春アニメ「魔法少女マジカルデストロイヤーズ」ファイルーズあい×愛美×黒沢ともよインタビュー | 超!アニメディア

春アニメ「魔法少女マジカルデストロイヤーズ」ファイルーズあい×愛美×黒沢ともよインタビュー

オリジナルTVアニメ『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』より、アナーキー役のファイルーズあいさん、ブルー役の愛美さん、ピンク役の黒沢ともよさんの鼎談インタビューをお届け。

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(左から)黒沢ともよ、ファイルーズあい、愛美
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MBS/TBS/BS-TBS“アニメイズム”枠他にて2023年4月7日(金)より放送開始となるオリジナルTVアニメ『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』(以下、『マジデス』)。

本作は、オタク文化が排除された日本が舞台。オタク文化をこよなく愛する革命者・オタクヒーロー(CV:古川慎)と3人の魔法少女・アナーキー(CV:ファイルーズあい)、ブルー(CV:愛美)、ピンク(CV:黒沢ともよ)が「好きなものを好きなだけ好きといえる世界」を取り戻すための戦いに挑むストーリーだ。

超!アニメディアでは本作の放送開始を記念し、アナーキー役のファイルーズあいさん、ブルー役の愛美さん、ピンク役の黒沢ともよさんの鼎談インタビューを実施。作品や自身が演じるキャラクター、キャスト同士の印象のほか、「戦ってでも守りたい大切なもの」と作品にちなんだお話を聞いた。

[取材・文:阿部裕華 撮影:吉野庫之介]



魔法少女が魔法少女らしくキラっと戦う作品ではない


――オリジナルアニメということでまだまだ謎に包まれた『マジデス』ですが、みなさんが作品に抱いている率直な印象を教えていただけますか?

ファイルーズ:最初にこの作品に触れたオーディション時、“魔法少女もの”と聞いていたので「ついに私もそういう作品のオーディションのお話が来た!」という嬉しさと共に、「どんな清楚でかわいらしい子たちなんだろう」とワクワクしていたのですが……。

蓋を開けてみたら、何の恥じらいもためらいもなく放送禁止用語を言う女の子、ただひたすら性欲で物事を考えて喘いでいる女の子、「ごぼ…」しか言わない女の子しか出てこなくて。「これは私向けじゃん!」と確信しました(笑)。

愛美黒沢:あはは(笑)。

ファイルーズ:もともとサブカル文化や“考えるな感じろ!”系の前衛的な作品がすごく好きなので、非常に魅力を感じました。



愛美:果たして“魔法少女もの”なのか、というところがありますね(笑)。少年漫画のような、スポ根のような熱さを感じます。第1話からファイ(ファイルーズ)ちゃんの喉がはち切れるのではないかと思わされるくらい叫んでいます(笑)。

ファイルーズ:ふふふ(笑)。

愛美:オーディション時に「もっとやっちゃってください」と言われたんですけど、第1話を見たらその理由が分かりました。きっと視聴者のみなさんも「いいぞ、もっとやれ」と思うはず。いわゆる魔法少女が魔法少女らしく魔法を使ってキラっと戦う作品ではないということだけお伝えしておきます(笑)。



――お話を伺っていると、数ある魔法少女アニメとは一線を画す作品なのだろうなと感じます。

ファイルーズ:基本的な“魔法少女もの”って1話の冒頭に「私は〇〇に住む、いたって普通な女の子」から始まって、何か事件に巻き込まれ、マスコット的な何かに力を与えられ、魔法少女として活躍していくという流れが王道だと思います。でも『マジデス』は何の説明もなく、当たり前のように魔法少女が登場するんですよ。狂太郎というよく分からないマスコット的なキャラクターも登場するのですが、どんなキャラクターなのか説明を求めても「マスコットです」としか言われないので正直困っています(笑)。

黒沢:言われてみたら子どもの頃に見ていた魔法少女アニメのテンプレってそうだったかもしれないし、それと比べると『マジデス』は違うかもと思ったのですが……。私自身、魔法少女アニメにあまり親しみがないんですよ。多くに触れてこなかった私がこの作品に携わった結果、特に違和感がないという(笑)。

