【インタビュー】「『あさがおと加瀬さん。』は青春作品」 – 佐藤卓哉監督が伝えたい想い | 超!アニメディア

【インタビュー】「『あさがおと加瀬さん。』は青春作品」 – 佐藤卓哉監督が伝えたい想い

2018年6月9日(土)より期間限定で劇場公開される『あさがおと加瀬さん。』。本作は緑化委員の活動に励む内気でおとなしい高校生・山田結衣と山田と同じ高校に通う陸上部のエースで学校の人気者・加瀬友香のピュアな恋愛模様と青 …

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  • あさがおと加瀬さん。キービジュアル
  • あさがおと加瀬さん。場面カット1
  • 【インタビュー】「『あさがおと加瀬さん。』は青春作品」 – 佐藤卓哉監督が伝えたい想い
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 2018年6月9日(土)より期間限定で劇場公開される『あさがおと加瀬さん。』。本作は緑化委員の活動に励む内気でおとなしい高校生・山田結衣と山田と同じ高校に通う陸上部のエースで学校の人気者・加瀬友香のピュアな恋愛模様と青春を描いた作品だ。

 今回は、本作の映像化を実現することを熱望していた佐藤卓哉監督にインタビューを敢行。作品の魅力や見どころに加えて、主要キャラクターを演じるキャストのことについてもお話をうかがった。

あさがおと加瀬さん。キービジュアル

こういう青春もある

――監督は元々、原作マンガ『加瀬さん。』シリーズのファンだとおうかがいしました。原作のどういう点に惹かれましたか?

真正面から「青春の光」を描いているところですね。スポコンだったり男女の恋愛だったりと青春には様々な形がありますが、本作はそのどれとも違う。決してドラマチックすぎない、光り輝く青春が描かれています。僕はこういうのをアニメで作りたかったんですよね。

――青春作品のなかで、本作は女性同士のピュアな恋愛模様を描いています。

そうですね。ただ、僕は決して女性同士の恋愛、いわゆる百合というジャンルだから惹かれたというわけではありません。むしろ意識せずにアニメは作っています。もちろん結果的にそういう形で捉えてもらってもいいんです。しかし、自分としては女の子の友情ものとしてリアリティが感じられるような作品を作っているつもりです。

――あくまで青春のひとつの形を描いている作品?

はい。だから、この作品は百合っぽいからという理由だけで見るのを避けていただきたくはないんですよ。特に青春映画が好きな方にはグッとくるシーンが多い映画になっていると思うので!

――私も拝見しましたが、確かに百合が好きでない人でも楽しめる部分ばかりの作品だなと思いました。

そう感じてもらえたら嬉しいですね。

あさがおと加瀬さん。場面カット1


――そんな本作は劇場OVAとして公開されるより前に、アニメーションクリップが配信されていますね。2017年のことでしたが、当時の反響はいかがでしたか?

このアニメーションクリップがいつアニメになるのか、テレビなのかOVAなのか映画なのかなど、YouTubeやツイッターを介してたくさんのメッセージをいただきました。こういう次を期待する言葉をいただけたのが後押しとなり、今回の劇場アニメ制作に繋がったのは間違いないです。

――それほどまでに!

はい。こういう経験は他の作品ではなかなかできないことだったので、純粋に嬉しかったですね。

――他の作品よりも明確に反応が分かった?

もちろんアニメのパッケージを買ってくれるといった行動も嬉しいですよ。それがあるから次の作品が成り立つ部分もあるので。ただ僕らスタッフの元には、視聴者が喜んでくれたというのがダイレクトにはなかなか伝わってこないんですよね……。

ーーなるほど。

その点、『あさがおと加瀬さん。』に関してはアニメーションクリップの時点で多くの方から喜びの声をいただけたので、確かな手ごたえを感じることができました。「これが見たい!」というコメントをしてくれた方が大勢いて、しかも、まだこの作品が届いていない人もいる。なら先に進めないといけない、クリップで終わらせないで何か形にしないといけないと思いました。

――アニメーションクリップを見た方のなかには原作を知らないけど興味が湧いたという方も少なくなかったと思います。実は私もその一人です(笑)

嬉しい言葉ですね。あのクリップを見て、どういう印象を持たれましたか?

