【インタビュー】『リズと青い鳥』みぞれ役・種﨑敦美×希美役・東山奈央スペシャル対談[後編]-「その一瞬で、ふたりの関係は唯一無二のものになったなと感じたんです」 | 超!アニメディア

【インタビュー】『リズと青い鳥』みぞれ役・種﨑敦美×希美役・東山奈央スペシャル対談[後編]-「その一瞬で、ふたりの関係は唯一無二のものになったなと感じたんです」

京都の北宇治高校吹奏楽部を舞台にしたTVアニメ『響け!ユーフォニアム』(以下『ユーフォニアム』)。その劇場版三部作の第2弾となる『リズと青い鳥』は、3年生になった鎧塚みぞれと傘木希美の物語。TVシリーズの第2期では疎遠な状態から始まり、黄前久美子や吉川…

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  • 【インタビュー】『リズと青い鳥』みぞれ役・種﨑敦美×希美役・東山奈央スペシャル対談[後編]-「その一瞬で、ふたりの関係は唯一無二のものになったなと感じたんです」

 お待たせしました。『リズと青い鳥』公開にあわせ、対談の後編をアップ。前編はこちら⇒https://cho-animedia.jp/special/41880/
複雑なふたりの関係性や、新キャラクター・剣崎梨々花についてなど、赤裸々に語っていただいた。後編はネタバレも含んでいるので、ぜひ映画鑑賞後にお読みいただきたい。


――みぞれと希美の立ち位置も、かなり変わっていく物語になっていると思います。おふたりは、お互いの思いの変化はどのように捉えていましたか?

東山 後輩の(剣崎)梨々花の登場によって、希美からみぞれへの〝好き〟が、たくさんいるお友達のなかのひとりに対するものなのか、みぞれが希美に持っているのと同じ〝私にはこの子しかいない〟と思うタイプの〝好き〟なのかということに、もう一度向き合わないといけないなと感じました。

――希美は、みぞれが梨々花をプールに誘ったときに、複雑な表情をしますよね。

東山 そうなんです。そこにTVシリーズの希美にはなかったわがままさが見えて、「おや?」と思いました。

――一方のみぞれは“希美離れ”をしたような気がしています。

種﨑 そうですね。希美のために楽器をやっていたみぞれが、最後の最後でオーボエを続けることを選んだのは、彼女にとっては大人になったというか、飛び立ったというか、そんな変化だったなと思っています。でも、私はみぞれから希美への憧れや〝好き〟っていう気持ちは、大人になっても一生なくならないと思っています。

東山 うん、そうだと思う。山田監督からは「何かが大きく変わる作品ではありません」って言われましたし、劇的な変化はしていないかもしれませんが、小さくてもさまざまな感情が積み重なって変化して、なんだか遠くにきたなという感覚を、ラストシーンを観たときに持ちました。じつは、希美とみぞれの歩き方って、希美が先に歩いて、みぞれがあとからついていく形なんです。冒頭でもラストでもそれが変わらないんです。でも、最後に希美が振り返ったことで、一瞬向き合うことができて映画が終わる。私はその一瞬で、ふたりの関係は唯一無二のものになったなと感じたんです。ふたりは腹を割って話したわけでも激しく衝突したわけでもないけど、いままで触れなかったことにちょっと触れることで、互いにかけがえのない存在になれたんだなって思いました。

――先ほど梨々花の話が出ましたが、梨々花がふたりの関係を変える存在だったのは間違いないと感じていますか?

種﨑 そうですね。監督からも、梨々花はみぞれの心の部屋をひとつ増やす存在だと言われていて、そのとおりだと感じました。アフレコのときに、梨々花を演じた杉浦(しおり)さんは「女子高生だけど〝おやじ〟のように」とディレクションを受けていたのですが、ずけずけと人の心に入り込んでくるからこそ、希美以外に興味がなかったみぞれも、無視できなかったんだろうなと。しかも、梨々花は反応がいいんですよ。プールに一緒に行けば、のちのちそのときの写真を見せてくれて、「うれしかった」って思ったことをストレートに伝えてくれる。梨々花はあまりにも率直な態度で示してくれるから、みぞれも卑屈にならなくて済んだのだろうなと感じました。

