JAM Project(JAM)が2020年元日に20th Anniversary Album『The Age of Dragon Knights』をリリース。同作にはangela、梶浦由記、GRANRODEO、FLOWなど豪華なアーティストが楽曲提供などで参加。今回はそのなかからALI PROJECT(アリプロ)との対談が実現。『Animelo Summer Live 2006-OUTRIDE-』のころから、お互いに刺激を受けていると話す両者。制作秘話から今後のアニソンシーンについて、今回はインタビューの後編をお届け。
■ALI PROJECTの世界観は生き様。神レベルの尊さ!
ーーJAM Projectに「龍驤 -Ryujou」を提供するにあたって、なにかJAM Project用にいつもと変えたところはありましたか?
宝野アリカ(以下、宝野) 最初にメロディを作っているときに「こんなメロディだけどどうだろう?」と聴かせてもらったんですけど、テンポがすごく速かったんです。アリプロの曲はいつも速いので、私が歌うなら大丈夫だけど、JAM Projectさんが歌うにしては速すぎない? と。
片倉三起也(以下、片倉) それでテンポをだいぶ遅くしました。
影山ヒロノブ(以下、影山) そうだったんですか。
宝野 私自身も、「最近アリプロ速いな〜」って思っていたくらいなので。でも、どうでした?
きただにひろし(以下、きただに) それでも僕らがいつも歌っているテンポより、ぜんぜん速かったんですけど。
奥井雅美(以下、奥井) でもそれが心地良い速さなんです。だから、すごく歌いやすかったですよ。音が激しく上下するメロディで難しいんですけど、嫌な感じはしないと言うか。
影山 コーラスが難しかったね。
奧井 明確にコーラスパートがわけられていたので、すごく練習したよね。
影山 でもすごく楽しいレコーディングでした。最初に聴いたときに、今回のアルバムのなかでもファンの人がすごくよろこんでくれるだろうなと思ったし。アニソンのファンって感受性が鋭くて、いろいろなことに敏感ですけど、そういう子たちが話題にしてくれたらいいなとすごく思います。「今回の曲、面白いよ」って。
ーーJAM Projectさんのほうから、曲にアイデアを足すようなことはなかったですか?
影山 2コーラス目の頭を男だけで歌うとか、オクターブ下で歌ったら面白いんじゃないかとか、出させていただきました。
片倉 そのアイデア即採用って感じで。
影山 殿、めっちゃ優しいので。
福山芳樹(以下、福山) アルバムの、一連のレコーディングの最初がALI PROJECTさんとの制作で、そのときに「これはすごいアルバムになる!」と確信しました。曲をデモで聴いたときから、ライブで見ていたアリプロさんの世界だなと思って、これを僕らがステージで歌ったらどんな雰囲気になるんだろうと、一気に想像が広がりました。実際にレコーディングすると、半音ずつ下がっていくところがあって。JAMはそういう風に細かく音程が変わっていくメロディがないんだけど、アリプロらしいメロディだなと思って、歌えることがとても楽しかったです。そして宝野さんが隣に座っていらして、何かあるときだけスッと立ち上がって意見を言って。その姿から、いつもこうやっておふたりで作っていらっしゃるのだと思って。普段のアリプロさんの、制作の雰囲気も感じられて嬉しかったです。
ーーほかの曲はお聴きになりましたか?
