『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』ダイを演じる種崎敦美が作品と芝居へ馳せる想い「私じゃないと意味がないことをしたいんだと思う」【インタビュー】 | 超!アニメディア

『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』ダイを演じる種崎敦美が作品と芝居へ馳せる想い「私じゃないと意味がないことをしたいんだと思う」【インタビュー】

『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の主人公・ダイを演じる種崎敦美さん。子供の頃に原作漫画、アニメを見ていたという彼女は、どのように作品、そしてダイと向き合っているのか。

ニュース
注目記事
ダイ役・種崎敦美
  • ダイ役・種崎敦美
  • TVアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』キービジュアル (C)三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京(C)SQUARE ENIX CO., LTD.
 大人気ロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズの名を冠する初の長期連載漫画として、1989年に「週刊少年ジャンプ」で連載がスタートした「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」(原作:三条陸、漫画:稲田浩司、監修:堀井雄二)。
 魅力的なキャラクターたちが織りなす壮大な冒険譚は、多くの読者の心をつかみ、単行本は累計発行部数4,700万部を記録。その後、1992年にアニメ化もされ、漫画史にその名を刻む不朽の名作となった。そんな『ダイの大冒険』が、連載開始から約30年の時を経て、完全新作アニメ化を果たす。
 往年の人気作である本作の主人公・ダイを演じるのは、声優の種崎敦美さん(※)。子供の頃に原作漫画、アニメを見ていたという彼女は、どのように作品、そしてダイと向き合っているのか。超!アニメディアでは、巧みに様々なキャラクターを演じる彼女のお芝居に関するお話と併せて、作品への想いを聞いた。

TVアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』キービジュアル (C)三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京(C)SQUARE ENIX CO., LTD.

大好きな作品に関わるがゆえに感じた「喜び」と「複雑な気持ち」


――ダイ役に決まったと聞いたときの率直な気持ちを教えてください。

「ダイ役に決まった。やったー! ……えっ、ダイ? でも、家族に嬉しい報告ができる。ダイを演じられるんだ!……いやいや、重責、重責。大変だぞ、これは」というような、素直に嬉しいという気持ちと「どうしよう」という気持ちの波が、絶え間なくずっと来ていました。それくらい複雑な気持ちになるほど、この作品が大好きなんです。

――作品のことを元々ご存知だったんですね。

 はい。本当に小さい頃でしたが原作漫画を読んでいましたし、アニメも見ていました。ただ、それゆえアニメは全話見ているはずなのに、明確に記憶に残っているのは序盤の方だけだったりします……。子供の頃見ていた作品ほとんどがそうです。何現象ですかね……。

――アフレコ中に「こういうシーンあったなぁ」と思い出すこともあった?

 いまの段階で収録が終わっている範囲に関しては、全部ハッキリと覚えていました。そういう鮮明に記憶にあるシーンや原作の名シーンを演じる度、目の前で見る度、この作品に関われているのが、とても光栄なことだと毎回噛みしめています。

――大好きな作品であるがゆえに、アフレコ時にプレッシャーを感じることはありましたか?

 いえ、アフレコ中はそういうことを感じることはあまりないですね。余裕がない……という表現はちょっと違うかもしれませんが、他のキャストさんのセリフを聞いてダイを演じることに集中しないといけない、という気持ちが強いです。

――続いて、原作を読んでいたという種崎さんが思い描くダイ像についても教えてください。

 先ほども別のインタビューでこの質問をしていただいたのですが、一番答えに悩んだんですよね。私はどう捉えているんだろうなぁ……。デルムリン島で大好きなモンスターたちや優しくも厳しいじいちゃんと楽しく、のびのびと過ごして育つ、勇者に憧れる素朴な少年・ダイ。実は特別な力を持っているのですが、それを彼自身は知りません。だから、序盤では目の前で起きることに、素直に反応していこうと思いながら演じていました。ダイ像とはちょっと違いますね。すいません。

――他にも原作のあるアニメ作品に多々出演されていますが、どの作品においても演じるキャラクター像というのは考えていない?

 どの作品でもそうなのですが、自分が演じるキャラクターだけでは「キャラクター像」というのが決まらないと私は思っているんです。主役なら、なおさら。
周りにいるキャラクターたちが、演じるキャストたちが、主役の「キャラクター像」を作っていくのかなと思っています。
 なので、物理的な人物の情報はもちろんふまえるのですが、このキャラクターは「こういう」人物!と明確に決めて演じることは、ほとんどなかったりします……。
 ダイ像と聞かれてハッキリお答えできないのも、そういう理由からですかね……。

