Netflixオリジナルアニメ『HERO MASK』監督の青木弘安が語る作品の魅力と地上波・劇場公開アニメと配信アニメの違いと可能性【インタビュー】 | 超!アニメディア

Netflixオリジナルアニメ『HERO MASK』監督の青木弘安が語る作品の魅力と地上波・劇場公開アニメと配信アニメの違いと可能性【インタビュー】

全世界同時配信となるNetflixオリジナルアニメ『HERO MASK』。本作は装着したものに未知の力を与える「マスク」を巡り、主人公の刑事・ジェームズとマスクに翻弄される人々を描いた本格的クライム・サスペンス・アクシ …

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 全世界同時配信となるNetflixオリジナルアニメ『HERO MASK』。本作は装着したものに未知の力を与える「マスク」を巡り、主人公の刑事・ジェームズとマスクに翻弄される人々を描いた本格的クライム・サスペンス・アクションで、パート1が15話、パート2が9話という構成で配信されている。

 今回は『HERO MASK』の監督である「スタジオぴえろ」の青木弘安にインタビュー。作品の魅力に加えて、Netflixオリジナルアニメと地上波や劇場公開される作品との違いについてお話をうかがった。


――今回、『HERO MASK』を制作するに至った経緯について教えてください。

 そもそもは「スタジオぴえろ」のプロデューサーから新しいヒーローものが作りたいという相談をされたのがきっかけでした……というよりそれしかなくて(笑)。ヒーローものといってもすそ野が広いので、どういう指針で作るのかはディスカッションしながら決めていきました。

――具体的にはどのような方向性になりましたか?

 大きな指針となったのは、リアリティ。ヒーローものであっても、絶対悪としての「敵」がいてそこに対して正義の「味方」が立ち向かうというのではなく、主義が違うからぶつかり合うという方向性で物語を描けないかということを話し合って決めていきました。

――いわゆる勧善懲悪という形ではリアリティを描きにくいと考えた。

 そうですね。単純明快なヒーローアクションよりも色々な主張の人々が出てきて敵対するというほうがリアリティを描きやすいと思い、その方向性で話を進めていきました。とはいえ、アニメは映像表現。ひとつの主点を置かないと視聴者の方々もどう観ればいいか分からなくなってしまいます。そこで、主人公のジェームズ・ブラッドというキャラクターが生まれます。彼は刑事ですが、装着すると超人的能力をもたらす《マスク》に関しては何も知らない、いわば視聴者と同じ状態の人物なんです。

主人公のジェームズ・ブラッド

ーーなるほど。

 そのほかに登場する主要人物はわりと《マスク》と関わりの深い人が多いんです。例えばジェームズの元相棒であるハリー・クレイトンは意識不明の恋人を救いたい、研究者のジェフリー・コナーは《マスク》を完成させたい、同僚が事件に巻き込まれたサラ・シンクレアは真相を知りたい、といった《マスク》に関する何らかの意見を代表する人物となっています。

ハリー・クレイトン

ジェフリー・コナー

――物語は複雑でも、それぞれのキャラクターの目的は単純でわかりやすいものになっている。

 そうですね。だからこそ対立するということを明確に描いたつもりです。

――ヒーローものを作りたいというお話でしたが、そのなかでクライム・サスペンス・アクションというジャンルを選択した理由は?

 ヒーローものを作るときに逃れられないことは“何かが起きないといけない”ということ。例えば意見のぶつかり合いや抗争などがなければ、なかなかヒーローという存在が浮き彫りにならないと思うんですよね。そういったなかで、主義のぶつかり合いを図式として落とし込みやすかったのがクライム・サスペンス・アクションでした。方法によってはアクションを外して海外ドラマのような構成にすることもできたと思いますが、アニメなので何らかのエンターテイメント的な要素も入れたいと思い、アクションを入れました。

――なるほど。今回はNetflixオリジナルアニメですが、Netflixサイドから何か要望はありましたか?

  Netflixさん側からの要望は一切なかったです。むしろ「作りたいものを作ってください」と言われました。


――今回の作品は海外の方にも受け入れられそうな作品です。Netflixオリジナルアニメにはその点を意識された作品が多いと感じるので、要望があったのかと思いました。

 むしろ逆と言ってもいいかもしれません。私たちがNetflixで配信することを考慮して本作を制作しました。

――監督はこれまで地上波で放送されるアニメや劇場公開のアニメなども手掛けられていますが、Netflixオリジナルアニメを制作するうえで特別意識した点を教えてください。

 まずは全世界同時配信であるため、登場人物や世界観は無国籍感が出るように意識しました。例えば、パート1のヒロインであったサラと、パート2のヒロインであるティナは真逆の設定で、性格的にもコントラストを付けています。

ティナ・ハースト

サラ・シンクレア

ーー世界同時配信というのは、ならではですよね。

 あとは、視聴環境の違いを考えました。例えば映画館で観るのであれば大きなスクリーンだからこそ伝えられる情報量というのがあります。映画館のスクリーンなら引きの絵でも伝えられる情報量が多いんですよね。また、地上波で放映される作品なら時間帯も考慮して制作します。一方のNetflixオリジナルアニメはいつ、どんな場所でも、色々な媒体で視聴ができます。スマートフォンでもテレビでも、タブレットでも観る方がいらっしゃいます。そうなると、引きの絵では情報量が多くなりすぎて伝わらない可能性があるんですよね。だから、『HERO MASK』では寄りの絵を多めに構成しています。小さい画面で観ても伝わるような絵作りは大いに意識しました。

――最初からスマートフォンでも視聴できるというのは、Netflixオリジナルアニメならではかもしれません。

 そうですね。テレビや劇場を中心に放映するなら作り方は大きく違ったと思います。一方で、作品としては意図的な観にくさというのも随所に入れています。

――観にくさでしょうか?