宝野 歌詞と資料だけで曲は聴いていませんけど、タイトルだけでも気になる曲があって。たとえばGRANRODEOさんの「ROCK五銃士」とか。
きただに 最初は気づいてなかったんですけど、ロックで5人というところと、かけ算の6×9=54が掛かっていて。歌詞にも<発破六銃士(8×8=64)>とも出てくるし。
遠藤正明(以下、遠藤) 座布団3枚くらいあげたい(笑)。
影山 きーやん(谷山紀章)が(GRANRODEOのライブ中にアキレス腱を断裂してしまった後だった為)、ギプスをしたままで、仮歌を録って送ってくれて。ギターソロも飯塚(昌明)さんが弾いてくれて。
ーー歌詞に<もっと>と、JAM Projectを象徴する言葉が盛り込まれていて。
影山 きーやんのサービスで、JAM Projectに寄せてくれました。今作はGRANRODEOにも絶対頼もうと思っていて、飯塚さんにお話をしていたところ、きーやんがアキレス腱断裂ということになってしまって。無理かもしれないな、とこちらでは話していたんだけど、がんばって作詞作曲から編曲まで全部やってくれて、ありがたかったです。
ーーJAM Projectに対する愛情があればこそですね。
遠藤 愛情があって参加してくれたのか、断れなかったのか(笑)。でもALI PROJECTさんをはじめ、みなさんすごく忙しいのに僕らのために曲を提供してくださって、すごく嬉しいですね。おかげさまですごく豪華なアルバムになりました。みなさんとても個性的で、ALI PROJECTさんの曲なんかどこを切ってもアリプロさんだし。
影山 詞とメロディだけじゃなく、編曲もそのアーティストがいつもやっている形でお願いしているので、そこが面白いよね。
宝野 そういう形は、初めてだったんですか?
影山 昔、森雪乃丞さんに作詞していただいたことがあるくらいじゃないかな。水木一郎さんたちがメンバーだった最初のころは、自分たちの曲と作家さんの曲が両方あったけど。奧井ちゃんたちが入ったころから、手創りでやっていこうとなって。それでALI PROJECTさんから刺激を受けて今に至っている。だから詞曲を提供していただくのは久しぶりで、懐かしい感覚もありました。
ーー今回楽曲を提供されて、改めて感じたJAM Projectの魅力は?
宝野 5人で一緒に歌っているのに、それぞれの声がしっかり聴こえてくるのがすごいです。それに男の人の声のなかで、奧井さんの声はやっぱり素敵だなって、今回改めて思いました。長年一緒に歌っていることで、それぞれの声がどんどん混じり合うようになっているのだろうって思います。
影山 JAMって5人いるので、表にドーンと出ている部分だけじゃなく、それを支える声も、5人の声の塊として必要だと思っていて。それは普段からやっている自分たちはわかっているんだけど、聴く人の目は、やっぱり4番バッターばかりにいってしまうんです。でも7番や8番も大事で、それがあってこその4番であることをわかっていただけているのは、8番の俺としてはすごく嬉しい。
ーー影山さんが4番じゃないんですか?
影山 俺なんかサビのメロディをもう10年歌っていないですから。
奧井 キーの問題もあるから。
影山 奧井ちゃんや遠藤は高いから。特に遠藤は強いし高いしで、JAMにとっての主砲です。でも俺の送りバントも大事で、遠藤がガーンといっているところの後ろで、ゴニョゴニョやっている感じがいいんだよね。
ーーきただにさんは何番?
影山 ダニー(きただに)は、「お前は7番なんだよ」っていつも言い聞かせているんですけど、すぐ4番をやりたがって(笑)。
奧井 でも“寄り添いくん”だっけ? 誰かが歌ったあとに、一緒にユニゾンで歌って、寄り添うのが上手だよね。
きただに ああ、ありがとうございます。
影山 アルバムの1曲目「to the next era」で、コーラスを録ったときに、梶浦(由記)さんが、「JAMの秘密がなんとなくわかりました」と言ってくれたんです。コーラスのパートも含めてJAMの歌なんだということをわかってくれるのは、すごくうれしいです。
ーー逆に提供してもらった曲から感じた、ALI PROJECTの魅力は?
