『映像研には手を出すな!』原作者から視聴者へのメッセージ『「無理に大人になろうとする必要はない」、それを思い出してもらえれば』【インタビュー】 | 超!アニメディア

『映像研には手を出すな!』原作者から視聴者へのメッセージ『「無理に大人になろうとする必要はない」、それを思い出してもらえれば』【インタビュー】

『月刊!スピリッツ』にて連載中の漫画『映像研には手を出すな!』がTVアニメ化。2020年1月よりNHK総合テレビにて放送されている。本作は、脳内にある“最強の世界”を表現すべく映像研を設立した女子高生の浅草みどり、金森さ …

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『月刊!スピリッツ』にて連載中の漫画『映像研には手を出すな!』がTVアニメ化。2020年1月よりNHK総合テレビにて放送されている。本作は、脳内にある“最強の世界”を表現すべく映像研を設立した女子高生の浅草みどり、金森さやか、水崎ツバメの3人組が、アニメ制作に挑む。いわば、アニメづくりをアニメで描く、青春冒険部活ストーリーだ。今回は、原作者・大童澄瞳にインタビュー。アニメ放送後の反響のほか、自身のアニメ作品のルーツなどについてお話をうかがった。


――“アニメ制作”が題材となっている本作。先生自身はどのようなアニメをご覧になってきましたか? ルーツになった作品などについて教えてください。

 今後のインタビューで過去を思い出すにつれて言うことが変わるかもしれませんが、今パッと思い浮かぶのは『未来少年コナン』ですね。

――先生の年齢からすると、リアルタイムでご視聴されていた世代ではないかと思いますが、作品とはどうやって出会ったのでしょうか?

 親の教育ですね。私の家族って熱中するとそっちに向いてしまう人が多くって。それ故に、家でテレビが点いていると誰も何もやらなくなってしまう……そういう恐れがあったからなのか、我が家ではテレビのアンテナを接続していなかったんです。子供の頃は『メダロット』のアニメが放送されていて興味もありましたが、リアルタイムで観る機会はあまりありませんでした。そんな環境下でもビデオを借りて観ることは大丈夫だったんです。そこで母からオススメされたのが『未来少年コナン』や『宇宙戦艦ヤマト』、あとは『世界名作劇場』や『ドラえもん』などでした。

――教育の一環としてアニメをご覧になっていたんですね。

 そうですね。私の親はいわゆるオタク第一世代なんですよ。大友克洋さんの名前が世間でほとんど浸透していないとき、「私は大友作品を買っていたんだ」ということを自慢する、そんな親だったんです。あとは、姉もオタク気質で、『攻殻機動隊』や『あずまんが大王』を観ていたので、僕もその影響を受けて観るようになりました。

――家族の影響が大きかったんですね。その後、独学でアニメーションについて学ばれます。ちょっと変な話かもしれませんが、『映像研には手を出すな!』をご自身でアニメ化しようとは思わなかったのでしょうか。

 僕はひとつの仕事に絞って生きていきたいタイプではないので、漫画も描くしアニメも作る、もちろん実写にも挑戦してみたいと思っています。だから自分で作るという選択肢ももちろんありました。ただ、必ずしも自分でということでもなく、自分でやれと言われるのならばやるし、誰かが制作してくださるのならばそういう作品として観たい、というマインドだったんですよね。


――今回は、湯浅政明監督が指揮の元、サイエンスSARUさんがアニメーション制作を担当されることとなりました。アニメ化するにあたって、原作者として譲れなかった点はありますか?

 アニメ化にあたって色々とご相談いただきましたが、1の質問に対して100で返してしまって……。現場にご迷惑をおかけしたなと今でも反省しております。ただ、大前提としては、僕がどんな意見を言っても最終的には現場の判断で作っていただければ、という想いでした。そういう意味では、ほぼ譲れない点というのはなかったのですが、唯一、浅草氏が持っているウサギのぬいぐるみのデザインだけは自分の満足がいくものにしてほしいというリクエストを出しました。

 あのウサギ、単純な構造ではあるんですけども、目と口のバッテンの比率が難しくてですね……。僕はモデルになったウサギと10年以上毎日寝ていて愛着が桁外れなので、比率や可愛さがどこにあるのかを熟知しているんです。でも、それを知らない方に改めてデザインしていただくとなると、それは難しいこと。このデザインでも色々とご迷惑をおかけした気がします。

――実物はデザインされる方にお見せした?

