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ディズニー製作のアニメ映画『アラジン』が実写化され、注目を集めています。1992年に製作されたアニメ映画のリメイクです。ディズニー映画としては珍しく、お姫さまでなく貧しい青年・アラジンが主人公。そして、アラジンの願いを聞き入れながら、彼の成長の手助けをしてくれるのが、魔法のランプに宿る「ジーニー」です。ジーニーはランプをこすった人間を主人として、3つまでならば願い事をかなえてくれます。
『アラジン』はイスラム世界における説話集『千夜一夜物語』の物語のひとつ『アラジンの魔法のランプ』を原案としています。ジーニーはアラブの世界で“ジン”という「精霊」や「霊鬼」などと訳される存在です。ジンは普段は不可視のものであり、煙や雲のような気体から固体となって可視化されるといいます。その姿は蛇であったり人であったりと、さまざまなようです。ジーニーの姿は青色で、顎髭を生やした、いかつい男性の姿です。
煙と共に現れるジーニーですが、日本のオバケに『煙々羅(えんえんら)』というものがあります。鳥山石燕による江戸時代の画集『今昔百鬼拾遺』に登場する、煙のオバケです。絵を見るかぎりでは、何やら巨大な煙の塊で薄笑いを浮かべています。絵の脇にある説明を読んでみると、蚊を追い払うための煙が不思議な姿かたちになったものであるようです。近代の本のなかには、煙に宿った精霊であると書いているものもあります。
ジーニーと煙々羅……共通点はさほど多くはありませんが、同じ煙に関連する不思議な存在として煙々羅という存在も知っておくと、ジーニーにより愛着が湧くかもしれません。
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