
――『ゆるキャン△』シリーズでのオープニングは、これで2回目ですね。
『ゆるキャン△』第1作目から、3年ぶりになります。また亜咲花に頼もうと思っていただけたことがうれしいですし、だからこそ私にしか形にしかできない『ゆるキャン△』の音楽を作らなくちゃという気持ちがありました。
――どんな曲を歌いたいと思いましたか?
『SEASON2』ということで、物語自体、前作から一歩進んだものになっていると感じたんです。なので、第1作目の持つ雰囲気を引き継ぎつつ、音楽的にも成長したものを届けたいと思いました。作品では、リンちゃんとキャンプの出会いも描かれていて、それが新しいと感じたんですね。「新しさ」が本作のカギになっているのかなと思い、曲的にも新しいものを発信しようという心意気でした。
――最初に「Seize The Day」の曲を聞いた感想は?
これまで『ゆるキャン△』関連の曲はグルーブ感が強めで、ゆったりしたテンポの曲が多かったんです。でも、今回の曲は弾むようなリズムだったのが印象的でした。
――レコーディングは2020年4月のポリープ手術後だったそうですね。
そうなんです。そのことと、曲調の明るさもあって、今回は意識的にトーンを下げることはせず、高音がくどく聞こえないように、また聞きたいと思ってもらえる歌い方を心がけました。サビの高音で裏声を使うことはいままでになかったので、そういった新しいアプローチも重点的に聞いていただけたらうれしいです。
――歌詞からもワクワクした感じが伝わってきます。
第1作目のオープニング「SHINY DAYS」は、キャンプに行く日の朝に起きて、実際にキャンプに向かうまでをイメージしているんです。今回は、キャンプ場について、これからキャンプをはじめようとしているイメージで、楽しさを詰め込んで歌いました。
――レコーディングで難しかったことはありますか?
最近はかっこいい曲を歌うことが多かったので、そこからいかに脱却して『ゆるキャン△』モードに切り替えていくかを考えていました。でも、実際にはすんなり歌えたんです。イメージソングなども歌わせていただいているので、『ゆるキャン△』の音楽が私の体に染みこんでいるんだなと再確認できました。
――かっこいい曲とポップな曲、歌いやすさに違いはありますか?
私の声質的には、ビブラートを効かせてスラーするようなアメリカンポップスのほうが得意なんです。歌っていて楽しいのは、王道のアニメソングですね。私自身、アニソン歌手になりたくて、アニソンを歌いたくて歌手になったといってもいいくらいなので、王道のアニソンを歌うのはとても楽しいです。でも、さまざまなジャンルの曲を歌えるのもアニソンだと思うので、どんな曲でも歌えるのはとてもうれしいです。
――「Seize The Day」でとくに聞いてほしいポイントは?
2番のこぶしやロングトーンは、亜咲花節を効かせられたかなと思っています。普段とは違った歌い方なので、比較しながら聞いてほしいです。

――ミュージックビデオ(MV)は、古い映画のような雰囲気です。
これまでの『ゆるキャン△』シリーズのMVは、映像もキャンプに寄せていたんです。でも今回は、歌詞のストーリー性をいかしたくて、ブロードウェイのミュージカル風にしてみました。MVのテーマは1950年代のヨーロッパ。私は見ていた映画に入り込んでしまうんですが、じつは冒頭に出てくるニットの服は、「SHINY DAYS」のMVと同じものなんです。あのときの私が大人になって映画の世界に入り込んでしまうという裏設定になっています。自分で見ても大人っぽくなったと思いますし、改めて3年前のMVを見ると「おぼこい(あどけない)」なと思います(笑)。
――ストーリー性があるだけに、MV中では演技もしていますね。
MVに登場する謎の仮面の人への警戒心や不信感、少しずつ打ち解ける感じを顔で表現しなければならなかったのも挑戦でした。でも、ドレスを着られたのがうれしくて。素の私を飾らずに届けられた気がしています。
――カップリングは、さわやかな表題曲とはまた違った応援ソングですね。
表題曲とはまた違った自分をアプローチしたくて、雰囲気を変えてもらいました。今回のシングルは、手に取っていただいた方が元気になる1枚にしたかったので、カップリング2曲にはネガティブなワードを入れず、前向きな応援ソングにしました。