 そうですね。サイエンスSARUさんとお話させてもらう機会があったときに持参させていただきました。そのときは皆さん写真を撮っていましたね。

――細かい部分のこだわりで、サイエンスSARUさんも驚かれたのでは?

 どうなんでしょう。僕のほうにはその驚きが隠されているかも。でも、「この人はウサギが好きなんだな」とは思われたでしょうね(笑)。

――なるほど(笑)。そんなこだわりなどをお伝えして実際に完成したTVアニメ。放送も既にスタートしていますが、周りの反響はいかがですか?

 友人・知人からは「自分の周りでもすごく好評だよ」と言ってもらえました。自分の知り合いだけでなく、その先の人にまで届いているということが分かって、アニメ化するということの規模の大きさ実感しています。

――アニメのどういう部分に注目されていますか?

 原作にない新しい表現についてはものすごく注目していますね。あとは細かいネタの部分。例えば、アニメのなかで、文字の情報が一瞬で流れていくという表現がありましたが、あそこに何が書かれているのかなどが気になるんですよね。それが、楽しくもあります。あとは動画の部分ですね。

――これまでの放送で一番グッときた動きは?

 3話で金森氏がインパクトドライバーを使って机を組み立てている、そこに緊急事態だという知らせがきて、めんどくさそうに金森氏が立ち上がるシーンが印象に残っています。あとは1話のコインランドリーに向かう際、川沿いをみんなで歩くシーン。ヒキのショットなんですけども、水崎氏が階段の手すりに手を置いたりといった細かい演技が入っているのに驚きました。そのあとに続くカットで3人の歩き方がバラバラで、個性が出ていたのもよかったです。

――原作にない表現という部分では、3話で金森氏が宇宙船に乗っている空想シーンが追加されていました。

 メカなどの一定の構造を持ったものが近づいたり、離れたりとダイナミックな動きをするシーンを描くには、ブースターの間隔や円の向きなど、様々なものの比率をコントロールしないといけないので大変だったと思います。また、宇宙船の船外ポッドが飛び出る瞬間にカットを入れて、金森氏が壁から飛び出してくるという緩急のつけ方や、飛び出した勢いそのままに金森氏がハシゴをかけるところのスピード感もすごかったです。語り始めるときりがないですね(笑)。

――2話では、風車が回る動画の原理がわかりやすく解説されていましたね。

 あの解説については「なるほど」と思いました。風車って手前の羽根は速く動いて見え、奥の羽根は遅く見えて、上に来たら止まって見えるはずなんですけど、正面から見たら等速回転に見えている……それをどうすれば上手く描けるんだろうって、僕もずっと悩んで実験を繰り返していたんです。でも、あの解説で納得しました。こういった追加された要素によって、よりアニメーションの技術を教えてくれるアニメにも仕立てられていますよね。アニメだと動きがある分、漫画よりもちょっと伝わりやすいんだと思います。そういうアニメにしかできない表現を湯浅監督がやってくださっている。感謝しかありません。いい教材をくれてありがとうございます(笑)。




ーーアニメの動きという点でいえば、先生ご自身も本作のEDで制作スタッフの一員として参加されています。

 背景については漫画の原作を素材として提供しているのみでノータッチなのですが、その手前で歩いたり走ったりしている3人、戦車や宇宙船などの動きは僕が作画を担当しています。プロたちがいる現場で書かせていただけて楽しかったですね。また、納期があるなかでどこまで突き詰めてやればいいのか、という作業配分については、これまでにない経験だったので勉強になりました。

――アニメだけでなく、高校生の頃は実写作品も撮られていたとお話をうかがいました。

 アニメーションをやっているという話を聞いて映画部に入ったら、実際はやっていなくて(笑)。だから、その部活で実写の撮影を経験しました。

――実写とアニメどちらも制作経験もある先生が映像作品において、アニメならではだと感じるのはどういった点でしょうか?