東山 一見すると、「かわいい子が増えた!」「よくぞ、みぞれの心に変化を与えてくれた!」という感じなんですが、希美役として考えると100%受け入れきれないところはありますね。希美が「あがたまつり」にみぞれを誘ったとき、「(一緒に行きたい人が)いない」と答えたみぞれに対して「そっか」と返事をするんですね。でも、希美の表情が描かれていないから、どんな思いなのか本心が読めなくて。私としては「みぞれはそうだよね、私の思うみぞれのままだね」みたいな感覚だったんです。でも、プールに行くときには、まさかの梨々花登場ですよ。自分が知らない面を見せはじめたみぞれに、希美はかなり動揺したと思うんです。だから、両手を広げてウエルカムとは言えないかな。

種﨑 希美と梨々花って直接的な会話はほとんどないよね?

東山 そうですね。希美がみぞれの相談にのってあげて、そのあとコンビニのゆで卵をもらうときくらいかな。台本のト書きには「変わった子だな~」って書いてあるくらいだったし、希美も梨々花のことはつかめていなかったと思います。

種﨑 梨々花は、不思議な梨々花ワールドに人を引き込んでいくよね。

東山 どちらかというと自分のペースに周囲を巻き込むはずだった希美が、引き込まれていくくらいですから。

種﨑 本当に面白い子ですよね。

――ラストシーンまでたどり着いたとき、『リズと青い鳥』の本当の意味がわかるような、そんな感覚がありました。

東山 それは監督からも説明がありました。最終的にはリズが希美で、青い鳥がみぞれ……という結論に2人とも辿り着くんです。それでも、実は本当の意味で同じ結論になったわけではないというのが、私にとっては印象的でした。というのも、希美がみぞれという青い鳥をカゴから出すのは、音楽の才能を持つ彼女に羽ばたいていってほしいからなんです。でも、みぞれは「大好きなリズ(希美)が言ったから」飛び立つしかないと考えているんだと。みぞれは音楽のためではなく、あくまでも希美との愛のために羽ばたくんだなと、そこで理解して、なんだかすごい作品だなと思いました。

種﨑 ふたりの気持ちって、結局交わることがないんですよね。最後の最後で「本番頑張ろう」と言ったときだけ同じことを思っていましたけど、それ以外では違ったところを見ている気がする。

東山 未来に向かって進むことを選んだので、希美も前進はできていると思います。ただ、その清々しさって普通のものではないんですよね。大好きなみぞれが、無口なみぞれが、言葉を尽くして希美のいいところをあげてくれても、そこに自分が大切にしていたフルートのことは入っていないんですよ。だから笑うしかない。「ありがとう」と告げるシーンも心からの感謝ではなくて、「もう結構です」という意味も込められているんです。だから、希美はあきらめつつ、前進を選んだという感じなのかなと思っています。

――今回、TVシリーズのときからスタッフも変わりましたが、演出やセリフ的な面での変化は感じられましたか?

種﨑 台本のト書きでしょうか。セリフだけでは分からない感情のことも細かく書いてありました。ト書きに書かれてある事すらも全てが繊細で、とても助けられました。

東山 私は演出の雰囲気の違いを感じました。山田監督は会話の〝間〟を大切にしてくださったんですね。なんなら台詞より〝間〟のほうが大切なんじゃないかというくらい(笑)。なので、今回は考える〝間〟だけではなくて、相手が言ったことを受け取って咀嚼して、それから突っ込む、ということもできました。思っていることと裏腹な言葉も、すごく言いやすかったです。

種﨑 私もその〝間〟にすごく助けられました。私はずっと、絵に合わせてお芝居をするだけだと出てこないような、自然な息づかいをしたいなと思っていたんです。究極的な話をすると、絵を見なくても、感情でお芝居をすれば絵に合うというのが理想だなと思っていて。キャラクターが下を向いたら、下を向いたままセリフが言いたいんです。でも、実際には絵に合わせなければいけないから、そういうわけにもいかない。それでも、この作品は下を向いて考えて、顔を上げるとキャラクターも顔を上げている。そのピッタリさが、自分としてはすごく演じやすかったです。

