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アニメやマンガに登場する食事は、どうしてあんなにもおいしそうなのでしょうか。観て(読んで)いてお腹が鳴ってしまった……なんて体験を、誰もが一度はしているのではないかと思います。
2019年秋現在、アニメ『真・中華一番』がオンエアー中です。1990年代に一世を風靡(ふうび)した作品で、19世紀の中国を舞台に料理人の主人公・劉昴星(リュウ・マオシン)が活躍します。仲間たちと共に各地を旅し、料理対決をするそのさまは、まるでスポーツ。毎度アツい展開に胸が躍ります。
それにしても『真・中華一番』を観ていても感じることですが、食べ物に対する人々の情熱は国や地方を問わず、並々でないことがわかります。腹が減ってはなんとやら……とはよく言ったものです。
人に空腹をもたらす憑きものに「ヒダル神」と呼ばれるものがあります。地域によっては「ダル」「ダリ」「ダラシ」などの呼び方をされる場合もあります。ひもじいことを意味する「ひだるい」から来ているのでしょう。山道を歩いていると急にとり憑かれるようです。
たしかに、山中で空腹に見舞われると死に関わります。空腹で動けなくなれば、クマなどの動物に襲われるかもしれませんし、雪山であれば凍死してしまいます。ヒダル神に憑かれた場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか。
じつは対策法がないわけではなく、少しでも食べ物を口に入れたり、手のひらに「米」という字を書いて舐めるとよいなどと言われます。そのため、山に入る前には弁当を食べ尽くさずにひと口取っておくとよいそうです。それはヒダル云々というより、ただ単にお腹が減っただけではと思わないではないですが、そうした話もあるのです。このヒダル神の正体について、餓死した人や予想外の死を遂げた人など、浮かばれない死者が変じたものであるともいわれます。
今も昔も変わらず、生きるうえで食べることは重要です。空腹なんて、もってのほか。さまざまな食事と人間関係が描かれる『真・中華一番』。本作は人と食の関係を考える、ひとつのきっかけになるような気がしています。
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