 とんでもないこと、突拍子もないことが表現できる点ではないでしょうか。実写だとどうしても画角などを決めて撮ることになるので、見せたいものがすべて映ってくれるとは限らない。映像内に映っているそれぞれのディティールがあまりにも細かすぎて、情報過多になってしまう可能性もあります。ただ、アニメーションとなるとそれを省略することもできる。最近では3DCGと実写が融合する作品もありますが、それでもまだまだ情報量は多いと思います。情報量をコントロールして、一番見せたい情報を極限まで突き詰められるのは、アニメならではの魅力だと思いますね。

 ――本日はお話いただきありがとうございました。最後に『映像研には手を出すな!』で先生が伝えたいことを教えてください。

「好きなことをやればいいんじゃないの」「無理に大人になろうとする必要はないよ」ということですかね。これは、伝えたいというよりも、みんな分かっていることだと思うので、思い出してほしいというほうが適切かも。生きていくためには何でもかんでも力を抜くことはできませんし、そんな余力が残されていないときもあります。でもやっぱり、時には子供の頃のマインドを思い出してもいいのではないかと思うんです。

――そのうえで「アニメ」という題材はズバリなのかもしれません。

 そうですね。何かを想像するという点では、いい材料になってくれると思います。

 

『映像研には手を出すな!』作品概要
【放送】NHK総合テレビ 毎週日曜日深夜24:10~放送中(関西地方は24:45~)
※放送予定は変更になる場合があります。
【スタッフ情報】
原作:大童澄瞳(小学館「月刊!スピリッツ」連載中)
監督:湯浅政明
脚本:木戸雄一郎
音楽:オオルタイチ 
キャラクターデザイン:浅野直之
美術監督:野村正信
色彩設定:中村絢郁
撮影監督:関谷能弘
編集:齋藤朱里
音響監督:木村絵理子
アニメーション制作:サイエンスSARU
OPテーマ:chelmico「Easy Breezy」
EDテーマ:神様、僕は気づいてしまった「名前のない青」
【キャスト】
浅草みどり役:伊藤沙莉
金森さやか役:田村睦心
水崎ツバメ役:松岡美里
百目鬼役:花守ゆみり
さかき・ソワンデ役:小松未可子
藤本先生役:井上和彦
ロボ研 小野:小野友樹
ロボ研 小林:小林裕介
ロボ研 後藤:綿貫竜之介
ロボ研 関:井澤詩織

【イントロダクション】
高校1年生の浅草みどりは、アニメーションは「設定が命」と力説するほどのアニメ好き。
スケッチブックに様々なアイディアを描き貯めながらも、1人では行動できないとアニメ制作への一歩を踏み出せずにいた。そんな浅草の才能に、プロデューサー気質の金森さやかはいち早く気づいていた。
さらに、同級生でカリスマ読者モデルの水崎ツバメが、実はアニメーター志望であることが判明し、3人は脳内にある「最強の世界」を表現すべく映像研を設立することに……
「月刊!スピリッツ」(小学館)にて好評連載中の大童澄瞳のデビュー作に、国内外で数々の賞を獲得してきた湯浅政明監督&スタジオ「サイエンスSARU」が手を出した!!
キャラクターデザインは浅野直之、音楽はオオルタイチが加わり“最強の世界”を“最強のスタッフ”でつくり上げる。
全世界が注目する電撃3人娘の冒険譚が始まる!!
【原作情報】
『映像研には手を出すな!』第1~5集 大好評発売中!


「月刊!スピリッツ」連載中(小学館)
https://bigcomicbros.net/comic/eizoken/
アニメ『映像研には手を出すな!』公式サイト
eizouken-anime.com
アニメ『映像研には手を出すな!』公式ツイッター(ハッシュタグ:#映像研)
Eizouken_anime

(C)2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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