アイドルグループ「フランシュシュ」の楽曲を手がける音楽プロデューサー・佐藤宏次と作詞家・古屋 真が明かす作詞秘話「作詞上のルールは、“ゾンビ主観の歌として作らない”ということ」【インタビュー】 | 超!アニメディア

アイドルグループ「フランシュシュ」の楽曲を手がける音楽プロデューサー・佐藤宏次と作詞家・古屋 真が明かす作詞秘話「作詞上のルールは、“ゾンビ主観の歌として作らない”ということ」【インタビュー】

続篇の制作が決定し、さらに2020年3月にLIVEイベントの開催と、2020年春に舞台化も決定ているTVアニメ『ゾンビランドサガ』。現在発売中のアニメディア12月号では、作中主人公たちが結成したアイドルグループ「フラン …

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 続篇の制作が決定し、さらに2020年3月にLIVEイベントの開催と、2020年春に舞台化も決定ているTVアニメ『ゾンビランドサガ』。現在発売中のアニメディア12月号では、作中主人公たちが結成したアイドルグループ「フランシュシュ」の楽曲を手がける、音楽プロデューサー・佐藤宏次と作詞家・古屋真の対談を掲載中。「超!アニメディア」では本誌に掲載しきれなかった部分を含めたインタビューの長文をご紹介しよう。


■リアルなアイドルが歌っていてもおかしくない楽曲を作る

ーー『ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best』が発売。どんなお気持ちですか?

古屋 僕は視聴者目線でも『ゾンビランドサガ』という作品が大大大好きになってしまったので、例えば勝手に「ハロウィンの時期はすっぴんのゾンビィフェイスで街をのびのび歩いてたのかな~」とか楽しい物語を想像したりして、ひとりでエモい気持ちになっていたほどですね。だから「え! ベストが出るの? 楽しみ!」と、ただ単にファン目線でうれしくなってしまいました。

佐藤 古屋君は、そもそもゾンビが大好きなんだよね?

古屋 僕にとってゾンビは、元からアイドルのような存在なんですよ。新しいゾンビ映画が公開されたりすると、「今度はこんな子が出てきたのか!」と新人アイドルをチェックするようなまなざしを送っていて。佐藤から『ゾンビランドサガ』の話を聞いたときも、ゾンビがアイドルグループを結成するストーリーと知って、ふたつ返事で引き受けました。「元々アイドルであるゾンビが、アイドル活動をするのは当然だ!」という謎の納得をもとに。



ーーちなみに、最初に見たゾンビ映画は?

古屋 嬉しい質問ですけど、こんな話していいんですか?(笑) 幼少期に見た『バタリアン』ですね。ゾンビが五体バラバラのまま元気に動くんですが、フランシュシュが頻繁に頭や手足を飛ばしながら平気でいるのを見て「バタリアンだ!」と勝手に感動してましたね。それと余談ですが、昔ヘヴィメタルのコピーバンドをやっていて、部屋の棚にはゾンビがジャケットのCDが多く並んでたりしたので、映画に関わらずゾンビに囲まれて育ったのかもしれませんね。

ーーそういう作品からインスパイアされて、生まれた歌詞もあるんですか?

古屋 特筆すると、「ヨミガエレ」の歌詞の“首の皮一枚〜〜”ですね。これは『ランド・オブ・ザ・デッド』という映画の、あるゾンビからインスピレーションを受けています。首から上が無いゾンビなんですが、頭が無いままゾンビのセオリー無視で襲ってきて、「なんで死なないんだ? どうやって噛みつくんだ?」と思ったら、首がフードみたいにうしろに文字通り“首の皮一枚”でぶら下がっていて、身体を起こす勢いで首がブンッて前にきて噛みつく。その描写がフレッシュだったのと同時に、あらゆるダメージに屈せず前進を続けるゾンビの力強さが僕には強く残りました。

ーー古屋さんにとって『ゾンビランドサガ』は、願ったり叶ったりの作品だったと。

古屋 そうです。だからこそ、「まだ誰も書いたことのない“ゾンビアイドルものの歌詞を書いてやる!」と、一人で勝手に意気込んでましたね。ゾンビアイドルもの自体が世の中に無いとは思うので、誰も書いたことがないのは当然なんですが。改めて設定が突飛なアニメだと感じます。

佐藤 一番初めに作詞に取り掛かったのが、今話に上がった「ヨミガエレ」でした。でも、現在の歌詞に辿り着くまでには、何度も古屋とやり取りをしたんです。アイドルにどこまでゾンビ感のあるワードを歌わせるべきなのかのラインを探るのが大変した。そしてあらかた出来上がったものが境監督やプロデューサー陣にも響いてくれて、結果的に“首の皮一枚”という表現が後の歌詞も含めての“ギリギリのライン”になりました。

古屋 最初に佐藤から言われた作詞上のルールは、“ゾンビ主観の歌として作らない”ということでした。血肉じゃなく、夢を掴む。死じゃなく、挫折を乗り越える。そういったゾンビとアイドルの翻訳のバランスを整えた、フランシュシュの最初のサンプルのような曲になっていましたね。それに、アイドルシーン自体が、生き残りをかけた戦場という捉え方もあると思いますし、こういうサバイバルな歌詞をアイドルが歌っても共感を呼べるのは、過酷な一面もドラマとされる現代アイドル文化の風潮のおかげもあると思います。

ーーゾンビ主観にはしないという指示のうえで、作詞で意識したことは?