ファイルーズ:当たり前のようにこの世界を受け入れていたんだね(笑)。

黒沢:今はもう「『マジデス』ってほかとは違う“魔法少女もの”なんだ~!」となってきちゃった(笑)。私と同じように「たしかに言われてみたらほかとは違うかも……?」と思う人もいるのではないかなと。それくらいの馴染み感がある。

ただ、すごい熱量の作品になりそうだということは分かります。登場人物のみんな、何を言っているか全然分からないけど、ただ熱量はずっと高い。キャストのみなさん、ある種の緊張感を抱いているからかすごくテンションが高くて。それ以上は高くならないだろうと思うのに、アフレコをしているとどんどんテンションが高まって、テンポが早くなって、声も高く大きくなっていくんですよ。そうしないと乗り切れないくらい支離滅裂な作品であるということなんですけど。

――テンションが高いからこそ、「ほかとは違う魔法少女もの」という違和感すらも抱かせてくれない可能性はありそうですね。

黒沢:それはあると思います。あいさんと古川さんがずっと大きい声で喋っていて、愛美ちゃんはずっと喘いでいるので。

愛美:そうだね……。

黒沢:テンションが高すぎて、だんだん低酸素状態になるというか……「分からないけど、まあいっか!」となる(笑)。こんなにテンションが高いと、おうちのテレビで見たら爆発しちゃうのではと思いますね。



「愛美は黒沢ともよを尊敬しています」


――ファイルーズさんが「何の恥じらいもためらいもなく放送禁止用語を言う女の子、ただひたすら性欲で物事を考えて喘いでいる女の子、「ごぼ…」しか言わない女の子」とお話していましたが、改めてご自身の演じているキャラクターについて紹介をお願いします。

ファイルーズ:私が演じるアナーキーは自分の「好き」や目的にすごく真直ぐな子です。なので、猪突猛進タイプに見えるのですが、困っている仲間に気づいて手を差し伸べたり、頭が使えるから戦いの中でも機転がきいたりする。主人公らしさのあるキャラクターだと思います。

愛美:アフレコが進むにつれて「こんなに淫らな子だとは思わなかった……」と思いました。クールビューティーなお姉さまかと予想される方も多いでしょう。でも、すでにお察しかと思いますが、みなさんの理想の美人なお姉さんでいたかったという感じです。実はドスケベ大魔神です。逆にめちゃめちゃ好きになってもらえるんじゃないかなと。

ファイルーズ:たしかに。

愛美:でも不思議なことに全く羞恥心がないんですよ。「愛美さん、もしかしたら無理やり演じさせられているかも」と思う方がいたら全くそんなことはないです。

関西弁のキャラクターだったから自分的にもすごくしゃべりやすくて(※兵庫県出身)。さらに、「もっとやっちゃってください」と言われたから、すごく嬉しかったのを覚えています。アフレコも「これはおかしいかも」と思いながらアドリブを入れて、それが採用されることもあって。毎回楽しく演じさせてもらっています(笑)。

黒沢:ピンクは年齢不詳の女の子で、ちょっとハードなバックボーンがある、メイドさんが大好きな人です。過去の諸事情により、「ごぼ…」しか言えません。むせることしかできないんですよ。普通にむせている時もあれば、喋りむせしている時もあって、喋りむせから普通にむせていく時もあるという感じです。

愛美:私は以前、別の作品で猫のマスコットキャラクターを演じたことがあるのですが、「ニャー」だけで全部表現しなきゃいけないんですよ。限られた言葉の中で感情を表現する、臨場感を出すのはすごく難しい。ブルーちゃんはピンクちゃんを通訳する役割を持っているので、一番近くでともよの「ごぼ…」を聞いているのですが、同じ「ごぼ…」でもニュアンスが細かく違うんです。いつも「すごいな」とアフレコの時に毎回ともよを尊敬しています。

黒沢:「愛美は黒沢ともよを尊敬しています」と太字で書いておいてください。

愛美:見出しにしてもらいましょう(笑)。

――この流れで、お互いの印象についてお聞かせください。

愛美:ファイちゃんはみんなを引っ張ってくれる人です。作品への愛はもちろん、ファイちゃんだからこそ出せるパワー、熱量があります。

実は私もテープオーディションではアナーキーも受けたんですよ。スタジオオーディションではブルーとして呼ばれたんだけど。

ファイルーズ黒沢:へえ!

