『revisions リヴィジョンズ』谷口悟朗と平川孝充に聞く制作秘話 現実的に最大限のクオリティのものを作り出すための工夫とは | 超!アニメディア

『revisions リヴィジョンズ』谷口悟朗と平川孝充に聞く制作秘話 現実的に最大限のクオリティのものを作り出すための工夫とは

高品質で世界基準のアニメ作品を世界にも打ち出していく新アニメ枠・フジテレビ「+Ultra」。その第2弾として2019年1月9日より『revisions リヴィジョンズ』の放送がスタートした。今回は、谷口悟朗監督と平川孝 …

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 高品質で世界基準のアニメ作品を世界にも打ち出していく新アニメ枠・フジテレビ「+Ultra」。その第2弾として2019年1月9日より『revisions リヴィジョンズ』の放送がスタートした。今回は、谷口悟朗監督と平川孝充CG監督にインタビュー。映像面を中心にお話をうかがった。

リヴィジョンズ(左から)谷口悟朗監督と平川孝充CG監督

――『revisions リヴィジョンズ』は世界基準のアニメ作品を世界に打ち出していく新アニメ枠・フジテレビ「+Ultra」での放送ですが、制作するうえで海外を意識した点はございますか?

谷口:海外にも配信するから特別意識したというよりかは今回のお話をいただいて「そちら側でもいいんだな」と感じました。

――「そちら側」というのは?

谷口:海外と日本のアニメファンの違いのひとつが、日常系や萌え系のアニメが好まれるかどうかという点だと思います。海外だと日常系や萌え系はそれほど受けがよくありませんから。本作は海外にも視野を広げてということであれば、世界の人たちにも受け入れられるジャンルでやれる、日本のアニメが本来持っているドラマとしての面白さに気づいてもらえるような作品作りができる、と思ったんですよね。そういう点にも注目していただけると嬉しいです。

――本作は本格的なSF作品で、渋谷の街の一角が未来に跳ばされるという展開になります。この着想に至った経緯について教えてください。

谷口:すごくがっかりするようなことを言いますと、予算と現実の制作進行を考慮した結果です。アニメーション作品を作る際、まずは制作予算や制作体制を現実的に考えます。今回で言うと白組さんを中心にCGという軸で作っていく、そして白組さんはまるまる12話分やるのが初めてとなると、どういう事が起きるかわかりません。白組さんに無理していただくという進め方もできなくはないですが、その結果、大事故が起きてしまっては元も子もないですよね。だから、現実的なラインについてシリーズ構成の深見真さんなどと話して、美術点数などをある程度限定できる「街の一部が未来に飛ばされる」という発想に至りました。

――なるほど。谷口監督が手掛けられたSF作品としては『無限のリヴァイアス』などもありました。

谷口:そうですね。ただ、『リヴァイアス』では社会システムを作ろうというところからスタートしていたのに対して、本作は区役所や警察などの行政も一緒に未来へと飛ばされます。そうなると小さいコミュニティは最初から形成されているんですよね。一から作るのとコミュニティが少しでもあるのとでは明確にやることが変わります。また、本作は堂嶋大介という主人公とそれを取り巻く多くの人たちを中心としているという点が学生だけで社会システムを作ろうとした『リヴァイアス』とは異なりますね。


――さまざまな経緯があって制作が進んでいった本作。完成したアニメの映像をご覧になったときの感想を教えてください。

谷口:久しぶりに10代の観客も想定した作品に関われたことに喜んでいます。そして、それに対する私のオーダーにここまで応えてくださった白組さんに感謝しています。テレビシリーズという枠で数多の制限がある、しかもオリジナル作品ですので大変なこともたくさんあったかと思います。それでもトライ&エラーを繰り返して、無駄になった作業もあったなかで最後までついてきてくださったことに感謝しかありません。

一方、私個人としては、実写作品でADをやったり、舞台演劇で朗読劇の演出などをお手伝いしたりした経験が役に立ちました。例えば3Dで制作した美術用のセットで、天井を作っていないならそこは画として映せないとかの判断ができたこと。こういうのは実写をやったことがある人間じゃないと即座にはわからないようなことだと思います。

――CG作品を作っていくうえで実写の経験が役に立った?

谷口:そうですね。ただ、アニメーションというのは結局お客さんに届いて完成すると私は思っています。なので、観てくださる方がどのように受け止めてもらえるのか、いまはドキドキしています。

――平川CG監督はいかがでしたか?