古屋 “生への未練”を語らないことですかね。資料で脚本を読んで気付いたんですが、フランシュシュはみんなその感覚がすっぽり抜けているんですよね。誰も「私を生き返らせて!」とは言わないし、ゾンビィになってしまった現状を、どう乗り切るかを考えてる。

ーー先ほど「アイドルシーンは生き残りをかけた戦場」というお話が出ましたが、ゾンビとアイドルにはほかにも何か共通項がありますか?

古屋 例えば、フランシュシュはゾンビィバレをしないために、メイクをすることが大前提になっていますが、実際のアイドル自体もゾンビと真逆の清潔なイメージに応えるために頑張っていると思うと、みんな大きな違いは無いと思えますね。アイドルに限らず、プライベートと人前とでオンとオフの切り替えに悶えている人は、みんなゾンビアイドルと近い戦場に居ると思います。

ーーお話を伺っていると、おふたりとも普通にアイドルの運営に携わっているような感覚もあるかと。

佐藤 そうですね。『ゾンビランドサガ』の世界の中では、彼女たちのことをゾンビだと知らないお客さんに向けて歌うわけだから、その世界のなかでは、普通にアイドルなんだと思うんです。極端なことを言えば、リアルなアイドルが歌っていても、おかしくないくらいの曲の方が良いんじゃないかなと。

ーーリアルで、ゾンビ設定のアイドルがデビューみたいなことと同じ?

佐藤 いえ、それだと違うんじゃないですか? それならゾンビの歌を歌えば良いわけですから。でもフランシュシュは、同じ事を何度も言って恐縮なのですが、ゾンビを隠して活動していて。観客の前ではあくまでもちょっとエッジの効いた歌詞を歌っている地方のアイドルなんです。

ーーなるほど。普通のアイドルと同じように青春や人生を歌っていれば、アニメを観ている側が歌詞をゾンビと重ねて解釈するわけですね。

古屋 そうですね。ゾンビが歌ってることで言葉に深みが増すことがあっても、それはあくまで副産物、というバランス。ベースはポピュラーな視点だからこそ、繰り返し聴いてるうちに、ある時にスッと自分のことのように入ってくることがある。……あったらいいな、と。そんな、誰にでも馴染むようなバランス感覚を「ヨミガエレ」で模索してました。だから、ニンゲンだろうがゾンビだろうが誰でも叫ぶような、再起の熱い歌詞にしました。

佐藤 それにキャラクターが歌ってはいるけど、いわゆるキャラクターソングではないんです。キャラクターソングはそのキャラクターの自身の事や作品のことを歌うけど、フランシュシュはそうではなくて。あくまでもその世界のアイドルとして表現するものを歌うように意識して作っています。

■2期制作決定は現場で知りました。「うお〜〜〜!!!」って(笑)

ーーフランシュシュのメンバーを演じた声優の方々は、どんな反応だったんですか?

佐藤 そもそも歌を録っているときは、まだアフレコが始まっていなかったタイミングでした。だから声優の方たちは、「これってどういう作品なんでしょう?」というところから始まって、その都度ストーリーやシーンについて僕や監督が説明をして、録り進めていきました。それに音源のバージョンとは別に、劇中バージョンと言うものも何曲かあったので、演者の皆さんは、その場での説明で状況を想像しながら、演技をしながら歌っていたので、みなさんすごく大変だったと思います。

ーー王道アイドルソングもあれば、メタル、ラップ、ロックとジャンル感はさまざまですが、そのあたりは?

佐藤 個人的に、そもそもアイドルって統一した音楽性みたいなものは必要ないと思っているので。それにどういう曲になるかは、シナリオ次第と言う感じですね。それにフランシュシュはセンターが変わることで楽曲の世界観を変えたいと言う皆の思いがあるので、それをどう表現できるかと言うのが大事なんだと思います。

ーーさてTVアニメ続篇『ゾンビランドサガ リベンジ』制作決定の話は、どちらで知ったのですか?

佐藤 1期の放送中はそんな話はまったくなかったし、僕らが知ったのはほぼファンの方々と同じタイミングですよ(笑)、『ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュみんなでおらぼう!~in SAGA』の時でした。僕はライブのスタッフとして現地に行っていたのですが、古屋は自らライブビューイングのチケットを取って観に行っていたらしいです。

古屋 現場で叫びました。「うお〜〜〜!!!」って(笑)。

ーー『ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best』には新曲も収録されていて。「佐賀事変」は、2期につながるものなのでしょうか?

