今年3月にミニアルバム「29+1 -MISo-」でアーティストデビューをした寺島惇太が、2枚目となるミニアルバム「JOY source」を10月23日にリリース。「ライブをやることを念頭に置いて作った」という新たな6曲についてのレコーディングや、自身が作詞・作曲をした「JOY」の制作秘話などを語ってもらった。
■ライブで盛り上がれる曲を作りたかった
――今年の3月にミニアルバム「29+1 -MISo-」でアーティストデビューをして、「JOY source」は早くも2枚目のミニアルバムです。
じつは「29+1 -MISo-」をリリースしてすぐに、2枚目のお話をいただいていたんです。しかもミニアルバムということで6曲収録されることもあり、制作も1枚目の延長線上のような気持ちでした。
――2枚目ということで、どんなミニアルバムにしたいと思っていましたか?
ライブをやりたいという思いが強かったですね。「29+1 -MISo-」と「JOY source」の収録曲を合わせると12曲になって、それだけあればライブもできるなと思っていたので、「29+1 -MISo-」にはなかったような曲や、ライブをやるときにあったら楽しいだろうなと思える曲を相談しながら入れていただきました。僕としては、「29+1 -MISo-」と「JOY source」は対になる1枚で、2枚でひとつのアルバムになるようなイメージでもあります。
――タイトルの「JOY source」にはどんな意味が?
「29+1 -MISo-」(ミソ)は、ちょうど僕が30歳、三十路になる時期だったのでそれに引っかけたタイトルになっていますが、最初はこちらの1枚も調味料繋がりはどうかなと思っていて。「塩」とか「ソイソース」とかも考えたんですよ。でも、いきなり「塩」や「ソイソース」がタイトルになっていても、理由付けができなくて(笑)。そこから一度離れて、スタッフのみなさんと相談しながら出てきたのが「JOY」でした。でも、「JOY」だけだと、SNSで検索したときにほかのワードに紛れてしまうなと思ったんです。そこで調味料繋がりが復活しまして「ソイソース」に引っかけて「JOY source」になりました。
――割と軽いノリでできあがっていくんですね(笑)。
その場の勢いで決まることは多いですよ(笑)。たとえば、僕が作詞・作曲を「JOY」も、歌はできあがっていたのにタイトルが決まっていなかったんです。アルバムのタイトルが決まったあとに、「この曲は、JOY感があるよね」「じゃあタイトルは『JOY』でいいんじゃないか」みたいなノリでした(笑)。
■リード曲「スカーレット」の歌とMVのイメージが違う!?
――先ほど、ライブで歌えるような曲をという話でしたが、1曲目の「名もなき花」はどちらかというとしっとりとした印象の強い曲ですね。
2曲目の「UP↑DAYS!」がものすごくノリノリの曲なんですが、いきなりこの曲が来たらちょっと盛り上がりすぎかなと思って。「名もなき花」は、少しずつエンジンがかかっていくような盛り上がりのある曲なので、満場一致で1曲目に決まりました。この曲は、作ってくださったのが「鶴」というバンドの秋野温さんなのですが、もともと学生時代から好きで聞いていたので、初めて歌ったときにそのバンドに寄せた歌い方になってしまって。ちゃんと自分の歌い方になるようにという試行錯誤はありました。でも、1回歌い方が決まればそれからはスムーズでした。メロディーがシンプルなので、レコーディングではあまり深く考え込まずに、テクニックに走らず、無骨な感じが出たらいいなと思って、声をストレートに出すようにしました。
――2曲目の「UP↑DAYS!」は、ザ・パーティーソングという感じです。
この曲はかなり砕けた歌い方をしたので、「名もなき花」との落差は激しいと思います。とにかくレコーディングでは口が回らなかった(笑)。一度つまずくと、そこから立て直すのがすごく難しい曲だったんですね。でも、一度波に乗れれば、その勢いで勝手に口が回っていくようになったので、テンションって大事なんだなと思いました。歌詞ではくだらないことしか言っていないので、難しいことは考えずにノリで聴いてほしいです。
――3曲目の「スカーレット」がリード曲になるんですね。
そうなんです。最初は「UP↑DAYS!」かなと思っていたんですが、秋っぽい曲のほうがいいねということで、この曲になりました。
――「UP↑DAYS!」とはまた落差のあるミドルバラードです。
これは1枚目のミニアルバムには収録されていないタイプの曲ですね。制作は「UP↑DAYS!」と同時期だったんですが、ゆったり歌うタイプの曲で、その振り幅が面白いなと思っていました。
――この曲はどんなところにこだわってレコーディングをしましたか?