――なるほど。種崎さんは、キャラクターを作っていくうえで、物語やキャラクターの関係性を大切にしている、ということでしょうか。

 そのキャラクターの立ち位置、ともいえるかもしれません。とはいえ、『ダイの大冒険』は原作が完結している作品なので、計画を立てて演じなければいけないのかなと思うこともありました。加えて、最初の頃は「ちゃんとやらなきゃ、頑張らなきゃ」という気持ちが強すぎて、いつもやっている「周りがあって自分が決まる」ということをあまり考えられていなかったんです。そこまで頭が回っていなかったというか、気負い過ぎていたというか……。
 ただ、アフレコが進むなかで先輩がアドバイスしてくださったり、ポップ役の豊永利行さんと作品についてじっくりと話したりしたことで、ようやくいつもの自分を取り戻せました。皆さんのおかげで、『ダイの大冒険』だから「やったるぜ!」とか「やらなきゃ」って特別な何かを背負う必要はなく、いつも通りに演じればいいんだと思えるようになりました。

――今までのやり方を見失いかけるくらい、気負い過ぎていたんですね。

 そうかもしれません。でも、何かのために猪突猛進な感じも……きっとダイを演じるうえでは悪くはなかった……はず。そう思いたい(笑)。

――私も原作を読んでいましたが、まさにダイとリンクする部分があるとお話を聞いていて感じました。

 リアルダイやないか!と私も思いました。何も知らずに突き進んでいたところに、仲間が増えて色々な言葉をもらって世界が広がって成長していく。序盤のアフレコにして、ダイの大冒険を体験できております。

――それなら、序盤とこれからの演じ方の違いにも注目ですね。

 そうですね。作品を通じてより成長していければと思います。



前作はあえて意識せずに演じる


――種崎さんはTVアニメ『シャドウバース』でも男の子役を演じていらっしゃいます。少年を演じるにあたって、特別意識されることはありますか?

「少年役だからこう!」というのは、あまり考えたことがないですね。ただ、男の子になりたくて声優を目指した側面もあるので、少年役を演じる度に喜びを感じています。

――「声優」という職業を知ったきっかけは『美少女戦士セーラームーン』だったというインタビュー記事を拝見したことがあります。

 この世界に入りたい!と思ったきっかけは『セーラームーン』でしたね。そこから、何のきっかけでそうなったのかハッキリ覚えていませんが、男の子役を演じることへ憧れるようになりました。
 この声優業界、地声から男の子役を演じるのにピッタリな方もいますし、やりたいという方も多いです。
 なので昔から、色々な方から「(男の子役を演じるのは)難しいかもね」と言われ続けてきました。
 だからこそ、今回あのダイを演じられる事は、本当に光栄ですし、私は私でしかないので自分に出来る精一杯で負けずにぶつかっていきたいです。

――種崎さんは、どんな役でも器用に演じていらっしゃる、というのが私の印象です。演じるキャラクターによって参考にされる声優さんやお芝居はありますか?

 どなたかを参考にしようと具体的に思ったことはないです。
 ただ、「あ、この役難しい……何が分からないのかも分からない」となったときには、アニメではなく、それに近い映画やドラマなどを見ることはたまにあります。生身の人間の表情とか気持ちの動きとか、実際のその職業とか状況とか……。
 自分自身が似た経験をしていたり、感情を抱いたことがあるのが一番ですけど……。

――リアリティを求めている?

 というよりかは、外側じゃなくって内側から理解したいんです。それっぽい言い方をするだけになっちゃうのが一番怖くて……。
 映画・ドラマと言いましたが、男の子や赤ちゃんとかを演じるときは、街ですれ違ったり電車内で喋ったりしている中学生男子や泣いてる赤ちゃんの声に耳をすませたりもしていました。

――それを芝居にも活かしている。

 そうですね。ただ、アニメも滅茶苦茶たくさん見ているので、「こういうキャラクターといえばこう!」というのが刷り込まれているかもしれません。そんなつもりはなくても、寄せてしまっている可能性は絶対にあり得る。でも、そうじゃなくなりたくって。

――すごく、カッコいいです。

 ……カッコいい?

――自分らしさと言ったら簡単な言葉になってしまいますが、自分でしか表現できないことを表現したいという気持ちは、すごくカッコいいですし、見習わないといけません。

 ……すごい。意識したことは全くなかったですが、そうなのかもしれません。「私じゃないと意味がない」ことがしたいんだと思います。なるほど。おぉ、なるほど……!

――ここまでのお話からすると、1991年に放送された同作のアニメを意識せずにダイを演じている?

 オーディションの段階で監督たちが「リスペクトの気持ちは持ちつつも全く新しい『ダイの大冒険』を」とおっしゃっていたので、前作はあえて意識せずに演じています。リスペクトの気持ちは自分のなかにたくさんあるので大丈夫。「絶対に前作は見ない!」と決めていました。一丸となって「新しいダイの大冒険を…!」となっているのに、見てしまったら確実に自分は必要以上に大きく影響を受けて悩んでしまうと思ったので……。
 先日あれアニメってどこで終わったんだっけ……と最後だけ少し見ちゃいましたけど(笑)。

――そういう意味では、過去作との差にも注目ですね。

 前にアニメを放送していたときは、原作が完結していない状態でした。今回は完結してからの作り方をしているので、芝居の面以外でも過去作との違いや差を楽しんで欲しいと思います。



9時30分になったら親が子供に「始まるぞ!」と声をかける作品に


――今の状況下ではなかなかキャスト一堂集まっての収録は難しかったと思いますが、アフレコ現場はどのような雰囲気でしたか?

