<アニメ・マンガ妖怪よもやま話>『鬼灯の冷徹』に登場する金魚草は何者?金魚は古くより人の心情を媒介するものだった!? | 超!アニメディア

<アニメ・マンガ妖怪よもやま話>『鬼灯の冷徹』に登場する金魚草は何者?金魚は古くより人の心情を媒介するものだった!?

   アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌「アニメディア」で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」として …

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 アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌「アニメディア」で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。今回は漫画『鬼灯の冷徹』にも登場する金魚草という存在について、奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が考察する。
 
 
 閻魔大王の第一補佐官・鬼灯(ほおずき)をはじめ、個性豊かなキャラクターたちが活躍する漫画『鬼灯の冷徹』が完結するというニュースが飛び込んできました。2011年から雑誌『モーニング』で掲載され、アニメにもなった同作。ブラックユーモアを交えつつ、地獄の日常をゆるりと心地よく描く作品で、まさか終わりがあるとは……。私にとっては予想外の出来事で、とても驚きました。さびしい気持ちでいっぱいですが、最後まで見守りたいと思います。
 
 さて『鬼灯の冷徹』の魅力のひとつは、登場人物たちのキャラクター性にあるでしょう。なかでもバツグンに不思議な存在なのが“金魚草”です。鬼灯が品種改良した鑑賞用ペットですが、詳細はよくわからず、謎に包まれています。作中では愛好家が多く、コンテストも開催されている模様。
 
 金魚にまつわる不思議な話といえば、江戸時代後期の戯作者・山東京伝による『梅花氷裂(ばいかひょうれつ)』が思い出されます。この話においては、信濃国の藻之花(ものはな)という女性が重要な存在です。藻之花はある家に子を産むため、妾として迎えられます。しかし隣人の言葉に惑わされた家の正妻が、藻之花を監禁して折檻。次第に飢えていく藻之花は、金魚を思わせる恐ろしい姿へと変化していくのです。結果、藻之花は隣人の手で殺害され、藻之花の血を浴びた金魚が藻之花そっくりの姿になったといいます。この金魚は、のちに「金魚の幽霊」などと呼ばれます。
 
 主要なところだけをざっくりまとめてしまいましたが、前後にも話があり、重要な場面で必ず金魚が登場することが特徴です。『梅花氷裂』中で、金魚は人の恨みつらみのような心情を媒介するものとして描いているのではないかと考えます。
 
 金魚草は「おぎゃあぁぁぁぁ」と鳴くほかに、感情を表現することはありません。いったい、何を考えているのでしょうか。あまり何も考えていないようにも見えますが、もしかすると彼らにも『梅花氷裂』の金魚のように何か事情があるのかもしれません。そう思うと、どことなく鳴き声が悲しげに……聞こえるような気がしなくもないですね。
 
『鬼灯の冷徹』では、最終話までに金魚草の新事実は明らかになるのでしょうか。そのあたりも含めて、最後の最後まで、しっかりと『鬼灯の冷徹』ワールドを楽しみたいと思います。

 

解説:木下昌美
<プロフィール>
【きのした・まさみ】妖怪文化研究家。福岡県出身、奈良県在住。子どものころ『まんが日本昔ばなし』に熱中して、水木しげるのマンガ『のんのんばあとオレ』を愛読するなど、怪しく不思議な話に興味を持つ。現在、奈良県内のお化け譚を蒐集、記録を進めている。大和政経通信社より『奈良妖怪新聞』発行中。
 
●挿絵/幸餅きなこ 撮影/高旗弘之
《超!アニメディア編集部》
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