平川:白組としては挑戦的な作品でしたし、谷口監督とご一緒できることもあって、スタッフ一同モチベーションが元々高かったんです。その後、渋谷のスクランブル交差点が形になったときに「これはいける」と確信が持てました。全体的にスケジュールの余裕はそれほどありませんでしたが、テレビアニメの予算のなかでやれるところまでやれたと思っています。

――そもそもCGで勝負するという手法をとられた理由は?

谷口:当然、手書きという選択肢もありましたし、部分的にCGを入れるという作り方も当初の話し合いでは出ていました。ただ、結果的に白組さんにお願いしてほぼCGでやっていくという方向で落ち着いたのは、渋谷という現実にもある街を舞台にするからには、ある程度の写実性が必要であること、またメカが登場するので、それのデザインを含めて白組さんの社内で完結したほうがクオリティを維持できると思ったからです。

写実性の部分については手書きでもできますが、相当な作画カロリーが必要です。現実問題、手書きのアニメーションのいくつかは限界を露呈している現場が今はありますよね。スタッフだって好き好んでその露呈している部分を見せているわけではない。特に新しい座組で展開している本作でやるわけにはいかないと思ったんです。メカのデザインについても3Dを熟知している方であれば問題ないのですが、そうでなければ3D化するのが困難になるんです。平川さん、実際にそうですよね?

平川:はい。メカのデザインに関しては社内のデザイナーにお願いして、そこからモデリングをしていきました。社内のデザイナーであれば関節部分がどうなっているかなど見えない、細かい部分までを社内で協議して進められるので、その点は制作をスムーズに進行するうえでも大きなメリットになったと思います。

谷口:それが結果的に映像のクオリティを維持できることにも繋がると思ったので、白組さんを中心としたCGでの映像を基本軸として進めました。こういった3DCGでのメカデザインのノウハウは『ID-0』という作品の経験が大きかったと思います。あのときは海老川兼武さんにメカのデザインをしていただいただのですが、彼はCGによる作業工程を熟知していたので、モデリングで問題が起きると即座に対処していました。それを傍からですが、見ていたりする経験が本作でも活きました。

――白組さんはメカだけでなく、本作ではキャラクターのモデリングも担当されていますよね。

平川:社内には3DCGでセル画(2D)のような表現を実現するセルルックの仕事をしているチームがありました。なので、キャラクターの面でもある程度のノウハウは持っていました。

谷口:キャラクターについても非常に高いレベルで応えていただきました。また、キャラクターのポージングについてはモーションアクターさんの功績もあります。例えば各キャラクターの歩き方の違い。その差を出そうとすると手書きでは大変です。ああいう動きはモーションアクターさんがいてよかったなと実感するところです。

平川:1話の屋上で生徒たちが殺到しているシーンがあります。あそこも手書きだと途方に暮れるほどの作業になると思います。

谷口:ああいうのは手書きだともう上手な人しか描けないですよ。

――モーションアクターさんを使うという判断はどの段階でされたのですか?


谷口:最初はあまりそういう発想に至りませんでした。これは白組さんのほうから提案があったんです。

平川:先ほど監督から写実的というお話がありましたが、本作では人間的なリアリティも追求したほうがいいと思ったんです。それならばモーションアクターを使ったほうが生っぽくて臨場感もあるものになると思ったんですよね。特に前半はそれぞれのキャラクター性がどういうもので、どう動かすのかが決まる重要な部分。そこは谷口監督とも相談しながら決めていきました。一方でモーションアクターは使わず手付けでやったほうが効果的なカットもあるので、そこは取捨選択しながら進めましたね。

谷口:役者さんと直にお話できるというのもよかったです。大介と慶作の歩き方や上半身の使い方の違いが明確なので、このあたりにも注目していただきたいですね。

――なるほど。ちなみに、渋谷を舞台にした理由は?

平川:世界的な配信と考えたとき、認知度が高いのは渋谷だと思ったからです。あとは白組の会社から近いということもあったので、参考にしやすかったというのも理由のひとつですね。

谷口:渋谷のスクランブル交差点は世界的にも認知度が高い場所ですからね。それを観て喜んでもらえるなら、それはありがたいことです。

――聖地巡礼などの効果も意識しましたか?