 はい。絵だけで語らない部分を用意しました。そうすることで視聴者の方が“気になる”要素をあえて残したんです。

――絵以外の部分でいえば、本作は状況を説明しているセリフが少ないですよね。これも気になる要素のひとつに繋がる気がします。

 アニメというメディアになると作り手が説明しがちだなという想いが個人的にはあって。それは観やすさには繋がるのですが、視聴者が気になるポイントは減ってしまう気がするんですよね。Netflixさんは契約期間であれば何回でも作品を見返すことができます。だから、一度ではなかなか気づけなくても、何度か観ていただくことで気付けるといった演出を意識しました。音に関しても、大事なセリフを言っているときに環境音が大きくて、セリフが聞き取りにくいというシーンをあえて入れました。

――構成や演出という点では、パート1が15話、パート2が9話というのもあまりない形式かと思います。

 パート1は《マスク》という事象に対して翻弄される人々、そして《マスク》に対するそれぞれの主張を物語として描いています。言わば、《マスク》が主軸にあって、その事象によって人々が動いていました。これに対してパート2は、人々の意見や人間ドラマに主軸を置きながら《マスク》という事象を描いています。パート1と2では、逆なんですよね。だから、合計では24話といういわゆる地上波の2クール分の話数でありながらも、15話と9話という形の構成になりました。Netflixさんはこの構成に関しても「いいよ」とおっしゃってくださいました。非常にクリエイターファーストだったので、面白い切り口ができたと思います。

――なるほど。パート1の最後には謎の少女・ティナが登場しましたが、彼女が物語のカギを握っている?

 そうですね。今まで《マスク》は囚人たちが実験として使っていましたが、パート2では、ティナも《マスク》を付けています。しかも、ティナ自体は《マスク》を付けているという自覚がありません。彼女が囚人ではないのになぜ《マスク》を付けているのか、そもそも《マスク》はどこで開発され、目的は何だったのか……。彼女を中心に、《マスク》の真相も明らかになっていきます。そして、ティナと行動を共にするジェームズは《マスク》に対してどう気持ちが揺らぐのか、そこも注目していただきたい点ですね。

――冒頭でも少しお話がありましたが、ジェームズは《マスク》を巡る話のなかでは蚊帳の外なんですよね。それは一貫している気がします。

 そうなんです。彼は《マスク》に関してパート1を視聴いただいた方々と同じ情報量しか持っていません。起きている事象に対処することしかできないです。絶対的な力もない、ひとつの事件を解決するために翻弄される彼は決して、みんなが憧れるようなヒーローではないと思います。それでも、ティナにとってはヒーローとして映るのではないでしょうか。

――《マスク》を巡る戦いに巻き込まれるティナを救おうとするジェームズは、彼女にとってはヒーローのような存在に映る。そもそもヒーローというのはそういう存在なのかもしれません。

 誰かにとってのヒーローは誰かにとっては邪魔な存在なんですよね。

――絶対的な正義と思っていても、一方から観れば悪という可能性がある。

 ありますよね。本作でいえば、ハリー目線でも物語を描くことはできたと思うんです。彼はどんな悪事に手を染めてでも恋人を助けるんだという、ダークヒーローと言っても過言ではない存在。その視点で描くと逆にジェームズは非常に邪魔な人物でしょう。でも恋人にとってハリーはヒーローに見えるはずです。

――ヒーローについての考え方までお話いただきありがとうございました。最後になりますが、本作のようなNetflixオリジナルアニメは今後どうなっていくと考えていらっしゃいますか?

 色々な可能性がありますよね。Netflixさんでいえば視聴者の選択によって物語が変化するというものがありました。こういうのは映画館ではきっとできない取り組みだと思います。映画には映画、地上波には地上波のよさがありますが、Netflixオリジナルアニメから新たな可能性が生まれるかもしれません。


画像ギャラリーはこちら。クリックすると拡大します。

 

『HERO MASK』作品情報
Netflixにて配信中
【スタッフ】
監督・シリーズ構成:青木弘安
キャラクターデザイン:片桐貴悠
美術設定:山田勝哉
美術監督:園田由貴、中村隆
衣装デザイン:いさお
色彩設計:古性史織
撮影監督:久野利和
画面設計:sankaku△
編集:柳圭介
音響監督:久保宗一郎
音響効果:西村睦弘
音楽:加藤久貴
アニメーション制作:スタジオぴえろ
製作:HERO MASK製作委員会
【キャスト】
ジェームズ・ブラッド:加瀬康之
サラ・シンクレア:甲斐田裕子
レノックス・ギャラガー:森田順平
エドモンド・チャンドラー:高野憲太朗
ハリー・クレイトン:内山昂輝
ジェフリー・コナー:青山穣
スティーブン・マートランド:菅生隆之
リチャード・バーナー:仲野裕
モニカ・キャンベル:渋谷はるか
フレッド・ファラデー:志村知幸
ジェレミー・ペイン(グリム):烏丸祐一
イヴ・パーマー:藤井ゆきよ
アンナ・ワインハウス:宮寺智子
その男:津田健次郎

ティナ・ハースト:嶋村侑                                                                                               
アラン・ワイアット:星野貴紀
ダグラス・コーツ:後藤敦
ウィリアム・ハースト:星野充昭
ゲイリー・エヴァンズ:金田明夫

『HERO MASK』公式サイト
http://heromask.jp/

『HERO MASK』公式Twitter
https://twitter.com/heromask_anime

(C)フィールズ・ぴえろ・創通/ HERO MASK製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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