――では、最後にこれを読んでいる読者にメッセージをお願いします。

種﨑 とくに大きな何かが起こる映画ではないですが、ひと言では言い表せない、いろんな感情があふれた作品になっています。みなさんも身に覚えがあるというか、感じたことがある感情もあるかもしれません。監督が〝すべてのものが傍観者。壁も、木も、空もみんなを見守っている〟感じとおっしゃっていたように、息をひそめて、見守るように、ふたりの少女の小さい変化、息づかいを感じに映画館に来ていただけたらうれしいです。

東山 初めて『ユーフォニアム』の世界に触れる方も、きっとこの作品を通して何か感じていただけるメッセージがこもっています。今までシリーズを観てきた方には、キャラクターデザインの違いに影響されてなのか、私たちのお芝居も、少し頭身が高めになっている部分も感じていただけると思います。希美はTVシリーズのときのような元気いっぱいな感じを映画のテイストに合わせて少し抑えて、より静謐な時間を届けているので、ふたりが織り成す新しい物語をぜひ、隅から隅まで味わっていただけたらと思います。ラストの「ハッピーアイスクリーム!」とハモるシーンでは、それまでバラバラだったふたりの歩調が一瞬だけ合うんですね。そんなふうに、気持ちが同じになったということを、言葉だけでなく絵でも細かく表現しているので、ぜひ観ていただき、そのあとにみなさんと語り合いたいです。劇場まで足を運んで、みなさんの感想も意見もたくさん聞かせてください。よろしくお願いいたします。

 発売中の『アニメディア5月号』には、山田尚子監督のロングインタビューも掲載。インタビュー冒頭を、「超!アニメディア」でも公開している。こちらもあわせてチェックしてほしい。

▶︎【インタビュー】山田尚子監督が『リズと青い鳥』の監督を担当した経緯とは……。『アニメディア』掲載インタビューの冒頭を早出し!

◆プロフィール
東山奈央【とうやま・なお】 311日生まれ。東京都出身。インテンション所属。
種﨑敦美【たねざき・あつみ】 927日生まれ。大分県出身。俳協所属。

サイン色紙をプレゼント!
 スペシャル対談を記念して、東山さん、種﨑さんのサイン入り色紙を1名様にプレゼント! 下記の応募要項をご確認の上、奮ってご応募ください。



■応募期間:2018年4月21日(土)から2018年5月5日(土)23時59分まで
■内容:東山奈央、種﨑敦美サイン色紙
■当選人数:1名様

■応募方法
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当選者には応募締め切り後、 アニメディア公式Twitterからダイレクトメッセージにて、弊社のプレゼント担当の電話番号をお伝えします。お電話にて送付先の住所や名前などをお伺いできればと思います。 ※ダイレクトメッセージ送信後48時間以内にご連絡のない場合や、フォローを外された場合(その場合ダイレクトメッセージを送付できません)は当選を無効とさせていただきます。

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<『リズと青い鳥』情報>
公開中

◆あらすじ
北宇治高校吹奏楽部に所属するオーボエ担当の鎧塚みぞれとフルート担当の傘木希美。2年生のころ、退部していた希美が部に戻り、ふたりは3年生になった。そんなふたりが出場できる最後のコンクールの自由曲は「リズと青い鳥」。オーボエとフルートのソロの掛け合いがあるこの曲に、希美は「自分たちのようだ」と屈託なく告げる。しかしみぞれは、「リズと青い鳥」のようにいつか来る別れを恐れ、ふたりの歯車は噛み合わなくなっていく。

◆スタッフ
原作:武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』)
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン:西屋太志
美術監督:篠原睦雄
色彩設計:石田奈央美
楽器設定:髙橋博行
撮影監督:髙尾一也
3D監督:梅津哲郎
音響監督:鶴岡陽太
音楽:牛尾憲輔
音楽制作:ランティス
音楽制作協力:洗足学園音楽大学
吹奏楽監修:大和田雅洋
アニメーション制作:京都アニメーション
製作:『響け!』製作委員会
配給:松竹

公式サイト
http://liz-bluebird.com/

公式Twitter
https://twitter.com/liz_bluebird

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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