や設定が記載されていたんです。工業や農業用、人間の世話をするロボット、そして人間の管理をするガードロボットなど役割がはっきりとしていたので、その役割によってデザインも差別化しました。例えば、農業用ロボットであれば武器などを持つ必要がありませんので、農業以外の要素を省いたデザインにしています。一方、ガードロボットであれば、守るための装備が必要で、可動範囲も広いことが想像できるデザインにしました。

――個人的にはロボット同士が戦うシーンで、農業用ロボットが明らかに戦い慣れていないことが分かる描写が印象的でした。
 それも「役割」なんですよね。農業用は警備や戦いのために作られていないので、戦うときどこかどんくさいような感じがしたと思います。そういった無骨さは意識しましたが、画面からロボットたちの差を感じられたのであれば、それは台湾のアニメーターの技術・能力が視聴者の方々に伝わったという証だと思います。

『エデン』場面カット

『エデン』場面カット

――今後、ロボットがアニメを作る時代はやってくると思いますか?
 ある程度は可能だと思います。ロボットというよりかはプログラムと言った方がいいかもしれません。例えば、「今日、起きて、自転車に乗って学校に行きました」というテキスト情報を入力すると、すでに用意されていた素材のなかから自動的にチョイスしてアニメーションが完成するというプログラムは、今でも作れると思います。ただ、このプログラムだと、用意された素材の数によって表現の幅も決まってしまうんですよね。たまたま合致する素材があればいいですが、そんな都合よくはいかないと思います。そういう意味では、ロボットが人間の代わりに作業するようになるということではなく、ロボット・プログラムが作る、別のジャンルのアニメーションが生まれるんじゃないかな。

――本作ではロボットが「サラ」という赤ちゃんの人間を見つけ、育てるというところから物語が動き始めます。サラを演じた高野麻里佳さんのお芝居はいかがでしたか?
 以前に『灼熱の卓球娘』という作品でご一緒しており、その時のお芝居や声や感情がサラにピッタリだと思ったので、今回オファーしました。その期待通りに、ひとりのキャラクターとして育っていくうちに、色々なものを背負わされるサラという人間を上手く表現してくれたと思います。

――改めて、監督が感じる高野さんのお芝居の魅力や引き込まれた理由について教えてください。
 思いやポリシーを感じながらキャラクターを作れるのが魅力だと思います。高野さんが演じたキャラクターは、芯があると感じるんですよね。好奇心旺盛だけども、様々な事実に相対していくことになるサラというキャラクターの声を想像したとき、真っ先に思い浮かんだのが高野さんでした。

『エデン』場面カット

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――その他、ロボットを演じた方々の芝居も作品のアクセントになっていたと感じます。
 サラを育てるロボットを演じた伊藤健太郎さんと氷上恭子さんのお芝居によって、作品がユーモアに富んだと思います。ふたりとも、ロボットでありながら驚いたりがっかりしたりという何気ないリアクションをしっかりと演じてくれました。アフレコ中もおふたりの掛け合いがおかしくて、思わずこちらも笑顔になりました。同時に、新垣樽助さんのロボットはエキセントリックなマニア的気質と落ち着いた理知的な両面を見せてくださって、サラの周囲を更に豊かにしてくださいました。

――監督が思う『エデン』の見どころを教えてください。
 内容に関しては色々なテーマがあるなかで、娯楽作品として楽しめるものになったと確信しています。4話一挙配信、ぜんぶで100分のボリュームとなりますので、一気に見るもよし、分けて見ていただいてもよし、お好みのスタイルでお楽しみください。

――私は少しずつ見ようかと思っていたら、気が付いたら4話一気に見ていました。どうしても次が気になりまして……。
 意図通りです(笑)。次を見たくなる構成は、テレビシリーズのアニメを作るときの経験を上手く活かせたと思います。

『エデン』場面カット

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Netflix オリジナルアニメシリーズ『エデン』全世界独占配信中
【スタッフ】
監督:入江泰浩(「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」)
キャラクターデザイン:川元利浩(「カウボーイビバップ」)
脚本:うえのきみこ(「王室教師ハイネ」「クレヨンしんちゃんオラの引越し物語 サボテン大襲撃」
コンセプトデザイン:クリストフ・フェレラ(「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」クリーチャーデザイン
アートディレクター:クローバー・シェ(「上海バットマン」)/音楽:ケビン・ペンキン(「メイドインアビス」「盾の勇者の成り上がり」)
原案・プロデューサー:ジャスティン・リーチ(「イノセンス」)
アニメーション制作:Qubic Pictures, CGCG
【キャスト】
サラ:高野麻里佳
E92:伊藤健太郎
A37:氷上恭子
S566:新垣樽助
ゼロ:山寺宏一
チューリヒ:桑原由気
ジュネーブ:甲斐田裕子
《M.TOKU》
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