フランクスと呼ばれるロボット兵器に乗り込み、敵と戦う“コドモ”たちの日常が描かれるTVアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』(以下、ダリフラ)。そんな本作のOPテーマ「KISS OF DEATH(Produce by HYDE)」を歌う中島美嘉に、13年ぶりにHYDEとタッグ組んだという本曲の聴きどころなどを聞いたインタビューが現在発売中のアニメディア4月号に掲載されているが、超!アニメディアでは、誌面では紹介しきれなかったロング版インタビューをお届けする。
私はその状況を楽しむタイプ
やっぱりゼロツーに似ている
──『ダリフラ』のOPテーマをという話をいただいたときの印象は?
最初にアニメの企画をうかがったときに「(スタッフ陣など)すごいチームだから、すごいことが起きるんだろうな」と思ったので、せっかくいただいた機会だし「作品の一部として一緒に盛り上げることができたらいいな」と思いました。
──アニメをご覧になっての印象は?
「なるほど。これはハマるな」と思いました。とくに主人公たちの世界にはすごい技術があって、ロボットも動かせる能力を持っているのに、キスとか普通のことを知らなかったりとか、いい意味で純粋な部分をきちんと描いていたことに単純に感動しました。テレビで放送後の先のシナリオまでは知らないので、「この子はこの先どうなっちゃうのかな?」とか、勝手な想像を膨らませて切なくなってしまったりしています。
──そんな『ダリフラ』のOPテーマ「KISS OF DEATH(Produce by HYDE)」を歌われていますが、オンエアで映像と曲が合わさって流れたものを観たときは、どんな風に感じましたか?
HYDEさんの作詞作曲プロデュースなのですが、「HYDEさんはどこまで先に作品を知っていて詞曲を作ったんだろう?」と思ったくらい、すごくアニメの世界にぴったりハマっていて驚きました。アニメでゼロツーが言う「ボク」とか「ダーリン」という言葉も歌詞に出てくるんですけど、実際に作品の中でとても重要なキーワードになっているんですよね。
──HYDEさんの楽曲を歌うのは、映画『NANA』主題歌として、NANA starring MIKA NAKASHIMA名義で「GLAMOROUS SKY」を歌って以来13年ぶりとのこと。最初は、どんな状況でこの曲を聴かれたのですか?
いきなり“ドンッ!”でした(笑)。ツアーが始まる前のリハーサルをやっているときに、アニメ側のスタッフさんたちがスタジオにやってきて。「何事か?」と思ったら、「じつはこういう企画が進んでいます」と、そこでドンッとアニメの資料とかいろいろ渡されて。それで「すでに曲もあります」と、聴かされたのがこの曲です。そのときに「HYDEさんが書いてくれたんだ!」と驚いていたら、スタッフがニヤニヤしていて(笑)。
──サプライズだったんですね。
HYDEさんとは普段から連絡を取り合っていますけど、HYDEさんからもサプライズにされていて。
──曲調とか、聴いたときの印象は?
最初に聴かせていただいた音源は、このメロディをHYDEさんが歌ってくれているものだったのですが、それもあってとにかく「かっこいい!」と思いました。アニメのイメージとHYDEさんが作る意味みたいなものを重ね合わせ、その上で私の声をイメージして作ったと聞いたので、それもうれしかったです。
──実際に歌ったときは、どういうことを意識しました?
歌ってみると、じつはすごく変わったリズムになっていて。ただ聴いているぶんには、スッと入ってきて「かっこいいな」と思うんですけど、いざ歌ってみると「え? ここはこんな風になってるの?」というところが、いっぱいある曲です。だからこそ聴き手にとっては、自然とかっこよく響くのだなと思います。
──たとえば、どういうところですか?
私はどうも遅らせて歌に入るクセがあるらしくて、<ドアを叩く>と歌うところは、タイミング通りに入れないときがあるんです。確かに急にビートが変わるので、入りづらくなるのはなるんですけど……。ふつうに歌っているつもりでいたら、みんなが「違うよ」と言うので、「何が違うの?」と思ったら、それだったんです。
──そんなに難しいんですか。
レコーディングでは上手くできましたけど、まだたまに危ないときがあって。今はライブのリハーサルをしているのですが、マネージャーが横でパンパンって手を叩きながら「ハイ。今よ!」って、入るタイミングを指示してくれて(笑)。
──歌ったときの感情はいかがですか? やはりゼロツーの気持ちとか?