 スタッフさんもキャストもみんな作品が好きなので、休憩中もずっと『ダイの大冒険』の話ばかりしています。みんなが同じ方向を向いているのって、大事なんですよね。すごく居心地がいいです。

――アフレコ時のディレクションで印象に残っていることも教えてください。

 シリーズディレクターの唐澤(和也)さんからは、気負い過ぎていた頃から「大丈夫、慣れますから」という言葉をかけていただいていました。
 幾度となくその言葉をかけていただいていたので、最初の頃は「続けていればいつかは慣れると思うけど……繰り返しそれを仰るのは何でなんだろうな」と思っていました。その意味が最近ちょっとずつ分かってきた気がします。

――種崎さんは、その言葉をどういう意味と捉えていますか?

 現場の雰囲気に慣れるということだけでなく、いい意味で心が慣れていくというか、作品に馴染んでいくというか。そういう色々な意味を含めて「慣れます」とおっしゃっていたんだと思います。また、「慣れます」と同じくらい言ってくださっていたのが「何かあったら何でも言ってください」ということ。
 だから、「ん?」と思うことがあったら、必ず相談へ行くようにしています。例えば、セリフの語尾。「今のポップとの関係性なら、もっと距離感の近い語尾になると思うんです」という相談をしたこともありました。
 それくらい細かく、セリフ一文字だろうと相談に乗ってくれて、違和感をその場で解消してくださるんです。ありがたい現場ですね。

――そういうやり取りは、現場の全員に熱意や想いがないと生まれない気がします。

 そうですね。キャスト・スタッフの思いが詰まった作品です。

――放送がスタートしたばかりの『ダイの大冒険』。ダイを演じる種崎さんから、所信表明をお願いします。

 全く新しい『ダイの大冒険』を作っていますが、私たちがそうであったように、みんなが傘やホウキで「アバンストラッシュ」を真似したり、マジックでおでこに紋章を書いたりしてくれるような広がり方になれば、嬉しいですね。
 本作は子供たちだけじゃなくて、大人の方も楽しめる作品です。特に原作をご存知の方はものすごい熱量で「ポップはなぁ今はこんな逃げ回ってるけどなぁ……こっからがすげぇんだ……」お子さんポカーン……みたいな現象起こったら微笑ましいですね(笑)。
 土曜9時30分になったら親から子供に「始まるぞ!」と声をかけて、揃って見る。そんな作品になったならこんな嬉しいことはありません。ご視聴よろしくお願い致します!

ダイ役・種崎敦美

取材・執筆=M.TOKU

プロフィール
種崎敦美【たねざきあつみ】9月27日生まれ。大分県出身。東京俳優生活協同組合所属。主な出演作は、『魔法使いの嫁』羽鳥チセ役、『フルーツバスケット』魚谷ありさ役、『アイドルマスターシンデレラガールズ』五十嵐響子役 ほか

アニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』作品概要
【イントロダクション】
大人気ロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズを冠する初の長期連載漫画として、1989年に「週刊少年ジャンプ」で連載をスタートした「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」(原作:三条陸、漫画:稲田浩司、監修:堀井雄二)。魅力的なキャラクターたちが織りなす壮大な冒険譚は、多くの読者の心をつかみ、単行本は累計発行部数4700万部を記録。 漫画史にその名を刻む不朽の名作が、連載開始から約30年の時を経て完全新作アニメ化を果たす! ダイとその仲間たちの友情と成長の物語を、CGとアニメ作画のハイブリッドでダイナミックに表現。新たな「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」の伝説が、今、ここに幕を開ける――。

【ストーリー】
かつて、魔王ハドラーにより苦しめられていた世界は、「勇者」と呼ばれた一人の剣士とその仲間たちの手により平和を取り戻した――時は流れ…。魔王から解放されたモンスターたちが暮らす南海の孤島・デルムリン島。島唯一の人間であり、勇者に憧れる少年「ダイ」は、モンスターたちと平和に暮らしていた。だが、その暮らしも、魔王ハドラーの復活により一変する。師との約束、仲間との出会い、逃れられぬ宿命…再び危機が訪れた世界を救うため、勇者を目指す少年・ダイの冒険が始まるー!

【放送日】
2020年10月3日(土)からテレビ東京系列にて放送開始! 以降、毎週土曜朝9時30分~放送
【放送局】テレビ東京・テレビ大阪・テレビ愛知・テレビせとうち・テレビ北海道・TVQ九州放送
【原作】「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」(集英社「週刊少年ジャンプ」)原作:三条陸 漫画:稲田浩司 監修:堀井雄二
【スタッフ】
シリーズディレクター:唐澤和也
シリーズ構成:千葉克彦
キャラクターデザイン:宮本絵美子
美術:藤井綾香(スタジオパブロ)
音楽:林ゆうき
色彩設計:森綾
アニメーション制作:東映アニメーション

(※)種崎さんの「崎」は「たつさき」が正式表記です。

(C)三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京(C)SQUARE ENIX CO., LTD.
《M.TOKU》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集