――ビジュアルにも惹かれましたが、何より私は独特の「間」にグッときました。そのときは声もついていませんでしたが、淡々と進むあの「間」に引き込まれたんです。

「間」についてはかなり意識して作っていました。実際に見ていただいた方にそういうコメントをいただけるのはとても嬉しいですね。作ってよかった(笑)。

――恐縮です! 今回の劇場OVAは58分とクリップよりも長くなりますが、その「間」は変わらずこだわっている?

こだわっていますね。完成ギリギリまで「間」をどこまで伸ばせばいいのかと編集の後藤(正浩)さんと相談していました。そうしたらあのダンディーなおじさんが、ふと「まさか、山田がこんなに可愛く見えるとは思っていなかった」と言ったんですよ。そのとき「冗談抜きで感想を教えて」と聞いたら、「いやいや、本当に感動的に仕上がっているんじゃないですか」と。

――「間」も演出のひとつで、それによってキャラクターが映えることもあるということですね。確かに、決してセリフ数が多いわけではないのに色々な情報や様々な魅力が頭や目に入ってくる、それが58分のフィルムにギュッと収められていると私も感じました。

それを理想・目標にして作ってきました。だから、今の言葉はそのまま書いてください(笑)。

――分かりました(笑)。ちなみに「間」以外に本作でこだわっている点は?

撮影、また光や影の印象などの絵作りに関してはアニメーションクリップのものをベースにしました。むしろそれを保てるように自分たちで当時の映像を見返していたくらいです。

――アニメーションクリップの雰囲気が変わらないように意識した?

劇場OVAをどういう風に作れば自分たちも待ってくれている方々も納得できるものになるのかなと考えたときに、方向性は変えないほうがいいと思ったんですよね。あのアニメーションクリップを見て喜んでくださった方も多いので、雰囲気が崩れないよう意識しました。


鉄板と言っても過言ではないキャスト

――方向性は変えないというお話がありましたが、アニメーションクリップと異なる点としてはキャラクターに声が付いたという点が挙げられると思います。

重要な部分ですね。

――それぞれの役を演じるキャストはオーディションで決めましたか?

もちろん。まずはそれぞれの声と山田や加瀬さんを演じてもらった芝居が収録されたオーディオテープを送ってもらい、オーディションしました。その段階でプロデューサー・原作サイドと話し合った結果、まずは加瀬さん役が佐倉綾音さんに決まりました。

――決め手は何だったのでしょうか?

加瀬さんは「カッコいいお姉ちゃん」とよく言われますが、その前に普通の女の子なんですよね。山田の自分への印象を考えてもやもやしたり、意外と間抜けな面があったり……そういうところは普通の女の子なんです。だから、加瀬さん役は「カッコいい」と「可愛い」の両面を表現できるような人がいいなと思っていました。佐倉さんは「カッコいいお姉ちゃん」というだけでなく、オーディション時から弱いところも見せる芝居、ちょっと呟くような芝居もできて、緩急が非常にリアルでした。もうこの人しかいないだろうなと思ったくらいです。



――それくらいピッタリだったんですね。山田役のほうはいかがでしたか?

山田は決めるのに少々時間をかけました。というのも彼女はいい子だけどもそれ以外の特徴が分かりづらく掴みにくいタイプの子だから、演者さんによってとらえ方が全然違ったんですよ。ベタベタした喋り方をしたり、ナチュラルに演じたり……本当に幅広く色々な解釈を各演者さんがしていたので悩んじゃったんです。

――なるほど。

だから、まずは加瀬さん役を佐倉さんに決めた後、テープオーディションに参加いただいた何人かにスタジオに来てもらい最終オーディションをしました。佐倉さんとバランスの取れる芝居と声質の方を山田役にしようと絞っていき、最後は満場一致で高橋未奈美さんにしましょうという結論に至りました。

――満場一致で決まったんですね!