――「NO MORE PEAKY MODE」はロック、「Party Fever Night!!」はコミカルと、曲のタイプが違います。
この2曲は、ライブで盛り上がる曲ということを軸にしていますが、ロックサウンドが被ってしまうと聞いている方に違いが伝わりにくいと思ったんですね。だから、ロックと、EDM(シンセサイザーなどを使ったダンスミュージック)とロックが混ざったような曲調にわけてみました。「NO MORE PEAKY MODE」は、「切り替えて、くよくよするモードをやめない?」という意味です。落ち込んでいるときって、自分でも気づかずに落ち込み続けることがあるので、それを気づかせてあげたいなと思って、歌詞には語りかけるような言葉を多く入れました。
「Party Fever Night!!」は、等身大の私が反映された曲。もともとコミカルな人間なので、それを存分に入れました。ただ、EDMロックの曲調に合わせてかっこよく歌うと、詞のよさがなくなってしまうので、あえてふざけたり、英語もカタカナ発音にしたりしました。もともと、私は息抜きがすごく苦手だったんですが、コロナ禍で家にいることが多くなって、オフの大切さに気づいて。その思いをそのまま歌詞に盛り込み、Bメロあたりからはストレス発散のためのお祭りが始まるような曲にしました。
――「ギターソロです!」という掛け声があるのもおもしろかったです。
当日思いついたアドリブなんです。歌詞ではない部分でも、いろいろ入れ込んだほうがおもしろさが増していくと思ったので、一発録りをしました。
――コロナ禍は曲作りに影響しましたか?
意図的にコロナ禍の思いを入れようとは思いませんでしたが、無意識に入っているかもしれません。私は、この状況を入れ込みすぎてしまうと、のちのちあまりいい記憶にならないんじゃないかと思ったんですね。この曲たちはこの先何年も歌っていくものですから、あえて応援ソングという大きなくくりにしました。
――「SHINY DAYS」は声優の東山奈央さんがカバーしていますね。
声優活動10周年という大事なCDに、私の曲を選んでくださったことがすごくうれしかったです。奈央さんにはすごくお世話になっていますし、いろいろなところで支えていただいているんです。実際に歌ってくださったライブも拝見させていただいたのですが、見せ方の勉強になりました。あんなにかわいい歌い方があるんだと新しい発見でした。いつか機会があるのであればふたりで歌ってみたいですね。
――2021年の亜咲花さんの目標は?
リアルでもオンラインでもいいので、とにかく音楽を届ける機会を増やしたい。あと、去年の1年は新たにゲーム番組やYouTubeでの新番組などもやらせていただいたので、今年もいままでやったことのないものにも挑戦して、歌以外でも名前を見るようになったと言われたいです。あと、ハーバリウムやレジンなどでハンドメイドのものも作っているので、それを、皆さんにお届けできたらいいなと思っています。
――最後に、読者にメッセージをお願いします。
「Seize The Day」に収録さている3曲は、愛を込めて力強く歌いました。全曲とも前を向ける明るい曲なので、辛いことや悩んでること、苦しいことがあったら聞いて、元気を出してもらえたらと思います。『ゆるキャン△ SEASON2』の作品も素敵なものに仕上がっていますので、音楽共々楽しんでください!

取材・文/野下奈生(アイプランニング)
Profile
亜咲花【あさか】10月7日生まれ。アミュレート所属。2016年にテレビアニメ『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』のエンディングテーマ「Open your eyes」でアーティストデビュー。これまでにシングル8枚、アルバム1枚、ミニアルバム1枚をリリースしている。
「Seize The Day」リリース情報
発売日:発売中
レーベル:MAGES.
概要:表題曲は、テレビアニメ『ゆるキャン△ SEASON2』のオープニングテーマ。“初めて”の出来事へのワクワク感が詰まった軽快なナンバーだ。DVD付盤には表題曲のミュージックビデオ(MV)とメイキング映像を収録したDVDが付く。アニメ盤は、各務原なでしこ(声/花守ゆみり)、土岐綾乃(声/黒沢ともよ)が出演するオリジナルミニドラマ「年越し」を収録。
価格:
DVD付盤2,420円(税込)
アニメ盤1,870円(税込)
(C) あfろ・芳文社/野外活動委員会