アニメのOPテーマではあるけど、中島美嘉としての楽曲でもあるし、今お話した通りどうやって自分のものにするか必死だったので、そこまで意識するようなことはなかったです。ただビジュアル面は意識しました。毎回ではないですが、アニメのタイアップではないときでも、レコーディングの当日はその曲のイメージに合わせた服装やメイクでスタジオに行くんですね。その主人公になったつもりと言うか。このときは、角は付けてないですけど、自分なりに「『ダリフラ』の世界観はこんな感じかな?」と思って、マントを羽織っていきました。
──それで自然と気持ちが入るんですね。
自分でメイクをするときも、その日ごとに「今日はこういう気分かな?」と、なんとなくその日のテーマを決めるので、そのときはメイクをしながら「今日は『ダリフラ』の曲だから」と無意識に考えていて、それで自然とそういう感じになるんだと思います。
──「キス」がキーワードになっているわけですが、曲のタイトルも「KISS OF DEATH」で、なかなか刺激的なタイトルと歌詞ですよね。
私としては、刺激的だとかパンチがあるとかそういうことよりも、ただ「かっこいい!」と、それだけでした。「かっこいいタイトルがきた、うれしい!」って。
──歌詞のなかで、ここのフレーズは自分にも刺さったとか、そういうのは?
どこがというのは難しくて。自分を怖がらないでほしいと歌っているところは、この爽快なサウンドとは逆の切ないイメージで、そのギャップがかっこいいと思いました。あと聴きどころとしては、Dメロの英語の部分は私の声と男性の声のふたつを重ねているのですが、男性の声は、じつはHYDEさんの声です。誰か男性にコーラスを頼みたいと思っていたら、HYDEさんが歌っていたものを「使っていいよ」と言ってくださって。だから、すごく贅沢です。HYDEさんが、めちゃめちゃかっこよく歌ってくださっているので、そこも注目してよく聴いてほしいですね。
──ジャケット写真やMVでは、ゼロツーのような角を生やしていますが、中島さんからのアイデアですか?
アニメ制作側のスタッフさんから「中島さんはゼロツーのイメージに近いんです」と言っていただいたのがうれしくて、「じゃあちょっと角を付けてみようか」と。実際に付けてみたら、みんなから「元から生えてるみたいだ」と言われました(笑)。
──衣装もですか?
はい。ただ、角を付けて衣装もゼロツーのままでは、ただのコスプレになってしまうので、それはしたくなくて。言ってしまえば、ただの下着みたいな格好ですけど、ファッション性もありつつゼロツーにも通じるものがあるものになっています。私が目指したのは、“幼さ”です。幼い子が、がんばって大人っぽく振る舞っているイメージが、ゼロツーからも感じられたので、あの格好は、すぐ思いつきましたね。
──幼さと言うのは、何歳ぐらいとかまで考えたのですか?
具体的に設定はしてないけど、たとえば十代くらいなのかな? でも私なので、どうがんばっても十代には見えないと思うけど(笑)。『ダリフラ』の主人公たちからも、「このくらいの子が、こんなことをさせられてるんだ!」という切なさを感じたので、それが表現できたらいいなと思いました。
──中島さんご自身が、主人公たちくらいの年齢だった頃は、鳥かごのなかにいるように感じたりしていましたか?
私はけっこう自由にさせていただいていたので(笑)。でも、もし私がこういう状況に置かれていたとしたら、きっとその状況を楽しんでいたと思います。それをやることによって誰かが助かるなら、自分をかえりみず「いいよ、やるよ!」って言ってしまうタイプです。そう考えると、やっぱり私はゼロツーに似ているのかもしれないですね。
──では、最後にアニメディア読者に向けてメッセージをお願いします。
アニメと合わせて聴いて、まったく違和感がないものに仕上がっています。きっとCDで聴いても、『ダリフラ』の世界観が頭に浮かぶと思う。楽しんでもらえたらうれしいです。
◆「KISS OF DEATH」PV
◆プロフィール
【なかしま・みか】2001年にドラマ『傷だらけのラブソング』のヒロインに抜擢され、同ドラマの主題歌「STARS」でデビュー。「雪の華」などがヒット。2005年には矢沢あいの人気コミックを原作にした映画『NANA』に主演し、NANA starring MIKA NAKASHIMA名義で同映画主題歌「GLAMOROUS SKY」を歌いチャート1位を獲得した。これまでに映画『バイオハザードV リトリビューション』日本語吹替版主題歌「明日世界が終わるなら」やアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』EDテーマ「愛詞(あいことば)」などを担当している。
◆CD情報
ダーリン・イン・ザ・フランキス
OPテーマ KISS OF DEATH
中島美嘉
発売元/SMAR 発売中
アニメ盤:1,728円、初回盤:1,624円、通常盤:1,258円(各税込)
シンセサイザーをメインにしたEDMのサウンドと、エレキギターなどのロックの要素を絶妙に落とし込んだ楽曲。中島のボーカルは情感タップリで、ときには激しくときには切なくと、多彩な表情を見せている。それは透明感がありながら内面が溢れてくるようで、激しさと儚さを兼ね備えたゼロツーのキャラクターとも重なる。カップリングには、13年前にHYDEとタッグを組んだ「GLAMOROUS SKY」のニューバージョン「GLAMOROUS SKY(Re:Present 2018)」などを収録。