はい。そもそもテープオーディションの段階からポニーキャニオンの寺田プロデューサーなどとも「高橋さん、いいね」「山田の声だ」と話していたんです。ただ、色々な芝居をされる方がいるなかで「本当にここで決めてしまっていいものか」と思ったので、加瀬さんとの絡みも考慮して最終的に判断しました。

――では山田役も加瀬さん役も思っていた通りのキャストだった?

そうですね。二人とも芝居が上手でキャラクターにもハマっています。大人数の方にオーディションへ来ていただいたのに、こんなに鉄板のキャスティングでいいのかなと思ったくらいですね(笑)。悪いわけはないんですけど。


――本作では山田と加瀬さん以外に、山田の親友である三河というキーキャラクターが登場します。こちらは木戸衣吹さんが演じられていますね。

木戸さんは山田を選ぶ際のスタジオオーディションにも来ていただいたのですが、とにかく声も芝居も素晴らしくて。その場にいた全員が「すごいな」としか言いようがないくらい抜群の演技力でした。でも、山田ではなかったんですよね。ただ、続けて三河も演じてもらったらそれがピッタリだったんです。スタジオに木戸さんのマネージャーさんがいらっしゃるのに、その場で「木戸さん、いいんじゃない」と決めているような雰囲気でした(笑)。それくらいすんなり決まりましたね。

――木戸さんの演技に惹き込まれた?

佐倉さんや高橋さんとは一緒に仕事をしたことがあったので芝居が上手なことは知っていたのですが、木戸さんはここまでちゃんとお仕事をご一緒するのが今回初めてで。正直、その達者な芝居に驚きました。彼女はとても柔軟で、自分の役を手中に収めている、無理している感じが全然ないんです。それって誰でもできることではないんですよね。ドラマCDを聞いていただければわかりますが、あの自然な存在感は見事ですよ。


――それぞれのキャストさんの演技も注目ポイントになるということがよく分かりました。芝居の話で言えば今回、佐藤監督は音響でも監督を務めていらっしゃいますね。アフレコはいかがでしたか?

ドラマCDのときに最初から最後まで自然に力を抜いてやってくださいというディレクションをしました。「加瀬さん。」シリーズは戦いにいくわけでもないですし、スポコンものでもない。日常を描いている作品なので、「あんまり力が入ると山田も加瀬さんも疲れちゃうと思うよ」と伝えました。そういうのを経て劇場OVAのアフレコをしたので、もう言わなくても力を抜いた芝居は二人ともできるようになっていましたね。

――ドラマCDのアフレコがあったから、劇場OVAではそれほどディレクションをすることもなかった?

そうですね。むしろドラマCDで言ったことがちゃんと活きていて、佐倉さんと高橋さんはさすがだなと思いました。ずっと喋りっぱなしの作品ではないので、緩急をつけたいと言ったのもすぐに理解してくれて助かりましたね。あとは本作で展開する3つのエピソードのうち、最後のものはブレスすらあまりせず、「静かな映画だったね」という印象が残るようにしたいという話をしました。そしたら実際にそういう芝居が返ってきたので、本当に無理なく作品が作れたと感じています。

――なるほど。

思い返すと、最初の頃と比べて山田の芝居は変化しましたね。高橋さんはもっと賑やかにと言えばできるだろうし、他の作品ではバラエティに富んだキャラクターを演じることもある。だからこそ最初はどのくらい力を抜けばいいのか測りかねていたのだと思いますが、自分のなかで落としどころを見つけたんでしょうね。今ではすごく自然に山田を演じています。

――演じていくなかで山田が徐々に馴染んでいったんですね。先ほど「静かな映画だったという印象が残るように」というお話がありましたが、それは音楽や効果音の面でも同様かと思います。

そうですね。この作品は日常の中にあふれている風景や音で成り立っています。そんななか音楽だけドラマチックなものになってもスベるだけだと思うんですよね。普段の日常を見せているのに、ストリングスでガンガン雰囲気を出そうとしてもダメ。むしろ音楽が付いていないからこそ、臨場感があってリアリティが際立つこともあると思います。

――確かに。そう考えると大げさかもしれませんが、音楽ひとつで作品の良さは左右されると思います。

大げさじゃないですよ。音楽も効果音もそれひとつで作品は変わります。入れる・入れないの選択だけですべてが変わってしまうんですよ。それが面白さでもありますよね。音響の現場に初めて行ってから僕は演出の面白さを知って、監督になろうと思いました。声も効果音も含めて、音が好きなんですよね。

――だから、本作でも音響監督を務められた?