佐藤 この曲を作っているときは、まだ続篇は決まっていなかったタイミングでしたね。そして実は、1期にヒントがあったんです。「ゆうぎりがセンターをやるなら、ああいうシーンがあったじゃない? だったらこれでしょ!」と、結果こういう楽曲になりました。ただヒントと言っても思いついたきっかけをくれたシーンと言うだけなんですけどね(笑)


ーー歌詞はどういうイメージで?

古屋 特定の何かを解釈しないように、「あなた」といった二人称を無くしました。あと、初稿の歌詞は曲とメロディのかっこよさから反射的にノリで当てはめた言葉をそのまま乗せた部分が多かったのですが、それがそのまま歌詞の大枠になってくれて。一期を経て築いたフランシュシュ観が、確かに自分にはあるのだ!と信じました(笑)。ただ、仕上げまでの細かいバランス調整のため、また佐藤と手綱の引き合いがあって。そのやりとりは、ちょっと「ヨミガエレ」のころを思い出しましたね。

佐藤 「ここまでは言わせたくない」とか、「それは誰の言葉なんだ?」とか。ゆうぎりのソロ曲ではなく、あくまでもフランシュシュの曲だし、やりすぎてセクシャルなものになり過ぎてしまっても、それをフランシュシュがやるべきなのか、そのへんのサジ加減が難しくて。古屋がすごく思い入れを持って書いてくれただけに、戦いはありましたね。

古屋 結果、良く纏めてくれました。それも「ヨミガエレ」と同じ(笑)

ーーそして「輝いて」は、カレーメシとのコラボでも話題になりました。

古屋 最初に出した歌詞が、「アイドルっぽすぎる」と言われてしまって。「ヨミガエレ」や「徒花ネクロマンシー」のころは先入観なく書けていたんですけど、作品を全話観た上で、佐藤から「実はこういう思惑があって作っていた」みたいな裏側を聞いたり、改まった意見交換をたくさんしてしまっていたので、それを踏まえたから多分、トゲがなくなってしまったんですよね。「ヨミガエレ」や「徒花ネクロマンシー」のような、原点的で力強いものがほしいと言われたことを覚えています。ならいっそ、原点より原初。原始的な、生存讃歌の歌詞にしようと舵を切り返してOKが出ました。

佐藤 これは僕が勝手に思っている事なんですけど、「輝いて」は、ふるさと会館アルピノでライブを開催した最終話のあとに出来たであろう曲、そして「徒花ネクロマンシー」と「光へ」はもっと先の“いつかの未来”のフランシュシュの曲というイメージなんです。最終回以降も順調にアイドル活動を続けていたとすれば、もちろん新曲を歌うだろうと。その過程には「輝いて」のような曲もあるんじゃないかと考えています。そういうバックボーンを勝手に想像して作家のみんなにも無理を言いながら作り上げていった曲たちです。解散しなければきっと、もっとこういう風に大きくなっていくのではないかと、めいっぱい妄想を膨らませて制作しました。
ちなみにカレーメシver.は、歌詞はもちろん、ミックス具合もマスタリングエンジニアもアルバムとは変えています。

古屋 歌い方もぜんぜん違うので見えてくる表情も違います。

佐藤 それとアルバムには、皆さんご期待の「徒花ネクロマンシー」の口上入りバージョンも収録しています。シングルを買って頂いた方や、Blu-rayの特典CDを聴いた方でも、少しでも損した気分にならないように、マスタリングはアルバム用にエンジニアを変えて全部作り直しています。ご満足頂けると嬉しいです。そして出来ることならば1度で良いのでアルバムを曲順で聞いてもらえればと思っています。

取材・文/榑林史章

▽リリース情報
ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best


発売中!
価格:6,050円(税込)
初回特典:3月8日(日)開催LIVEチケット最速先行抽選券(シリアルコード付き)

TVアニメ「ゾンビランドサガ」の楽曲集が遂に発売!
主題歌はもちろん、Blu-rayの特典でしか聴くことができなかった劇中歌も収録。新曲2曲・未収録曲3曲・新曲「佐賀事変」のアニメMV収録!

<CD>
1:ようこそ佐賀へ
2:徒花ネクロマンシー(Album ver.)
3:DEAD or RAP!!!
4:目覚めRETURNER
5:ドライブイン鳥(フランシュシュver.)
6:アツクナレ
7:目覚めRETURNER (Electric Returner)
8:To my Dearest
9:佐賀事変
10:特攻DANCE ~DAWN OF THE BAD~
11:ヨミガエレ
12:FLAGをはためかせろ!
13:輝いて
14:光へ
15:FANTASTIC LOVERS/アイアンフリル
16:ゼリーフィッシュ/アイアンフリル
17:サガ・アーケードラップ/サガ・アーケッドラッパーズ
18:To my Dearest~Lily‘s practice singing~/星川リリィ
Bonus track
19:宣誓!ALIVE センセーション/源さくら
<Blu-ray Disc>
「佐賀事変」アニメーションMV

『ゾンビランドサガ』公式サイト
zombielandsaga.com

『ゾンビランドサガ』公式Twitter
@zombielandsaga

©ゾンビランドサガ製作委員会
©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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