<アニメ・マンガ妖怪よもやま話>『真・中華一番!』を観て「お腹がすいた」人に注意してほしいヒダル神の話 | 超!アニメディア

<アニメ・マンガ妖怪よもやま話>『真・中華一番!』を観て「お腹がすいた」人に注意してほしいヒダル神の話

   アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌「アニメディア」で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」として …

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 アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌「アニメディア」で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。今回は、グルメがテーマのアニメを観ていると感じる「空腹」にまつわる存在について、奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が語る。
 
 

 アニメやマンガに登場する食事は、どうしてあんなにもおいしそうなのでしょうか。観て(読んで)いてお腹が鳴ってしまった……なんて体験を、誰もが一度はしているのではないかと思います。
 
 2019年秋現在、アニメ『真・中華一番』がオンエアー中です。1990年代に一世を風靡(ふうび)した作品で、19世紀の中国を舞台に料理人の主人公・劉昴星(リュウ・マオシン)が活躍します。仲間たちと共に各地を旅し、料理対決をするそのさまは、まるでスポーツ。毎度アツい展開に胸が躍ります。
 
 それにしても『真・中華一番』を観ていても感じることですが、食べ物に対する人々の情熱は国や地方を問わず、並々でないことがわかります。腹が減ってはなんとやら……とはよく言ったものです。
 
 人に空腹をもたらす憑きものに「ヒダル神」と呼ばれるものがあります。地域によっては「ダル」「ダリ」「ダラシ」などの呼び方をされる場合もあります。ひもじいことを意味する「ひだるい」から来ているのでしょう。山道を歩いていると急にとり憑かれるようです。
 
 たしかに、山中で空腹に見舞われると死に関わります。空腹で動けなくなれば、クマなどの動物に襲われるかもしれませんし、雪山であれば凍死してしまいます。ヒダル神に憑かれた場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか。
 
 じつは対策法がないわけではなく、少しでも食べ物を口に入れたり、手のひらに「米」という字を書いて舐めるとよいなどと言われます。そのため、山に入る前には弁当を食べ尽くさずにひと口取っておくとよいそうです。それはヒダル云々というより、ただ単にお腹が減っただけではと思わないではないですが、そうした話もあるのです。このヒダル神の正体について、餓死した人や予想外の死を遂げた人など、浮かばれない死者が変じたものであるともいわれます。
  
 今も昔も変わらず、生きるうえで食べることは重要です。空腹なんて、もってのほか。さまざまな食事と人間関係が描かれる『真・中華一番』。本作は人と食の関係を考える、ひとつのきっかけになるような気がしています。

 

解説:木下昌美
<プロフィール>
【きのした・まさみ】妖怪文化研究家。福岡県出身、奈良県在住。子どものころ『まんが日本昔ばなし』に熱中して、水木しげるのマンガ『のんのんばあとオレ』を愛読するなど、怪しく不思議な話に興味を持つ。現在、奈良県内のお化け譚を蒐集、記録を進めている。大和政経通信社より『奈良妖怪新聞』発行中。
 
●挿絵/幸餅きなこ 撮影/高旗弘之
《超!アニメディア編集部》
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