愛美:ファイちゃんのアナーキーを聞いた時、「絶対ファイちゃんだ」と思った。それくらいついていきたくなるような声だといつも感じています、

ファイルーズ:いや~、よかった……。ありがとうございます……!



黒沢:アフレコ現場でもいつも明るくいてくださるんですよ。真ん中に立つ方によってアフレコ現場のカラーが変わってくるんですけど、本当に気さくに接してくださる。キャストスタッフみんな「アナーキー大好き!」という空間ができています。それくらいあいさんはめちゃくちゃコミュ力が高いです。

ファイルーズ:みなさんが気さくに受け答えしてくれるから、内側にある優しい部分が伝わってくるから、安心して話しかけられるんですよ……。

私が抱くお二人の印象ですが、うちは幼少期から下ネタに厳しい家庭だったんですよ。エッチな女の子が出てくるアニメや子ども向けでもお尻が出てくるアニメは見せてもらえない家庭で。下ネタを聞いたり見たりすると、本能的に当時の思い出が出てくるんです。だけど、愛美さんのお芝居でブルーが喋っているのを聞いた時、たしかに下品だけど不快感がないと思ったんですよね。ブルーの個性として下ネタも自然に心の中に流れてくる。それほどまでに愛美さんはブルーを自分のものにしている感じがすごくあって。本当に素敵なお芝居だと思いました。

愛美:照れますね。

ファイルーズ:黒沢ともよさんは……

黒沢:フルネーム(笑)。愛美さんはフルネームでも愛美さんだからいいなぁ……。

愛美:たしかにね(笑)。

ファイルーズ:話しを戻していいですか?

愛美黒沢:すみません(笑)。

ファイルーズ:黒沢ともよさんは兼ねてからお芝居がすごくお上手な方で。ご自身もお芝居に造詣の深い方。ご一緒できるのがものすごく楽しみでした。

黒沢:よく言うよ!(笑)

ファイルーズ:本当のことですからね! 現場で実際にお芝居を見てみたら「ごぼ…」しか言わないのに、説得力があって。私は低音で「ごぼ…」と来るのかと想像していたら、予想外にものすごくかわいい「ごぼ…」で。さらにピンクさんへの愛おしさが湧く素敵なお芝居でした。

黒沢:やったぜ! 愛美さんは今回のお芝居を見て「さすがだな」と思いましたね。台本をもらってキャストを確認したらブルーのところに「愛美」と書いてあって。「え、愛美がブルー!?どういうこと!?」と思ったんですよ。立ち絵の印象はあんな感じですし、下ネタを言うことは分かっていたけど文字面だけではそこまでセクシーなキャラクターだとは想像できなくて。そしたら、ずっと喘いでいるだけ……。

愛美:喋っている時もあるよ(笑)。

黒沢:喋っているけど、母音が全部喘いでいるような感じで。何かにずっと感じ続けているのに、ビックリしました。それがめちゃめちゃハマっている。「これからの青色キャラってこうなのかな?」って頭がちょっと混乱するほど。「青ってこういう感じか! こういう感じなのか……?」みたいな(笑)。

愛美:たしかにね。青って知的な参謀タイプのイメージがあるからね。



黒沢:ブルーは全然違うけど(笑)。そんな愛美さんのお芝居が超楽しくて、「すげえ!」って思います。

――アフレコは3人揃って行っているのでしょうか?

愛美:同時なんですけど、ともよだけ別部屋でアフレコしていますね。

黒沢:ガスマスクを付けているキャラクターなので、音声加工をするために別部屋で同時収録をしているんです。なので、寂しいです。みんなずっと楽しそう。幼少期に下ネタがダメな家庭で育ったとは思えないような会話をしています。

ファイルーズ:ちょっと~、嘘を言うのはやめてくれませんか? 下ネタを言っているわけじゃなくて、大人の話をしているんですよ?

黒沢:(笑)。大人の話しを3人(古川、ファイルーズ、愛美)がきゃいきゃいしているのをマイクが拾っているので、それを聞きながら寂しくなっています……。

愛美:別ブースだけどLINEで連絡とりあってみる…?(笑)

黒沢:そうだね……そうしよう……。



3人の「戦ってでも守りたい大切なもの」とは


――本作の舞台は「オタク文化が排除された日本」です。みなさんがこの状況に陥った時、どのようなことを考えると思いますか?