影山 ワンアンドオンリーの魅力に尽きますよ。いろんな音楽の形があるけど、出せる雰囲気がワンアンドオンリーです。ほかの人がああいうゴシックな感じにいくら挑戦しようとしても、それはエッセンスでしかない。それをALI PROJECTさんは、普段から愛して長い時間かけて作り上げてきた。それはもう、神レベルの尊さです。
奧井 生き様もあるんじゃないかって思います。
片倉 それは主にこちらの方(宝野)でしょう(笑)。
きただに せっかくイタリアに行ったのに、みんなを拷問博物館に連れて行くくらいの人ですから(笑)。
奧井 ジャケ写とか、世界観の作り込みもすごい。
影山 ベニスで全身ヒョウ柄のやつ!(2010年『La Vita Romantica』)
宝野 全身ヒョウ柄のままでベネチアの街を歩いたら、「キャットだ!」って騒がれてしまって。
影山 フランスの友だちにその写真を見せたら、「この女の人は男を食うね」って言っていました(笑)。
奧井 中国で一緒だったときに、アリカさんが隣の部屋でめっちゃ練習していたのは感動しました。あれだけ難しい歌を軽々と歌うには、やはりこんなに練習しているんだなって。
宝野 上海でしたっけ。練習と言うか、声を出しておかないと、本番で歌えないじゃない(笑)?
奧井 もちろん練習されるとは思うんですけど、一般的には練習するイメージってあまりないと思うし。やっぱり、影で努力もされているんだなって。
ーーさて、長くアニメ・アニソンシーンに関わってきた2組ですが、今後のシーンはどうなっていってほしいですか?
影山 国に対してと言うと大げさだけど、もっとこっち(アニメ・アニソン)を打ち出していくべきじゃないかと思うときはあります。政治的にどうかは別にして、もっと前に出すべきだと。アイドルやダンス&ボーカルが流行っているのは確かだけど、彼ら自身の作家性や楽曲へのこだわりというよりは、ああいうパフォーマンスや人物像に魅力があって爆発的な人気があるんだと思うんです。でもJAM ProjectやALI PROJECTは、アニメの映像とマッチしたときによりいっそう盛り上がるという、独自の音楽性を追求している。そういう違いをもっとわかってほしいところもあって。
宝野 私たちはもともとアニメ音楽をやっていたわけではなく、デビューから10年くらいしてアニメ『CLAMP学園探偵団』のテーマソング「ピアニィ・ピンク」(1997年)を担当したのが最初でした。たぶん私たちの音楽って、音楽だけではわかりづらかったと思うんですけど、アニメ作品といっしょになったことでわかりやすくなって、聴いてくれる人が増えていった。そういう意味でも、アニメと音楽との相乗効果は大きいと思います。
影山 一過性ではなく、もっと世界に広がっていく可能性を持っているのが、アニメ・アニソン。海外の人のほうが、むしろそれをよくわかっているような気もします。
ーーさて今後ですが、JAM Projectはツアーも。
影山 現在、第一弾スケジュールが発表になりましたが、まだ発表になっていないスケジュールもあって。このアルバムを引っ提げてみんなのところに行きますので、楽しみにしていてほしいです。ALI PROJECTさんは?
宝野 うちは通常営業です(笑)。夏ぐらいに新作を出そうかなと制作をしておりますので、楽しみにしていてほしいです。
取材・文/榑林史章
PROFILE
JAM Project【ジャム・プロジェクト】
2000年に立ち上げられた影山ヒロノブ、遠藤正明、きただにひろし、奥井雅美、福山芳樹の“アニソン界”を代表する実力派シンガーたちによるユニット。OVA『エクスドライバー』OPテーマ『疾風になれ』でデビュー。以降、数多くのアニメ・ゲーム・特撮ソングを担当している。
ALI PROJECT【アリ・プロジェクト】
作詞・ボーカルの宝野アリカと、作曲・編曲を担当する片倉三起也によるユニット。1992年に『恋せよ乙女〜Love story of ZIPANG〜』でメジャーデビュー。『ローゼンメイデン』『コードギアス 復活のルルーシュ』など多くのアニメ主題歌を担当している。
商品情報
『The Age of Dragon Knights』
バンダイナムコアーツより2020年1月1日発売
価格:3,000円(税別)
『JAM Project 20th Anniversary Complete BOX』【完成生産限定】
バンダイナムコアーツより2020年1月1日発売
価格:45,000円(税別)
JAM Project 公式サイト
http://jamjamsite.com/
ALI PROJECT 公式サイト
https://aliproject.jp/