プロデューサーからリズムを取り過ぎないほうがいいとアドバイスをいただきました。バラードはリズムを少しうしろにして、走りすぎないほうが歌いやすいよと言ってもらえて、それを実践しました。気持ち的にはお芝居に近い感じで、歌詞の内容を重視しながら歌いました。
――「スカーレット」はMVも撮影されていますよね。
閉園後のとしまえんで、メリーゴーランドに乗るなど、いろいろなロケーションで撮っていただきました。2倍速で撮影したものをスローにしているので、まず2倍速で口を動かさないといけないのが大変でした(笑)。このMVを撮っていて気づいたんですが、レコーディングのときは、幸せなカップルが手をつなぎながら、日曜の昼間に近所を歩いているような幸せな曲だなと思っていたんですよ。でも、MVはそういう幸せな時間を経て、今ひとりぼっちになっている人みたいなテイストだったので、聴く人の状況によってハッピーな曲にもなるし、切ない曲にもなる、そんな不思議な歌なのかな。
――4曲目の「ベル」はかなりロック色の強い曲です。
最初のアレンジでは「スカーレット」のような秋っぽさがあったんですが、同じような曲調が多いと全体的に重くなりそうなのでと、プロデューサーがゴリゴリのロックにアレンジしてくれました。「UP↑DAYS!」のような矢継ぎ早に言葉を紡ぎ出すような曲でもなく、「スカーレット」のようにしっとりとした雰囲気でもなく、その中間あたりのペースで歌える曲だったので、すごく歌いやすかったです。曲に盛り上がりがきちんとあるところもいいですよね。あと、英語の歌詞がすごくかっこいいなと思って歌っていました。
――自分で作るときには英語の歌詞はあまり書きませんか?
……文法が間違っているんじゃないかと心配になっちゃうので書きません(笑)。
――なるほど(笑)。5曲目の「ノイズ」はポップな曲ですね。
この曲が最後にできた曲なんです。最初は、もう少し静かなロックチューンが入る予定だったんですね。でも、そうするとすごくロックバンド感のアルバムになってしまって。僕自身はロックが好きですが、聴いてくださる方の中にはロックをそれほど得意としない方もいるだろうし、そういう方にもいいアルバムだと思ってもらいたかったので、メロディーのしっかりしたポップな曲を作っていただきました。できあがったものも全部のなかで一番聴いているかもしれないくらい、メロディーが好きな曲です。
――そして最後の「JOY」。作詞作曲も担当されていますが、今回の制作は全体の曲とのバランスも考えましたか?
考えました。1枚目は自分で作りたい曲を作らせていただいたんですが、打ち合わせの中で「みんなが気軽に身体をゆらしながら聴ける、軽やかな曲がほしい」という話になって、それを僕が担当することになったんですね。テーマをいただいて作るのは初めてだったので、まずそれが難しかった。とにかく軽く、軽やかにということを意識して曲だけ先に作ったんですよ。歌詞も何も考えていなかったら、歌詞を書くときになって何も降りてこなくなっちゃって……。「軽やか」というテーマに引っ張られすぎて、「みんなハッピーになって手を取り合い、楽しく踊りましょう」みたいな感じになってうなっていました(笑)。
――その苦難をどう乗り越えたんですか?
とりあえずパチンコに行きました(笑)。
――パチンコですか。
インタビューなどでスランプになったら、あえて違うことをやってみると急に(歌詞が)降ってくることがあると読んだことがあったので、実践してみたんです。罪悪感はもちろんあったので、その気持ちと「久しぶりのパチンコ楽しいな」という気持ちを両方メモして、気がついたらできていたみたいな感じでした(笑)。日記みたいな歌詞になりましたね。
――でも、後半は人に向けて歌っているような部分もありますよね。
そこが僕の小ずるいところです(笑)。聴く人にとっても共感できる部分があったほうが、聴きやすいじゃないですか。それで、後半は「君もそうでしょう」って語りかけたり、元気づけるようにしてみたりして。
――それでいて、夢落ちなんですね。
夢落ちの部分は最初の歌詞にはなかったんです。できあがってから読み返してみたときに、ちょっと真面目に好感度を取りに行きすぎたなと思って、お茶を濁したくて入れてみました。いいこと言っているけど、コイツしょうがないやつだなと思ってもらうためのブランディングです(笑)。それもあって、歌も力を抜いてだらっと、とにかく楽しく頑張らずに歌いました。個人的にはこれを聴いたまま寝てほしいです。たぶん、寝坊すると思います(笑)。
■アーティストとしてもいろいろな曲に挑戦していきたい
――ジャケットはクールさとおしゃれさのあるテイストです。
僕は民族衣装のような柄が好きなので、それをスタイリストさんがうまく入れ込んでくださいました。秋っぽさも感じられて、すごく素敵に仕上げていただきました。
――この1枚を、どんなふうに聴いてほしいですか?
今は配信で1曲だけ聴けたり、自分でプレイリストも作れたりしますが、まずは僕たちがみんなでバランスを考えながら作った曲順通りに聴いてみてほしいです。そうしたら、きっとこの1枚の良さがより深く伝わると思います。
――今後、アーティストとして挑戦してみたいことは?
まず、全曲を歌いきるライブをやりたいですね。それから、キャラクターソングではなかなかない、ちょっと構成の変わった歌にも挑戦したい。サビが最後しかなかったり、2種類くらいさびがあったりするような複雑な歌にもチャレンジできたらと思います。
取材・文/野下奈生(アイプランニング)
PROFILE
寺島惇太【てらしま・じゅんた】
8月11日生まれ。長野県出身。ケンユウオフィス所属。2019年3月にミニアルバム『29+1 -MISo-』でアーティストデビュー。声優としての主な出演作は、『KING OF PRISM』シリーズ 一条シン役、『アイドルマスター SideM』大河タケル役など。
リリース情報
『JOY source』
FEEL MEEより10月23日発売。
初回限定盤2,500円
通常盤2,000円(各税別)
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寺島惇太公式サイト
http://juntaterashima.com/
寺島惇太公式Twitter
@juntaterashima3