自分の作品でやらない手はないだろうと思いまして(笑)。

――なるほど(笑)。音楽面で言えば、今回の主題歌はI WiSHさんの「明日への扉」を山田と加瀬さんがカバーしています。

世代を問わずみんなに聞き覚えがあってつい聞き入っちゃう、そんな普遍的な曲を使いたいという話をしていたところ、寺田プロデューサーから提案がありました。悔しかったですね。自分で見つけてきたかったです。

――それくらいしっくりきた?

しっくりきました。二人が実際に歌っているものを聞いた時に「これはいいな」と。あの曲なくてあのエンディングはあり得ないと今では思っています。

――そこも注目ポイントにひとつですね。本日は色々とお話いただきありがとうございました。最後に読者の方々へメッセージをお願いします。

青春映画が好きな人の期待を裏切らない作品になっていると思います。本編はもちろん、パンフレットやサウンドトラックなど、あらゆるものにスタッフの愛情が込められていますので、是非たくさんの方に見ていただきたいですね。


◆プロフィール
佐藤卓哉【さとう・たくや】アニメ監督。監督を務めた主な作品は『苺ましまろ』、『STEINS;GATE』、『selector infected WIXOSS、selector spread WIXOSS』など。また、『鹿楓堂よついろ日和』では音響監督・アドバイザーも務める

〈『あさがおと加瀬さん。』作品情報〉
2018年6月9日(土)より期間限定で劇場公開

原作:高嶋ひろみ
監督:佐藤卓哉
キャラクターデザイン:坂井久太
コンセプトボード:平間由香
美術監督:橋本和幸
色彩設計:岩井田洋
撮影監督:口羽毅
編集:後藤正浩
キャスト:山田結衣役/高橋未奈美、加瀬友香役/佐倉綾音、三河役/木戸衣吹、井上先輩役/寿美菜子、先生役/浅野真澄、コーチ役/内山夕実、?/落合福嗣
音楽:rionos 
主題歌:『明日への扉』 歌:山田結衣(CV:高橋未奈美)&加瀬友香(CV:佐倉綾音)
アニメーション制作:ZEXCS
配給:ポニーキャニオン

物語:どうか加瀬さんが、私の事を好きでありますように―――…。
高校生の山田は、緑化委員の内気な女の子。同じ学年の加瀬さんは、陸上部のエースで美人な女の子。山田が植えたあさがおをきっかけに、言葉を交わしたことがなかった二人の距離が少しずつ縮まっていく。

■『あさがおと加瀬さん。』入場者プレゼント
【第1週目(6/9〜6/15)】
原作 高嶋ひろみ描き下ろし漫画小冊子「その後のおべんとうと加瀬さん。」

あさがおと加瀬さん。入場者特典1
【第2週目(6/16~6/22)】
キャラクターデザイン 坂井久太描き下ろし特製イラストコースター(山田&加瀬さん/全2種ランダム)

あさがおと加瀬さん。入場者特典2

あさがおと加瀬さん。入場者特典3
【第3週目(6/23~6/29)】
原作 高嶋ひろみ描き下ろし漫画小冊子「その後のラブソングと加瀬さん。」

あさがおと加瀬さん。入場者特典4
【第4週目(6/30~7/6)】
キャラクターデザイン 坂井久太描き下ろし特製イラストコースター(山田&三河 or 加瀬さん&井上先輩/全2種ランダム)
※特典は無くなり次第終了となりますのでご注意ください。
※お一人様1回のご鑑賞に対して1つ、もしくは1枚のプレゼントとなります。

あさがおと加瀬さん。入場者特典5

あさがおと加瀬さん。入場者特典6

公式サイト
http://asagao-anime.com

©2018 高嶋ひろみ・新書館/「あさがおと加瀬さん。」製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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