ファイルーズ:「どうやってご飯を食べていこうか」って考えますね(笑)。仕事的にもそうですし、私は漫画やアニメに勇気をもらって今まで生きてこられたので、それがなくなってしまうというのは、心に大きな穴が開くと思うんです。その穴は何かを代用品にして塞ぐことはできないから、きっとオタクヒーローたちのようにレジスタンスをするんじゃないかと思います。

愛美:この作品に触れて思ったことでもありますが、「オタクって何だろう」と考えてしまいます。世の中にはいろんなジャンルのオタクがいるけど、どこからがオタクなんだろうと思うんですよ。深く愛している、ハマっている、お金をかけている……きっと人によって基準は違います。だけど、総じて“生きがい”ではあると思っていて。『マジデス』に登場する敵たちもオタクに執着しているから、「オタクのオタク」だと思う。

ファイルーズ黒沢:あ~、たしかに……!

愛美:だからこそ、オタク文化が排除されたら、どんな人も生きていけないんじゃないかってぼんやり考えてしまいます。

黒沢:この作品に出てくるオタクじゃない人たちって、好きなものがないってことなのかな? それとも好きなものがあっても隠している人もいっぱいいるのかな。

愛美:そういう見方もできるね。

黒沢:もし私がそんな世界に投下されたら「うわ、面倒くさいな…」って思う気がします。どうするんだろうね。オタクにならない程度に楽しいことを見つけられたら、それをするのかもしれないけど。それをほかの人から「オタクだ!」と言われたら……。オタクってなんなんですかね?

ファイルーズ:哲学ですね……。

黒沢:誰かニーチェ呼んできて……!

ファイルーズ愛美:(笑)。

――それでは最後に、『マジデス』の主人公たちのようにみなさんが「戦ってでも守りたい大切なもの」を教えてください。

ファイルーズ:それは当然「親友」と「親」です。仕事でつらいことがあったり折れそうになったりしても、悩みや自分の弱さをさらけ出して高め合えるのが「親友」。子どもに対して無二の愛情を注いでくれるのが「親」だと思っています。特に親に対しては、「小さい頃におんぶや抱っこをしてくれたからこそ、逆におんぶしてあげたい」という考えがあって。そんな「親友」と「親」のためなら、私は命をかけられます。

黒沢:本物の魔法少女やん!

ファイルーズ:私、魔法少女だったわ……!

愛美:私は「自分が関わるコンテンツを愛してくださっている人たちの“好き”の気持ち」を守るために日々戦っていると思っていて。例えば、ライブをするコンテンツだったら、コンテンツに対する“好き”を持って来てくれるお客さんのために何ができるのかを考えます。そして、お客さんたちをハッピーにしたり、悲しい気持ちにならないようにしたりするための準備をたくさん重ねるようにしています。

作品を愛してくださる人のためにお芝居がもっと上手くなりたいし、キャラクターの歌を愛してくださる人のために歌がもっと上手くなりたい。“好き”という気持ちはすごく尊いものだと思っているからこそ、その気持ちを守りたいと思っているなって。今、考えてみて気づきました。

ファイルーズ:素晴らしい……!

黒沢:2人の話を聞いていて思ったのは、やっぱり「愛犬」かな……。愛犬のためなら何でもできると思いました。

ファイルーズ:犬だって大事な家族だからね。

黒沢:と同時に作品に準じて考えると、自分を育ててくれた「演劇界」を守るために今一生懸命に取り組んでいます。コロナ禍で経営が苦しい制作会社さんが増えて、どんどんつぶれている現状があります。その影響で、作品を支えてくれたスタッフさん・俳優さんもどんどん職を失っていて。そんな行き場を失ったクリエイターのみなさんとものづくりができるように、試行錯誤をしています。残っている環境も、毎日検温と抗原検査と消毒をして、抗菌スプレーをたくさん撒いて、1時間に1回換気をして、マスクを替えて……とできる限りのことを行っている。そういう意味で「演劇」を守るために、日々戦っています。

《阿部裕華》
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