坂本真綾がTVアニメ『BEM』OPテーマ「宇宙の記憶」をリリース!「オーダーメイドのものをいただいたなと思いました」【インタビュー】 | 超!アニメディア

坂本真綾がTVアニメ『BEM』OPテーマ「宇宙の記憶」をリリース!「オーダーメイドのものをいただいたなと思いました」【インタビュー】

声優・歌手の坂本真綾が、30thシングル「宇宙の記憶」を7月24日にリリース。その制作秘話を聞いたインタビューが、発売中のアニメディア2019年8月号に掲載されている。「超!アニメディア」では、本誌記事内ではお届けしき …

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 声優・歌手の坂本真綾が、30thシングル「宇宙の記憶」を7月24日にリリース。その制作秘話を聞いたインタビューが、発売中のアニメディア2019年8月号に掲載されている。「超!アニメディア」では、本誌記事内ではお届けしきれなかった部分も含めたインタビュー全文をご紹介する。


椎名林檎プロデュースの新曲は「宇宙を統べる女王」のイメージ

――30枚目のシングルになりますね。

 1996年のデビュー後、コンスタントにリリースをしていたわけではなくて、昨年のように1年で3枚出すときもあれば、数年リリースがないときもあったので、同じ年月を活動してきた方と比べると、それほど多い枚数ではないのかなと思います。自分としては「やっと30枚なんだ」くらいの感覚です。

――「宇宙の記憶」は、TVアニメ『BEM』のOPであり、椎名林檎さんのプロデュースでもあります。

 まず『BEM』の主題歌を歌わせていただくことが決まって、どんな曲が合うかというスタッフとのお話のなかで、「椎名林檎さんに書いていただけたらいいね」という話題になり、そこからオファーさせていただきました。

――なぜ椎名さんがいいだろうなと考えられたのでしょうか?

 いつか機会があればお願いしたいということは、常々私たちの側では考えていました。それに加えて、今回は『BEM』の音楽をSOIL&”PIMP”SESSIONSがやることが、主題歌のオファーをいただいたときから決まっていたんです。その段階で、まず『BEM』という作品がどういう世界を描きたいのかがなんとなくわかったんですね。『妖怪人間ベム』のダークでジャジーなOPの印象も踏襲しつつ、作品のムードに合うものをと考えた結果、林檎さんにお願いするのがいいのではということになりました。

――椎名林檎さんは、どんなアーティストだと感じていましたか?

 初めて聴いたときから忘れられない声や、歌詞を携えている方だという印象でした。彼女がデビューした当時、私もいろいろ好きなアーティストがいたし、そのとき流行している音楽もたくさん聴いていたけれど、そのどれとも違っていると感じたんです。表現したいことがはっきりとあって、自分の個性や特性を理解して、それを魅力に変えられる人なんじゃないかと感じていました。そのころ、私もすでに歌手デビューはしていましたが、ビジュアルから何からすべてが私とはかけ離れた女性であり、同世代なのに自分をしっかりもってやりたいことをやっているように見えて。強さと色気のすべてがまぶしかったです。


――実際にお会いして、その印象は変わりましたか?

 変わったというか変わらなかったというか、ある意味とても普通な方でした。地に足のついた大人として、いろいろなことに気を使ってくださる、常識的な方であるという意味で普通。同時に、音楽に関しては独特な感性とカリスマ性があり、制作の段階からゴールが見えていて、そこに向かうことに迷いがない。職人のように妥協しない厳しさもあるし、でも楽しみながら仕事に向き合っている。安心してついて行ける方だという印象でした。でも、本人はとてもかわいらしくて、そこにいる人が嫌な気持ちにならないように、ずっと周りを見て気を遣っているんです。ですから、想像以上にステキでしたし、いい意味でとても大人だなとも感じました。

――曲のテーマについては、坂本さんサイドから椎名さんに提示された形でしたか?

 そうです。林檎さんも、何が求められているのかをじっくり聞いてくださいました。歌詞に関しては、最近は自分で書くことも多いので、書きたい気持ちもありつつ、せっかくだからすべてをお任せするのも楽しいかもしれないと思っていたんですね。林檎さんご自身は、歌詞と曲を一度に書かれることが多いそうなのですが、「真綾ちゃんが書いてもいいと思う」と言ってくださって。最近は全部を委ねてみるということをしてきていませんでしたし、全部任せるというのは勇気のいることですから、勇気がいるほうを選んだほうが面白いかなと思って歌詞もお願いしました。

――ふだんあまり耳なじみのないワードもふんだんに使われた、椎名林檎ワールド全開という印象です。

 最初に曲を聴いた時は、日本語をのせることが想像できないくらい洋楽っぽい印象で。でも林檎さんが書いてくださった歌詞は、音符と言葉の響きがぴったりとはまって自然に日本語がのっていたんです。「(歌詞を)自分で書きたいかも」と言ったのが恥ずかしくなるくらいでした。音として聴いても心地がいいのですが、文章として読んだときに非常に深く哲学的で、繰り返し読みたくなるようなものだったんですね。しかも、1行で1文がきれいに完結している。鳥肌が立つような驚きがありました。

――実際に歌ってみた感想は?