谷口:監督の立場としてはあまり意識していません。そういうことを考え始めると作品のノイズになってしまい、映像に無理が発生しちゃうと思うからです。聖地巡礼などはプロデュース側が考えていくことかなと思います。

――ここまでお話をうかがっていて、本作では予算内で挑戦したことも多いにあったかと思います。その中で、この作り方がアニメ業界に一石を投じられたと感じる瞬間はありましたか?

谷口:ないですね。そもそも、そういうことを考えたことがないです。実写業界に対して一石を投じてやろうと思っていたのは『プラネテス』。今だと実現できるかもしれませんが、当時の実写だと絶対にできないだろうということをあの作品には詰め込みました。そもそも日本のアニメーションは玉石混交としているのがいいところだと思っているんですよ。アニメーションには色々な表現方法がある。特定の形じゃないといけない、というやり方はアニメーションの多様性に対する敵だと思っています。いや、アニメというくくりで考えるというよりは、大きく言えば、映像表現のなかの可能性のひとつが『revisions リヴィジョンズ』であると私は思っています。


『revisions リヴィジョンズ』キャストインタビュー
・内山昂輝&島﨑信長&斉藤壮馬の“幼なじみ”座談会⇒https://cho-animedia.jp/anime/72627/
・小松未可子&高橋李依対談⇒https://cho-animedia.jp/anime/73240/

〈『revisions リヴィジョンズ』概要〉
■放送情報
フジテレビ「+Ultra」にて毎週水曜日24:55から放送中
NETFLIX にて日本先行全話一斉配信中
ほか各局にて放送中
関西テレビ、東海テレビ、テレビ西日本、北海道文化放送、BSフジ

■ストーリー
「これは予言よ。あなたたち5人に、いつか大変な危機が訪れるの。そのときみんなを守れるのはあなた」 幼いころ誘拐された過去をもつ高校2年生・堂嶋大介は、幼なじみのガイ、ルウ、マリマリ、慶作とともに、不可思議な現象──「渋谷転送」に巻き込まれる。渋谷の中心部が跳ばされたのは300年以上先の「未来」。そこで待っていたのは、広大無辺な荒野と森、点在する廃墟……そして、未来人「リヴィジョンズ」と彼らが操る巨大な機械の化け物だった。理由もわからぬまま化け物に蹂躙されていく渋谷を助けようと現れたのは、誘拐事 件の大介の恩人と同名で瓜二つの少女・ミロ。彼女は、大介たちだけが操縦できる人形兵器「ストリング・パペット」を提供し、渋谷を守れと促す。 誘拐事件の恩人──ミロによる予言「仲間を守る運命」を信じて生きてきた大介は、 ついに訪れた危機と手に入れた力に歓喜する。しかし、幼なじみ5人の絆は誘拐事件の影響でバラバラとなっていた。
 孤立した街。未知の敵。未確定な過去と運命の予言。少年少女たちは、「現在(いま)」を取り戻すために「未来」と戦う。必ず、元の時代へ戻る──

■スタッフ
原作 S・F・S
監督 谷口悟朗
CG監督 平川孝充
シリーズ構成 深見 真/橋本 太知
キャラクターデザイン原案 近岡直
メカデザイン 新井陽平
CGキャラクターデザイン 白井順
BGコンセプトアーティスト 白田真人
MattePaintディレクター 大西穣
美術・設定 坂本竜
色彩設計 長尾朱美
撮影監督 高橋和彦
編集 齋藤朱里
音響監督 明田川仁
音楽 菊地梓
オープニングテーマ THE ORAL CIGARETTES「ワガママで誤魔化さないで」(A-Sketch)
エンディングテーマ WEAVER「カーテンコール」(A-Sketch)
企画 スロウカーブ
アニメーション制作 白組
制作 リヴィジョンズ製作委員会

■キャスト
堂嶋大介 内山昂輝
ミロ 小松未可子
張・剴・シュタイナー 島﨑信長
張・露・シュタイナー 高橋李依
手真輪愛鈴 石見舞菜香
浅野慶作 斉藤壮馬
チハル・イスルギ 日笠陽子
ムキュー・イスルギ 田村ゆかり
堂嶋幹夫 櫻井孝宏
矢沢悠美子 遠藤 綾
黒岩亮平 てらそままさき
牟田誠一郎 飛田展男
泉海香苗 寺崎裕香
ニコラス・サトウ 大塚芳忠

『revisions』 公式 サイト
http://revisions.jp/
『revisions』公式 Twitter
@revisions_PR

©リヴィジョンズ製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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