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午前0時にだけアクセスできるサイト「地獄通信」に怨みを書き込むと現れる地獄少女・閻魔あいを通して、さまざまな人間模様が展開される『地獄少女』が実写映画として公開中です。2005年のTVアニメを皮切りにTVドラマやゲームなど幅広くメディア展開された人気作品です。
依頼主は憎い相手を地獄へ落とすことができますが、代償として依頼主自身も死後地獄で永遠に苦しむことになるという設定で、なんともダーク。そんな本作において重要なアイテムが「藁人形」です。閻魔あいは、依頼主に契約の証として毎回、藁人形を手渡します。
藁人形と聞いて思い出されるのが「丑の刻参り」でしょう。丑の刻参りとは、悪鬼神の威力をかりて祈願を達成するため、特に丑の時刻(現在の午前2時ごろ)に神仏に参拝する習わしです。習わしと言っても、藁人形を使うこの方法は、比較的後世に定着したものと思われます。陰陽道との関わりの中で生まれたのでしょうか。陰陽師が使役する式神は人形をした紙や人形である場合が多いですが、そこから現在の藁人形スタイルになったのではないかとも考えられます。
現在の丑の刻参りでは、恨む相手を呪い殺すため、鳥居や神木に相手をかたどった人形を釘で打ちつけて祈ります。白衣を着て、五徳にろうそくの火を立てて頭に乗せ、胸に鏡をかけるなど、異様な姿をして行うのです。釘を打った部分が病み、七日目の満願の日に相手が死ぬと信じられていました。京都の貴船神社などがゆかりの地であり、今でも丑の刻参りに訪れる人がいるとかいないとか……。
また雛祭りのもとになったといわれる「流し雛」という行事があります。人についた汚れを人形に転嫁させ、川に流す行いです。人形には、このように人の代わりになって災厄を請け負う役割があります。藁人形もそのひとつ。決して人を守り、悪いものを取り除いてくれるだけの存在ではないのです。
「人を呪わば穴二つ」とはよく言ったもので、『地獄少女』において藁人形を使ってしまったが最後、現在進行形の苦しみを退けることができても、依頼主に明るい未来はありません。本作は善と悪について考えさせれられる作品でもあるのです。実写化ではどのような世界が描かれるのでしょうか。背筋がスッと寒くなることを覚悟して、私も映画館に足を運びたいと思っています。
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