 聴いた瞬間は、難しそうと思われるかもしれませんが、歌ってみると不思議な心地よさがあるんです。私は、林檎さんご自身が歌う歌を作っているときとは、モードが少し違うんだと感じたんですね。私が歌うことをイメージして、私の声やキーにあうように作ってくださっている。本当にオーダーメイドのものをいただいたなと思いましたし、歌もさらっと歌えました。レコーディングでも林檎さんにディレクションをしていただいたのですが、3、4回で「できた」みたいな感じで。普段の私のレコーディングが、かなり追い込むので、拍子抜けするくらいでした。

 難しそうだなと感じるのは、おそらく歌詞を目で追ってしまっているからだと思うんですね。歌詞の内容を理解して、覚えてから歌うと、そうでもないんです。これは、セリフと同じなのかなと思います。セリフも歌詞も覚えてさえいれば、咀嚼するかのようにいくらでも自分の解釈を加えられる。そういう意味でもこの曲は、懐が広くて、歌うときの表情はいくらでもつけられると思っています。

――達観した歌声にも感じられます。

 歌詞の内容がかなり俯瞰して世界を見ているようなものだったので、感情を込めるというよりは、余裕を持って、必死さが出ないようにと思って歌いました。林檎さんも“宇宙を統べる女王”というイメージを持っていらしたみたいで、私は楽器としての声の役割を考えながら歌いました。

――椎名さんからはどんなディレクションがありましたか?

 基本的に注文というものはほとんどなくて、大サビのメロディーが変わるくだりはぐっと抑えて、耳元でささやいているようにウィスパーで歌ってほしいとおっしゃっていたのと、あと間奏部分でため息をくださいと言われたくらいですね。それ以外は、割となんでも褒めてださいました。

――『妖怪人間ベム』といえば人気のシリーズですが、坂本さんはどのくらいなじみのある作品ですか?

 再放送を飛び飛びに見たことがあるくらいでした。ただ、なぜか最終回だけは記憶していたんです。いいことをしたら報われるとか、正義は必ず勝つといった作品が多いなかで、すごくかわいそうな終わり方をしていたので、観ている側が考えさせられるようだった作品に思います。今回の『BEM』には私も謎の女役で出演させていただいていますが、人間がいかに得体の知れないものであるか、自分と違うものに対して不寛容であるかというお話になっていると感じています。妖怪の話だと思ってみていたら、お前はちゃんと考えているのかと指を指されるようなテーマの重さを今は感じています。

――カップリング曲はついては?

 バンアパ(the band apart)さんの曲は、彼らのトリビュートアルバムでカバーさせていただいた曲です。出来上がりをすごく気に入っていたし、いつか自分の作品に入れたいとも話していて、今回は「宇宙の記憶」と相性が良さそうだったので、入れさせていただきました。もう1曲に関しては、すべてを委ねた曲とカバーがあったので、自分に一番近い曲を残せたら、と自分の作詞作曲の曲を入れました。

――では、ご自身が作詞・作曲をした「序曲」について聞かせてください。

 ほか2曲とのバランスは考えなくもないのですが、考えたところで細かい舵取りができるわけでもないんですよ。明るい曲を作ろうと思っていたのに、暗い曲になっちゃうこともあって、自分の作曲については、何が出てくるのかわからないことのほうが多いんです。しかも今回は、「宇宙の記憶」があまりにも素敵だから、カップリングはどうしても影が薄くなるかもしれない。でもカップリングってそういうものだからいいかなと開き直り、自分にフィットする、自分が今好きな曲を作りました。淡々と作った割には、思ったより大風呂敷を広げることになってしまった感覚はあります。

――タイトルは「序曲」ですが、歌詞の内容は終わりを感じさせるようなものも多いですね。

 最後の灯火のように見えるものが、今登り始めたばかりの朝日かもしれないし、クライマックスかと思ったらじつはプロローグかもしれないとか……。そんなことがあると思うんですね。セミに例えると、幼虫のまま死ぬのかと思っていたら、地上に出てもう一度生きる道があった、みたいな、終わりが別のステージへの始まりかもしれないと思えることが、自分のなかでも多々あって。それをテーマにしようと思って書き始めたわけないんですが、書いていくうちに終わっていくものと始まるものがオーバーラップするような歌詞になりました。30枚目として結実してもいいけれど、これが始まりの1枚かもしれない。タイトルは、そんな気持ちも込めてつけました。

――レコーディングはどうでしたか?

 すごく大変でした。自分で作った曲で歌いづらかったことは今までもあったんですが、この曲は何が大変かわからないけど大変で。「宇宙の記憶」のレコーディングは一瞬で終わったのに、これは時間がかかりましたね。家であまり声を張らずに曲を作っているから、実際にスタジオでマイクを前にしたときにしっくりこなくなるのかな。学習しないなと思いながらレコーディングをしていました。

――バンアパの「明日を知らない」は、選曲されたときメンバーのみなさんからも驚かれていたそうですね。

 曲の存在を彼らも忘れていたみたいですね(笑)。私は自由に選んでいいと言われたので、一番好きな曲を選んだだけなんですが……。ほかにもたくさん好きな曲はあって、でもカバーをするならこれだろうという観点だったんですね。我ながらカバーとは思えないフィット感で、ライブ映えもしますし、彼らが「もう、真綾さんにあげてもいい」と言ってくれたので、もらったつもりでいます(笑)。

――レコーディングの感想は?

 この曲は、いつも車を運転しているときに聞いていて、歌い慣れていたので、キーはバンアパさんのものと変えませんでした。実際に歌ってみると、さらっとしたらバラードのようで、後半にかけてエモーショナルに歌い上げるので、結構パワーがいりましたね。歌詞がとても意味深だなと思っているんですが、実際にどんな気持ちで書かれたのかは彼らには聞いていないので、自分の感性で歌いました。気持ちとしては、男性の書いた小説を読んでいるときに近いかな。私、男の方が書かれた小説って、半分くらいわからないなと思うこともあるんです。男性の考え方ってこうなのかな……くらいの感覚で。この曲の歌詞にも文学的なものを感じていたので、自分なりの解釈を重ねて歌いやすかったのかもしれません。

――ジャケットは、黒と白が基調でインパクトがあります。

 アートディレクターの方が「宇宙の記憶」の歌詞を読みながら、陰と陽、光と影のイメージを膨らませて、作っていただきました。

――今年はすでに2月に『犬フェス』があり、8月には『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』への出演が決まっています。

 『犬フェス』は最初からトリと決まっていて、本当にありがたかったです。ただ、菅野よう子さんがインフルエンザでお休みされたことで、お客さんの気持ちを救いたくていじったら、思いのほかそれが話題になって……。私が歌った他の曲のことは覚えてくれているのかなと思ったりもしました(笑)。『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』は久しぶりの出演になるので、今からとても楽しみです。これから先も、何かしらの準備はしていますが、それはまたあとで発表します(笑)。

――では、最後にアニメディア読者へメッセージを。

『BEM』は『妖怪人間ベム』の50周年記念作品です。「宇宙の記憶」は、どの世代の方にも聴いてもらえる、聴いてかっこいいと思ってもらえるOPになったと思います。林檎さんがOPのためだけに90秒に再編集してくださったTVサイズも、とてもすばらしいんです。ぜひ、TVサイズもフルも聴いて、その違いを楽しんでいただきたいです。

取材・文/野下奈生(アイプランニング)

PROFILE
【さかもと・まあや】3月31日生まれ。東京都出身。フォーチュレスト所属。幼少より子役として活躍し、1996年にシングル「約束はいらない」で歌手デビュー。以後、本格的に音楽活動を開始してシングル29枚、オリジナルアルバム9枚をリリース。

リリース情報
「宇宙の記憶」
7月24日発売
フライングドッグ
価格:1,400円(税別)


 坂本真綾の30枚目となるシングル。表題曲は、自身が謎の女役で出演しているTVアニメ『BEM』のOPテーマ。アーティストの椎名林檎をプロデューサーに迎え、独特のテンポ感と流れるような歌声で聴く者を魅了するナンバーに仕上がった。カップリングには、自身が作詞・作曲を手がけた「序曲」、the band apartのカバー「明日を知らない」を収録する。

ライブ情報
『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』出演決定!
出演日:2019年8月11日(日)
詳細は公式サイトをチェック
http://rijfes.jp/

坂本真綾公式サイト
http://www.jvcmusic.co.jp/maaya/

《超!アニメディア編集部》
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